軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

215話 開墾を始める

日が暮れて真っ暗になったサクラに帰ってきた。

俺が運転するマイクロバスには、移住希望者が30人ほど乗っている。

見たところ高齢者と女が多く、稼げる若者は皆が街に行ってしまったようだ。

辺境伯領に入植する新しい土地は、森の中。

長年森だった土地は、腐葉土がたくさん積み重なっており、栄養が豊富だが開墾が大変だ。

この村人たちの人手では、普通なら開墾は困難であるのだが、辺境伯領には俺の重機とアネモネの魔法がある。

ちょちょいのぱっぱで住む所と畑を作ってやって、村で暮らせるようにしてやらないとな。

村長は、そんなことができると信じていないようだが。

長旅で疲れている村人のために大型のテントを出してやり、寝床を提供した。

俺は仕事を終え、久々の自宅に帰ってきたが、家が少々変わっており、奥にメイドの宿直室が増えたようだ。

いつも外で待機してくれていて気になっていたので、これは良い改善だと思う。

以前は、この家を持って歩くためにアイテムBOXに入れていたので、増築ができなかったが、今はコンテナハウスがある。

一部屋増えた家の中には、ワンピースの寝間着に着替えた女たちがいる。

部屋の隅っこにはベルとカゲが増えた。

今日は、プリムラのメイドであるマーガレットも一緒だが、彼女に聞かれたくない話もある。

一番端のベッドの上で、リリスと一緒に話を始めた。

「本当は2人っきりのほうがよかったが、帰ってきたばかりだからな」

「話というのは、あの新しい森猫のことかぇ?」

「彼にも助けられたよ」

彼女に鉱山に現れたダンジョンのことを話す。

「なに!? ダンジョン?!」

「そうだわぇ、リリス」

いつの間にか、アマランサスが俺の後ろにやってきて背後から腕を回してきた。

「母上、旅先で散々ケンイチと楽しんだのでしょう?」

「全然、たりんわぇ~」

「ケンイチ、母上がこうなったことにも理由があるのか?」

「それは解らんが、ダンジョンから湧き出たスケルトンを退治して、大量の魔石を得た」

「ほう、魔石とな」

「その奥には、レッサードラゴンらしきスケルトンがいて、結構苦戦した」

「なに?! レッサードラゴンのスケルトン? そのようなものが存在するのかぇ?」

リリスが驚くが、本当にいたのだから仕方ない。

「妾も、あのような恐ろしいものは、初めてじゃった」

「おっと、アマランサスでも、恐ろしいとか思うことがあるのか?」

「それは、ありますわぇ。それゆえ恐ろしゅうて、こうやって聖騎士様にすがっておりまする」

そう言って、彼女が俺の首筋にキスをしてくる。

アマランサスの行動にアネモネが我慢できなくなったのか、無理やり割り込んできた。

「くっつきすぎー!」

俺は、割り込むアネモネを捕まえて膝の上に乗せると頭をなでてやる。

「ふわぁぁぁ」

アネモネがおとなしくなったところで話を続けたいのだが――。

「ケンイチ、今日は妾の番ではないのかぇ?」

「今日は無理だが、明日から十分に相手してあげるよ」

「本当じゃな!」

「ああ、でも昼は村の設営とかがあるから駄目だぞ?」

「あの者たちか――いったいどうするのじゃ?」

「村をまるごと持ってきたので、森を切り開いて村を作る」

「なに?! まさか、アイテムBOXに入れてきたと申すのかぇ?」

「まぁ、まてまて、村の話はあとにして、ダンジョンの話をしたい」

「うむ」

俺の顔を見て、リリスはベッドの上に座り直した。

「そして、ダンジョンの奥にな――」

リリスを手招きすると、彼女が俺の所に四つん這いでやって来たので、ひそひそ話にする。

「奥に何があったのじゃ?」

「転移の魔法陣だ」

「は?」

リリスがペタンとベッドの上に座る。

「転移の魔法陣だよ。魔法陣から魔法陣へと瞬間移動できるんだ」

「……」

俺の話を聞いたリリスは、そのまま固まってしまった。

脳みそがオーバーフローでもしたんだろうか?

「転移門のことは、アマランサスは知っていたぞ? リリスは知らなかったのか?」

「知らぬわぇ!」

彼女が大声を上げたので、プリムラとマーガレットがこちらを向いた。

大事な話をしているのが解っているので、聞こえぬフリをしてくれている。

プリムラには話したが、マーガレットに話すのは少々ためらわれる。

彼女は、その手の話をマロウ商会との取引に使ってしまった。

秘密を教えると、同じ取引に使われる可能性がある。

しないとは思うのだが――そう俺に思われてしまった彼女が、信頼を取り戻すには多くの時間を費やすことが必要だ。

「本当に、そのようなことができるのかぇ?」

「できる。実際に皆と移動をしたからな」

「飛ぶのじゃろ? どこに飛んだのだぇ?」

俺は上を指差した。

「空かぇ?!」

「違う違う。サクラの隣に台地があるだろ? その上だ」

「あそこかぇ!」

リリスがベッドの上でぴょんぴょんと跳ねている。

「ニャメナの話では、アキメネスの近くではないかと言っていた」

「ほう! それでは――そこまで行けば、その転移門を使って、オダマキまで一瞬で飛べる――ということじゃな?」

「そのとおり」

「なんということじゃ……」

「聖騎士様のお力があれば、この国を――うふふふふ」

「ケンイチ、母上がおかしいのは、そのせいなのかぇ?」

「よくは解らんが、転移門から帰ってきたらこんな感じになってしまった」

「聖騎士様ぁ~」

アマランサスを引き離して、寝ることにした。

「はい、アネモネも自分のベッドに戻って」

「ぷー」

とりあえず大事な話は済んだ。

部屋を暗くすると、一番端のベッドにリリスと一緒に潜り込む。

彼女の柔らかい身体と温もり――まさか、ここで彼女とゴニョゴニョできるはずもない。

おとなしく寝ることにするが、ちょっと不機嫌だったリリスも機嫌が直ったようで、黙って俺に抱きついている。

貴族の仕事で家を空けることもあるだろうから、納得してもらわないとな。

やりたくはないが、戦になれば参加しなくてはならないだろうし。

そんな日が来ないように願うしかない。

2人で毛布をかぶると、アイテムBOXからタブレットを出して、カメラで取った写真を彼女に見せてやる。

「これがオダマキだ――綺麗な街だったぞ」

「ほう、家の壁が白いのじゃな」

覗き込むリリスの目に画面の光が映っている。

「汗をかくほど暑いけどな。青い空と海、そして白い壁の家々」

「この暗闇の中で光っているのは?」

リリスが指差したのは、暗い海に光る夜光虫らしきもの。

今のカメラは高性能なので、ISOを上げれば暗闇の景色も普通に撮ることができる。

多少ノイズが乗るが、写るだけでも凄い。

「夜の海に光るものがいるんだよ。こうやって光っている」

「ほう! こうやって他の街の景色が見られる魔法というのは、すごいものじゃの!」

「あと、力仕事が多いため、獣人たちが多かったな」

「なるほどのう……これではまた絵師を呼んで、辺境伯の物語を書かせねばならぬの」

「はは、多分面白い話になると思うぞ」

「楽しみじゃ」

写真を楽しんだ俺たちは、寝ることにした。

------◇◇◇------

――サクラに帰ってきた次の日。

朝飯の用意をする。移住希望者は生活の基盤がないので、しばらく援助してやらないと駄目だ。

サクラに帰ってくれば、メイドたちがいるので料理や家事などは任せてしまう。

それに、ここには白い髭の料理人のサンバクもいるしな。

「ケンイチ様! 昨晩にお戻りになられていたと聞きました。起こしていただければ――」

「ケンイチ様! サンバク殿の言うとおりです」

早速、サンバクと紋章官ユリウスが慌ててやってきた。

メイドたちから報告を受けたのだろう。

「いや、2人とも寝てたみたいだし、起こすのは悪いだろ? まさか夜に森の中を走って帰ってくるとは思わないだろうし」

「申し訳ございません」

「はは、2人とも悪くないからさ。ユリウス――リリスからは一応聞いたが、なにか問題は?」

「住民が20人ほど増えた以外、さしたることは――」

「ありゃ、家を結構持ってきたのだが、全然足りないな。まぁ、そのうち建築も追いつくだろう」

物理的に間に合わないのは、いかんともしがたい。

とりあえず飯を食うことにするが――人数が多い。簡単にできるものを、サンバクに大量に用意してもらう。

足りない分は、俺がシャングリ・ラから購入して間に合わせることにした。

「村長!」

「は、はい」

「朝食が終わったら、村の場所を選定しに行こう」

「承知いたしました」

「にゃー」「みゃ」

ベルとカゲもやってきて、俺の脚にスリスリをするので猫缶をやる。

飯ができあがり、皆で今後の話をしながら朝食を摂っていると、アキラが起きてきた。

「オッス!」

「オッスオッス! 飯を食い終わったら、アストランティアに帰るのか?」

「ああ、いい加減顔を見せないと、見限られちまう」

「はは、レイランさんや、他の人達にもよろしくな」

「伝えるよ」

アキラも加わって話していると、獣人たちが顔を見せた。

もう、朝食を食べ終わってしまったようだ。

「ケンイチ! 今日は何をするにゃ?」

疲れ知らずのミャレーが、ぴょんぴょん跳ねている。

「彼らの村の場所を決めて、開墾を行う」

俺は村人たちを指差した。

「ウチらも手伝うにゃ!」

「別に他のことをやっていいぞ。俺とアネモネがいれば、多分大丈夫だし」

「好きにしていいなら、手伝うにゃー!」

「旦那、俺も行くぜー!」

ニャメナも手伝うようだ。

新しくやってきた三毛のミーケと犬人のワルターは、ここでできる仕事を探す。

日銭を稼ぎ、ものを買い、生活環境を整えていくのだ。

俺も最低限の援助はするが、甘やかしてはやれない。

だが、サクラの住民には、困ったことがあればまず相談するようにと言ってある。

今は俺が直接聞いているが、村が大きくなれば下部の組織をまとめる役人も必要だ。

そうなると人材の確保が大事になるが――最初に志に燃えている人材を入れても、代を重ねると利権になって決まって腐敗する。

ここではそうならないようにしないとな。

――と、心でそう思っていたとしても、俺が死んだあとは、どうなるかなんて解らない。

とりあえず俺が領主の間は、腐敗を見逃さないようにしなくては。

俺も元世界で底辺だったからよく解るが、インチキが横行する世の中になってしまったら、真面目に暮らすなんて馬鹿らしくなる。

商売をやろうとしたら、先にできた利権団体によってインチキイカサマばかりだった――そんなことになったら、誰も参入しなくなってしまう。

飯を食い終わったので、村人たちと一緒に湖のほとりへと向かう。

SUV車なら湖まで走れるのだが、マイクロバスはちょっと厳しい。

水際は、砂がしまっているので、車で走るのに都合がいいのだ。

「ねぇねぇ、どこに行くのぉ?」

金髪を揺らしてやって来たのはエルフだ。

彼女は只人といわれる普通の人間と食べるものが違うので、食事は別だ。

「この住民たちのために、森を開墾するんだよ」

「それって領主の仕事なの?」

「本来は違うのだろうが、俺とアネモネがやれば1日~2日で終わるからな」

「ええ?!」

セテラが信じていないような顔をしているが、別に信じなくてもいい。

「そんなの信じられないから、私も行くぅ!」

見物のために、エルフが一緒についてくるようだ。

まぁ、エルフが乗るスペースはあるから大丈夫か。

今回はマイクロバスが大活躍だが、もっと大人数となると厳しいなぁ。

シャングリ・ラをチラリとみたが、中古の大型観光バスも売ってるが――。

元世界でよく見かけた路線バスが10mちょいだったはずだ。

あれがギリギリか。

購入はできると思うが、アイテムBOXに入らなかったらどうしよう。

いらぬ心配だとは思うが、手はある。

後部を少し削ればいいのだ。

後ろバンパーの部分が少々なくなったぐらいで、走行性能には影響はでないだろう。

バスはリアエンジンなので、どのぐらい切るかにもよるが。

最初からフロントエンジンのボンネットバスを買うという手もある。

まぁ、そのときに考えるしかないか。

バスのことを考えながら、湖のほとりに到着するとバスを出す。

「こ、これが湖?」「海じゃないのか?」

「お前たちの村を訪れる前にオダマキに行ってきたが、海はくさいし塩辛いぞ」

「そうそう、海はくさいよぉ」

セテラが嫌そうに鼻を摘んでいる。1回海に行って懲りたのだろう。

「さぁ、乗ってくれ」

村人たちは慣れているので、順番にバスに乗り込むと補助席を開き始めた。

相変わらずギュウギュウ詰めだが、目的地までは数十分で着く。

それまでの辛抱だ。

「これ、乗り物ぉ?」

「エルフ様はそこ」

俺は助手席を指差した。

助手席の補助席もあるので、アネモネをそこに座らせようとしたのだが、エルフの隣は嫌らしい。

ドアから、ベルとカゲも乗り込んできた。

「お母さんも行くのか?」

「にゃー」

「そうか」

「辺境伯様は、そこに座ると決まっているの?」

セテラが運転席を指差した。

「そう、ここに座って、この召喚獣を操るんだ」

「へぇ~」

ドアを閉めると、水際の硬くなった砂の上を走り出した。

何回も走ってなにもないことが解っているので、スピードを出す。

「おおっ! すごい速さだ!」「どんどん景色が流れていくぞ!」

今までと違うスピードに村人たちも驚く。

「ちょっと! 嘘でしょ?! こんなに速いの?!」

エルフもバスの速さに驚いている。

「相変わらず速いにゃ!」「まったく、すげー速さだぜ」

「俺の魔法の力だ」

「それにしては、魔法の力を全然感じないけど?」

エルフってのは魔力に敏感らしい。

「こういうものを出す――それ自体が俺の魔法なんだよ」

「そんなのあり?」

そんなことを言われても、こうやって実際にあるんだから仕方ない。

途中で車を停めて座席に立つと、皆に左側の外を見るように促す。

水際に、背が高く細長い葉っぱの植物が生い茂っており、鉈や大型のマシェットを持って刈り入れを行なっている人や獣人の姿も見える。

「新しい村で普通に麦や芋などを育ててもいいが、湖畔でこれを育ててもいい」

「ケンイチ様――これは?」

村長が、じっと外を見ている。

「これは、サトウキビといって、こいつから砂糖が取れる」

「……えっ!?」

「砂糖だよ、砂糖。なめると甘いやつ」

「ええ?! 砂糖だって?」「この草みたいなものから?」「本当かな?」

「嘘をついても仕方ないだろ?」

「アレを齧ると甘いにゃ!」「大鍋でグツグツ煮て、そいつを煮詰めると甘い塊ができるんだよ」

身振り手振りサトウキビを説明する獣人たちの演説に、村人たちが聞き入っている。

「それでは本当に砂糖が……」

「まぁな。でも砂糖が儲かるからといって、農作物を1本に絞るのはよくない。病気、害虫などで不作になると詰むからな」

「それは心得ております」

村長にもそういう経験があるらしい。

彼らを別の畑につれていく。

こちらも背の高い植物が茂っているが、こっちはトウモロコシだ。

元世界のように、糖度を上げるために間引きしたりしないので、たくさん実をつけてしまっているが。

ほとんどが粉に挽かれて使用されているので、これで問題ない。

「村をどうするかは、村人で話し合ってくれ。俺からああしろこうしろとは言わない」

「承知いたしました」

エルフが外のサトウキビを眺めている。

「本当に砂糖が取れるのぉ?」

「サクラで、鍋で黒いのを煮てなかったか?」

「あれが砂糖になるの?」

「そうだ」

途中、湖に桟橋が見えてきた。俺が魔法や爆発物の実験を行なっている場所だ。

近くに村ができるってことは、実験施設はもっと離したほうがいいかもな。

車で移動するなら、そんなに時間は変わらないし。

10分ほど走ったので、車を停める。

ここは、サクラから10kmほど離れた場所。

皆で車から降りると、右に見える森に分け入る。

腐葉土の上を村人と列をなして歩く。ベルとカゲはすぐに森の中に入り、パトロールに行ってしまった。

ここらへんは森猫たちの行動半径になっているので、自力でも帰れるだろう。

獣人たちや、エルフも一緒、俺の横にはアネモネがいる。

「むふふ……」

俺の右手をセテラが取ると、左手をアネモネが取った。

「むー!」

「エルフ様は、俺のどこが気に入ったんだ?」

「面白いじゃない。数百年生きてて、こんなにおもしろいのは久しぶりよ」

どうやら長生きをしすぎて、暇なようだ。

「あの、ここらへんに魔物は……?」

森の中だというので村長は心配そうだが、森の中を開墾したほうがいい土地がある。

「結構な数を駆除したし、サクラ周辺に入植が始まったので数を減らしている。大丈夫だよ村長」

「はぁ……」

5分ほど歩くと脚を止めた。

「ここらへんでどうだ? 地面は平らだし、畑に向いていると思うぞ。水際にさっきのサトウキビを植えるとしても、5分ほど歩けばいい」

サクラから少々遠いのだが、近くに畑を作ると、街が大きくなったときに退去しなくてはならなくなってしまう。

このぐらい離れていれば、その心配もないだろう。

「ケンイチ様の仰せどおりに」

「そんなに心配するな。1日1回獣人の見回りをよこす。何かあったら、そいつに手紙を渡せばいい」

「手紙でございますか?」

「村長なら、読み書きはできるんだろ?」

「はい」

彼に、シャングリ・ラで購入した、大きめのメモ帳と鉛筆を渡す。

鉛筆はインクが要らないし、ナイフがあれば研げる。

「この棒で、こうやって書くと字が書ける。先が丸まったら、刃物で研げばいい」

実際にメモ帳に字を書いてみせると、村人たちが覗き込む。

「おおおっ!」

「これを村長に渡しておく」

一緒にエルフも覗き込んだ。

「それ便利ねぇ。私にもちょうだい?」

「ほいよ」

エルフに同じものを渡すと、腐葉土の上で小躍りしている。

その姿は本当に森の妖精のよう。

「やったぁ!」

遊んでいても仕方ない。

とっとと仕事を始めよう。

「まずは村長の家からだな――よし! コ○ツさん召喚!」

空中から黄色い重機が落ちてきて、腐葉土を揺らす。

剣がついていない普通バージョンだが、アダマンタイトの剣つきも使う予定。

「「「おおお~っ!」」」「また、鉄の魔獣?!」

地面を揺らす鉄の魔獣に、村人たちが驚嘆の声を上げた。

次に、アイテムBOXからゴーレムのコアを出した。

「アネモネ、あそこらへんの木を3本ほど倒してくれ」

「解った! むー!」

彼女の魔法に呼応して青い光が集まってくると、コアの中に染み込んでいく。

それが終わると、腐葉土がコアの周りに集まり、巨大なスライムになった。

「「「おおお!」」」「なんだあれは!」「すごい!」

「あれは、ゴーレムにゃ!」「アネ嬢のゴーレムは人型じゃないんだ」

「あれが、ゴーレム?」

村人たちは、獣人たちの説明を聞いて驚いている。

ゴーレムというと人型だと思っているのだろう。

作業をさせるだけなら人型である必要はない。

村人たちが見守る中――高く伸びた腐葉土のスライムが、巨木のてっぺん辺りを押すと、ゆっくりと倒れ始めた。

テコの原理ってやつだ。

根っこをむき出しにして木が倒れると地面を揺らす。

村人から再び歓声が上がった。

「すごい!」「木がこんなに簡単に!」

この方法だと、根っこから倒れるので、処理が簡単でいい。

チェーンソーや斧で切ると、切り株の処理に多大な時間を消費する。

「俺が簡単に終わるって言ったけど、嘘じゃなかっただろ?」

「は、はい……これなら」

「これがゴーレムぅ?」

エルフは、アネモネの魔法になにか言いたいようだが、アネモネが反論した。

「ゴーレム技術の応用だよ。エルフは遅れてるね」

「なんだよ、ちびっこやるのかぁ?」

「べぇ!」

エルフの挑発に、アネモネが舌を出した。

見たこともない魔法の使いかただと馬鹿にしたようなエルフだったのだが、その有用性に気がついたのだろう。

その場に立ったまま、ブツブツと独り言をつぶやいている。

木を3本倒しスペースができたので、コ○ツさんで地面を均してカタピラで踏み固めた。

一応、何度か重機を降りて水平を見る。

村人たちも手伝いをしたそうに眺めているが、俺がやったほうが早い。

いや、本当はこれじゃだめなんだよなぁ――と思いつつやってしまう。

今回は村人を暮らせるようにすることが先決なので、これでいい。

「ほ、本当に、家を置く場所が……」

村長が広く開墾された場所で佇んでいる。

「今、村長の家を出す――」

アイテムBOXから、彼の家を出した。

ちょっと空中から現れるので、家が軋む音が聞こえるが仕方ない。

普通は家の移動なんて不可能だし、方法はこれしかないのだ。

多少壊れたとしても、ここに移動できるだけでも凄いことなのだから。

「「「ほ、本当に村長の家が!」」」「すげー!」

「本当に村ごと持ってきたの?」

エルフは俺の言ったことを冗談かと思っていたようだ。

「だから言っただろ?」

「にゃー! 解っているけど、凄いにゃ!」「うひょー! 家をまるごとアイテムBOXに入れるなんて旦那しかできねぇ」

その様子を見慣れている獣人たちもはしゃいでいる。

そう、この世界じゃ俺しかできない。

いや、探せば同じぐらいの容量を持っている者もいるのかもしれないが。

こんなデカいアイテムBOXを持っているとなれば、悪いやつらや貴族などに目をつけられる。

かつての俺のようにその能力を隠し、密かに暮らしているものもいるかもしれない。

同郷のアキラもアイテムBOXを持っているが、家が入るほど大きくはない。

近くに、村長の家の納屋も出す。

その中には農具が入っているので、村人がそこからこぞって農具を持ち出した。

俺の言うことに半信半疑だった彼らだったが、新しい村の誕生に、居ても立っても居られないのだろう。

新しい生活の予感に彼らの目はキラキラと輝いていた。