軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

176話 エルフの大使

エルフの村を訪れたのだが、スライムに襲われていて、村はもぬけの殻。

透明な魔物を退治して、エルフたちを探すと、木の上に作られたツリーハウスに避難をしていた。

丸太で作られた頑丈なツリーハウスは、避難場所としても利用できるように作られていると、以前にエルフたちから聞いていたので、そのとおりだったわけだ。

エルフたちがスライムを怖がっているので、予定を変更して、彼らと協力して残敵の掃討をすることになった。

食事を提供したりしていると、彼らがお礼をしてくれるという。

この場合のお礼というと、ナニをナニすることだが、リリスとアネモネがいるのに、そんなことができるはずがない。

ちなみに獣人たちは、基本的に一夫多妻制なので、この手のことには寛容だ。

力を持っているオスが、多数のメスを従える――という家族構成になっているというし。

以上のことから、人間の女に関してはなにも言わないミャレーとニャメナであるが、相手が獣人の女だとそうはいかない。

種族が同じだと、見る目も厳しくなるのだろう。

夜になると、俺達はそのままコンテナハウスで寝たのだが、外のテントで寝ていたアキラは、夜中に抜け出してエルフたちの所へ向かったようだ。

――エルフの村で次の朝。

朝食の準備をしていると、何食わぬ顔でアキラがやってきた。

「オッス!」

「オッスオッス!」

朝は皆のリクエストで、グラノーラにした。

サクラにサンバクがきて、料理を作ってくれるおかげで、朝からいわゆる普通の食事が出てくるようになった。

彼には大変感謝しているのだが、逆にジャンクな朝食を食べたいと思っても、食べられなくなってしまったのだ。

それは俺だけかと思っていたのだが、皆もそうだったらしい。

それならばサンバクに相談をして、週に1度ぐらいはジャンクな食事の日を作ってもいいかもしれない。

そういう日があれば、サンバクも休めるだろう。

黙ってグラノーラを食べるアキラだが、なにも言わないし――俺もなにも言わない。

彼がエルフの所へ行ったのは確かだし、耳のいい獣人たちも気がついているだろうが、彼女たちもなにも言わない。

リリスとアネモネは寝ていたが、気がついていただろうか?

それは解らないし――もし知らなかったとすれば、俺が口に出すとやぶ蛇になってしまう。

まして男と女、どちらを相手にしたかなんて聞けるはずがない。

沈黙は金。

だまってグラノーラを食べていると、エルフたちが集まってきた。

グラノーラのおねだりだ。

以前、ここに泊まったときに、グラノーラを食わせたので、それを覚えていたのだろう。

彼らは牛乳が駄目らしいので、以前と同じように調整豆乳を使った。

「美味しい!」「美味いぜ!」

エルフの男も女もグラノーラを頬ばっているのだが、アキラを見ているエルフの男たちの視線が明らかに違う。

それを見て、俺は察した。

まぁ察しただけで、なにも言わないが。

「ケンイチ~!」

おかっぱの女のエルフが俺に抱きついてきた。なんだかんだで、このエルフが一番接触が多い。

彼女の名前は、セテラ。

「なんだい? おかわりか?」

「それもあるんだけどぉ。昨日の夕方、皆で話し合いをしてね。あなた方の村に1人エルフの代表を送る話が出たんだぁ」

「代表――大使だな。でも、村にはなにもないんだぞ? 俺の屋敷すらない状態なんだが」

「別に住むところはあるんでしょ?」

「家の代わりに、あの鉄の箱を作って貸している」

俺はコンテナハウスを指差した。

「鉄の家なんて、私たちが作る家より立派だし」

「けど、大使の話なんて機密じゃないのか?」

「機密でもなんでもないし、そんなたいしたものじゃないんだけどねぇ」

彼女の皿にグラノーラを盛ってやる。

豆乳をかけると、彼女はそれを食べ始めた。

「ケンイチ、エルフはなんて言っておるのじゃ?」

「サクラにエルフの大使を置きたいと言ってる」

「旦那、正式にエルフと辺境伯領が付き合うことになるのかい?」「エルフがにゃ~」

獣人たちを含め、普通の人間が抱くエルフの印象は排他的で付き合いが悪い。

そんなエルフが、人間とまともに付き合うかどうか、信用されていないのだ。

「まぁ、そういうことになるかな。こちらとしても断る理由はないし」

「本格的に交易を考えるのなら、それも必要だろうな」

黙っていたアキラが口を開いた。

「アキラの言うとおりだけど――それにしても、君たちの族長はそういうのには反対じゃなかったのか?」

「だからねぇ、族長は反対している。これだけ助けてもらって、譲歩しないのはエルフの沽券に関わるんじゃないのか――と言ったんだけどねぇ」

「もしそうなれば――ここで生産する、カカオやバナナの輸入ができるようになるな」

「そうねぇ。それにスライムの倒し方も教えてもらったのにさぁ」

「ああ、あの魔法で作った砂をあげるから、ここに備蓄しておけばいい」

「ありがとう~本当にねぇ、ウチの族長の頭の堅さには、困っちゃうよぉ」

「それだけ、真面目にエルフの文化を守ろうとしているんだろ?」

「そうなんだけどねぇ」

セテラが抱きついてきて俺に頬ずりをしてくるのだが、それを見ていたリリスとアネモネが不機嫌になってきた。

「ちょっと離れてくれないか? 正室と、うちの魔導師の機嫌が悪くなってきた」

「ええ~いいじゃん」

「それからもう一つ――大使の件は別としても、湖にいた巨大な魔物も退治済みなんで、あそこを横断しても平気だぞ?」

彼女に、画家が描いたクラーケンの絵を見せてやる。

これはコピーだが、オリジナルの絵を写真で撮って、カラープリンターで打ち出したものだ。

「こんな大きい魔物がいたんだ!」

「ああ、手持ちの魔導師を全部投入してな、倒すのに苦労したぜ」

つぶやいたアキラの言葉にセテラが反応した。

「あんた、竜殺しなんだってぇ。男たちから聞いたよ」

「はは、まぁな」

「たまに遠出したやつが、行方不明になることがあったんだよねぇ。そいつに食われてたかもしれないってわけかぁ」

「そうかもな。湖の畔にある近隣の村でも、犠牲者がいたらしい」

「それじゃ、あなた方が同胞の仇を取ってくれたってわけね」

「今回、俺は協力しただけ、止めを刺したのはケンイチだ」

「解った……」

俺たちの話を聞いたセテラが、族長のところに行った。

しばらくして、俺たちの朝食が終わる頃、エルフの族長がやってきた。

「話は聞かせてもらった、行方不明になっていた我が同胞の仇を討ってくれたと」

「その行方不明者が、湖の巨大な魔物にやられたと確定じゃないんだけどな」

「いや、エルフが仲間になんの連絡もなしに、失踪することはない。なんらかの不測の事態に巻き込まれたのだろう」

「まぁ俺たちは、領民の生活を護るために魔物を退治した。領主として当然の義務を果たしただけで、気にすることはない」

「しかし、これだけの恩を受けて、なにも返さないとなるとエルフに対する 衆口(しゅうこう) は地に落ちるだろう」

今まで頑なだったがエルフの族長も折れて、礼をしたいようなのだが、向こうから対価を切り出さない。

まったくの異種族、異文化なので、なにを礼に差し出せばいいのか解らないのかもしれない。

もしくは――向こうから礼の対価を差し出すのは、無礼に当たるとか……。

「う~ん、エルフの作法がわからないのだが、こちらから対価を要求してもいいのだろうか?」

「もちろんだ」

こころなしか、族長がホッとした表情をしたように見えた。

「それでは、交易の件を考えてくれ。ここで生産する チェチェ(カカオ) や、バナナなどだな。もちろん魔道具の類いでもいいのだが……」

「それでよろしいのか?」

「ああ、さっきも言ったとおりに、領主として当然のことをしたまでだからな」

「我々は商売のために栽培しているわけではないので、数多くは出せないが」

「もちろん、栽培して余ったぶんでいいよ。税や年貢ではないのだから」

「それなら可能だ」

「現金収入があれば、領から塩や小麦粉も購入しやすくなるだろう。うちの領の御用達である、マロウ商会に頼めばいい」

そこに、セテラがやってきた。

「決まったぁ?」

「ああ、決まったぞ。交易を始めることになった」

「やったぁ! それじゃ、大使は私ね!」

「おいおい! セテラ、勝手に決めるなよ!」「そうよ!」

話を聞きつけた、他のエルフたちから不満の声があがる。

「私が行かなきゃ、誰が行くのよぉ!」

「俺が行くのに決まってるだろ?」「いいえ、私よ!」

喧々囂々だったエルフたちだが、そのうち円陣を組んでなにかをし始めた。

円の中が光で溢れている。

「おいおい、なにをやっているんだ?」

「じゃんけんだよ」

アキラの言葉に耳を疑う。

「じゃんけん?」

「エルフってのは目がいいのと頭の回転が速いから、絶対に勝てるロボットの究極後出しじゃんけんみたいなことができるんだよ」

「ああ、相手の手を見てから、瞬時に手を切り替えるみたいな」

「そう」

「けど、皆がその能力を使えるなら、イーブンのはずだろ?」

「その能力にも個人差があるわけで、1000年以上のすったもんだのあげく、ああやって精霊を使う方法にたどり着いたらしい」

アキラの話が本当だとすると、エルフにじゃんけん勝負を挑むのは、愚かな行為だということが解る。

「でも、円陣の中に族長まで入っているのは、なぜなんだ?」

他のエルフたちと一緒に族長もじゃんけんらしきものに参加している。

「さぁ……? なんだかんだ言ってても、族長もサクラに行ってみたかったんじゃね?」

「しかめっ面で、エルフのために~とか言ってたけど、無理をしてたのかな?」

「そうかもな」

アキラと話をしていると、結果が出たようだ。

「やったぁ!」

1人のエルフの女が手を上げた。

「セテラ、インチキしたろ?!」

「ええ? 精霊の選んだ結果にケチをつけるの? 精霊が言うこと聞いてくれなくなっちゃうよぉ?」

「うう……」

結局は、最初の提案どおりに、セテラというおかっぱ頭のエルフに決まったらしい。

背が高くスレンダーで胸は大きくない――というか、エルフは皆そうだが。

女性にもサラシを巻いたら、男とまったく区別がつかないと思う。

セテラが俺に抱きついていると、族長のメーサラがやってきた。

「残念無念――辺境伯殿が求めるなら、この身を捧げるのもやぶさかではなかったのですが」

「はぁ? なんでそういう話になっているんだ?」

その訳を、セテラが説明してくれた。

「だってぇ――只人の貴族は、エルフの男を求めると、本に書いてあったんだけどぉ」

そりゃ、薄い本のネタじゃねぇか。

「いやいや、ないない! いや、もしかしてあるのかもしれないが、俺はない」

一応、リリスに聞いてみる。

「あるぞぇ。貴族が男のエルフを雇っている場合は、間違いなくそれじゃ」

「ええ? そうなの?」

「うむ!」

どうやら、そういうものらしい。

ソバナで、貴族の屋敷にエルフが出入りしているなんて話を聞いたが、そういう感じなのか?

それじゃ、サクラに男のエルフが来ていたら、100%それだと思われてたってわけか。

「やれやれ、旦那のところに、また女が増えるのか」「そうだにゃ。よりによってエルフとはにゃ」

「このエルフは大使だぞ? 別に俺の所に迎え入れるわけじゃないからな」

「どうかねぇ」「そうだにゃ~」

獣人たちは信用してないようだが、増やすなって言われているし――だいたい寿命が違う。

俺たちはあっという間に歳を食って死んでしまうだろう。

エルフにとっては、つかの間の遊びみたいなもんだ。

「ははは、エルフと付き合うには、ちょっと慣れが必要だがな」

「あんまり慣れたくはないな。それに、仕事以外で付き合うつもりはないぞ?」

「というわけで、よろしくぅ!」

「なにがというわけなんだ」

抱きついて離れないセテラと俺の間に、アネモネが割って入った。

「むー! くっつきすぎぃ!」

「……むふー可愛い!」

「ぎゃぁぁ!」

セテラが俺から離れると、アネモネを抱き上げて、なで回し頬ずりを始めた。

彼女から見たら、アネモネは赤ちゃんぐらいに見えるのかもしれない。

予想外の攻撃を受けたアネモネが、パニックになって俺の後ろに隠れた。

「エルフは、君のことを可愛いって言ってるんだよ」

「違う! 絶対に、なにか変! 見て!」

アネモネが腕を捲ると、鳥肌が立っている。

「じゃあ、こっちの子でもいいよ」

「ぎゃあ! なんじゃ! いったい妾に、なにをするつもりじゃ!」

セテラがリリスを追い回すのを見て、察した。

「セテラ。うちの女性陣には手を出さないでくれよ?」

「ええ? だめぇ?」

エルフの動きがピタリと止まった。

「駄目だ。相手が男なら了承があればいいが」

「私、女の子が好きなんだけどぉ」

なんとまぁ、エルフってのは困りものだな。

異種族で文化も違うから仕方ないのかもしれないが。

「それじゃ、俺に抱きつくこともないだろ?」

「ケンイチはさ、抱きつくとなんか気持ちいいしぃ……」

祝福を受けて、魔力が使えるようになったので、そのせいか?

「じゃあ、そっちのアキラでもいいだろ?」

「おい、ケンイチ。俺にふるな!」

セテラがサクラに来ることに決まったのだが、スライム対策のために、もう1日ここに滞在することになった。

それと、スライム退治のためとはいえ、辺りに塩を撒いてしまったので塩害が心配だ。

アイテムBOXからユ○ボを取り出して、表土を排土板で削り取ることにした。

「「「おおお~っ」」」

唸りを上げる緑色の鉄の魔獣に、エルフたちが群がってくる――特に男ども。

「「「すげぇぇ」」」

興味津々で作業半径に入ってくるので、危なくてしょうがない。

いつも黄色いコ○ツさんの陰に隠れていたが、こいつも使ってやらないとな。

削った表土は、エルフたちに手伝ってもらいプラケースに入れ――のちに、アイテムBOXに収納。

土だけゴミ箱へシュートすれば、作業完了。

丸一日、池の周りでスライムを監視していたのだが、透明な魔物は現れず、今回の襲撃は終息したということになった。

エルフの皆を集めて終息宣言を行なった。

並んでいるエルフたちを前にすると、学校の先生みたいだな。

「ケンイチ、まるで修学旅行か遠足の集まりみたいだな」

「俺もそう思ってたところだ――家に着くまでが遠足です! みたいな~」

「「ははは」」

それはさておき、エルフたちに挨拶を済ませる。

「それでは、俺たちは明日の朝一で、サクラに帰りますので」

「一緒に私もねぇ~」

セテラが俺に抱きついてくるので、アネモネとリリスがぐぬぬ状態になっているのだが、エルフが怖いために、近づけないでいる。

怒ろうと近づくと、襲われる――これは強敵だ。

暗くなってきたので、普通に夕飯を食う。

アネモネとリリス、獣人たちは、インスタントカレーを。

俺たちは、カップ麺とおにぎり、そして唐揚げ。

エルフたちは、自分たちの食事を摂っている。

散々世話になって、食事までたかるのはマズいと思うぐらいの、文化はあるようだ。

ただし、セテラをのぞく。

彼女はこっちで、俺たちと一緒に飯を食っている。

「なんで、エルフの仲間たちと一緒に食わないんだ?」

「え~? だってもう、私はこっちの組だしぃ」

「ケンイチ、唐揚げを妾にもたもれ」

カレーを食べていたリリスだが、唐揚げも気になるようだ。

「唐揚げカレーも美味いよなぁ」

カレー組にも唐揚げを分けてやる。

「あの茶色の料理はなに?! なんかありえない色をしているけど?!」

「香辛料料理だよ。獣の肉が入っているので、エルフにはどうかな?」

「こっちは?」

セテラが唐揚げを摘んでいる。

「鳥肉を小麦粉でくるんで、油で揚げたものだ。鳥肉なら食えるんだろ?」

俺の話を聞いたセテラが、唐揚げを口に放り込んだ。

「うん、美味しい!」

「グビグビ――」

アキラは、黙って缶ビールを飲んでいたのだが――。

「ねぇ、アキラ。ウチの男どもはどうだった?」

「ブボッ!」

彼が飲みかけのビールを噴き出した。

俺たちが暗黙の了解で黙っていたのに、あっさりと踏み込みやがった。

エルフ恐るべし。

「ゴホッ! ゴホッ! 酒を飲みに行ってたんだよ」

アキラが鼻からビールを流しながら、言い訳を始めた。

「うそうそ! 男どもから聞いたもん。帝国の竜殺しだってね」

「アキラ、俺も理解はあるから大丈夫だぞ。でも残念ながら、俺は相手にはなれんが」

「違うんだって!」

俺たちの話を聞いていたリリスとアネモネが混ざってきた。

彼女たちは、セテラの話していることが解らないようだが、アキラのうろたえぶりを見て、直感したらしい。

「なんの話じゃ! なにか楽しそうな話の予感がするぞぇ?」

「なになに? 私も聞きたい!」

「アネモネにはちょっと早い……」

「早くないし~!」

「あ~あれだろ?」「まぁ、只人の男ってのは色んなのがいるにゃ」

獣人たちも察しているようだが、あまり関心がないらしい。

「ゴニョゴニョ――ノーコメント」

アキラは、再びビールを飲み始めた。

今までそんな節を見せていなかったので、多分エルフ限定の趣味なのだろう――と思われる。

飯を食い終わったので、コンテナハウスに入る。

辺りはすでに暗くなりつつあるが、部屋の中にはLEDランタンの光が溢れ、訪れた食後の安らぎの時間。

今日のアキラは、ひと目をはばからずエルフたちの所へ向かったようだ。

今の時間なので、本当に酒を飲むつもりだけなのかもしれないが……。

まぁ、それはいいのだが、コンテナハウスの中にセテラがいる。

「お前も一緒に寝るのかよ」

「酷~い! 私だけ、外で寝かせるのぉ?」

「別にもう1個、この鉄の部屋を出すけど?」

「そんなの要らないしぃ~一緒に寝ればいいじゃん」

セテラがアネモネににじり寄ろうとしている。

可愛いネコを見つけた、ネコ好きのような動きだ。

「いやぁ~!」

アネモネがエルフの手から逃げて、俺の後ろに隠れた。

「じゃあ、ケンイチと一緒に寝るぅ」

「なんで一緒に寝る必要があるんだよ。君は、大使としてサクラに来るんだよな?」

「ええ、もちろん。大使って、そういうことするでしょ?」

「するのか? しないだろ?」

「ええ? しないの? それじゃ、その子たちは?」

「彼女たちとするときも、ちゃんと別の部屋で1人ずつする。アネモネは小さいので、まだしないが」

「只人って子ども好きなのに、珍しいねぇ」

「意図的な誤解は止めてくれよ……それは、間違った認識だぞ?」

セテラがここに泊まるのは、すでに譲れない問題らしい。

「しょうがない、ベッドをもう一つだすか」

シングルベッドが一つあればいいだろう。

「ちょっと、こっちのベッドに載ってくれ」

「なにをするのぉ?」

「ベッドをもう一つだすから」

アイテムBOXからシングルベッドを取り出して、俺たちが載っているベッドの横に並べた。

「アイテムBOXって便利ねぇ」

「まぁな」

「じゃあ、こっちでケンイチと一緒に寝るのねぇ」

彼女の長い手に掴まれて、ベッドへ引きずられる。

殊の外、力が強い。普通の人間でなく、エルフという別の生物なのだと、改めて実感する。

「ちょっと待ちねぇ、アネモネとリリスはいいのか?」

「よくはない。だが、そなたには悪いのだが――妾に矛先が向くのは、ちょっと……」

「私も……」

俺が拒否るとなると、アネモネかリリスが蟻地獄に引きずり込まれるわけだからな。

「俺は生贄か」

獣人たちは、黙って我関せずを貫いている。

触らぬ神に祟りなしって感じだろうか。

「んふ~」

「まぁ、それで丸く収まるなら仕方ないが――やらないぞ?」

「ええ? しないの~?」

「しない」

「ええ~っ?」

同じやりとりを繰り返したあと、彼女がチャイナドレスのような服を脱ぎ始めた。

あまりにスポーンと、堂々と脱いだので、止める暇がなかった。

アキラから、エルフは性に関してかなりオープンだと聞いていたのだが、オープン過ぎるだろ。

「寝間着を用意するか?」

「要らない~」

エルフってのは、寝るときは素っ裸らしい。

白い陶器のような肌に、LEDの光にきらめく金髪。

見とれていると、毛布の蟻地獄の中に引きずり込まれた。

「ぐぬぬ……」

リリスはぐぬぬしているのだが、止めると今度はリリスが引きずり込まれることになるので、言えないらしい。

まぁ、やらないのなら――ということで、妥協をしているのだろう。

それはいいのだが、このエルフをサクラに連れていって問題にならないだろうか?

あまり問題になるようなら、丁重にお帰り願うしかなくなるのだが……。