軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

257話 ショートカット

道なき道を進んだり、橋がなかったり、虫に襲われたり、脱村した村人に襲われたりと、中々に波乱万丈だ。

色々とトラブルに巻き込まれてはいるが、峠に続く街道というのは、そろそろだと思われる。

朝食のあと、ドローンを飛ばして道の先を見ると、はるか先に城壁のような白い構造物が見えた。

多分、あそこが俺たちの目的地だろうが、いったいどうやってクリアしたもんか。

「う~ん」

ドローンの画面を見ていると、アキラがやってきた。

「ケンイチ、なにか見えたか?」

「ああ、城壁のようなものが見えるんだが」

「お? やったじゃん。そこを突破すれば、峠に行けるんだろ?」

「多分な……しかし、どうやって突破したもんか」

「エルフを先頭に立たせて、亡命エルフ様のお通りだ~っ! で行けねぇか?」

「いくらエルフを崇めているからといって、国外脱出をさせてくれるかな?」

「とりあえずやってみて、駄目だったら強行突破だろ?」

「そのためにも、ちょっと近くに行って、地理や城壁の構造などを把握しないと駄目だな」

「そうだな」

「よし! でも、目標が決まるってのは、行動のしがいがある」

「俺の油を城壁の中に流し込んで、火を点けるってのは? スモーク・オン・ザ・オイル」

アキラが物騒なことを言い出した。

「なるべく穏便にいこうぜ?」

「フヒヒ、サーセン!」

「アキラが、また物騒なことを言ってるにゃ」「旦那とアキラの旦那が一緒だと、やべえ予感しかしねぇ」

獣人たちも、ちょっと引いている。

「そこは共通項でくくらないでほしいなぁ。俺は一応、平和主義者なんだよ?」

「自分で平和主義者とか言っているやつで、平和主義者はいないんだよなぁ」

「ははは、まぁな」

「ケンイチ、どうするの?」

やってきたアネモネが俺のシャツを掴む。

彼女も、今後の作戦が気になるようだ。

「まずは近くまで近づいて、地理を把握してから作戦を練る」

いきあたりばったりで、突破はできないだろう。

「うん、解った」

「エルフたちもそれでいいな」

「まぁねぇ」「いいよ」

長のマサキや、村人たちにも告げるが、彼らは俺についてくるしかない。

とりあえず作戦は決まったので、地理を把握できる場所まで行く。

皆をマイクロバスに乗せると出発した。

多分10~20kmほどの距離だろうから、ゆっくりと走っても30分ほどで近くまで行けるだろう。

念の為、10分走るとドローンを飛ばして様子を見る。

『ケンイチ、どうだ?』

「あと10kmぐらいだな」

『それじゃすぐか』

ガタガタと悪路を進み、かなり近づいたので車から降りるとドローンを飛ばす。

城壁が見えていたが、砦のようだ。

近くに川が流れていて、そこから水を引き込んだ堀が囲っている。

砦の前には、バラックの家が広がっているのだが、まるで難民キャンプのよう。

街道の上に砦が建っているので、道を進むとなると砦を越えないと駄目だが、別にバカ正直に道を進む必要もない。

俺たちの目的は砦の攻略ではなくて、峠に進むことなのだ。

俺の見た景色をスケッチブックに描いて皆に説明をする。

「確かに妾たちの目的は、砦を落とすことではないからのう」

「別に戦争をしにきたわけじゃないからな」

「しかし、これだと敵からの侵略に備えているのではなくて、民を逃さないように通せんぼしているようだな」

図を見ていたアキラがつぶやく。

「そうだな――アマランサス、一応ここらへんも王国領ってことになっているんだよな?」

「そのとおりですわぇ」

かなり昔に領土の割譲がされたのだが、峠を越えてこちらに住む者もおらず、そのままにしていたところ、共和国が誕生してうやむやになってしまったらしい。

王国としても、どうでもいい土地のようだ。

王国内でも、開拓が終わってない土地がいくらでもあるからな。

わざわざ不便な土地に行く必要もない。

「う~ん?」

「どうしたケンイチ」

「川沿いに道があるわけでなし、警備が甘いような……これだと簡単に川越えできそうだが」

「国境越えるのに、川を泳ぐとか普通にあるしな」

「元世界じゃ地雷原とかあったが、そんなものがあるわけもなし」

計画は決まった。

「川越えだ。このまま道から外れて川を目指し、そこを渡る」

そうすれば砦にはバレないし、村がなくなったとしても王国の人間が関与しているとは思うまい。

「あの、ケンイチ様」

マサキが手をあげた。

「なんだ?」

「あの乗り物というか召喚獣ですか? 森の中を走れるのでしょうか?」

「いや、無理だな。全員、徒歩で川を目指す。大変だが頑張ってくれ」

距離的には2~3kmといったところだろう。

川より、そこから先のほうが長いのだ。

「はい」

「荷物は全部旦那のアイテムBOXの中だし、俺たちは全員手ぶらだぜ? 普通じゃこんなことは考えられねぇ」

獣人の1人がそんなことを言う。

「そうだにゃ、こんなのケンイチだからできるにゃ」「旦那がいなかったら、即詰みだぜ?」

まぁ、普通は難民となると、わずかな荷物を持って食料にも事欠く――そんなイメージだが、俺のアイテムBOXがあれば、そんなことにはならない。

方針が決定したので皆で車を降りると、固まって歩きはじめた。

アイテムBOXから出した方位磁針で方向を確認。

ふわふわの腐葉土の上を歩き始める。

村人の周囲には、敵の気配を察知するのが得意な獣人たちを配置した。

長距離の移動は子どもたちが可哀想だが、頑張って歩いてもらうしかない。

年寄りもそれなりにいるが、皆健脚だ。

それはすなわち、弱った年寄りはすぐに死んでしまったからだと思う。

俺の足下にはベルが一緒に歩き体をこすりつけてくるので、歩きにくい。

「お母さん、監視を頼むな」

「にゃー」

「アオイ、お前の耳にも期待してるぞ」

「ああ、任せて!」

彼の耳は、他の獣人たちよりかなり性能がいい。

ここで突撃虫などにエンカウントしても、かなり遠くから接近が解るだろう。

俺の前を歩く三毛の毛皮が逆光でキラキラと光っている。

ブラシをかけて抜け毛を処理しただけで、随分と違うもんだな。

「だいぶ毛皮は綺麗になったな」

「あ、あの……ありがとうございます……」

「せっかく綺麗な毛皮なんだから、大事に手入れをしないとな」

アオイと話していると、ミャレーとニャメナが寄ってきてスリスリを始める。

「男に嫉妬するなよ」

「どうだか、あぶないにゃ」「そうだぜ」

アキラみたいな趣味はないんだがな。

獣人たちには後ろにも警戒させるが、こんな所で挟撃されたら大変だ。

敵に襲われたときの、シミュレーションを行う。

コンテナハウスを4つ出して、四角に囲んでその中に村人を入れるのがいいか……。

咄嗟になら、敵の正面に2個でもいい。

正直、80人以上を守るのはかなり難しい。

最悪、犠牲者が出ることも覚悟しなくては……。

俺が助けると言ってしまったからには、犠牲者が出たときの責を負うつもりではいる。

森の中を周囲を警戒しつつ、薄暗い中を1時間ほど進む。

幸い魔物などには遭遇しなかった。

「水の音がしてきたにゃ!」「旦那、川が近いぜ!」

「解った」

「ケンイチの言ったとおり、警備やらはいない感じだな」

アキラがツィッツラと一緒に周囲を見回している。

「そうだな。見張り台などもないし、人の入った気配すらない」

「なんだか、拍子抜けねぇ」

セテラは少々物足りないような顔をしているが、安全なのに越したことはない。

「村々は物資不足で喘いでいるようでしたし、軍も物資不足で困窮しているのではないかぇ?」

「アマランサスの言うとおり、その可能性はある」

周囲のにおいをクンカクンカしていたアオイだが、突然耳を伏せた。

「う!」

「どうした?!」

「な、なにかすごい獣臭が……」

「クンカクンカ、嗅いだことがないにおいだにゃ」「確かに、変なにおいがするぜぇ」

うちの獣人たちも、なにかのにおいを感じているのは確かなようだ。

においはするが気配はないらしい。

なにやらいるのは間違いないが、とりあえず川まで行ってみることに。

川の周りに生息している魔物でもいるのだろうか?

それなら、川には近づく者がいないので、警備をする必要もないってことなのか。

川の蛇行でできたと思われる三日月湖を迂回する。

水面には白い花が群生しており写真を撮りたい衝動にかられるが、もちろんそんなことをしている場合ではない。

後ろ髪を引かれていると突然森が切れ、キラキラと反射する水面が見えてきた。

「おう、着いたぞ!」

「「「おおお……」」」

村人たちからどよめきが起こる。

川はそんなに大きくはないし浅いようだが、流れが少々速い。

山が近いので傾斜があるのだろう。

白い川砂利も見えている。

村人たちはなにも感じていないようだが、アオイは耳をくるくると回している。

「アオイ、どうだ? なにかいそうか?」

「はい、周りに気配が結構あります」

「クソ――どうしたもんか」

少々危険だが、渡らざるを得ない。

砦を突破するわけにもいかないし、川沿いになにかいるとすれば、迂回しても無駄なのだろう。

「ケンイチ、どうやって渡る?」

「みたところ幸い浅いようだ。前と同じダンプ作戦でいこう」

「オッケー」

「オッケーにゃ!」

ベルとカゲが俺の所にやってきた。

「にゃー」

「それじゃ偵察を頼むよ」

「にゃ」「みゃ」

2匹バラバラに周囲のパトロールに出発した彼女たちを見送る。

獣人たちにも周囲の警戒を頼むと、俺はアイテムBOXからダンプを出した。

こいつを川に入れて、その上をアスレチックのように渡るわけだ。

川になにかいるとすれば、水に浸かっての徒歩やボートで川を渡るのは危険だろう。

「ケンイチぃ、私はぁ?」

「村人たちの護衛をしてやってくれ。エルフ様が近くにいれば心強いだろ?」

「そうなのぉ?」

彼女は村人のほうをチラリと見たが、あまり乗り気ではなさそうだ。

エルフたちにとって、村人たちの優先順位は低いように見える。

セテラにとって、興味の対象は俺なのだろう。

それはいいとして作戦を進める。

「よし! ダンプ召喚!」

地面を揺らして落ちてきたダンプに乗り込むと、エンジンを始動させる。

こいつも水の中に浸ったりして可哀想だが、働くクルマの 運命(さだめ) だ。

異世界で頑張ってもらうしかない。

ギアをローに入れると、川べりの段差をクリアして水の中に進入する。

川は浅く流れは速いが、ダンプを流すほどの威力はない。

流れの真ん中でダンプを停止させると、ドアを開けて下を覗く。

「なにか? いるのか?」

もしかして、ピラニアみたいな魚がいたりすれば、そりゃヤバいが……。

川の水面を観察していると、獣人たちが騒ぎ始めた。

「どうした!?」

窓から外に出ると荷台に上がる。

アイテムBOXからアルミハシゴを出すと、荷台の後ろに立てかけた。

「なにかくるぞ!」「うにゃー!」「旦那!」

ハシゴから地面に飛び降りると、ベルが走ってきた。

「にゃー!」

「え?! カメ?!」

「え?! カメか!? ケンイチ!」

「ああ、ベルがそう言っている」

「やべぇぞ! 強力でクソ硬ぇ魔物だ」

カメの甲羅はドラゴンの鱗以上の硬度らしい。

川に沿ってくるらしいので、村人たちを下がらせて、コンテナハウスを出した。

2つで直角を作って、その角中に村人たちを避難させる。

「旦那! 黒いのが来たぜ!」

ニャメナの声で指差す方向を見ると、右手から黒い山がのそのそ近づいてくる。

カメの歩みを想像して遅いかと思ったのだが、人がゆっくり走るぐらいの速度だ。

「ケンイチ! 反対側からも来た!」

アネモネの声で左手を見ると、そちらからも山が接近中だった。

「とりあえず右手からやる! アネモネ、左手を魔法で抑えててくれ! アマランサス、アネモネの援護を!」

「承知いたしましたわぇ!」

「ここは――ホイールローダー召喚!」

コ○ツさんの戦闘バージョンかと思ったのだが、ドラゴンより硬いとなると切れないかもしれない。

――となると、カメの弱点といえばひっくり返せば……。

大きなタイヤを履いたオレンジ色の巨体が落ちてきたので、運転席に乗り込んだ。

久々に使うが大丈夫か?

いや、アイテムBOXに入れておけば時間は止まったまま。

前に使ったままで止まっているはず――少々不安を感じながらキーをひねると、一発で始動。

黒い咆哮を上げた。

「よし!」

俺はギアを前進に入れると、アクセルを踏み込んで魔物に向かって突進した。

相手もデカいが、質量からすればこちらのほうが上だろう。

ぶつかり合いなら重いほうが勝つ!

バケットを降ろして黒い山をすくい上げるように激突した。

なんとも例えようのない、くさいにおいが鼻に飛び込んでくる。

相手は3mほどあるカメ――というよりは、子どもの頃の図鑑で見たワニガメに似ている。

甲羅も六角形になっておらず、苔むしていて草が生えて花が咲いていた。

巨大な口には鋭い牙が見えており、食いつかれたら身体がちぎれて即死だろう。

「おりゃぁぁ!」

レバーを操作すると、ワニガメの下に滑り込ませたバケットを勢いよく持ち上げる。

バケットにあおられた魔物が勢いよく土とともにひっくり返った。

地面が掘り起こされてカビ臭いにおいが、辺りに立ち込める。

「「「おおお~っ!」」」

魔物の周りを囲んでいた獣人たちから歓声が上がった。

「ケンイチ、丸太だ!」

聞こえてきたアキラの声に従って、アイテムBOXから丸太を出した。

「野郎ども! この丸太を持ち上げて、魔物の口に突っ込め!」

「「「うぉぉぉ!」」」

獣人たちが丸太に集まってくると、それを持ち上げた。

映画でドアを打ち壊すときに、こんなシーンを見たことがあるが、アキラはなにをするつもりなのだろうか?

「突っ込め!」

「「「うぉぉ!」」」

丸太を持った獣人たちがワニガメ目掛けて 吶喊(とっかん) した。

攻撃の先端が魔物の口に近づくと大きな口を開けて、それを迎え撃つ。

丸太に鋭い牙が食い込み、メリメリと木が木っ端のように割れていく。

案の定すごい口とパワーだ。

あれに挟まれたら、人間の身体など真っ二つになるだろう。

元世界にいたすっぽんは食いついたら離さないなんて言われていたが、この魔物もガッチリと丸太に齧りついてしまった。

「そのまま押さえていろよ!」

「「「おおお!」」」

獣人たちの筋肉が盛り上がると、ワニガメとの綱引きが始まった。

それから離れたアキラは、魔物の口の間近まで接近すると叫んだ。

「おりゃぁぁ! マヨパワー全開!」

彼の指から、黄色い粘液がワニガメの口内に噴射された。

止めどもなく噴射されるマヨに、魔物の口はすぐに満杯になった。

「ゲボッ!」

大きな音とともに黄色いものが吐き出されるが、アキラの指から噴射されるそれは止まらない。

ついには吐き出されることもなくなり、ワニガメの体内はマヨで満たされてしまった。

こうなれば、丸太にかじりついてはいられない。

魔物は黄色いものが詰まった口を開いた。

「よし! 離れろ!」

「「「うおおお!」」」

獣人たちが丸太を担いでその場から離れると、ワニガメはひっくり返ったままバタバタと暴れ始めた。

「ははは、万物窒息!」

アキラが言うとおり、どんな最強の生き物でも窒息からは逃れられない。

彼は、こいつでドラゴンも倒しているのだ。

「ケンイチ! こっちも!」

俺はアネモネの声で、彼女のほうを見た。

聖なる盾(プロテクション) の魔法で、アネモネがもう一匹のワニガメを押さえ込んでいる。

「アネモネ、すぐに行く!」

「ケンイチ! ゴーレムのコアを出して!」

「おう!」

彼女にはなにか策があるようだ。

おれは、小さな大魔導師の言うとおりに、アイテムBOXからゴーレムのコアを出した。

「むー!」

アネモネが 聖なる盾(プロテクション) の魔法を解くと、透明な壁がなくなり再び小山のような魔物の進撃が始まる。

「アネモネ!」

迫りくる巨大な魔物に微動だにしない彼女だったが、目の前に土の壁が出現した。

彼女がコアを使って、森の土のゴーレムを作ったのだ。

そのまま土の壁は大きな波のように魔物を襲い、そのまま敵をひっくり返す。

土を被り逆さまになっているワニガメがジタバタしている。

「野郎ども! 今度は向こうだ!」

アキラはアネモネがひっくり返した魔物を狙うようだ。

「「「おお!」」」

「丸太は持ったか!?」

「「「おおおっ!」」」

「そりゃ~! 突撃~っ!」

「「「うぉぉぉっ!」」」

再び丸太を持った獣人たちが魔物に突撃する。

このカメは口の周りになにかが来ると反射的に噛んでしまうようである。

口が塞がれば、アキラのマヨ攻撃が炸裂する。

あっという間にワニガメは、ひっくり返ったまま窒息した。

「よっしゃ! 勝どきを上げろ~! ウラーウラーウラァァ!」

「「「ウラーウラーウラァァ! うぉぉぉっ!」」」

「やったにゃぁ!」「やったぜぇ!」

なんか獣人たちが盛り上がりまくっているが、魔物を倒して終了ではない。

川を渡って、その先に行かねばならないのだ。

まだ先は長いのだが攻撃のパターンはできた。

「アネモネ、よくやってくれた。ゴーレムでひっくり返すのは使えるな!」

「うん!」

「あはははっ!」

笑い声が聞こえてきたので、そちらを向くと、コンテナハウスの上でセテラが腹を抱えて笑っていた。

「こっちは真剣にやっているんだぞ?」

「あはは、ごめん。でもさぁ、魔物をそんな風に倒すなんてぇ」

魔法は通さないし剣でも切れないので、かなり苦戦する魔物らしい。

「アキラたちはどうやって対処していたんだ? マヨで窒息させるのは決め手だろうけど」

「俺のパーティーには、センセの 拘束(バインド) の魔法があるからな」

「ああ、そいつで拘束してからマヨ攻撃か」

「はは、そゆこと。でも動き回っている敵には使えないからな。不意打ちするなどの工夫が必要になる」

そこにツィッツラが走ってきてアキラに抱きついた。

「すごいよアキラ! あんな魔物を簡単に倒しちゃうなんて!」

「はっはっは! これが竜殺しの実力ってやつよ!」

「竜殺し?!」「竜殺しだって?!」

「アキラは、帝国でドラゴンを初めて退治した男にゃ」「アキラの旦那は帝国の皇帝の懐刀だったんだぜ?」

「ええ?! なんで、そんな偉い人が、こんな場所に」

「はは、色々とあってな」

まぁ、そのとおりだな。色々とありすぎて話すと長くなりすぎる。

それはいいのだが、アキラとツィッツラが抱き合って、キスなんてしている。

「おいおい、昼間からちょっと自重してくれよ」

「フヒヒ、サーセン! いやぁ、ちょっと盛り上がっちまってなぁ」

――といいつつ、アキラの手がエルフの下半身をまさぐっている。

「デカい魔物を退治したから、お祝いをしたいところだが、まだ先は長い。しばらくおあずけだぞ?」

「そうだな」

アキラの話では、ひっくり返すことができれば腹は柔らかいので剣が通るという。

「それなら、落とし穴とかも使えそうだな」

「ハメることができれば、俺のマヨ油も使える」

「つまり、火炙りか……」

「火炙りといえば、こいつは美味いぞ?」

「食えるのか?」

「ああ、内臓は臭くて駄目だが、肉は締まっていて味が濃い」

「すっぽんみたいな?」

「ああ、それそれ……」

この世界は、カメを食う習慣がないようだが……。

「お前ら、食うか?」

獣人たちに聞いてみても、気味悪がって誰も手を挙げない。

飢餓でこれしかないというなら食うのだろうが、積極的に食いたい獲物ではないらしい。

「仕方ない。俺たちで消費するか」

「ははは、美味いのに」

アキラは笑っているが、日本人はなんでも食い過ぎだからな。

戦闘が終わったので、コンテナハウスを収納して村人にも魔物を見せてやる。

「こ、こんな大きな魔物を……」

マサキの周りに村の獣人たちが集まってきた。

「あの旦那は竜を殺したこともあるってよ」

「ドラゴンを?!」

「ああ、帝国でも王国でも、竜殺しは有名だぞ? ここらへんには噂も伝わってないか?」

「……はい」

まぁ、交流がまったくないってことはそうなんだろうなぁ。

共和国とカダン王国の反対側にある王国と取引があるらしいが、そこからは噂は入っていないのだろうか?

いや、統一の国祖である将軍様より偉くて強い人間がいたら困ることになるから、情報が検閲されているのかも。

共和国で宗教が禁止されているのと同じように。

魔物を倒したというのに、マサキがしょんぼりしている。

「どうした?」

「あの……我々は、なんのお役にも立ちませんで……」

「戦闘は、戦闘が得意なやつに任せればいいんだよ。農民が武器を取ってなんの役に立つ?」

「確かにそうなのですが」

「適材適所、不得意なことに首をつっこむ必要はない」

これで首をつっこみたがるやつがいると、ハッキリいってかなり面倒なことになる。

働き者の無能とか、無能な味方は有能な敵より脅威――とか言われるやつだな。

それはさておき、敵は排除したのだが、アオイの話だと反対側にも気配を感じるらしい。

川を渡って対岸の敵も排除しなくては。