軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

45 なんか光ってるところ

咄嗟に巨人の足元めがけて爆炎魔法を放つと、巨人の両脚は木っ端みじんに砕け散り、そのままどうと横倒しになった、その傍らで、二体目と三体目の巨人がゆっくりと起き上がりかけている。見ればこちらも頭部と四肢が綺麗に再生されていた。

こうなっては、もはや疑いようもない。リリアナの言う「なんか光っているところ」は額の宝石ではなかったのである。

では本物の再生核は一体どこにあるのだろう。

クローディアは巨人の攻撃を躱しながら、改めてその巨体を上から下まで観察したが、やはり額の宝石以外に光っているところは見当たらなかった。

(……もしかして再生核は一体に一つあるんじゃなくて、一つの再生核を十三体の巨人たちが共有してるんじゃないかしら)

ふと、そんな考えが脳裏に浮かぶ。

リリアナがあの短時間で全て倒し終えたことからしても、その可能性は決して低くはないだろう。

おそらくあの巨人たちは十三体でひとつの存在なのだ。クローディアが一体目を倒したあと、残る十二体が続々と集まってきたのも、巨人たちがクローディアを「自分」に害をなす存在と認識したからだと考えれば納得がいく。

(……そういえば、最初の一体に額の宝石以外の『光ってるところ』が見当たらなかったもんだから、他のも全部そうだと思い込んで、一体一体ちゃんと見てなかった気がするわ)

そういうことなら、十三体のどこかある本物の再生核を見つけ出せばいいだけの話である。

クローディアは頭を切り替えて、額の宝石以外の「なんか光ってるところ」を見つけ出すことに注力した。

次から次へと再生する巨人たちの攻撃を身体強化でかわしつつ、一体一体丁寧に観察していくことしばし。

(ああ、この巨人は違うわね)

拳をよけ、踏みつぶそうとする足を躱し。

(これも違う)

巨大な胸を蹴って宙を舞い。

(これも違う……これも、これも違う)

叩き潰そうとする両掌から間一髪抜け出して。

(これも……額の宝石以外に光ってるとこなんてどこにもないわ)

探しても探しても見つからない。そうこうしているうちに、次第に頭が重くなってきた。目がかすみ、視界がぼやける。胸の奥からむかむかと吐き気もこみ上げてくる。魔法実践の教科書にも載っていた、それは紛れもなく魔力切れの初期症状だった。

(ああもう、まずいわね、これは)

爆炎魔法は控えているが、魔力消費の大きい身体強化をずっと全開で使い続けているのだから当然だ。このままでは再生核を見つけたところで、壊す魔力がなくなってしまう。

気持ちは焦るが、再生核らしきものはやはり一向に見当たらない。

ルーシーにもらったポーションは、先ほどの衝撃で落としてしまった。

八方ふさがりの状況下、前世だったら日ごろ信じてもいない神仏にすがりたくなるところだが、あいにくここは異世界で、神も仏も存在しない。

――いや、神はいる。おぞましい邪神と、光の女神が。

そこでクローディアは息をのんだ。

光の女神。

女神の加護。

(ああ、そういう……)

分かってしまえば、なんのことはない。己の馬鹿さ加減に、笑い出したいほどだった。

――別に、なんか光ってるところがあったから、そこを狙ってみただけよ。

いとも無邪気なリリアナの科白。

この世界から愛されている、生まれついての主人公。

そうだ。おそらく再生核が実際に光っているわけではないのだろう。

ただ「光の女神の加護を受けた勇者アスラン」の直系の子孫であるリリアナの目には、邪神の眷属である巨人たちの弱点が――狙うべき的が、「なんか光って」見えたのだ。

言ってしまえばあの巨人たちは、この世界の主人公であるリリアナ王女――桁外れの魔力と王家の血筋、双方を併せ持つリリアナ・エイルズワースによって倒されるべき怪物であり、彼女のために用意された極上の噛ませ犬だったというわけだ。

ようやく絡繰りが分かったものの、「桁外れの魔力」があるだけのクローディアには、それを生かすすべがない。

(できればここで仕留めてしまいたかったけど、そういうことなら仕方ないわね……)

足止めをして時間を稼ぐ役割はもう十分に果たしたことだし、ここはいったん離脱して、態勢を立て直すべきだろう。

とはいえこのまままっすぐ帰還しようものなら、巨人たちを学院まで誘導する羽目になりかねない。学院に帰り着きさえすれば教師たちがなんとかしてくれると思いたいのは山々だが、それはさすがに楽観が過ぎる。

(ちょっと魔力がきついけど、帰る前になんとかして、あいつらを撒いてしまわないと。そのためには、まずどっちに――)

などと考えていたのがまずかったのか、あるいは魔力切れによる不調のせいか、斜め後ろから襲ってきた巨大な足に気づくのが、ほんの一瞬遅かった。とっさに転がって逃れたものの、二撃目を躱す余裕がない。

思わず死を覚悟した、まさにそのとき。銀髪の青年がクローディアを守るように立ちはだかった。

見間違えようもない、あれは――。

「……ユージィン殿下?」

光の女神の加護を受けた勇者アスランの直系の子孫、ユージィン・エイルズワースがそこにいた。