軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

191 対応力

「……」

クマールが怪訝な目で警戒気味に数歩下がったぞ。

せめて挨拶くらいしてくれ。

で、なぜか俺に顔を向け……目つき悪いからか睨んでいる様に見えるな。

「おい。そこのお前、リエルだったか。コイツの飼い主と言っていたが、俺の見立てだとコイツは魔獣枠に該当するのが分かっているのか? 危険魔物を資格無き奴が飼育するのは犯罪だぞ」

危険魔物を資格無き者が飼育する……あー、なんか国の法律にあったっけ。

一般人が飼育出来る魔物……使役魔と飼育が困難な使役魔。

猛獣を飼育するってのは最終的にけが人や死人なんかを出しかねないのでしっかりと資質や資格が求められる話だ。

「その様子じゃ知らなかったみたいだな。俺が国とギルドに報告してやるからコイツは預からせてもらおう」

「はぁ? 何勝手な事を言ってんだ」

「ああ? サクレス、リエルってお前が言ってたそいつらのしつけをした見習いだろ。そんな下級レンジャーがこんな危険魔物を飼っているって事が問題あるんだよ。わからねえのか。俺は宮仕え魔物使いとして義務があって連行するんだよ」

サッと素早くヴォザードが腰に下げていた鞭……というかロープを取り出しクマールの首に付けた首輪目掛けて振るう。

「ヌマ」

そのロープをパシッと弾いてクマールは目を細めつつ俺の背後に回り込んで懐いて居ますとばかりに俺の肩に両手を置いて背中に腹を付けてくる。

なんだその動作……安全ですよってポーズ?

「ヌマー」

そうです。なんかあの人不快ですってクマールが意思を伝えてくる。

まあ、いきなり「お前は危険な奴だ。連行する」なんて言われてロープを投げられたら嫌だよな。

「おい、これは何の真似だ?」

ルナスが不愉快そうに眉を上げてヴォザードへと一歩踏み出す。

「あ? 見た所勇者か? 生憎だな、俺は魔物使いとして注意してんだよ。部外者は引っ込んでろ」

「そうはいかんな。クマールはリエルが世話をしている大切な仲間だ。最近は私とリエルの甘い時間を邪魔して、リエルと目で語り合う羨ましい奴になっているが、それとこれとは別だ。連行される謂われはない」

ルナスはもう少し本音を隠してくれないかな?

クマールと目で語り合うって……念話で話をしてるだけなんだけどそんなに仲良く見られて嫉妬してるのか。

「ヌマー」

クマールも俺の考えに同意見のようだ。

しかし、ルナスってこういう突然起こる騒動への対応力は凄まじいよな。

普段の残念な所や勇者の怒り中毒を帳消しにする位、格好良い所だと思う。

「はぁ……だから甘い考えで魔獣枠の魔物をしつけもせずに従えているってのは危険だって言ってんだよ。そこの下級レンジャーじゃ荷が重いってのがわからねえのかよ」

「ふん、先程から下級レンジャーと見当違いな勘違いをしている様だが、リエルは上級レンジャーだぞ」

「え? リエル上級レンジャーになったのか? やったな。けど、試験日は随分前だった気が……」

サクレスが驚きの表情で俺を見てくる。

ああ……一応レンジャーギルドの資格で言うなら上級レンジャーに認定されたばっかりだ。

「更に言えば迷宮での冒険によりフォーススキルに開花し、魔法使いギルドから中級賢者の認定も得ている。貴様が侮って良い相手ではない事を知れ! 痴れ者が!」

サクレスが本当か? って顔で俺を見てくるのでサッとサイフロートで地面に転がっている小石を浮かび上がらせて念話を意識して飛ばす。

『聞こえるか?』

「うわ!」

コンっとサクレスに念話がぶつかって驚かれてしまった。

「リエル、お前……しばらく見ないうちに凄い事になってんだな。フォーススキルなんて一朝一夕で開花するもんじゃないだろ」

「ルナス達が迷宮でがんばってくれたお陰でな」

「はー……見た所俺達とそう違わないのにすげー勇者なんだな」

嘘は言ってないぞ。

勇者の怒りと死んだフリのコンボで41階層まで楽に戦うのは元より日々死闘でコツコツと稼いで開花するはずのフォーススキルを無双して驚異的な速度で開花させたんだし。

ルナスが凄いのは間違い無い。

「しかし、リエルが賢者かぁ……うん、普通に納得だな」

サクレスまでそういう認識なのか。

自分では賢者なんて恐れ多いんだけど、同期の友人にそう言われると少し嬉しいな。

「チッ! 嘘言ってんじゃないだろうな?」

「そう思うのなら確認してくるがいい。高圧的で傲慢な魔物使いよ。我々に貴様の暴論は通じんぞ」

ルナスが宮仕えの証を見せつけて不敵に言い返す。

まあ本当の話だしな。

しかし、こんなに早く上級レンジャーと中級賢者の資格が役に立つ日が来るとは。

ルナスの助言を聞いておいてよかった。

「……」

ピリピリした空気が辺りを支配する。

「……嘘だったら承知しねえからな。宮仕えとしてしっかりと魔物使いギルドに監査を要求するぞ」

舌打ちしてガラが悪くヴォザードがクマールを凝視しながら……魔物達を連れてその場を去って行った……。

なんだあの高圧的な態度……。

「なんだったんだアイツ?」

別のパーティーらしいけど知り合いのサクレスをしてよくわからない奴扱い。

なんかルセンやマシュア、最近だとバックス講師と同じ匂いがするんだよな。

変な事にならないといいが……。

「……アレはクマールに目を付けた狩人の目付きって感じだね」

シュタインが立ち去って行ったヴォザードの方角を見ながら呟く。

「素直に諦めてくれた訳じゃないって事か? 少年」

「さっき魔物使いとしての務めって名目でクマールをリエルから奪って連行しようとしたでしょ? アレってさ、多分リエルが下級レンジャーなら宮仕えでも無理矢理連れて行けると踏んで決行しようとしたんだよ」

魔物使いとしての務め……ね。

まあ態度からして危険な魔物だから連れて行くというより、珍しい物をほしがっている奴のそれだったのは否定しない。

ああいった手前の連中を俺は今まで見てきた事があるからよくわかる。

「ただ、リエルが上級レンジャーとなると雲行きが怪しくなるのさ。中級ならギリギリ暴論が通るけどね」

「俺みたいなもんだろ? レンジャーってのは危険使役魔の飼育に関してある程度許容されるしな」

サクレスが眉を寄せつつ答える。

ああ……レンジャーは戦闘スタイルの関係で使役魔を使う場合があるから資格に盛り込まれている。

ファルコンやウルフは愛玩用ではない。がっつり戦闘用だ。

クマールは元々愛玩用枠だったけど、大きくなった所で戦闘用に該当する。

「上級レンジャーとなるとウルフやファルコンの上位となる魔物を使役する事が許可されるんだよね。ただ、あくまでレンジャーは近接戦、陽動とかを主体にする魔物の使役魔に限定される所が多いよね」

「……クマールも今は魔法が使えるな」

「そう言う事。となると今度は魔法を使う危険魔物の飼育資格が求められるんだけど、魔法使いもクロウとか使い魔として知能を引き上げる魔物の許可がされているんだ」

使い魔……使役魔に魔法的力や文様を付与して知性を引き上げて使役される魔物の呼び名だ。

「魔物使いはこの両者を両方とも使役する許可を持つ職業なんだよ。ね? リエル」

「ああ」

シュタインが俺に同意を求めてきたので頷いた。

「俺は現在、上級レンジャーと中級賢者の資格を持っている」

「となるとさ、近接系の危険使役魔と魔法系の使役魔を飼育する資格を持っている事になる。だから彼の理屈が通らなくなるんだ。しかも宮仕え勇者であるルナスさんの仲間でもあるからね」