軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

227話 脚がある!

サクラの近く、崖の上に広がる台地を測量している。

全部を測量するには時間がかかりすぎるので、今回は川の周辺だけ。

その測量によって、オダマキに通じている転移門の場所も発見した。

途中でやってきたアキラも合流して、川の上流へと向かっていたが、先にパトロールをしていたベルから興味深い報告を受ける。

川の先には、大きな湖があるという。

湖の中の島には城らしきものが見えるらしい。

こりゃ、冒険の予感しかないが――そこには空を飛ぶ魔物がいるという。

こいつをなんとかしなくてはならない。

目的地の湖まであと3kmに迫った地点。

俺たちはキャンプをすることにしたが、安全を考えて森の中に陣を構えた。

「ケンイチ、ここで大丈夫かにゃ?」

「相手が鳥っていうなら、数リーグ先からでも見えると思うがなぁ」

「それじゃヤバいんじゃないのか? 旦那!」

獣人たちが少々ビビっている。

空飛ぶ魔物ってのは、やっぱり天敵なんだろう。

「大丈夫、森の中なら突っ込んでこれないし、だいたい鳥ってのは暗闇で目が見えないからな」

「そうなのかい? アキラの旦那」

「まぁな、鳥目っていうぐらいだし、はは」

獣人たちは鳥目を知らないらしい。

彼女たちは夜目が利くので、ピンとこないのだろうか?

「聖騎士様、鳥は夜でも目が見えるぞぇ?」

「ええ? そうなのか、アマランサス」

「はい」

「え? マジで? ずっと勘違いしてたわ」

俺もアキラも知らなかった。

「でも、ドラゴンとかも夜は飛ばないんだろ?」

「まぁ、帝国でも聞いたことはないな」

そういえば、フクロウなどはむしろ夜行性だしなぁ。

普通の鳥でも夜目が利くのか……。

目は見えても、森の中まではやってこないだろう。

俺たちはおにぎりとカップ麺。獣人たちは自分たちで捕まえた鳥を焼いて、カレー粉と塩で食っている。

なんだか美味そうなのだが……。

「湖に面白いものがあればいいね!」

アネモネがカップ麺を食べながらそんなことを言うのだが……。

「失われたお宝とかな、フヒヒ」

「あるかなぁ」

「でも、こんな場所に来たやつなんていないんだろ? それじゃ盗掘もされていないだろうし、その可能性は十分にあるんじゃね?」

「まぁな」

元世界のピラミッドのことを思い出したな。

建物が誰かの墓だったりしたら、荒らしてもいいものなのだろうか?

「誰かの墓とかの可能性は?」

「まぁ、そう言われると、墓荒らしはちょっと気が進まないかな?」

「そんなのお宝優先にゃ!」「そうだよ旦那!」

ええ? 獣人的にはそうなのか?

「そうだな。判断は現場で調べてからだな」

「私は、冒険優先!」

「恐ろしい魔物がいるかもしれないんだぞ?」

「そんなの、ケンイチといれば平気だから!」

「妾も、聖騎士様と一緒ならば平気じゃ!」

夕食が終わったあと――暗闇の中、皆からちょっと離れた場所で、アマランサスと夜のお遊び。

俺を独り占めできると、彼女も張り切っている。

「ふ~、聖騎士様ともっと早く出会えておればのう」

ベッドに寝転ぶ俺の胸にアマランサスが顔を埋めている。

「早く出会っても、王妃じゃ手が出せなかったろ?」

「そのようなものは、さっさと放り出せばよい!」

「そう簡単に行くかよ。お城でのできごとは偶然に偶然が重なって起きたことだし。そもそもリリスから祝福を受けないと、聖騎士になれなかったわけだし」

「そ、それはそうじゃが……」

「俺なんかより、アマランサスのほうがよほど聖騎士っぽいが?」

「妾が?」

彼女が驚いたように身体を起こした。

鍛え上げられたアスリートのような上半身が俺に迫ってくるが、その機能美――およそ王妃の身体ではない。

これじゃ、国王陛下も歯が立たないだろうと思われる。

「ああ、聖騎士の祝福を授けるというのが王族であるリリスの能力だとすると、その力を内包している王族がいてもおかしくないだろ?」

これだけの身体と能力が、後天的なものだけとは考え難い。

「つまり、妾が自らに祝福を与えて聖騎士となったと申すのかぇ?」

「まぁな」

「そのようなことがあるはずがない! ぎゃぁぁぁ! あぐぐ!」

突然、激昂したアマランサスが、裸のままベッドの上で転がり始めた。

今の発言が主人に対する反抗だと取られたのかもしれない。

「落ち着けアマランサス、そういう可能性もあると言っただけだ」

「聖騎士様は、妾のことが嫌いなのかぇ?! ぎゃぁぁぁ!」

「違う違う! なんでそういう話になるんだ! 大丈夫だ、なにがあってもお前を守ってやるから心配するな」

「ほ、本当かぇ!?」

「そうじゃなきゃ、裸でこんなことするかよ」

「聖騎士様ぁぁぁ!」

涙を流したアマランサスが俺に抱きついてきて、子どものように泣いている。

この話題は止めたほうがいいな。

あくまで俺は聖騎士で、彼女はその聖騎士に助けられたお姫様なのだ。

それなら奴隷紋を外せばいいと思うのだが、なぜか解らんが彼女はそれを拒否している。

奴隷としてこき使われるのはOKらしいしなぁ。

まったく意味不明だ。

――アマランサスと遊んだ次の日。

朝飯を食ったら出発する。

残りは3kmほどらしいので、測量は一旦中止する。

作業をしている間に、空飛ぶ魔物に襲われたりしたら大変だ。

3kmぐらいなら、いつでも測量が可能だしな。

川を遡ると、皆が言うように開けた場所に湖がある。

ほぼ円形で直径は300mほどだろうか。

ちょうど森の切れ目付近で俺たちは偵察を始めた。

畔までは約200m――背の低い草むらで覆われており、白や赤の花が咲いているのも見える。

木はまったく生えておらず、見渡しがいい。これじゃ間違いなく敵に見つけてくれと言っているようなもんだ。

下は湿地かと思ったのだが、地面はしっかりしている。

湖の中心部分に中の島が見えるので――俺はアイテムBOXから双眼鏡を取り出した。

双眼鏡を覗く。

緑に埋もれた白い石造りの建物らしきものが見える。

「ああ、たしかに建物が見えるな。上に高くないので城かは解らん……」

見た感じでは平屋に見えるが、緑に埋もれているので不明だ。

「ケンイチ、私にも見せて!」

アネモネが俺の隣でぴょんぴょんしているので、双眼鏡を彼女に渡した。

「中の島は随分デカイな」

俺はアイテムBOXから、レーザー距離計を出した。

「一番奥の岸まで約300mで、中の島まで約100m」

「つまり、丸い300mの湖の真ん中に100mの島があるってことだな」

アキラが地面に図を描いた。

「そういう感じだろう」

アイテムBOXの中には船外機付きのボートが入っているから、渡るのは問題ないだろう。

問題は、空飛ぶ魔物ってやつだが……。

「アネモネ、なにか見えるか?」

「う~ん……あ! なにか動いている!」

「どこら辺だ?」

「右端のほう……」

俺はアイテムBOXから、天体望遠鏡を出した。

オダマキの海岸で使ったやつだ。

こいつなら、魔物の正体まではっきりとみえるだろう。

ただし、像は逆さまに映るけどな。

アネモネに、白い望遠鏡の横についているファインダーで当たりをつけてもらう。

最初は低倍率接眼レンズで目標を捉える。

上下左右逆に動くので相手を捉え難いが――確かになにかいる。

「お? いたぞ?!」

「マジか」

目標を捉えたので、接眼レンズを高倍率のものに切り替える。

天体観測だと俺たちのいる惑星が自転しているのでどんどん動いてしまうが、これはそんなことはない。

焦点ノブを回して、映し出されたその姿は――鋭い目と大きく鋭い黄色いくちばし。

茶色の羽毛に覆われている巨大な生き物。

「鷲か? 鷹?」

「ケンイチ、見せてくれ」

「ホイ」

アキラに接眼レンズを譲る。

「お~、確かに鷲っぽいな。アメリカにいるアレだろ?」

「あれは、ハクトウワシかな?」

「それそれ、イーグル○ムだっけ? そんな面だな」

「ケンイチ! 見せて見せて!」

首に双眼鏡をかけたアネモネを始め、獣人たちやアマランサスにも見せる。

「なんだにゃー! こんなに遠くが近くに見えるにゃ!」「でも、逆さまだぜ?」

「それは仕方ない。そういうものなんだ」

皆が望遠鏡を覗いているので、俺はドローンを使って、空中から探索することにした。

ドローンなら100mぐらい飛ばせるので、あの島の形ぐらいは撮れるかもしれない。

そのためには湖の畔まで近づかないと。

俺は車を召喚したのだが、それを見てアキラが心配そうにしている。

「おい、ケンイチ大丈夫か?」

「車のスピードなら平気だろう。それに2tほどあるこいつを持ち上げられるとも思えんし」

「俺は知らんぞ?」

「にゃー」「みゃ」

ベルとカゲも心配そうだ。

「お母さん大丈夫だ。なにはともあれ、やってみないことには先に進めんし」

「任せた」

「ケンイチ! 弩弓を出してにゃ」「そうだよ旦那! 俺たちも行く!」

「私も!」

「妾もじゃ!」

アキラと森猫たちは残るようなので、アイテムBOXからクロスボウを取り出して獣人たちに配った。

彼女たちが弦を張って矢を番える。

「オッケーにゃ!」「よっしゃ!」

アキラに手を振ると、車を出発させた。

畔までは200mぐらいあるので、背の低い草むらを車で押し分けて走る。

地面はしっかりとしているので、タイヤを取られる心配もない。

途中から砂地に変わり、それが畔まで続いている。

湖面は鏡のように澄んでおり、青い空と白い雲、そして中の島を逆さまに映し出していた。

車を停車させると、ドローンの準備をする。

アネモネには双眼鏡で監視を頼む。

「発進~!」

4つの小さなプロペラを持ったドローンが飛びたつと、コントローラーの液晶画面には、湖の景色が映し出されている。

徐々に高度を上げると、建物の様子が見えてきた。

どうやら建物も円形に建てられている感じだが、全体像を掴むためには高度が足りないようである。

「くそ……」

俺が苛ついているとアネモネが敵の状況を教えてくれた。

「ケンイチ! 魔物が動いたよ!」

「よし! 撤収!」

――とか言っている間にドローンが攻撃を受けたようだ。

コントローラーのモニタに巨大な影が見えたと思ったら、映っていた景色がグルグルと回り映像が途切れた。

墜落したらしい。

「畜生!」

俺は車を発進させると、ジグザグ走行を始めた。

「どうだ! 生き物にこんな動きは不可能だろ!」

ハンドルを切った場所――車の右側に茶色の巨大な生物の影が現れて、地面に爪が突き刺さる。

この車と同じぐらいの大きさ――ということは全長は5mってことになるが、翼はもっとデカい。

広げたら10mぐらいになるんじゃなかろうか。

「ふぎゃー!」「んにゃろー!!」

左右に振られる窓から身を乗り出した獣人たちが、クロスボウを右側に一斉発射した。

2本の矢が魔物に刺さったようだが、ダメージは……。

「巨大な鷲?」

「でもケンイチ、脚が四本あるよ!」

「グリフォン?!」

地面に巨大な影を落とす大きな翼と、鋭い爪。

鷲っぽいのは前側だけで、後ろ足は馬のように見えるが……。

上半身と大きな翼は茶色だが、後ろは黄土色の体で羽毛は生えておらず、黒い尻尾と蹄が見える。

草をかき分けて、車は森に近づいていく。

「聖騎士様! 妾を降ろしてたもれ!」

「馬鹿を言うな! お姫様を守る聖騎士が、お姫様降ろしてどうするんだ!」

「ケンイチ撃っていい?」

助手席でアネモネが目を輝かす。

「いいぞ、時間稼ぎになるが――大丈夫か?」

「まかせて! 光弾よ! 我が敵を討て!(マジックミサイル) 」

後ろの座席にいったアネモネが、窓から魔法の矢を放った。

白く輝く光の矢が魔物に3本ほど向かったが、弾かれてしまったようだ。

効果は薄い感じだが、敵はバランスを崩して地面に着地したため、土と千切れた草が舞う。

いい時間稼ぎにはなった。

「もうすぐ森だ!」

俺は車を走らせて、そのまま森の中に飛び込んだ。

森の中に入れば、障害物だらけで簡単には飛び立てなくなるため、今度は向こうが不利になる。

ここまでは追ってこないだろう。

そのまま待機していると――俺の予想どおりに巨大な魔物は、そのまま自分の巣に戻ったようだ。

「ふう……」

俺はハンドルに突っ伏して、深呼吸をした。

「多分、空飛ぶ召喚獣を使ったので、縄張りを荒らされたと思ったにゃ」「そうだよ旦那」

「ああ、なるほどな」

アキラの車が近づいてきた。

「おおい、ケンイチ。大丈夫か?」

彼が窓から顔を出す。

車の横には森猫たちも一緒だが、あの魔物相手では、流石にベルたちも歯が立たないだろう。

「大丈夫だが、脚が4本あったぞ? 鳥じゃないな」

「ああ、そう見えた気がする。ちょうどラ○クルと同じぐらいの大きさだったな」

「車に乗ってりゃ、さらわれる心配はないと思うが……湖は渡れないな」

「水の上じゃ逃げ場所がないしな」

車から降りて作戦会議をする。

「グリフォンだと思ったが……アキラ、帝国で見たことがあるか?」

「いいや、初めて見たな」

「お城の魔物の図鑑に載ってたよ」

アネモネはお城でコピーしたほとんどの本に、すでに目を通してしまった。

「本当か?」

「うん」

「でも、ちょっと違うんだよなぁ。後ろが馬みたいだったぞ?」

「グリフォンって、ケツがライオンみたいだった気がするが……」

アキラがつぶやくが、俺もそんな感じがする。

俺はシャングリ・ラの電子書籍から、ファンタジー系のモンスター図鑑を購入した。

そこから似たような魔物を探す。

ペラペラとページをめくると、それっぽい魔物がいた。

「これか? ヒポグリフ」

「ああ、聞いたことがあるな……ヒポポタマス」

「それはカバだろ?」

「そうだったけ? フヒヒ、サーセン!」

「それはいいが、あれをどうやって倒す? ワイバーンより動きが速かった気がする」

「そうだな――鷲みたいに上空から、急降下攻撃してくるんじゃね?」

「それじゃ、時限爆弾を付けるのも難しいだろうなぁ……」

ワイバーンのときは、背後が崖で急降下攻撃ができなかったことが俺たちに有利に働いた。

あのときは地の利に恵まれたが、ここは平地でひたすらに見渡しがいい。

今回は魔物に地の利がある。

――とはいえ、どきどきわくわくの巨大な遺跡のようなものを目の前にして、ここで引き返す選択はない。

どうしても倒せないのであれば、応援を頼むのもやぶさかでないが、まだまだその段階ではないしな。

「ケンイチ、銃か大砲は作れないのか?」

「アキラが考えてるような代物は無理だ」

彼が言っているのは、元世界にあったピストルやライフルのことだろう。

「まぁ、火薬はあるし単管に詰めればできなくもないが――実験をやってる暇もないし、暴発する未来しか見えない」

単管の後部に鋼板を巻いて強化しないと爆発するだろうな。

「手作り銃はヤバいぞ?」

爆薬や爆雷も作っているし、いまさらと言えばいまさらだが。

「う~ん」

「聖騎士様、妾が囮になりますゆえ」

「はい、却下」

俺は、アマランサスの申し出をすぐさま却下した。

彼女はそれが気に入らないようであるが、冗談じゃない。そんなことができるか。

だいたい――昨日の夜、守ってやるって話をしたばかりじゃないか。

「旦那、毒はどうだい?」

黙って話を聞いていたニャメナから提案が出た。

「毒か……」

「ほら、お城のネズミを毒で始末したじゃないか?」

「いいかもな! 毒なら見ているだけでいいし。危険も少ないだろう」

「でも、肉が食えなくなるにゃー」

ミャレーが妙なことを心配し始めた。

「俺もヒポグリフの肉とか食ってみたいけど、諦めるしかないかもな」

「にゃー」「みゃ?」

森猫たちが俺の所にやってきてスリスリしている。

「お母さんまでそんなことを言うのかい? 安全第一だよ」

「そうだな、ご安全に!」

「ヨシ!」

俺はアキラの言葉に右手の人差し指を突き出した。

早速、作戦を実行に移す。

毒を撒いておけば、後は見ているだけでいいのだから、こいつは楽だ。

まずは、シャングリ・ラで肉を10kgほど買う。

豚肉でいいだろう。こいつは撒き餌だ。

次に毒だが、王宮のネズミ退治につかったときと同じ一斗缶に入った不凍液を使う――ジエチレングリコールだ。

甘いにおいがするので、敵をひっかけやすい。

「甘い、いいにおいだにゃー」「美味そうなにおいだな、クロ助」

俺の周りで鼻のいい獣人たちがウロウロしている。

「前も言ったが毒だからな。飲むなよ? マジで死ぬぞ」

俺が一斗缶の不凍液をバケツに移し替えていると、アキラが覗き込んでいる。

「ケンイチ、ジエチレングリコール入りのワインを、友好の証とかいって敵に送るってのはどうだ?」

「人間相手の戦の話か?」

「そうそう――不凍液入れたワインは甘くて美味くなるだろ? ガブガブ飲んで中毒を起こしたところに奇襲をかける」

「願わくは、その手を使う日が来ないことを願うよ」

「さすがアキラにゃ! 卑劣にゃ!」「ドン引きだぜ」

「なるほどのう……」

獣人たちはドン引きして、アマランサスは感心している。

「褒めてくれてありがとう、ははは」

「帝国じゃ、そういう仕事もやってたのか?」

「まぁな」

彼はポツリとそう言って、なにも話さなくなってしまった。

なにかトラウマ的なことを思い出したのかもしれない。

帝国はブラックだと言っていたが、相当なブラックだな。

準備が整ったので、肉と不凍液をアイテムBOXに入れて畔に向かう。

車で畔の砂地にやってくると、板を広げてその上に肉を置くと、すぐに戻ってきた。

ヒポグリフなら頭は鷲――相当に目はいいだろう。

砂地に置かれたなにかに、すぐに気づくはずだ。

俺たちは、それを離れた所から見ていればいい。

森の出口に三脚を立てて、その上に双眼鏡を固定する。

テーブルや椅子などをアイテムBOXから出して、監視所を作ると交代で見張る。

アネモネ用に乗る台も用意――態勢は万全だ。

まったりとお菓子やジュースなどで一休みしていると、双眼鏡を覗いているアネモネが声を上げた。

「ケンイチ! 来たよ!」

「お?! ちょっと見せてくれ」

「うん」

双眼鏡を覗くと――確かにヒポグリフが板に置いた豚肉をついばんでいる。

「さて、不凍液は飲むかな?」

「ケンイチ! 見せてにゃ!」

「ほい」

「にゃー! あ、入れ物に入っている、あの毒を飲んでるにゃ!」

「マジか」

「うにゃー!」

「クロ助、俺にも見せろ!」

代わってニャメナが双眼鏡を覗き込む。

「飲んでる飲んでる! 頭が鳥でケツが馬? あんな化け物初めて見たぜ!」

「他にいないってことは、ここで作られたものとか?」

俺のつぶやきにアキラが反応した。

「ああ、ゲートキーパー的な。しかし魔法で魔物が作れるのかねぇ。そんな話は帝国でも聞いたことがなかったぜ?」

「そんなことが簡単にできるのなら、魔物を作りまくって戦略兵器として使いまくりだろうし」

「まぁな」

魔物は綺麗に肉を平らげたようである。

不凍液が入ったバケツもひっくり返っているので、飲み干したようだ。

さて、毒は効くだろうか?

キャンプをしつつまったりと待つ。

ヒポグリフの巣を監視するために、三脚に固定した天体望遠鏡を設置したが、こいつは像が反転して見えるので扱いづらい。

シャングリ・ラから正立プリズムというのを購入した。

これを使えば普通に見えるので、他の者たちにも好評だ。

少々暗くなるが、昼間に使うので問題ないだろう。

そのまま飯を食い、アキラたちは酒を飲む。

森猫たちには猫缶をあげた。

暗くなってしまったので魔物がどうなっているか解らないが、夕方から巣でじっとしているので、夜に襲われることはないだろう。

ベルたちのパトロールでも、他に魔物はいないようである。

「魔物がいるなら、中の島の建物の中じゃね?」

「にゃー! 多分、ダンジョンになっているにゃ!」「俺もそう思うぜ、旦那」

「あれは、どう見ても人の手で作られたものみたいだしなぁ」

この場合は人工のダンジョンってことになるのだろう。

飯を食い終わったので、アネモネと一緒に寝る。

森猫たちも一緒だ。

「んふ~! もう! 中々私の番に回ってこない!」

「そう言うなよ、アネモネ」

「私だけのケンイチだったのに!」

まぁねぇ、大人ぶってはいるけど、まだまだ甘えたい年頃だと思うし。

彼女と一緒に、森猫たちにブラシをかけて寝た。

――魔物に毒を食わせた次の日。

朝飯のグラノーラを食いながら、ヒポグリフの観察をする。

「あ! 動いたよケンイチ!」

魔物の様子が気になるのか、急いで朝食を食べたアネモネが、望遠鏡を覗いている。

「様子はどうだ?」

「う~ん、別に変わっていないみたい」

「元気そうか?」

「うん」

「あの魔物にゃ、不凍液は通じないのか……なにか他の毒を……」

「ケンイチ、そんなものがあるのか?」

「聖騎士様?」

アキラとアマランサスが、俺のほうを見ている。

俺は、魔物退治に使えそうな知識を思いだした。