軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

97話 ホイールローダー

俺達は、ベロニカ峡谷という峠へ来ている。

その峠を走る街道が長さ100mに渡って崩落、それをなんとかしなくてはならない。

この国の国王や王妃様に、俺の重機のパワーを見込まれてしまった。

貴族達も、人員を集めて応援に駆けつけるようだが――王女の話では3週間は掛かる模様。

とてもじゃないが、待ってはいられない。俺達だけでなんとかする事にした。

そのためには、まずキャンプ地を作らなければならない。

――というわけで、油圧ブレーカーに換装したコ○ツさんで、岩の壁を崩しスペースを作る。

とりあえずは家と小屋を置くスペースがあればいい。今は馬車が2台すれ違うのが精一杯のスペースしかないからな。

そしてスペースを作った後、家と小屋を設置して、とりあえずの本拠地は出来た。

次に重機を動かすためには、大量のバイオディーゼル燃料が必要となる。

コ○ツさんの燃料タンクは400Lだ――その燃料を合成するための小屋を作ろう。だが、組み立てキットの小屋を建てている時間はない。

大型のテントで誤魔化そう――というわけで大型のテントをシャングリ・ラで検索する。

中心に柱を立てて、円錐状に屋根が広がる、サーカスのテントみたいな形の物が売っている。

大型なので、当然値段も高い――6万5千円だ。

だが、これだけ大型の物なら、緊急避難用のテントとしても十分に使えるな。

「ポチッとな」

ドシャッ! と部材が落ちてくる。こいつも組み立て式だが、組み立てに時間は掛からないだろう。

下に床となる円形のビニールシートを敷き、真ん中には屋根を乗せるための柱を立てる。

こいつを固定するために地面にペグを打ち込むのだが、地面が岩なので簡単ではない。

発電機とハンマードリルをアイテムBOXから出し、穴を開けてからペグを固定する――全く大仕事だ。

柱とペグによって屋根が固定されているので、壁がなくても自立するわけだ。

ハンマードリルなんて、もう使わないかな? ――と思っていたが、意外な出番があって自分でも驚く。

最後に壁となるビニールシートを屋根から吊り下げれば、テントは完成。

本当に子供の頃に見たサーカスのテントみたいだな。

そういえば、最近はサーカスって言葉をとんと聞かないような気がする。

「そのような、見たこともない魔道具が次々と――其方は一体何者なのじゃ?」

「辺境の商人兼魔導師でございますよ。それ以上でも、それ以下でもございません」

俺の返答に困惑する王女を横目に、皆がテントの中に滑りこんでくる。

「わぁ~ひろ~い!」

アネモネと一緒にやって来たベルも早速、隅々までクンカクンカしている。

「おおっ! これは、なんという立派な天幕! 是非、売ってほしいのだが――」

商人達が売買の交渉にやって来るのだが、 勿論(もちろん) これは非売品。

「旦那、ここで寝泊まりするのかい?」

「いや、ここでは重要な作業をしてもらう。俺の召喚獣が食べる油の生成だ。子爵領の普請でもやっただろ?」

「魔道具を使って、油を分けるやつにゃ?」

「そのとおり」

シャングリ・ラから安いプラ製の浴槽と、一斗缶入りのキャノーラ油を30缶購入。

一斗缶だから18L×30個で540L、プラ浴槽には250L入るから、2つがほぼ満杯になる。

値段は1缶3600円だから、合計で10万8千円。1日重機を動かすと、このぐらいの燃料代が掛かる。まぁ必要経費だ。ついでに新しい 柄杓(ひしゃく) も2つ買うか。

プラ容器にキャノーラ油を満杯にして、薬品を加えて前処理を行う。

後は、こいつを『不』型の魔道具へ通せばいい。カールドンさんから、同じ物をもらったので、燃料の生成速度は2倍になった。

「ここにある油を、柄杓で魔道具のてっぺんに入れ、左側の油を取る――以前と同じだ。油を混ぜないでくれよ。召喚獣が腹を壊してしまう」

「解ってるよ、旦那」

「もう、こんな場所じゃ何もやる事がないから、これをやるしかないにゃ」

ミャレーの言うとおりだ。左右は崖。どこへも行けない。

獣人の脚なら峠を駆け下りて、下の森へ狩りに行くことも可能だろうが、面倒らしい。

「旦那のアイテムBOXに入っている足場を使って、この崖の上に登れないかい?」

「まぁ無理だろう。ざっとみても、ウチにあった崖の数倍の高さがある」

それに、ここの崖は斜めになっているからな。足場を置いただけでは登れない。

「うにゃー」

ぼやくミャレーの後ろから――いつの間にか三毛の女がテントの中へ入ってきて、俺に抱きついた。そして大きな胸を俺の腕に押し付ける。

「ねぇ、旦那ぁ――獣人が2人もいるんだから、もう1人ぐらい雇わない?」

「妻も子供もいるからなぁ……ちょっと難しいな」

「ふぎゃー! ちょっと油断してると――このミケ!」

「ザケンなぁ! 変な臭いつけんじゃねぇ!」

「あんたのくっさい臭いの方が、酷いじゃないのさ!」

獣人の女達が睨みあって一触即発状態だ。

「こらこら止めろ、喧嘩すんな。これ以上、増やすなって言われてるからな」

「もう! そんなにあっさり断らなくてもいいじゃんか!」

2人も3人も、同時にあの日になられたんじゃ、身体が保たないからな。

三毛の女が離れると、ミャレーとニャメナが俺に身体をすり寄せて、匂いを上書きしようとしている。

「ゴブリンの時にも似たような奴がいたけど、全くもう油断も隙もあったもんじゃないにゃ」

「こういうものは、早い者勝ちなんでぇ! しっしっ!」

やって来た奴を次から次へと入れて、ハーレムにしてしまっては、アネモネやプリムラから刺されるかもしれん。

特に怖いのがプリムラだ。ああいう真面目なタイプは思いつめると何をするか解らん。

実際に実家を捨てて、俺の所へ来てしまったのだから。

「くっそ~クロ助、他にも色目を使ってるやつがいるぞ」

「本当にもう、冗談じゃないにゃ」

「いやニャメナ、男達の視線は、どう見てもお前を見ているぞ?」

「げっ! 冗談じゃねぇ!」

「寝るときは、結界を使った小屋の中で寝た方が得策だな」

「旦那、そうするよ……」

それはさておき、重機を使うために、油圧ブレーカーから普通のバケットへの交換作業を手伝ってもらう。

もういっその事、コ○ツさんをもう一台買って、ブレーカー用のバケットを装着した二台体制にするか?

今度、油圧ブレーカーを使う事があったら考えよう。

「ありがとうな」

「それじゃ、ウチらは油を作るにゃ」

「頼む」

獣人達に油の生成を頼んで、俺はパンを齧りながら重機で試し運転をしてみよう。

他にも、腹が減った奴にはパンを配る。メリッサも、ゴーレムで魔力を使い果たしたようなので、今日は無理だな。

アネモネとプリムラには、夕飯の準備を始めてもらうために、道具を家の前に用意した。

「ケンイチ、少し多めに出してほしいのですが……」

「また料理を売るのか?」

まぁ、プリムラもここじゃ、やる事がないからな。それに目の前には客がいる。

それじゃ、以前使ったワインサーバーとワインも大量に用意しよう。ゴミはまとめてもらって、後でゴミ箱へ放り込めばいい。

「それじゃ肉を多めにするか?」

「はい」

アイテムBOXからレッサードラゴンの死体を取り出す。

「「「おおおおっ!? ドラゴン!?」」」

商人達が驚いてやって来る。

「そ、それも売り物ですか?」

「いや、こいつの肉を使って、そこのプリムラが美味しい料理を作ってくれる。良かったら食ってくれ。ワインもあるぞ」

「なんと、こんな所で、温かい料理とは!」

俺とプリムラで硬い鱗を剥ぎ、肉の塊を切り出す。昨日のように、一回煮て灰汁の出るゆで汁を捨てた方がいいだろう。

商人達が鱗を売ってほしいというので、売ってやる。プリムラに相場を聞くと、一枚小四角銀貨1枚(5000円)だ。

硬くて魔法も弾くということで、それに 肖(あやか) って――お守りとしても人気があるらしい

「この肉で餃子を食ってみたいな」

「解りました、作ってみましょう」

挽き肉用に、ミンサーも出して、餃子の皮も大量にシャングリ・ラから購入。

肉に脂身が全くないので、バターやラードの投入はどうだろうか?

「アネモネ、作り方を覚えているか?」

「うん、大丈夫だよ」

ミンサーのセッティングをしていると、早速客がやって来た。

「酒があるんだって?」

「あたい達にもおくれよ」

様々な毛色をした獣人達が6人程。その中には、さっきの三毛の女もいる。

男達は、ニャメナの方をチラチラと見ているが、ニャメナは露骨に嫌そうな顔をして、拒否のポーズだ。

「無料の炊き出しじゃないから、金はもらうぞ」

だが、酒を飲もうとしている獣人に、商人達から物言いがついた。

「お前たち、護衛の仕事を忘れるんじゃないぞ!」

「わーってるよ、そんな事」

「こんな所に魔物がいるかよ。いるのは、あいつらだけだろ?」

黒白の男の獣人が指差した先には、黒いカラスのような鳥がいる。だが尻尾が長く、カラスとはシルエットが違うし、カーカーとも鳴かない。

「あれは、なんて鳥だ?」

「旦那、あれは死告鳥だよ」

死を告げる鳥――死肉を漁る、スカベンジャーらしい。つまり、あの鳥がいる所には死体があるって事のようだ。

「あれは狩らないのか?」

「冗談!」

誰も手を出さない。皆が口を揃えて言うのだが、「不味い」らしい。

――とはいえ、誰も食ったことがなく、噂を又聞きしているだけのようだが……。

元世界でも、カラスは不味いと聞かされて育ったのだが、食って食えない事もないらしいからな。

多分、あれもそうなのかもしれないが、美味い肉があるんだ、無理をして食うこともないだろう。

王女のために、テーブルと椅子も出す。一緒にお茶のセットと、お茶菓子も用意しよう。

「お湯は、アネモネに沸かしてもらうか、コンロをご用意致しますので」

「うむ、至れり尽くせりじゃな。こんな僻地で茶が飲めるなど、普通はありえん」

「しかし、王女殿下がお出かけとなれば、荷物を積んだ馬車がずらりと――」

「貴族にはそういう事をする連中もおるようじゃが、そんな無駄な事をするより、金の使うところは他にも山ほどある」

なんと、意外と倹約家なのか――いや、使い所を心得ていると言ったほうがいいのだろうか。

料理と商売は、プリムラとアネモネに任せて、俺は重機の運転をしなくては。

運転席に乗り込むと、コ○ツさんが黒い煙をもうもうと吐き出して、高くバケットを振り上げる。

そして高い所から土砂を崩して――掬い、崖の下へ落とす。

「う~ん、効率悪い……」

高い所から崩すのは、バックホーでもいいが、大量の土砂を一気に掬い上げるには、別の重機が必要だ。

つまり、ホイールローダー ――。

まぁ金ならある。王妃様から軍資金代わりに貰った机1個で重機1台ぐらい余裕で買える。

バックホーと同じ黄色のコ○ツにしようと思ったが、俺の家族に伝える時に、色や名前が違った方が良いか……。

――となると、ヒ○チ建機のオレンジ色のホイールローダーが目に止まった。

値段は中古で1000万円。かなりデカく見えるんだが、これってアイテムBOXに入るか?

これでも中型らしい。まぁ、ダメならバケットを外せば、なんとかなるか。

黄色い車体のコ○ツさんをアイテムBOXへ収納すると、呼び出しの呪文を唱えた。

「よし! やってこいこい、ヒ○チさん! ZW160 175ps! ポチッとな!」

黒くてデカいタイヤがバウンドして、オレンジ色の車体が落ちてきた。中古だが、まだ新しい。

でけぇぇぇ! マジでアイテムBOXに入るかな? こりゃ、ちょっと心配。

しかも、マジでデカいタイヤだな。人間の背丈ぐらいある。

こんなの空気を入れられるかな? しかも重機のタイヤって、もの凄い空気圧が高かったような……。

タイヤが破裂して、死人が出たってニュースもよく見たし。

「「「おおおお~っ!」」」

商人達から驚きの声が上がる。

「なんじゃこれは?! 別の召喚獣かぇ?」

「そうです。こいつはあの巨大な爪が付いた箱で沢山の土砂を掬いあげて運ぶ事が出来ます」

この世界にはオレンジも橙もないので、重機を見上げている王女に車体の色を聞くと――炎色だという。

なるほど、炎か……ピンとこないな。

「これは一体なんなの?! これが魔法だというの?!」

メリッサもオレンジ色の車体を見上げている

「メリッサよ、この者は 独自(ユニーク) 魔法使いじゃ。我々の知っている魔法とは全く違う物を操るのじゃ」

「これが 独自(ユニーク) 魔法……まったく、デタラメだわ!」

デタラメと言われても――俺も、なんでこんな力を使えるか解らんのですよ。

それはさておき、とりあえず乗ってみよう。

タラップに脚を掛け、ガラスのドアを開けると、運転席へ乗り込む。

バックホーと違って、ハンドルがついていて車と同じだ。

アクセルとブレーキも車と同じだが、ブレーキペダルが2つついている。

右足でも左足でも踏めるようになっているのだろうか? 前進後退は左のコラムレバーで行うらしい。

だが正直、ホイールローダーなんて運転した事がない。

「しかし――こんな狭い極限状態で初運転かよ。平地で練習したかった……」

とりあえず、キーをひねってエンジン始動。座席の後ろもガラスになっており、車体後部にあるエンジンから振動と共に、黒い煙が吹き出したのが見える。

「燃料はOKだな……オートマだと思うから、アクセル踏めば動くと思うが……」

パーキングブレーキを解除して――少しアクセルを踏むと前進したので、慌ててブレーキを踏む。

そして、右脇の2本のレバーで、バケットをコントロールするらしい。

「ひょえぇぇ、落ち着けぇ落ち着け、俺――ひっひっふー! 落ちたら、おしまいだぞ……」

前進して、ちょっと土砂を掬い、そしてバックして左にハンドルを切ると崖下へバケットをひっくり返す。

操作を1つ1つ確認しながら慣れるまでひたすら、それを繰り返す。シャツは汗でびっしょり。

魔物と戦うのとは、全く違うストレスがある。こんなストレスをかけて、禿げたらどうする?

某漫画で金のために1本橋を渡っていた連中は、こんな心境だったのかもしれない。

車体後部は全く見えないが、バックモニターが装備されていて映像が出るようになっている。

こいつは便利だな。結構新しい機種のようだから、色々と機能が揃っているようだ。

それにしても……くそぉ――何故こんなことに、俺のスローライフ計画はどこへいったんだ。

美人の奥さんと可愛い子ども、もふもふの獣人達と森猫、それらとキャッキャウフフする人生から確実に遠ざかっている。

やはり王侯貴族と関わるとロクなことがない。

それでも、1時間程運転していると、かなり慣れてきた。

なんとかなりそうだ。だが、めちゃくちゃ神経を使って、ヘトヘトになった。

日も傾いてきたので、今日の作業は終了。明日から本格的な作業に入る。とりあえず飯を食おう。

ホイールローダーから降りると、アイテムBOXへ収納してみる。こんなデカいのがマジで入るのか?

「ホイールローダー収納!」

オレンジ色の巨大な車体が、吸い込まれるように消えた。

「やった! よかったぁ!」

そのまま、ふらふらと歩いて、獣人達が油の処理をしているテントへ倒れ込んだ。

「旦那、どうしたんだい?」

「どうしたにゃ?」

「つ、疲れた……」

獣人達が作業を中断して駆け寄ってきてくれた。

「俺が膝枕してやるよ」

「それじゃウチは、毛布代わりだにゃ」

そう言って、ミャレーが俺に覆いかぶさってきた。

「ああ~、もふもふじゃ~」

腹の上にいるミャレーを撫でる。

しかし、ちょっと身体を起こして、アイテムBOXから缶コーヒーを取り出すと、一気飲み。

疲れた時は、これが効く。

「ふうぅぅ~」

「旦那、随分と疲れているようだけど、あの新しい召喚獣のせいかい?」

「ああ、あれを操るのは初めてなんだよ。それで、一歩間違うと谷底だろ? こんな所で落ちたら、間違いなく死ぬからな」

「大変そうだにゃ」

そこへ、アネモネがやって来た。

「ケンイチ、夕食食べる?」

「ああ、食べる食べる。腹減ったわ」

「俺達はここで食うよ」「そうだにゃ」

テーブルへ行くと、すでに王女が餃子を頬張っていた。

「はふはふ――この料理も中々美味いの! 城で出てくるパイ包み料理に似ているが、美味さを凝縮した感じじゃの!」

王女は、醤油とかラー油を使って餃子を食べているのだが、発酵食品も平気のようだ。

「あふ――中から美味しい汁が……」

メリッサも美味しそうに食べているので、味に問題はない模様。

俺も食ってみるか――中々美味いな。脂身がないパサパサした肉だから、脂を足して正解だった。

ラードとバターバージョンがあるが、どちらもうまい。もしかしたら他の肉との合い挽きもいけるかもな。

バターは塩気があるので、そのまま食べても美味いし、醤油に合わせても美味い。

そりゃバター醤油味とか、あるぐらいだからな、相性はいいだろう。

「プリムラ! 君は食べなくていいのか?」

「お客様がいるので! 後で食べます」

この場に踏みとどまっている商人達が、プリムラの作ったレッサードラゴンスープを食べるために並んでいる。

「おおぅ! 美味い。こんな場所で、温かい料理を食べられるとは!」

「全くですな。しかも、レッサードラゴンの肉とは……孫に自慢ができますわい」

「このワインも、絶品ですぞ! こんな所で出して良い物ではない!」

ワインも売ってくれと言われてるみたいだが、面倒なのでパス。

樽のワインがシャングリ・ラに売っていればいいのだが、探しても見当たらない。

「しかし、商人さん達は、ここにいつまで踏みとどまるんだい?」

まぁ、俺も一応商人なんだが。

「我々は、王女殿下と、ここにいる大魔導師様達に賭けてみようかと思っております」

「俺の妻も商人だが、商売を博打にするのは厳禁だと言ってるぞ?」

「確かにそうですが――男なれば勝負しなければならぬ時もあります故」

それを聞いたプリムラは渋い顔をしている。彼女ならこういう場合、どうするだろうか?

すぐに引き返して損切り、別の堅実な商売で穴埋め――という感じになるのかな?

「ほんに、其方の妻は商売が好きそうじゃの」

「ええ――客がいて、大きな利益を生み出せるのを確信すれば、自分の持ち物まで売ってしまいますからね」

「ははは……しかしのう、商売のためなら、自分の親兄弟でも売るというのが商人じゃが?」

王女の言葉に、プリムラが反応した。

「それはございません。マロウ商会、金儲けの秘訣――身内は裏切るべからず」

出たぞ、商売の秘訣。全部でいくつぐらいあるんだろうか?

「ははは」

王女は笑って餃子を頬張っている。

その後、暗くなってから女子は小屋で風呂に入った。

アイテムBOXの中には、まだ川の水があるから、後2~3回は風呂に入れるかな。

俺は、お湯で身体を拭いて終了だ。別に風呂に入らんでも死にはせん。

だが、寝ようとすると、商人達の護衛をしている獣人の女達が3人やって来た。

「ちょっと、旦那。頼みがあるんだけど」

交渉相手は、あの三毛の女だ。

「なんだ? くんずほぐれつの乱交しようぜ! っていうのは、断るぞ」

「バカ、そんなんじゃないよ! それもいいけどさ――旦那のところの、あの女が変な臭いをさせてるんで、周りの男どもが殺気立って危なくて仕方ねぇ。責任取っておくれよ」

「ああ――なるほどな。あそこの家には王女殿下が寝ているから結界が張ってある。家の前で寝れば安全だ。俺が交渉してやるよ」

「ありがと旦那、恩にきるよ」

緊急時に備えて結界の中に入れる魔石を渡されているので、それを使う。

王女に確認すると、構わない――という事だったので、獣人の女達を結界の中に入れる事にした。

まぁ、仕方ないな。