軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

270話 街道をひた走る

王都に到着した俺達は、お城を訪れてアルストロメリア様に面会。

共和国に行ってしまったことを報告した。

最初はスルーするつもりだったが、シラー伯爵領の隠し畑などを見つけてしまっては、報告しないわけにはいかないだろう。

報告を受けたアルストロメリア様は、騎士団を出して伯爵領に圧力を加えるつもりだ。

隠し畑で私腹を肥やし、軍備などを強化していれば、反逆と言われても仕方ない。

以前に、反王家派に誘われたこともあったが、無視してよかった。

まぁ、アマランサスがいるのに、王家と対立なんてできるはずがないが。

共和国からの難民と一緒にお城の裏庭でキャンプをする。

こんな場所で1泊するなんて、俺たちぐらいのものだろう。

アルストロメリア様の懐の深さに感謝といったところか。

色々とお土産を持ってきたかいがあったのかもしれないが。

――お城の裏庭で1泊して、朝起きる。

皆でワイワイと朝食だ。

裏庭は広いので十分なスペースがあるし、薪などの物資もまだ残っている。

途中の森などで拾ったりしたのがよかった。

お城は相変わらず騒がしくて、騎士団の出発のための裏方をしている者たちは徹夜をしたようだ。

今も裏門から馬車が入ってきている。

うちの家族の食事は、いつものようにグラノーラだ。

森猫たちにもネコ缶をあげて、黒い毛皮をなでる。

「お母さん、やっとサクラに帰れるよ」

「にゃー」「みゃ」

森猫たちは、俺と一緒ならどこでもいいみたいで、特にサクラに愛着があるというわけでもないらしい。

定住しないでいつも森の中をさまよっていたせいであろうか。

朝食が終わったら出発の準備に入る。

荷物をコンテナハウスに入れて俺のアイテムBOXに収納した。

コンテナハウスと入れ替わりにマイクロバスを召喚。

アキラと一緒にバイオディーゼル燃料を補給した。

「燃料も持ちそうだな」

アキラがバスの周りを見ている。

「いつも余分に作っておいてよかった」

「備えあれば憂いなしってか」

「そうだな。今日中にアストランティアの近く――いや、もしかして無理をすればサクラに到着できるかもしれない」

「まぁ、あんまり無理をする必要もないんじゃね?」

「そうだな。事故でも起こしたら大変だし」

「高名の木登りよ」

多分、走り続ければ真夜中に到着できたりはするが、やっぱり危険か。

燃料を入れ終わると村人たちに告げる。

「朝の用を足すなら今のうちだぞ? またしばらくは街の中を走るので、降ろすことができないからな」

ワイワイと、トイレが順番待ちになる。

100人近くいるのに、2箇所しかないので仕方ない。

いざとなれば、シャングリ・ラに売っている簡易のトイレキットでも使うしかないか。

まぁ、街を抜ければ、男なら道端で立ちションもできるしな。

用足が終わったら、小屋と汚槽をアイテムBOXに入れて、ゴミ箱に投入すれば手も汚れない。

そのあとはユ○ボで穴を埋め戻せば終了。

地面にカタピラの跡がついてしまったので、獣人たちにシャベルで消してもらう。

「よっしゃ、これで出発準備できたな。皆、乗り込め~」

「「「へ~い!」」」

この旅にも慣れたのか、村人が次々と車に乗り込んでいく。

獣人たちは後ろにハシゴがあるのに、屋根のキャリアに飛び乗ったりしている。

子どもたちを荷物のように掲げて、ひょいひょいと屋根に乗せていく。

もう手慣れたものだが、この旅もあと1~2日だ。

出発の準備をしていると、金色の髪を結ったアルストロメリアがやってきた。

初めて見たのだが青いワンピースの上から銀色の甲冑を着込む。

レリーフが彫られてピカピカの甲冑だが、装甲の厚みはないようでペラペラに見える。

飾りみたいなものだろうか。

腰には細い剣も装備していて勇ましい。

「これはアルストロメリア様おはようございます。随分と勇ましい恰好でございますね」

「世辞はいらぬ」

「そんなことはありません。とても似合っておいでですが、まさか前線に立たれるのでしょうか?」

「あの爺どもでは役に立たぬであろ!」

爺ってのは円卓会議の面々のことだ。

確かに、年寄りには少々きつい仕事だろう。

「もう準備はお済みになったのですか?」

「昼前には出立したいと思っておるので、急がせておる」

「物資の供給をしている商人たちも大変だ」

「そなたが懇意にしておる、マロウ商会も加わっておるぞ」

「まぁ、すでに王都でも大店になりつつありますから、当然でしょう」

「そなた、マロウ商会に洞窟蜘蛛とカメを持ち込んだそうだな」

「いえ、持ち込んだのは彼です」

俺は帝国の竜殺しを指した。

「フヒヒ、サーセン」

どうやらマロウが王家にも洞窟蜘蛛で鎧を作らないか、持ちかけたらしい。

王家も買うとなれば、値段を釣り上げることができるからな。

さすが大商人。

「洞窟蜘蛛の鎧は軽くて丈夫らしいですよ。女性が装備するにも適しているのでは?」

「ふん、マロウにも同じようなことを言われたわ」

今回のように前線に立つことを考えると、見るからに華奢な彼女には必要なのではと思ってしまう。

アマランサスなら必要ないだろうが、彼女は見るからに普通の女性だ。

さて、帰りの挨拶を済ませると俺たちは帰路につくことにした。

もしかしたら、アルストロメリアは俺たちも軍勢に加わってほしいのかもしれないが、あいにく多数の難民を連れている。

彼女もそれを察してくれたのだろう。

まぁ、シラー伯爵領がどんなに私腹を肥やしていたとしても、国軍の騎士団を超える戦力は持っていまい。

そのあと出発しようとしたのだが……。

裏門の石橋に馬車が詰まっていて身動きが取れない。

食事をしたときには石橋の上もクリアだったので、そのまま車を用意してしまったのだが、どうやら渋滞が始まってしまったらしい。

石橋は狭く、バスがすれ違うスペースがない。

馬車が2台ならなんとかなるのかもしれないが、この世界のものではないバスに合わせては作られていないのだから当然。

「ケンイチ、どうするの?」

アネモネが馬車の列を見ている。

「仕方ない」

俺は無線機のマイクを取った。

「アキラ、石橋の上が渋滞で動けなくなってる。徒歩で渡る」

『はは、しゃーねぇ』

彼も苦笑いをしている。

「マサキ、 せっかく乗ってもらって悪いが石橋の上が一杯で通れない。一旦降りて歩いて渡る」

「解りました」

「しょうがないにゃー!」「でも、詰まってるんじゃしょうがねぇぜ?」

「こりゃ、街を出るのにも時間がかかるかもねぇ」

エルフが呆れるように伸びをしているが、騎士団が移動を始めたら、さらに時間がかかるかも。

今のうちに街を出ないと増々遅くなってしまう。

マサキが村人たちに指示を出す。

村人たちが降り始めたので、屋根にいる獣人たちも困惑しているようだ。

「おい、どうしたんでぇ?」

「石橋の上で馬車が詰まっているから、歩いて渡るそうだ」

村人と獣人の会話が聞こえてくる。

窓を開けて、上にいるナンテンに話しかけた。

「ナンテン、子どもたちも降ろしてやってくれ」

「解ったよ旦那」

皆が降りたのを確認すると、2台のバスをアイテムBOXに収納した。

「は~い、2列に並んで~、馬車や作業をしている人の邪魔にならないようにな」

「「「へ~い」」」

「朝は空いていたのにな」

アキラもそう思っていたらしい。

「突然、混み始めたな。朝の納品が重なったんだろうか」

村の子どもたちは大人たちと手をつなぎ石橋の上を渡り、途中で拾った孤児たちは子供同士で手をつないでいる。

石橋の上には納品待ちの馬車が並んでいるが、人が通るスペースぐらいはある。

「獣人だ――なぜお城に」「おい! あれはエルフか?!」「初めて見た……」「森猫もいるぞ?!」

あちこちから色々な声が聞こえていたのだが、1人の男が俺の所にやって来た。

黒い帽子と黒いベストを着た中年の男である。

「おい! その森猫を売ってくれないか!?」

石橋の上の馬車の列に並んでいるということは、この男も商人なのだろう。

「森猫は家族なので、金では売れないな」

「そこをどうにかならないか? こんな見事な森猫は見たことがない!」

「そこの者! ハマダ辺境伯様に無礼であろう!」

俺の横にきたアマランサスの一喝に、辺りがどよめく。

「え?! 貴族様!?」「辺境伯?」

「はは、貴族に見えないかもしれないが、ハマダ辺境伯だ」

俺の言葉を聞いた商人が、後ろに跳んで腰を90度に折った。

「知らぬこととはいえ、ご無礼をいたしました!」

「構わん。でも、森猫は家族なので売れないな」

「はは~っ! 申し訳ございません」

普通の人間からすると、森猫は獣でしかないからなぁ。

騒ぎも収まり、村人たちが橋の上を渡っていたのだが――。

「めんどくせぇ! よっと!」

1人の獣人がそう叫ぶと、橋の欄干に飛び乗った。

「おいおい」

「俺はこっちから行くぜ」

男が欄干の上を走り始めた。

地面の上を走るがごとく、まるで自然でブレることもない。

「それってありかよ!」「それじゃ俺っちも行くぜ!」「俺も」

獣人たちが次から次へと、欄干の上を走り始めた。

「落ちるなよ」

「わはは、そんなことありえませんぜ!」

俺の言葉にも、獣人たちはひょいひょいと欄干の上を渡り終えた。

「ええ? それってあり? それじゃ私も」

獣人たちに続いたのはエルフたちだ。

彼女たちのバランス感覚や身体能力も、人間には真似ができないほどすばらしい。

あっという間に渡り終えると、獣人たちと一緒に手を振っている。

皆が石橋を渡り終えたので、人のいない場所を探すのだが、馬車の列は橋の向こうまで続いていた。

アルストロメリア様は早々に出立したいと言っていたが、これはちょっと無理なのでは?

馬車の列と人を避けて左に曲がり路地に入ると、真っ暗な日の当たらない路地。

バスが出せそうな幅があったので、そこで出すことにした。

ここなら目立つこともないだろう。

「よし、バス召喚」

俺のマイクロバスが路地に姿を現した。

幅がぎりぎりといった感じだが、バスのドアなら外側に開くことはないので、乗り込むスペースはある。

「なんとかなりそうだな」

続いて後ろにいくと、アキラのバスもアイテムBOXから出した。

「おお、ぎりぎりだな」

アキラがやって来たが、俺と同じことを考えていたようだ。

「人が多い街で、アイテムBOXから大物を出すのは大変だ」

「まず、人やものがないスペースを探すのが難しいからな」

その点、人が少なく十分なスペースがあるお城の裏庭ってのは、最適な場所だったのだが、仕方ない。

用意ができたので、俺とアキラはマイクロバスに村人たちを乗せはじめた。

「さ~乗ってくれ~なん回も乗り降りさせて、すまんな」

「いいえ、滅相もございません」

「よっと!」

獣人の1人が、建物の壁を使っての三角飛びで、バスの屋根に掴まった。

それを見た他の獣人たちも真似をし始めると、ぴょんぴょんと曲芸のように次から次へとジャンプが始まる。

すげー身体能力。

これだけ見ても格闘戦では獣人にかなわないのがよく解る。

皆が、バスに乗りこんだようだ。

「マサキ、全員いるか?」

バスの運転席につくと、後ろを見て確認する。

「大丈夫です」

「お~いナンテン、上にいる連中はみんなそろっているか?」

「いるよ、旦那」

無線のマイクを取る。

「アキラ、そっちはどうだ?」

『オッケー』

「オッケーにゃ!」

「おっしゃ、それじゃ発進!」

ウインカーを左に出すと、バスを発進させた。

異世界でウインカーを出す必要はないのだが、後ろにいるアキラのためだ。

無線機で意思疎通しなくても、ウインカーやハザードだけで、それができる。

共通の価値観を持つってのはかなり重要なことなのだ。

そのために国は、民を支配するのに教育や宗教を使ったりする。

逆に確固たる共通の価値観があれば、敵にも支配されにくいってわけだ。

人類の歴史が開闢して、元世界でも数千年たっても、多種多様な言語や宗教がなくならないのは、そのせいもあるのだろう。

アマランサスの案内で、バスの列は迷路のような王都の道を進む。

人は多い、馬車も多い、ドライジーネはウロウロ――交通法規はゼロ。

めちゃ神経を使う。

どこから人が出てくるか解らんし、走っているとドライジーネが近づいてきて、バスの側板をバシバシ叩いたりする。

もう勘弁してくれ。

「早く街から出てえぇ」

無線機のマイクを取る。

「アキラ、大丈夫か? 気をつけてくれよ」

『解っちゃいるが――ゴラァ! 近づいてくるんじゃねぇぞ!』

スピーカーからアキラの怒鳴り声が聞こえてきた。

今日は南に抜けるので、マロウ商会の前は通らない。

それから1時間ほどかけて、迷路の街を抜けたのだが、まだ人と馬車は多い。

「よっしゃ! これでまっすぐサクラだ! ふう!」

「うにゃー! 共和国から長かったにゃ!」「あんな森の奥地から帰ってこれるなんてさすが旦那だぜ」

「共和国に飛ばされたのはちょっと困ったが、前人未踏の地の果てとかじゃなくてよかったよ」

まったく人がいない場所だったら、現在位置すら解らなかっただろうしな。

共和国でも、エルフたちと接触できたのが大きかった。

エルフもいなければ、無理矢理でも川を下り、人のいる場所をさがす――そんな大冒険になったに違いない。

俺たちは川○浩探検隊じゃねぇんだ。

そんなのは御免被りたい。

それでもアイテムBOXとシャングリ・ラがあれば、なんとかなりそうだけどな。

大昔、地球の隅々まで探検していた者たちにもこの能力があったら、さぞかし仕事がはかどったことだろう。

大昔の探検家と自分を重ね合わせていると、サクラへ続く街道が見えてきた。

「ここは以前にも通ったから、知った道だな。これだけでも帰ってきたって気分になるよ」

「やったにゃー!」「けど、旦那。この先の橋って落ちてなかったっけ?」

そういえばニャメナの言うとおりだ。

「一応、流通は再開しているようだし、まだ仮橋だろうけどなんとかなるだろう」

「この街道は、王都にとっても大動脈。手を打っているはずですわぇ」

アマランサスは政治の中枢にいた人間。

彼女がそう言うなら間違いないだろうが、この世界は手作業が中心で時間がかかる。

「ケンイチ!」

「なんだい? アネモネ」

「家に帰ったらなにをしたい?」

「まずは、リリスとプリムラに謝らないとなぁ」

「ぷー、そうじゃなくて」

アネモネが、なぜかほっぺたを膨らませている。

「え? とりあえずゆっくりしたいが、村人たちの村を作らないと駄目だし。やることが山盛りだよ」

「ケンイチは少し休んだほうがいいと思うけど……」

「まぁ、祝福の力があるから疲れたりしないし」

「うん……」

「彼らのまず住む所を作らないと、生活ができない。アネモネにも手伝ってもらうから」

「解った」

「ちびっこには、大人の世界は無理よねぇ」

話を聞いていたセテラが、アネモネをからかう。

「ちびっこじゃないし」

「喧嘩しない」

「ぷー」

すねているアネモネだが、やはり家が近くなっているのが嬉しいのだろう。

表情が明るい。

俺が作った家を滝の傍に置いた、あそこが故郷になっているんだよなぁ――と実感する。

街道を進み、馬車や人がまばらになってくるとバスのスピードを上げた。

時速40km、場所によっては50kmぐらいの速度が出ている。

王都とアストランティアの間は400kmちょっとなので、10時間もあれば到着できる。

もちろん途中で休んだり食事もあるのでやっぱり、無理をせずに途中で1泊したほうがいいか。

元世界の常識で考えてしまうのでは危険だ。

そのまま3時間ほど走ると、大きな都市であるイベリスの手前――川にかかった橋が見えてきた。

以前、大雨で増水して橋が流されてしまった場所だが、あのときに見た景色とまったく違っている。

なにもない場所に橋だけが架かっていたのに、小さな町ができているではないか。

後ろの車に連絡を入れる。

「アキラ、橋だ。一旦停止する」

『了解』

バスを停止して近くまで行くと、橋の様子を見る。

石を使った立派な本橋は、未だに建築中であり、左側のちょっと離れた場所に木造の仮橋が作られていた。

普請の現場では力自慢の獣人たちが多数働いており、作業員の宿泊施設やら、物資を売る商店、そして娼館。

そこに物資を運び込む商人たち。

本当に新しい町が1つできあがっている。

どこからか切り出して運んできたらしい石を積んだ馬車も沢山並ぶ。

俺の所にアキラもやって来た。

「これだけの人数を一々運んでいられねぇから、ここに町を作ったんだな?」

「そうだろうな。これだけ街ができあがってしまうと、新しい宿場町としてそのまま残ってしまうかも知れないな」

「ありえる」

アキラと一緒に仮橋のほうを見に行く。

木製の橋で、馬車が1台通るのがやっとの幅。

欄干もないし、馬車が橋から落ちないか心配なのだが……。

橋の近くにいた男に銅貨を渡し、話を聞く。

武器を持っているので、ここを警備している兵士だろう。

どうやら橋は一方通行になっているらしく、1時間ごとに切り変わるようだ。

「橋が狭いけど、落ちたりする馬車はいないのか?」

「はは、たまに落ちるぜ」

「馬って結構臆病だからな、突然なにかに驚いて飛び上がったりするし」

アキラは馬の牧場で働いたことがあるので、そういうのを見たことがあるらしい。

「芝の境目を飛び越えたり、自分の影に驚いたりするのを見たことがあるな」

「そうそう」

橋の下を見ると馬車の残骸が転がっている。

こりゃ大変だが、この世界の技術力ではそうは簡単に橋を完成させることはできない。

まずは橋桁を設置する所を囲って水を抜き、そこに土台を作る。

土台同士をつなぐようにアーチを作ったら、その上に水平な部分を乗せて完成。

テコや滑車を使った原始的なクレーンはあるのだが、それを動かすのは全て人力。

コアモーターなどを使えば、滑車の巻取りなどは自動でできるかもしれない。

それでもかなり作業効率は違うはず。

俺の重機を出せば早いのだが、普請をしている貴族の面子もある。

成り上がりの俺が、でしゃばってもいい顔はしないだろう。

本気で俺に頼むつもりなら王家から命令が出ているわけで、それがないってことは、俺が出る必要はないってことだ。

「さて、この橋じゃマイクロバスは無理だな」

「屋根にも乗ってるし、橋が崩壊すると思うぜ、フヒヒ」

皆をバスから降ろして、一方通行が切り替わってもいいように待機しておかないと。

チャンスを逃すと、また1時間待つことになる。

俺とアキラは慌ててバスに戻った。

「お~い、また降りて歩くぞ~。架かっている橋が仮橋なんで、こいつが渡れない」

「「「へ~い」」」

皆には悪いが、また降りて歩いてもらう。

「にゃー」

ベルとカゲが散歩に行きたそうだが、ここは人が多い。

一応、飼い主がいるという証はついているが、驚かれると思う。

彼女もそれが解っているのか俺の傍から離れない。

「もう、ケンイチのあれを使えば、橋なんてすぐにできるのに」

「それに、アネモネのゴーレムもな~」

「うん」

彼女の頭をなでてやる。

たとえばゴーレムで水も動かせるから、ポンプもなしに水を掻き出したりも可能だろう。

いままでそういう使われかたをしてなかったようだが。

「貴族たちにも華を持たせてやらねばならん」

「アマランサスの言うとおりだ」

「只人ってのは、変な面子にこだわるからねぇ」

セテラが、橋に使われている材木の上をぴょんぴょんと飛んでいる。

「特に貴族様はな、フヒヒ」

アキラはツィッツラと手をつないで歩いてラブラブだ。

いいのか? 今日か明日には、アストランティアに着くんだぞ?

まぁ、自己責任だけどさぁ。

「よ~し、皆固まって歩け~」

ぞろぞろと皆で歩くと、橋の所で並んで待つ。

背負子を担いだ、単独の商人も結構いる。

町や小さな村でも渡り歩いて商売をしているのだ。

向こうからたくさんの馬車が渡ってきているが、上手く渡れるものだと感心する。

俺たちが並んでいる間にも、村人の列から1人抜け2人抜けしている。

多分、 雉撃ち(小便) に行っているのだろう。

男なら立ちションでもいいが、女はそうもいかないよなぁ。

30分ほど待っていると、一方通行が切り替わった。

前にいる商人たちについていくと、橋の端を歩いているので、それに続く。

俺たちの横をガラガラと馬車が通り過ぎていく。

下を見ると量は少ないが澄んだ水がキラキラと光を乱反射させている。

その中にはここから落ちた馬車の残骸。

それほど高くはないので、死なないとは思うが――いや、当たりどころが悪いとなぁ。

橋の長さは30mほどなので、数分で渡り終えた。

「ふ~、すぐにイベリスだが、そこを抜けてアキメネスの先まで行けるだろうか」

「ケンイチ、ゆっくり行こうぜ。そんなに急いでどこに行く」

昔にそんな交通標語があったのだ。

「まぁ、安全第一だ」

橋の反対側にやってきたが、ここにも商人や旅人などが集まっている。

場所がないのでバスを出せない。

少々歩くと開いているスペースを見つけ、コ○スターを出した。

「よ~し、また乗ってくれ~。もう休み以外で降りることはないと思うぞ」

「「「へ~い」」」

皆で乗り込むとメンバーを確認。

全員いる。

「おし、出発!」

バスの列は再び走り出し、大都市のイベリスを抜けて、日が傾く手前にアキメネスを通過できた。

そのまま順調に街道を走り続けて、森の手前でキャンプを張る。

左手には、大きな湖であるカズラ湖の水面。

やはり今日中には到着できそうにないが、明日には確実にアストランティア、サクラには到着できるだろう。

俺たちの先に見える森は、俺が重機を使って用水路を掘った場所だ。

用水路の周りには、すでに農地が作られて村もできている。

仕事があれば人が集まるからな。

晩飯を食い終わると、グラデーションがかかった空に向けて伸びをした。

「明日にはサクラか」

「やっと帰ってきたな」

「いやぁ、まさかあんなことになるとは……」

「いや、まったく」

アキラと2人で苦笑い。

波乱万丈の旅も明日で終了だ。