軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

259話 峠の入り口

共和国を抜けて王国へ目指して帰還中。

森を抜けたり、川を渡ったり、魔物を倒したり前途多難だが、その度に連れていく人たちが増えていく。

普通なら、こんな大所帯を抱えて移動なんてのは自殺行為だが、俺にはアイテムBOXとシャングリ・ラというチートがある。

アイテムBOXの中には、今まで倒した魔物の肉がたっぷりと入っているし、金があればシャングリ・ラの通販も使える。

移動には車も使えるし、まさに無敵だが、かなり無茶をしているのも事実。

今回増えたのは砦にいたという5人の兵士たち。

軍部にかなり不満を持っていたらしく、立派な装備を持った指揮官らしき男を倒したら、すぐに寝返った。

その男たちに話を聞く。

「それじゃ、あの砦は住民たちを越境させないための砦なのか」

「そうです」

俺もそうじゃないかと思っていたのだが、本当にそうだったとは。

「誰も王国が攻めてくるなんて思っていませんでした」

「そりゃ、こんな国を攻めても難民を抱えるだけだし……豊かな土地やら鉱物資源があるわけでもないしな」

アキラと話していたとおりだ。

砦内部の生活も困窮しており、わずかな食料を求めて砦の前に広がる集落に出向くことも多々あったらしい。

食料以外の物資を横流しして食い物と交換するわけだ。

「砦の前にあった町は?」

「あれは、各地方からの脱村者が集まってできた町です」

「ああ、正式な町ではないのか」

「はい」

隙きあらば砦を突破して、王国に亡命しようとした連中が集まってできた町ということだが――。

「アマランサス、共和国からの亡命者っていたのか?」

「いいえ、報告を受けたことはありませぬ」

着の身着のままで、峠を突破することは不可能ってことになる。

峠では食料が調達できないから馬車などで大量の食料を持ち運ぶ必要があるが、峠の整備は長い期間停止している。

まともに通行できる状態とは思えない。

「峠なんて崖しかないだろ? 食料を運ぶためにはアイテムBOXがいるな」

アキラの言うとおりだな。

「しかも大容量のやつが必要だ」

アイテムBOX持ちなんて、それでなくても人数が少ないのに。

「あの……これだけの人数の食料などは……?」

「大丈夫、今話に出た大容量アイテムBOX持ちが俺だ」

「そ、そうなんですか!」

「そっちのアキラもアイテムBOX持ちだし――まぁ、食料のことは心配するな」

「は、はい」

村人、他の村から逃げてきた者、元兵士――呉越同舟とはこのことか。

マサキに声をかける。

「兵士について、なにか偏見とかは?」

「いいえ、上層部はともかく、下級兵士は私たちと同じ境遇でしょうし」

彼や村人の顔を見ると、多少の偏見はあるようだが、圧政に苦しむ仲間という認識のようだ。

「にゃー」

森猫が俺の脚に絡みついてくる。

「村人たちを守ってくれてありがとうな」

「にゃ」

「そ、その森猫は?」

兵士たちが心配そうな顔をしている。

彼らにとって、森猫も森林に住んでいる魔物の一種という認識しかないのかもしれない。

「彼女たちも俺の家族だから丁重に接してくれよ。人語も理解するから悪口とかも駄目だぞ? ははは」

「承知いたしました」

「一緒に峠を越えるってことで、俺の正体を明かしておこう」

「はい」

「俺の名前はケンイチ。王国の貴族だ」

「貴族様ですか? し、しかし、なぜこんな場所に……」

「詳しくは言えないが、山脈のこちら側に紛れ込んでしまったんだ」

「聖騎士様――元来、ここら一帯も王国の領土なのですわぇ」

「そういえばそういう話だったな。共和国の兵士たちもそれは知っているのか?」

「は、はい」

そこにアキラがやってきた。

「領土を主張するために、先に開発して実効支配するつもりだったんだろう」

「まぁ、ありがちだなぁ。けど王国としてもここらへんはどうでもいいわけで……」

「共和国の民だけが、僻地に駆り出されて割を食っているわけだ」

「さ、さすがは貴族様、色々なことを知っているのですね」

兵士が感心しているのだが――農民も兵士も学校にも行っておらず、決められたことを守って毎日を過ごすだけ、国がどうなっているかなんて知るよしもない。

本当なら、農民を教育するための人材が中央から送られてくるはずなのに――待てど暮らせどそんなものは送られてこない。

「民に学がなければ、なにも知らないから、異議を唱えられたり反抗されることもないからな」

俺のつぶやきにアキラが反応した。

「けど民の底上げができなければ、国は貧乏なままだぞ?」

「そうだな」

彼が元世界で世界旅行をしたときのことを話してくれる。

「貧乏な国は国民も貧乏なんだが、どうやって金を稼いだらいいのか、それすら知らないやつが山程いたぜ」

「お、俺たちも解りません……」「私たちもです」

兵士と、マサキたちがうなだれる。

あの村じゃ、余分な作物ができても売ることすらできないし、金が手に入ったとしても使う場所がない。

「そういうチュートリアルを教えてくれるのが学校なんだが――チュートリアルって日本語でなんていうんだ?」

「う~ん? そういえば日本語に対応する言葉がないような――基本的な知識を教える教育とでもいえばいいのか」

「やっぱり学校ってのは大事だよな」

「そうだな。最初は親から教わるが、親によってばらつきがあるし」

「獣人は部族から教わるにゃ!」

ミャレーが手をあげた。

「獣人たちの方法もいいよな。3人集まれば文殊の知恵じゃないが、知識が広がる」

セテラにエルフたちの教育方法も聞いてみた。

「エルフたちも部族単位で教育とかするのか?」

「そうだねぇ。それに定期的に入れ替わっているから各部族間での情報の伝達も行われているし」

「ああ、そうか」

エルフは生まれてから100歳をすぎると、他の村に行く。

そうやって、ゆっくりと知識が広まっていくわけだ。

なにせ彼らの寿命は長い。

話をしているエルフに兵士たちが驚いている。

「エルフ様が我々の言葉を……」

「このエルフ様は大先輩だからな。共通語も喋れる」

「そうなのですか……」

「僕は駄目だよ」

ツィッツラの会話は俺とアキラには通じるのだが、村人たちや兵士にはまったく通じない。

最初に聞いたエルフの言葉はすごく発音が難しそうだった。

アキラの話では、エルフには声帯が2つあるらしく、それを使ってすごく複雑な発音をするらしい。

普通の人間ではエルフ語を話すのは無理に近い。

逆にエルフなら、その複雑な声帯と知能の高さでどんな言語でも話せるのではないかと思う。

「そっちのエルフは駄目だけどな。俺とアキラは解るんだが……」

「エルフ様が2人も……」

「共和国に招聘されているエルフもいるんだろ? そういう連中はしゃべれるんじゃないのか?」

「なん人かは、いると聞いたことがありますが、言葉までは……」

底辺の兵士に、中央のことなど解らないということらしい。

「村人たちには先生を雇って、勉強やら農業のことを1から教え込まないと駄目だなぁ」

「なにせ共和国の農業知識はデタラメだからなぁ」

アキラの言うとおりだが、彼の言葉にマサキがしょんぼりしている。

「我々にはなにが間違っているのかすらも解りません……」

彼に少々説明をしてみる。

これで理解できるかどうかは不明だ。

「畑ってのは家だ。地面の上に飯が置いてあると思え」

「は、はい……」

「置いてある飯の数以上に家の中に人が入ってきたら、どうなると思う」

「……皆が飯を十分に食べられないと思います」

「飯が食べられないと、徐々に皆が飢えていくだろ?」

「はい」

「畑に必要以上の作物を植えるっていうのは、そういうことなんだよ」

「解りました」

理解できたようだ。

「それから種を深く植えれば、根が丈夫になるってのも嘘っぱちだからな。森の草花を見てみろ――地中に植えなくても緑を謳歌しているだろう?」

「あ、あの……おうかというのは……」

「ああ、丈夫に育っているだろう」

「はい」

兵士たちに中央のことを質問してみる。

「農民たちに教えているあんな農業を推進しているのは、中央の誰がやっているんだ? 将軍様が自らやっているのか?」

「いえ、農業省がやっていると聞きましたが……」

初めて共和国制になったわりには、組織や制度が整いすぎてないか?

「その農業省って所のトップ――じゃない、一番偉いやつは?」

「さぁ……解りません」

下級兵士にそんなことは解らないか。

兵士になっても、学校に通えるのは上級士官だけらしい。

「まぁ、俺の領についたら、覚えることがいっぱいあるな」

「お願いいたします。村の総力をあげて、がんばります!」

只人のことは只人に頼んでもいいが、獣人たちのことは獣人たちに頼むしかない。

「ミャレー、他からやってきた獣人たちにも、サクラの獣人たちは色々と教えてくれるだろうか?」

「多分、大丈夫だにゃ。偏屈で底意地が悪いやつもいるけど、困っているやつをさらに騙したりする只人みたいなやつはいないにゃ」

「うは、耳が痛い」

俺とアキラとで苦笑いをする。

「たしかに溺れている犬は棒で叩け――みたいなやつもいるしなぁ」

「只人ってそんなことするにゃ?!」「うえぇ!」

アキラの言葉にミャレーとニャメナがドン引きする。

「いやまぁ、たとえだよたとえ」

話をしながら森の中を歩いているが、周囲は獣人たちが警戒している。

ついでに俺が貸してやったクロスボウなどを使い、歩きながら狩りをして獲物をゲットすると俺の所に持ってくる。

俺のアイテムBOXに入れ、彼らのおかずになるわけだ。

「旦那! たくさん獲れたよ」

ナンテンが鳥の首を持っている。

「おお、ナンテンは狩りがうまいな」

「えへへ」

「そのぐらい、ウチらはいつもやってるにゃ」「そうだぜ」

「張り合うなって」

俺が新入りを褒めるので、うちの獣人たちが気に入らないらしい。

ナンテンは俺にスリスリをしたいようで、もじもじしているのだが――。

俺の背後で、ミャレーとニャメナが牽制している。

「スリスリぐらいいいだろう?」

「変なにおいがつくから駄目にゃ」「そうだよ旦那」

変なにおいとか言われて、またナンテンがしょんぼりしている。

「変じゃないから気にするな――そうだ、尻尾はどうだ?」

彼女の尻尾の付け根を見せてもらう。

だいぶ赤みが引いている。

「ひゃ!」

消毒して薬を塗ってやると、彼女は狩りに戻っていった。

自分たちの食事は自分たちで用意をしろと言ってしまったので、狩りを認めなくてはならない。

今のところは危険はなさそうだし。

その獣人たちに守られている村人たちも、薪などを拾う。

ある程度まとまると俺の所に持ってきてアイテムBOXに入れる。

少しの時間も無駄にしない――働き者たちだ。

そうしないと食えなかったので、これが普通だったのかもしれないが。

狩りをしている獣人たちには加わらず、俺と一緒にいるのは三毛のアオイ。

彼は虚弱で、狩りをするだけの体力がないのだ。

いつでも味噌っかすなのを気にしているらしい。

「アオイ、お前は罠の作り方を教えてもらえ」

「罠ですか?」

「ああ、罠を使えば、力や体力がなくても獲物を獲ることができるからな」

「私が教えてあげるよ!」

アネモネが手を挙げた。

「彼女はいろんな罠を知っているぞ?」

獣人たちに教えてもらったものと、俺がシャングリ・ラで買った本を基にして色々な罠を考案している。

もちろん彼女は魔法が使えるので、罠を使う必要はないのだが。

まぁ、趣味みたいなものだと思えばいい。

「お願いします」

「うん!」

俺が色々と教えてあげたアネモネが、今度は先生になるのか。

俺もこの世界の役に立っていると実感できるのは、中々に感慨深い。

もう彼女も立派な大人だよなぁ。

ずっと歩き続けているが、森の中は危険なので食事が摂れない。

人が通らない街道に出ても危険度はあまり変わらない気がするのだが、休むなら多少は開けている場所のほうがいい。

たまにドローンを飛ばし方向を確認すると、森の切れ目に道らしきものが見えてきた。

かつては街道だったはずだが、今は半分森の中に埋没しかけている。

「おおっ! 空飛ぶ魔道具?!」

「あれは、ケンイチの召喚獣だよ」

「召喚獣……すごい」

――アネモネが得意気に説明しているのだが、彼女の知能ならすでにこれがタダの道具だと気づいているかもしれないなぁ。

エルフ旧文明の生き残りであるセテラは当然知っている。

俺たちはやっと街道に出た。

「出たはいいが……草がぼうぼうだな」

道にも草が生えており、道の近くまで森が押し寄せているが、俺たちが出発してきた村の周辺の道路よりはまだ道になっている。

多分、百年以上踏み固められた街道は、まだガッチリと固まったままだ。

「だって数十年ほとんど使ってないんだろ? しゃーない」

アキラの言葉どおり、この共和国ができてから王国との交流は断絶している。

ここを通る者もいなくなってしまったのだ。

果たして峠は通行できるのだろうか?

「しかし、王国に戻るためには、ここを通るしか方法がないしな」

「そうだぜ? まぁ、崩れていたりしてもケンイチの重機があればヘーキヘーキ」

アキラはお気楽だが、俺には責任がある。

ここまで連れてきて、駄目でした――ってわけにはいかない。

道の様子を見ているとアマランサスがやってきた。

「聖騎士様、ここで休むのかぇ?」

「いや、ここはまだ砦から近い。俺の召喚獣で追手が追いつけない距離まで進もう」

「承知いたしました」

「よし! コ○スター召喚!」

「「「おおおっ?! 鉄の箱?!」」」

兵士たちは、突然空中から出現した鋼鉄の乗り物を見て驚いている。

「こいつは俺の言うことを聞く、鉄の魔物だ」

「なんと……」

「これに乗っていれば、馬がいなくても運んでくれるんだよ」「すごい速いんだよ!」

途中から一緒になった子どもたちが、兵士に説明をしてくれている。

新入りの世話は子どもたちにまかせ――2台のマイクロバスをアイテムBOXから出すと、また村人たちを分乗させる。

兵士たちも屋根に乗ることになってしまうが仕方ない。

「皆、森の中を歩いて疲れただろう。腹が減ったとは思うが、もう少し頑張ってくれ」

「大丈夫です。村にいたときのことを考えれば……」

マサキの言葉に、村人たちもうなずいている。

「兵士たちは大丈夫か?」

「最近、ろくに飯にありつけていなかったのですが、なんとか大丈夫です」

「まぁ、この先は、こいつが運んでくれるから歩かなくてもいい」

「あの……本当なのですか?」

兵士たちも信じられないような顔をしているのだが、動き出せば解るだろう。

2台のマイクロバスに分乗しても、屋根の上まで人が一杯。

元世界の映像で、屋根まで人が一杯に乗っている映像を見たことがあるが、まさにそんな感じに。

屋根にはルーフキャリアをつけ、安全帯もつけさせている。

屋根に乗った兵士たちによれば、この先には村も砦もないというので、これ以上人が増えることはないようだ。

バス2台でなんとかなるだろう。

薄暗くなってきたのでライトを点ける。

「アキラ、そっちはどうだ?」

『オッケー』

「オッケーにゃ!」

いつものミャレーの声が聞こえる。

「ほんじゃ出発!」

2台の中と外に乗客を満載したマイクロバスが走り出した。

「「「おおおっ!? う、動いている!!」」」

「馬がいないのに動くなんて!」「「「ははは」」」

上から、屋根に乗った兵士たちの驚く声と、獣人たちの笑い声が聞こえてくる。

この世界では馬で動く馬車が当たり前だからな。

馬なしで動く乗り物なんて初めて乗ったのだろう。

バスは当然エンジンで動いているのだが、サクラでカールドンが作っている魔導モーターを使えば、魔力を使って車を動かすことができるようになる。

ただ、電池代わりになる大きな魔石が必要になるのと、それにエネルギーを注入する魔導師が必要で、それをクリアしないことには普及しそうにない。

順調にバスは進む。

草に覆われてしまっているが、道はしっかりしているので走りやすい。

後ろの車と連絡を取る。

「アキラ、すごく走りやすいな」

『おう! さすが街道だぜ』

そのままバスで2時間ほど走る――トリップメーターは70km弱を差している。

走りやすいので、もっとスピードが上げられそうなのだが、今は屋根に人が乗っている。

スピードを出してギャップでジャンプなどをすると危険だ。

徐々に峠が近づいているのか、道路に傾斜がついてきた。

馬車なら大変なところだが、車ならどうってことはない。

かなりの乗員オーバーしているが、普通に走っている。

まぁ、燃費はかなり悪化しているだろうが、バイオディーゼル燃料はたっぷりとあるし。

暗闇の中、黒と青に染まりながら道の途中にちょっとした高台が見えてきた。

キャンプを張るのにちょうどよさそうなスペースが広がっている。

「アキラ、よさそうなスペースがある。ここでキャンプしよう」

『了解』

『&**&**』

ツィッツラの声が聞こえてくる。

腹が減ったとかいっているのだろうか?

「う~ん、お腹が空いたかもぉ」

セテラも腹を押さえているので、俺の予想は合っているようだ。

「精霊がいれば、大丈夫なんじゃなかったのか?」

エルフは精霊とやらに新陳代謝の一部を任せているらしい。

「食べなくても平気だけど、お腹は空くんだからぁ」

飢餓状態になることはなくても、空腹感はあるようだ。

そう言われればそうか。

高台に車を止めて、LEDライトで辺りを照らすと、なにやら瓦礫のようなものが見える。

どうやら家の残骸のようで、屋根が落ちた家がたくさん並ぶ。

木造の家は朽ち果てているが、石造りの家は壁がしっかりと残っている。

ここは元宿場町だったらしい。

バスを降りたアキラがやってきた。

「ケンイチ、ここって町の跡だな」

「みたいだな。街道が使われなくなったんで、住民がいなくなってしまったんだろう」

この光景を見て、俺はピンときた。

これは使える。

「収納!」

俺はためしに、壁が残っている家を収納してみると――目の前にある家がアイテムBOXに入った。

このぐらい原型をとどめていれば、家として認識をされるようだ。

これなら、ここからサクラに移築できる。

壁が残っているなら、あとは屋根をなんとかすれば、住めるようになるはずだ。

「ケンイチ、これを持っていくつもりか?」

「ああ、どのみち村人たちの住処は、どうしても必要になるしな」

それでなくとも、サクラじゃ住宅不足なのだ。

使えるものはなんでも使う。

住宅不足に光明が見えたが、とりあえず飯だ。

いつものように、コンテナハウスとバスを並べて、鉄の陣地を作る。

新しく加わった兵士たちは、俺たちのグループだ。

あとから加わった獣人たちと子どもたち、そして兵士たちで新しい村を作ってもいい。

土地ならいくらでもあるしな。

「にゃー!」

ベルとカゲが、周囲のパトロールを始めた。

獣人たちにも周囲を警戒させる。

村人たちの荷物用のコンテナハウスを出すと、そこから材料やら食器などを取り出して食事の準備をしていく。

LEDランタンなども彼らに貸し出してあり、使い方も教えた。

筒状になったランタンを引っ張れば点灯するのだから、簡単だ。

電池式なので、切れたら俺の所に持ってくるようにと伝えてある。

「おおおっ!? 魔法の明かり?!」「明るい!」

兵士たちがLEDの明かりに目を細めている。

「俺が作った魔法のランプだ」

「す、すごい! すごい速さで進む鉄の魔獣といい、大魔導師様だ」

「これから先は、あの鉄の魔獣で進むから、もう歩く必要はない」

「王国までですか?」

「ああ、俺の領地まであれで行く。途中で道がなくなっていたりした場合は降りて歩く羽目になるかもしれないが」

「解りました」

村人たちが料理を作り始めたので、こちらも料理の用意をするか。

「ケンイチぃ、お腹空いたぁ!」「僕も!」

エルフの2人は、まったく手伝ってくれないのだが、いざというときの秘密兵器なので仕方ない。

「ケンイチ、私もパンを焼く?」

アネモネの焼き立てのパンは美味いが今日は遅くなってしまった。

シャングリ・ラのパンにしよう。

アイテムBOXに入っている魔物の肉などは、村人たちに提供する予定なので、主にインスタントで済ませてしまう。

少々単調になりがちではあるが、それプラス簡単な惣菜なども作って、飽きさせないようにしなければ。

のんびりとした旅行であれば、色々と楽しみながら進むのであるが、そうではない。

一刻も早く辺境伯領に帰らなくては……とはいえ、焦って強行軍にする必要もない。

ゆっくりと急いで確実に前に進むのだ。

幸い峠の入り口まで来ており、共和国軍の心配もなくなった。

だが、安心するのはまだ早い。

この峠は過去数十年間使用されておらず、先がどうなっているのかまったく解らないのだ。

飯を食い終わったら、廃墟をアイテムBOXに入れていく。

数えたら50戸以上は使えるのがある。

仲のいい家族はシェアするって手もあるしな。

「「「おおお~っ!」」」

家が消えるたびに、村人たちから歓声があがる。

「村を丸ごと移植とは、聖騎士様のお力には、いつもながら驚かされるわぇ」

アマランサスもアイテムBOXに収納されていく家に、なかば呆れている。

「これらの家を、お前たちが作る村に移築してやるからな」

「い、家をもらえるのですか?!」

「ああ、暮らすには必要だろう。早く稼げるようになってもらわないと駄目だからな。これは投資だ」

「「「おおお~っ!」」」

「喜ぶのはまだ早いぞ? まずは、この峠を越えないと駄目なんだからな」

俺は、目の前にそびえたつ山を指差した。