軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

171 不思議な世界

「ヌマヌマ」

クルッと針が動いたのでハイロイヤルビーの店から出て、ここから脱出するための出口へと向かう。

不思議な世界の市場を抜けて……いろんな品々が取引されている。把握で確認すると、普段目にする市場の品とは似ているようでまるで違う品々が扱われている。

ここで購入した品を王宮に差し出したら……どうなるのか想像をするのは容易い。

ただ、ハイロイヤルビークイーンの信頼に背くような気がするし、この証の効力が失われる可能性もある。

まあ……ハイロイヤルビークイーンから貰った武器の強化や修理をする時だけ使えば良いだろう。

などと思いながら針の示す店へと行くと……そこは本屋、もしくは魔法屋らしき店へと出る。

「いらっしゃい」

店のカウンターにはクマールに負けず劣らずの体格をした兎獣人らしき人物が居る。

シルクハットを被り、チョッキを羽織って椅子に腰掛けて居た。

声は高い……胸もあるので獣人でも女性だろう。この店の店主だろうか。

「元の世界に戻るためにここへ来たんですが」

針が店の奥にある扉を指し示している。

「そうだね。今はそこが人の世に戻るための扉だね」

サッと店主が扉を流し目で見て答える。

「使用してよろしいですか?」

「ああ良いよ。人の世に行きたいなら止めやしないよ」

それは助かった。

「ただね。ささっと帰るのも良いけどうちの本を買っていくのはどうだい?」

「妙な世界の品を持ち帰って災いを持ち帰りたくないので」

丁重にお断りとしようとした所、店主が流し目で俺とクマールを舐めるように……把握……じゃない。何か別のスキルで舐めるように頭の先から足先まで確認した。

ぞわっと俺とクマールはそれぞれ鳥肌を立てる。

「おや、二人揃って感知系スキル持ちかい」

「ええ、あまり見られると良い気持ちはしないのですが」

「こりゃあ失礼。随分と謙虚なようだけど安心しな。そこまで妙な品を勧めたりしないよ」

「そこまでって所が引っかかるので勘弁して欲しいです」

俺の返事を知った事では無いとばかりに本棚から一つの……巻物が独りでに出てきてカウンターに乗る。

「まあそう言わないもんだ。アンタの隣にいる……今にも噴出しそうな火山みたいな力を秘めた仲間には悪い品じゃないと思うんだけどね」

と、店主はクマールに向けて巻物を差し出す。

今にも噴出しそうな力を秘めた仲間……クマールの事を言っているのか?

そういえば先ほどの兵士も似たような事を言っていたっけ。

俺はやられた事を返すように差し出された巻物に把握を施しつつどんな品なのかを確認する。

魔法書? パラッとクマールが軽く巻物を広げて中身を確認する。

読めるのか?

「ヌマ」

中身の一部が分かるとクマールが答える。

「後はアンタも随分と古い系統の魔法の力を持っているんじゃないかい?」

見抜かれた? 鑑定とかその辺りのスキル持ちか。

ただ、系統まではわかっていないか。

市場の古本屋などで見つからないかと思って念魔法の魔法書を探したけど見つからなかった。

聞いたら古すぎて無いって話だったっけ。

不思議な場所だけどダメ元で聞いて見るか。

「念魔法だ。俺は基礎的な物しか学べてない」

すると店主は片耳をピコピコと動かした後。

「1ヶ月後に店に来たら中級念魔法書を用意しておくけどどうする?」

まるで一ヶ月後に確実に取り寄せられるような言い方だぞ?

ただ……俺の念魔法のスキルが何か間違いは無いと囁いているような気がする。

「その時に買わせてもらう」

「あいよ。で、そっちの方はどうする?」

こちらも同様の気がする。

「わかった。何で払えば良い?」

「人の世の通貨で問題無いよ。値段はーー」

提示された巻物はそこそこ値が張ったが、買えない金では無い。

魔法書の値段としては相場だ。

巻物に把握で何度も妙な呪いや魔法が掛かっていないのを確認する。至って普通の巻物だ。

来た証拠として持ち帰るにはこの辺りが良いか。

「わかった」

カウンターに金銭を置く。

「毎度あり、またどうぞ」

「ああ、じゃあな」

と、俺達は買い物を終えて店の奥にある扉を開けてくぐる。

ガチャッと扉を開いて出た所で雑踏の音が耳に入った。

そのまま音の方へと向かうと変わった人達のいる空間では無く俺のよく知る町並みに出た。

場所も何処であるか一目で分かる。家の近くだ。

「どうやら元の世界に戻ってこれたようだ」

「ヌマ」

さっきのは白昼夢だったのかと錯覚を覚えるけれどクマールの腰につけた紐には購入した巻物がある。

俺は改めてハイロイヤルビークイーンから貰った証を確認する。

すると円形の月を示す表示と針が映し出されていた。

どうやら……示された月の夜に針が示した場所を通るとあの不思議な世界に行けるようだ。

……とんでもない品を貰っていたようだ。

今度返した方が良いのかと脳裏を過ぎる。

後でルナスやシュタインに相談するか……王宮に献上は、しても効果が無いんだったか。

俺達に恩があるのであって、王宮の者達には無い。

「ヌマ……」

こんな代物を買って良いの? とさっきからクマールが俺に伺う顔をしている。

「気にするな。クマールが今後必要になるかも知れない品かも知れないし、何より確証を得るために丁度良かったんだよ」

「ヌマ!」

わかりました! 期待に応えられるように努力します! っとクマールが訓練場で見て覚えたのか兵士達の敬礼の真似をした。

なんて言うかクマール。お前は随分と成長というかなんかして居るな。

そのうち人の言葉とか発しそう。

「はは、クマールはいつか人の言葉とか喋ったりしてな?」

「ヌマ?」

俺とこうして意思疎通が既に出来ますが?

まあ、確かにそうだな。

あんまり必要性は無いか。

「それじゃ今度こそ帰るか、夜も大分更けて来たもんな」

「ヌマ」

食事を終えてルナスを家に送った帰り道で変な世界に迷い込んでしまったんだしな。

雑踏の音はするけど夜も大分更けてきているし、眠気も大分ある。

これから更に何かあったら困る。

妙な騒動は出来れば無いように行きたいもんだ。

と、俺達は自宅へと警戒しつつ特に問題無く帰る事が出来た。

「ふー……」

自宅の扉を開ける所でポストに何通か手紙が入って居る事に気付いた。

手紙を手に取り自宅に入る。

「ヌマー」

やっと我が家に帰った! と、クマールは定位置になりつつある俺のベッドの脇で寝転がる。

今回は仰向けか……。

手紙を確認っと。

よくある冒険者関連の保険勧誘のチラシや武器屋の広告……特にコレと言った物は……って所で手が止まる。

「中級レンジャー試験の参加催促状……と、中級レンジャー試験参加許可状?」

前者は貴殿の活躍に対してより高みへ行くために中級レンジャーになることを勧める書類だ。

これは活躍に対して下級止まりではいけないぞ、こんな制度があるのを忘れて居ないかの確認するための手紙だ。

後者は文字通り中級レンジャーになる試験の参加許可を認める……試験会場への案内だ。

なんかおかしくないか?

俺は宮仕えになった際にも申請してお祈り手紙が来たんだぞ?

申請許可期日はとっくに過ぎているというのに……。

ともかく、ルナス達に相談しなきゃいけない事が立て続けに起こってるな……なんかドッと疲れた。