軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

82話 王女様を接待

やっと王都に着いて、お城にも入る事が出来たのだが、わがままな王女様に押しかけられてしまった。

何が楽しゅうてと思うのだが――身分上仕方ないのか、面白い事や娯楽に飢えているようだ。

家の設置が完了したので、続いてニャメナの小屋を出す。

ミャレーのベッドも出してやると、早速獣人2人でセットアップを始めた。

いつも言い争っている彼女達だが、ここでは完全なアウェイだ。こういう時には同族の結束がある。

いがみ合っている部族間でも、それを超える危機が襲えば直ちに結束すると言う。

次にトイレの設置だ。どのぐらいの長期戦になるか解らん。

ユ○ボで穴を掘って、その上にトイレを設置する。

「ユ○ボ召喚!」

座席に座りエンジン始動。移動して穴を堀り始めたら、座席に王女が乗ってきた。

花のような匂いと共に、目の前に金髪が 煌(きら) めき、触れた肌には温かい王女の体温が伝わってくる。

「なんじゃこれは!」

「ちょっと、殿下危ないですから!」

稼働中の重機へ近づくのは非常に危険だ。

「これが、報告にあった、鉄の召喚獣じゃの!」

慌てて、王女の護衛がやって来たのだが、咆哮を上げるユ○ボに、ビビって近づけないでいる。

鋼鉄のバケットが、土を深く掬う――ここを去る時に埋めればいいからな。そのため、ちょっと深めに穴を掘る事にする。

「なるほどのう! この鉄の魔獣で、ユーパトリウム領の普請を終わらせたのか」

「ちょっと、殿下。降りていただけませんか?」

「もう、終わりか?」

「はい……」

降りようとしたのだが、王女が俺の首に手を回し離れない。

「殿下、お戯れを」

彼女が離れないので、やむを得ず文字通りのお姫様抱っこして重機を降りたのだが――当然、護衛に囲まれた。

「貴様! 殿下のお身体に気安く触れるなどと、なんと無礼な!」

騎士が金色に輝く剣に手を掛けたので、アイテムBOXからポリカーボネート製の大盾を取り出す。

次の瞬間、透明な盾に騎士の剣が弾かれた。くそ、本当に抜きやがって。

俺がアイテムBOXから、クロスボウを取り出すと、金髪の騎士は後ろに飛んで距離を取った。

しかし、アストランティアにいた、へなちょこ騎士とは動きが雲泥の差だ。

さすがに王女の護衛ともなると実力者が選ばれているようである。

「むー!」

アネモネの胸の前に青い光が集まっていき、溢れ出た光で周囲を青く染める。

「ちょ、ちょっとアネモネ、待て待て!」

「 憤怒の炎(ファイヤーボール) !」

魔法の炎が騎士に届く前に、女騎士が間に割り込んだ。

「 聖なる盾(プロテクション) !」

見えない透明な盾が、アネモネの放った魔法を遮ると炎は霧散した。これは 至高の障壁(ハイプロテクション) の下位互換のような魔法だろう。

簡単な防御なら、 聖なる盾(プロテクション) でも十分だな。今度、魔導書を探してみよう。

「おおっ!」

「むー!」

アネモネが次弾の装填に入った。

「おい、アネモネ! こら待て!」

「双方! 剣を収めるがよい!」

騎士が剣を収めたので、アネモネも次の魔法を撃つのを止めたようだ。

「其方、その若さで魔導師だったのか? 名はなんと申す?」

王女はアネモネに興味を示したようだ。

「アネモネ……」

「アネモネと申すのか。妾はリリスじゃ。名前で呼ぶがよいぞ」

「王女殿下、アネモネは私の冒険者家族の大魔導師でございます」

「何? 大魔導師とな? 他にはどんな魔法が使えるのじゃ?」

「…… 爆裂魔法(エクスプロージョン) とか 回復(ヒール) とか……」

アネモネは、そう返答したのだが――さすがに、 至高の障壁(ハイプロテクション) は隠したようだ。使える者があまりいない、高位魔法らしいからな。

「何? 爆裂魔法(エクスプロージョン) とな? ははは! 聞いたな、ロウよ! 初弾が 憤怒の炎(ファイヤーボール) ではなくて 爆裂魔法(エクスプロージョン) であったら、其方達は2階級特進であったの!」

王女は意地悪そうな笑みを浮かべると、言葉を続けた。

「まぁ、これが実戦であれば、其方達は妾を守れなかった事になるな」

「くっ……」

膝をつく騎士は、凄く悔しそうな表情を浮かべている。

「護衛はロウを残して、皆下がれ! ロウ! 其方は――妾を守れなかった無能として、間抜け面を晒すがよい!」

「……王女殿下の御心のままに」

2人の騎士が、すごすごと奥へ消えていった。俺としては、この金髪の騎士より、女騎士の方に残ってほしかったところだが。

「王女殿下、お騒がせして申し訳ございません。これから、私達は食事の準備になるのですが……」

「なんじゃ、妾に馳走してはくれぬのか?」

「……庶民の食事を一緒に取られるおつもりで?」

「妾は構わぬぞ」

俺達に負けた騎士は、もう何も言ってこない。完全に王女の言うがまま――護衛の任務だけをこなす、人形と化している。

さて、料理は何にしようか。アネモネに聞いても「カレー!」という声しか聞こえてこない。

それにプリムラもカレーに賛成のようだ。獣人の2人とベルはいつの間にかいなくなってた。

どこへ行ったんだ? あまり、ウロウロすると 拙(まず) いような気がするが……。

それはさておき、カレーはどこで食わせても好評だし、王家の人間も食べた事がないだろう。

ここはやはり、異世界でも正義の地位が揺るぎないカレーで攻めるのが吉か。

アネモネとプリムラに手伝ってもらい、カレーの準備をする。

玉ねぎを大量に刻んで炒める。そのための肉や野菜も炒める。とりあえず、大量に野菜を入れて無水カレーにしてみるつもりだ。

元世界にいた時もたまに作っていたが、美味かったからな。

そして米も出して、ご飯も炊く。アイテムBOXへ入れておけば、炊きたてのまま保存できるので大量に炊く。

カレーの準備をしていると、王女が興味深そうに覗きこんでいる。こういう庶民の料理風景を直に見たことがないのかもしれない。

すると、物陰からベルが獲物を咥えてやって来た。鳩ぐらいの大きさの青い鳥だ。頭には縞模様の冠がついて伸びている。

「おおっ! ベル、早速獲物を獲ってきてくれたのか――って、これってお城で飼ってる鳥じゃないよな」

一応、王女に確認してみたが、お城の庭に住み着いている、普通の野鳥のようだ。

今日はカレーなので、鳥はアイテムBOXへ入れよう。ベルには猫缶を3つ開けてやる。

ベルが猫缶を食べ始めると、ミャレーとニャメナも帰ってきたが、彼女達の手にも同じ鳥が握られていた。

「お前等、弓もないのにどうやって」

彼女達の武器はアイテムBOXにしまったままだ。まさか武器を持って、お城の中をうろつかせるわけにもいくまい。

「くくり罠だよ」「そうだにゃ」

獣人ってのは、ガキの頃に罠作りをしこまれるという。子供で武器が扱えなくても、罠を作れれば獲物を捕らえる事が出来るからだ。

本当にサバイバルに特化した種族だよな。

「其方達はいつもこうやって、獲物を捕らえて暮らしておるのか?」

「その通りでございます。普段は森の中に住んでおりますので、獲物に困る事はございません」

「何? 森の中に……魔物は?」

「当然、おりますよ。その魔物も狩って、食料に致します」

「むう……」

なんだか、王女は感心しているようだ。

「ちょっと見てみますか?」

「何?」

俺は、アイテムBOXの中に入りっぱなしの洞窟蜘蛛のオスを取り出した。

王女の目の前に白い甲殻と毛に覆われた巨大な蜘蛛が現れた。

「おおっ! こ、これは!?」

「殿下、これは洞窟蜘蛛でございますね」

1人残った、ロウという騎士が獲物の名前を知っていたようだ。

「これがそうか! 実物を見るのは初めてだぞ! これから甲冑などが作られるというではないか」

「その通りでございます」

「よし! ケンイチ! この蜘蛛は王家で購入するぞ」

「真でございましょうか?」

「うむ!」

「実はこれはオスでございまして、更に巨大なメスもあるのでございますが……」

「なんじゃと!」

だが、飯の前なので、メスを出すのは止めた。食欲が無くなるからな。

蜘蛛の処遇は後日する事になって、カレーが出来上がった。

「いい匂いじゃ! これは香辛料のスープか?」

「その通りでございます」

「その白い粒は?」

「これは、穀物を炊いた物でございますが――王女殿下にはパンをご用意するつもりでありましたが……」

「妾もその白いのを食してみたい」

「かしこまりました」

さて、王族にお出しするのに、普通の皿は 拙(まず) いかもしれない。シャングリ・ラで高い皿を物色してみる。

俺でも名前を知っているロ○ヤルコペンハ○ゲン製の皿を見つけた。

皿の縁が金の文様で縁取られて、中心には植物の絵が描かれている。

一枚――何と40万円だ。この世界なら400~500万円、金貨25枚以上の価値があると思われる。

スプーンも同じメーカーの物にした、金のスプーンで柄が模様の入った陶器で出来ている凝った作り――1本で20万円だ。

「むっ、これは見事な皿とスプーン……」

「なかなかの逸品でございましょう?」

そう、言いながらロ○ヤルコペンハ○ゲンの皿に、ご飯を盛ってカレーを掛ける。

まぁ、ロ○ヤルコペンハ○ゲンだろうが、マ○センだろうが、魯山人作だろうが、道具は使わんと意味がないからな。

準備が出来て、テーブルについたのだが、ミャレーとニャメナは地面に胡座をかいて食べ始めている。

さすがに、王族と一緒の席に座る度胸はないらしい。別のテーブルを出してやろうと言ったのだが、要らないという。

「旦那、一緒の料理食べたってだけで、一生自慢が出来るぜ、はは」「その通りにゃ」

彼女達は別段気にもしていないようなので、俺達も食べる事にした。

王女がカレーをスプーンで掬い、後ろから隣にやってきた騎士に差し出した。とりあえず毒味だろう。

だが、食べた事もない、茶色いドロドロに、騎士の顔は恐怖にゆがんでいる。

大げさな――こんな事で動揺するなんて、王女の盾となる仕事が務まるのか?

「うう……パクっ――う、美味い?」

「そうか」

その言葉を聞いた王女も、スプーンに盛ったカレーを口に運んだ。

「むぐむぐ……こ、これは! 美味い! 見た目はアレだが、口にいれれば香辛料の香りが、実に食欲をそそる!」

「10種類以上の香辛料を巧みに組み合わせて、その味を作り出しているのでございます」

「これは素晴らしい、しかも美味い! 庶民は、いつもこんな料理を食べているのか?」

「いいえ、これは私の故郷の食べ物でして……この国の街々では、香辛料ギルドが幅を利かせており、値段が釣り上げられております故、庶民がこういった料理を食べるのは難しいのが現状でございます」

「む――確かに、そのような話は聞いた事があるが……」

「そこにいる獣人達などは、香辛料料理が大好きなのに、食べたくても食べられないのでございます」

「なるほどのう……して、この香辛料の組み合わせは教えてもらえぬのか?」

「私が創りだしたものではありませんので、組み合わせは秘匿されております。ですが――もしかしたら王宮の料理人であれば再現出来るやもしれません」

俺は、シャングリ・ラからS○Bの赤いカレー粉の缶を購入して、王女の前に差し出した。

スプーンで鉄の蓋を開けて中身を見せる――当然、中には黄金色のカレー粉が入っている。

「ほう! それは面白そうじゃの! いつも、出来ない料理はないと豪語している連中だ。これは愉快な光景が見られるやもしれん」

なにやら、王女がカレーを頬張りながら黒い笑みを浮かべている。本当に娯楽に飢えているんだろうなぁ……。

だが、カレーは気に入ったようである。えらい勢いでパクパクと食べている。アネモネも対抗するようにカレーを食べているのだが――。

「代わりじゃ!」

「え?!」

「ダメか?」

「いいえ、滅相も御座いません」

再び、高価な皿にご飯とカレーを盛る。

結局、この王女様2回おかわりをした。この細い体のどこに入っているんだ?

「ふう……これは、実に美味いの! 満足じゃ……」

王女はちょっと崩した座り方をして、すでに赤くなり始めた空を見上げている。

「王宮の料理人が、美味く再現できれば、お城の名物になるかもしれませんね」

「そのとおりじゃ! ケンイチ、この皿とスプーンも気に入った。購入するぞ?」

「え? 本当でございますか?」

「其方、商人だと申したではないか、売り物なのであろう?」

「 勿論(もちろん) で、ございます」

隣にいるプリムラに値付けをひそひそ話で尋ねる。

「皿は金貨20枚、スプーンは金貨10枚ぐらいだと思うんだが……」

「皿はそれで――スプーンは金貨20枚はいけるでしょう」

なるほど……この世界に、金と陶器を合わせた、こんな造りのスプーンはないようだ。

「では、王女殿下、皿とスプーン、それぞれ金貨20枚でお譲りいたします。それで数はいかほど……」

「中々、良心的じゃの。それでは――これをいれて10ずつ購入しよう」

王女が自分が使っている皿とスプーンを指さす。

え~金貨400枚だから、8000万円か……さすが王家、こんな買い物もポンと――財力が違う。

「誰かある!」

王女が声をあげると――どこからともなく、白いフリルと紺のワンピースのメイド服を着たメイドさん達が現れた。

う~む、さすが王宮に勤めているメイドさんだ、美人ばっかり。いつ何時、声が掛かってもいいように、見えない所に控えているんだな。

ここから王侯貴族のお手つきになって、愛人になったりするのもいるんだろうな。

俺は、シャングリ・ラに子爵領でゲットした金貨をチャージ。ロ○ヤルコペンハ○ゲンの皿と金のスプーンを10ずつ購入した。

しかし、マジでこんな感じでシャングリ・ラに金貨をチャージしまくり、王侯貴族達に商品を売りまくっていたら、市場から金貨が消えるな……。

テーブルの上に出現した皿とスプーンを、メイドさん達が配膳室に運ぶらしい。

「それから、この香辛料の粉を料理長のところへもっていけ。そして、妾の命令で同じ物を作れと――そう伝えるがよい」

「かしこまりました、姫様」

他のメイドさんより、ちょっと薹が立ったメガネを掛けたメイドさんが、カレー粉の赤い缶を運んでいった。

黒い髪を後頭部で纏めてうなじが見えている。う~ん、色っぽい……いいねぇ。

だが、メイドを見ている俺に、アネモネとプリムラの視線が突き刺さる。

「なるほどのう――商人というのも、あながち嘘ではないのだな。そのアイテムBOXの中に数々の逸品が収納されておるのだろう」

「その通りでございますが、中に何がはいっているかは、家人や妻でも知りません」

「恐れ多くも王女殿下、主人の言うとおりでございます」

「まさか、ご禁制の品とかは扱っておらぬだろうの?」

王女が、ジロリと俺の方を見るが――。

「商売の秘密でございますから、お答え出来ませんし、他人には確かめる術もございません」

「むう……アイテムBOXには生き物は入らぬと聞いたが?」

「その通りでございます」

「それでは、人間等を 拐(さら) うのは無理かの……」

王女が物騒な事を言い出したな。

「まぁ、確かに無理でございますが、裏ワザはございます」

「裏ワザとな?」

彼女の目が光る。

「魔法か薬物等で仮死状態になれば、アイテムBOXへ入れられると思います。試した事はございませんが……」

「ふむ――それでは料理に薬を混ぜて、妾を 拐(さら) う事も出来ると言うわけじゃな? しかし、妾を拐った後、どうやってこの城を抜ける?」

「この城壁を越えれば良いのですよ」

俺は、家の近くにある高い城壁を指さした。

「何? こんな高さをどうやって越える? 魔法か?」

俺は、王女を連れて城壁まで行くと、足場をアイテムBOXから取り出した。

「足場召喚!」

突然、目の前に出現した鉄管のジャングルジムに、王女は驚きの声を上げた。

「なんじゃこれは!」

「鉄の管で作った足場でございますよ。さぁ、御手を」

俺に言われるまま、手を引かれて足場の階段を登ると、城壁の上に辿り着いた。

そして、すぐさま足場を収納したのだが、いつの間にかアネモネとベルも登ってきていた。

「こうすれば、追手は登ってこれませんし、反対側へ足場を出せば、下に降りる事が出来ます」

「これは、凄いの!」

城壁の上から見る景色は中々の物だ。城壁の下には城の周りを囲むお堀。

そして夕日に赤く染まる王都の街並みが遥か遠くまで続いている。

これで電灯があれば夜景は綺麗だと思うが、ここにあるのは灯油ランプぐらいだろうしな。

だが王都なら以前から聞いていた魔法のランプ等があるかもしれない。

「貴様ぁ! 王女殿下を、どうするつもりだ!」

城壁の下で、王女を連れ去られた護衛の騎士が喚いている。

「ははは! ロウ! 妾がこのまま連れ去られれば、王女を守れなかった役立たずとして、其方の首は胴体と生き別れになるの!」

「くっ……」

「あまり、虐めにならぬ方がよろしいのでは?」

「あの者は選民思想の塊のような男だからの。たまには平民に負けて痛い目に遭うた方がよい」

なんだか、わがままなのか部下の事を考えているのか、よく解らん人だな。

「しかし、ここから降りても、堀があるぞ? それはどうする?」

「アイテムBOXの中に船が入っておりますので、それを使います」

「なんと! なんでも、入っておるの――それで? 妾をさらっていかがいたすのだ? 裸に剥いて楽しむのか?」

「そうですねぇ――私のアイテムBOXの中には、女を虐める魔道具が沢山入ってますから、それを使いますか……」

「ほう――それで、妾の心を折ろうと言うのじゃな?」

「しかし、王女殿下は少々手強そうでございますから、数ヶ月を掛けてじっくりと……」

「そうなれば、妾はもう城には戻れぬな。野に下り、汚らしい男共の慰み者になるのかの」

しかし、この設定はどこかで聞いたような……。

「ユーパトリウム子爵夫人が全く同じような事を仰っておられたのですが、そういうネタの元があるのでございますか?」

「う……」

「ははぁ、巷で出回っている薄い本等でございますね。若いうちから、そのような物を読むのは感心しませんねぇ」

「何を申す。あと数年すれば――妾も嫁ぎ、子を成す。遅いぐらいじゃ」

ええ~っ、そうなのか。政略結婚ってやつか。まったく王侯貴族も大変だな。

「外から見れば、華やかに見える王侯貴族様も、大変なのでございますね」

「綺麗に見えるのは、外側だけだぞ! 中はドブより酷いからの!」

だが、王女との会話にアネモネが割って入ってきた。

「もう、2人共くっつきすぎ!」

彼女が自分の身体を割り入れて2人を強引に引き離すと、俺の腕を掴んだ。

「なんじゃ、いいところで。アネモネはケンイチの娘ではないのか?」

「娘ですが――野盗から救いだして彼女を保護したので、血は繋がっておりません」

「なるほどの」

「あと、5年したら、ケンイチの子供を生むんだもん!」

「それはいいが、アネモネ――子供産んだら冒険者は出来なくなるぞ?」

「う! うう……」

商人なら子持ちでも問題ないと思うが、冒険者で子持ちは拙いだろう――と思う。

子供担いで、戦場へ行くようなものだからな。

「彼女の魔法も其方が教えたものなのか?」

「いいえ、私の魔法は 独自(ユニーク) 魔法でして、人に教える事が出来ません。それ故、彼女には魔導書と魔法に関する本を買い与えました」

「ほう……見ず知らずの子供に、魔導書を与えるなぞ、なかなか出来ぬ事じゃな」

「それほどまでに、彼女の魔法の才能は秀でているのでございます」

「う~む、確かに……」

王女と話をしていると、辺りも暗くなってきたので、足場を出して下に降りる事にした。

家に入ると、王女に寝間着を出してやる。

一応、シャングリ・ラで高価な寝間着を検索してみたのだが、そういった物は見当たらない。

アネモネとプリムラが着ているようなフリルがついた白いワンピースタイプの物を用意した。

「ほう! これを着て寝るのじゃな? このような泊まりは初めてじゃ!」

「王女殿下、本当によろしいので?」

「妾も王族。人を見る目には自信があるぞ。それに――」

王女は、部屋の隅で丸くなっていたベルを指さす。

「森猫は悪人には決して懐かぬそうではないか」

そういう見方もあるか……。

はしゃぐ王女にはまだあどけなさが残っているが、さすが未婚の王族と一緒の部屋で 同衾(どうきん) する事は出来ない。

俺は、プリムラに後を任せて外に出ると――そこには、ポツンと護衛の騎士が座っていた。

「ここで護衛か? 夜は冷える。これを使え」

アイテムBOXから毛布を2枚出してやる。それから、飯を食っていないようなので、カレーとパンを渡した。

だが、騎士は顔を横に向けてしまった。

「情けは受けん!」

「あっそ……まぁ、気が向いたら食べな」

俺は地面で火を燃やして、アイテムBOXから寝袋を出すと、中へ脚だけ潜らせた。

すると、隣の小屋から、ニャメナとミャレーが出てきた。

「旦那も外で寝るのかい?」

「まさか、未婚の王族と同衾するわけにいかんだろう。間違いなく首が飛ぶぞ」

「違いないにゃー」

ニャメナが酒を飲みたいと言うので、少量出してやる。

騎士にも注いでやったのだが――飲むようだ。

「む! この酒は……」

ぶつぶつ言っていた騎士であったが、カレーとパンも食い始めた。

全く素直じゃないね。