軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

151 39階層

「まあ、これで迷宮内の移動も楽になりそうだね」

って感じにクマールの成長を実感しつつその日は過ぎて行ったのだった……。

そうして野営を終えて俺達は39階層に足を踏み入れる。

「おや? ここは……」

べったりとしている壁やオレンジ色の地面にルナスは小首を傾げる。

「ヌマー」

クマールは匂いを嗅いで目をキラキラさせているな。

「随分と甘い匂いがするのだな」

「ああ、この階層は前に通ったジャングル地帯の蜂の巣と近い、ハイロイヤルビーというビー系の上位……雑食の危険な魔物の生息する階層で、ここで得られるハチミツはジャングルビーのハチミツよりもより上の代物だ」

「ヌマー」

ジュルッとクマールが涎を垂らしている。

ジャングルビーの時に手に入れたハチミツをクマールは凄く喜んでいたもんな。

もっと凄いハチミツと聞いたら涎が出るのもしょうが無い。

「ほう……」

「依頼とかにもこの階層でのハチミツ採取ってのもある。完全に高級食材って扱いだ。危険度も当然高くて下手にここまで採取に来て逆に魔物の餌になる上級冒険者もいるって話もある」

「ドラゴンが闊歩する階層を抜けてきてここでやられるってのも悔しいだろうね」

確かに……。

「問題として注意しないといけないのは甘い香りに誘惑効果もあって、ちゃんと対策して行かないと容易くおだぶつって感じだな」

「ヌマー……」

「クマールは素で誘惑されてるような顔をしているぞ」

「否定できないな。クマール、しっかりするんだぞ」

「ヌマ!」

はい! 喜んでハチミツを頂きます! 飲んでも飲まれません! って意思を伝えてくるけどちょっとずれてる。

「大丈夫か? ちょっと不安だけど……」

「どちらにしても我らは進むだけだぞ」

「そもそもだよ。リエルとクマールは戦闘中は誘惑なんて受けないよ。だってゾンビだし」

アンデッドってあまり効果的な状態異常って無いのは間違いは無い。

そもそも無敵ゾンビ状態な訳だしな。

「私の勇者の怒りも同様だぞ! 誘惑など効果は無い!」

まあ、仲間が死んで激昂する勇者に誘惑とか効いたら何かの冗談に見えるよな。

勇者の怒りは状態異常に強い耐性を持つって……前にルナスとそう言った話をした。

そう考えると……。

「となると、要注意なのはシュタインだけか」

「そこは僕自身はプリーストでもあるから状態異常はできる限り解除出来る様に務めるよ。最悪リエルとクマールを盾にすれば良いだけだし」

色々と指摘したいけど陣形的な意味でもシュタインは後列なんだから当然か。

クマールも大きくなったし、耐えるって事もそろそろ出来る頃合いだ。

「ヌマ!」

涎を垂らして目を輝かせるクマールは大きくなっても純粋さを損なって居ないのを感じさせる。

「良いハチミツを後で確保してやるからな」

「ヌマー」

「では出発だ」

って事で俺達は39階層を進んで行く。

この階層で出てくる魔物はロイヤルビーラーヴァという……人間サイズの大きな芋虫だ。

飛びかかって噛みついてくるし粘性の高い粘液で動きを鈍らせようとしてくる。

それ以外だとハイロイヤルビーという……ハチと人間の女性を混ぜた様な昆虫人と形容出来る魔物が出てくる。

「ギギ……」

知能はあるし、会話などが出来た例があるのだけど基本的に攻撃的で友好的な事はまず無い。

ちなみにハニーサポートはこの階層にもいるらしいのだが……四方八方蜂の巣であるこの階層ではタダの蜜泥棒と成り果てていて、ハニーシーフって名前に変わっている。

「この先に……言うまでも無く蜂の巣だから数が多いな。6体でこのまま進んだ先に集まってる」

「早速仕留めさせてもらおうではないか。リエル、クマール」

「はいはい」

「ヌマー」

俺とクマールが死んだフリを行い、ルナスが先に進み、ロイヤルビーラーヴァとハイロイヤルビー目掛けてウインドカッターを唱える。

「ギッギーー!?」

「ギギ!?」

巨大な風の刃が幾重にも放たれて遭遇した魔物達が切り刻まれて速攻で絶命した。

「ふむ……歯ごたえが無いな。36階の魔物の方がまだ一匹一匹がタフだぞ」

「ここは状態異常と数による暴力で厄介な階層だからな。把握出来る範囲で、とんでもない数が居るんだ」

「ドラゴンほど一匹一匹は強く無いけど数の恐ろしさを教えてくれる階層って事だね」

「ふ……どれだけ来ようとも私の前には無力だぞ。ただ問題として……」

ルナスがハイロイヤルビーの切り刻まれた死体を確認する。

「随分と整った者達であるな。言っては何だが少々心苦しくなる」

そう……ハイロイヤルビーの外見はハチと人間の女性を合わせた……ハチの幼女みたいな姿をして居る。

女の子を惨殺するような気持ちになるので魔物とは言えやりづらいのは理解出来る。

「もちろん手加減などはする気は無いがな」

「ハイロイヤルビーの生け捕りとか狙う冒険者っているよね。凄く危険だし、下手をすると大変な事になるけど」

曲がりなりにも39階層に生息する上位の魔物……見た目は美幼女だとしても普通の人からすると驚異的な魔物であるのは変わらない。

ハーピーとかも愛玩用とか大きな声で言えないような卑猥な話に使われたりすると聞く。

そう言った所からの要望なんかも裏ではあるそうだ。

まあ……この階層に来れる冒険者なんてそうそう居ないんだけどさ。

生け捕りなんてもっと難しいだろう。

ともかく、切り刻まれた美幼女の亡骸と思うと絵面は悪い。

「リエル、君はこのハイロイヤルビー達はどう思うのかね?」

「ルナスと同じく顔は確かに良いなーとは思って居るけど……」

「うむ……リエルの好みは私よりもこう言った年下という事かね?」

なんでここでロイヤルビーから俺の好みの年齢とかを質問してくるのか理解に苦しむ。

「俺の好みとか気にしなくて良いから」

「少年。これはどう判断すべきかね?」

「どうだろうねー世間一般の男の感性だと美しい少女には弱いと思うけどね。あ、ちなみに僕は興味無いなー」

「少年の好みはどうでも良いが、リエルはどうなのだ? 私がロイヤルビーコスチュームをしたら喜んでくれるか?」

どうしてこうもルナスって色々と残念な事に興味を持ってアクションしようとしてくるんだろうな。

「ヌマー」

クンクンとクマールが匂いを嗅ぎつつ周囲に把握を伸ばしているのが分かる。

まだ俺より劣るけど把握の習熟が大分出来ているな。

「ヌマー」

「そっちにハチミツの気配がするな」

「ヌマ!」

クマールは良いな。ハチミツの方に興味があって。

ルナス達みたいな余計な事を聞いてこないだけ良いぞ。

「無視されてしまったぞ。リエル! どうなのだ」

「激しくどうでも良いから進んで行こう」

「ううむ……私のコスチューム案がどうでも良いと言われてしまったぞ」

「悪ふざけが過ぎたみたいだね。少し真面目にやっていこうか」

って訳で俺達はそのまま進んで行く。

「この階層の主は何なのだ?」

「そりゃもちろんハイロイヤルビーの親玉、ハイロイヤルビークイーン。なんか資料とか確認すると親玉って感じで……外見に関して熱意ある情報が散見してるよ。魅了攻撃を受けて電撃が走ったとかな」

何を書いているんだ? って閲覧した資料には記されていた。

「追跡調査した資料とかもあってハイロイヤルビークイーンは倒されても次代のクイーンが別の所でハイロイヤルビーから成長して新しい女王を務めるって話らしい」