軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

172話 ドワーフたち

お城にいたサンバクとカールドンがサクラにやって来て、ますます人が増えた。

カールドンにゴーレムを使ったモーターの作りかたを教えてもらい――それによって、製材所の巨大な丸鋸がどこでも使えるようになった。

モーターがあれば、自動車やバイク、ポンプなど応用が広がるが、電池に使う魔石が問題だ。

それらに使えるような巨大な魔石は滅多に手に入らず、値段も高い。

俺が持っている大きな魔石は、レッサードラゴン、ワイバーン、そしてクラーケンの3つ。

本格的に解体はしていないが、もしかして巨大ワームの中にも魔石があるかもしれない。

サクラに石工も入り、崖から石の切り出しも始まった。

家の土台やら、流しやら、水路やら、色々と使いみちがある。

シャングリ・ラからセメントを購入してもいいのだが、街づくりに関しては、なるべくこちらの世界のもので賄うことにしている。

そうしないと経済が回らないからだが、運搬など時間がかかるものに関しては、開発のスピードアップのため、俺が手伝う。

石の切り出しには、俺が作った単管パイプの足場が利用されていて好評だ。

切り出しのついでに、崖の上に登るための階段を掘ってもらうことにした。

階段を作れば、上の開発もできる。

屋敷を崖の上に作る話も出ているのであるが、それも面白いと思う。

崖の上にも川が流れていて水もあるしな。

引っ越しや荷物運びは、俺のアイテムBOXでどうとでもなる。

自分の屋敷のためだ、いくらでも手伝うし、俺もついに一国一城の主か――などと思うと、胸が熱い。

崖の上を見ながら悦に入っていると、沢山の馬車がサクラに入ってきた。

大型の馬車で荷物を満載している。10台ほどが連なり、まるでコンボイだ。

馬車から降りてきたのは、もじゃもじゃの髭を蓄えた、小柄だが浅黒い肌をした、ごつい男たち。

裾の長いノースリーブの服に、デカいベルト。深緑色のズボンにブーツを履き、鉄製のヘルメットを被っている者もいる。

女性もいるようだが、皆小柄でガッチリとした体格だ。

彼らはドワーフたち――本当に来てくれたのか。

「お~い!」

俺は、彼らの下へ走っていった。

「おお! 旦那、来やしたぜ!」

鋭い眼光と長いモジャ髭、女のウエストほどもある、太い腕。

ソバナの街で鍛冶屋をやっていたドワーフの親方だ。

俺は、彼から重機に装備している巨大な剣を購入した。

「皆、よく来てくれた。俺がハマダ辺境伯だ」

「いやぁ、旦那が湖の所に村を作るって話を聞いていたが、まさか貴族様になって領まで立ち上げるとは……」

「まさか、皆で来てくれるとは思わなかった」

「ソバナの貴族連中には、ちょっとうんざりしていたんで、ここらで心機一転やり直そうかという話になりましてね」

「それにしても、思い切ったことをしたなぁ」

「なぁに。たまに 河岸(かし) を変えて商売をするんでさ。ソバナの街は中々よかったが、良い鉄が手に入らなくて困った」

「それなら大丈夫だ。俺のアイテムBOXの中に鉄はタップリと入っているからな」

ナイフ用の鋼材は高性能だが、農具や普通の剣にそんなものはいらない。

この前ドワーフに渡した、ドーザーブレードなどの、鋼鉄の廃材などで十分だ。

なにせ元世界の鋼材は品質が最高。

そのまま打ち伸ばしても、道具や剣として十分に使えるからな。

「旦那――いや、領主様からもらった鋼材も、いまだに正体がつかめねぇ」

「あれには、クロムっていう金属が含まれている」

「クロム……?」

「それが見つからないと、再現は難しいだろうな」

「う~む」

ドワーフたちが、腕を組んで考え込んでいる。

なんで、こんな場所で鋼材談義をしているんだ。

「それにしても、俺の言うことを信じて本当にやってくるとは……ソバナでは、どんな風に噂が伝わっているんだ?」

「獣人好きの貴族が辺境伯領を作って、湖にいた巨大な魔物を倒した……とか」

「魔物を倒したことも、すでに伝わっているのか」

人の噂は千里走るって言うけど、本当なんだなぁ。

元世界でも、口裂け女の怪談が日本中に広まったりな。

日本の端から端って3000kmぐらいあるからな。口コミだけでそこまで広がるのは、まったくもって凄い。

「獣人好きって聞いて、旦那――いや領主様だと思いましたぜ」

「まぁ、事実だからなしょうがないが……はは」

ドワーフたちが、ニヤニヤしているが、苦笑いするしかない。

あ、そういえば……ファンタジーだと、エルフとドワーフって仲が悪いよなぁ。

一応、聞いてみるか?

「ドワーフのことをよく知らないんだが、エルフと仲が悪いとかあるのか?」

「まぁ、よくはありませんぜ?」

「やっぱり、悪いのか……」

「あの図々しい連中を好きな連中もいないとは思いますが」

「ああ、まぁ……ちょっとな」

図々しいというか、遠慮しないところはある。

彼らはすべての持ち物が共有財産ということで、人種的文化的な特徴なのだろう。

「領主様はエルフを知ってるんで?」

「この巨大な湖の反対側に、エルフの集落がある」

「やれやれ……」

ドワーフたちが、頭をかいている。

「まぁ、交易のために、数人が来ることはあるかもしれない。もめないように頼むよ」

「相手の出方次第ですぜ?」

「ソバナにもエルフはいたのか?」

「貴族の屋敷に出入りしてたのは見たことがありますぜ」

やっぱりエルフもいたんだ――へぇ~。

話はそのぐらいにして、ドワーフの店の場所を決める。

家族と一族が住むので、広い場所が必要だ。

彼らと一緒に荷物を下ろす場所を選定する。

ドワーフたちが選んだのは、集落からちょっと離れた崖の近く。

「こんな外れでいいのか?」

「年がら年中、鉄を打つんで、ちょっと離れた場所のほうがいい。ソバナは街の中だったがな」

「この崖には、結構色々な鉱物が出るんだ」

「ほう?」

アイテムBOXから、俺が掘った薔薇輝石と、水晶を見せてやる。

「こりゃ大したもんだな」

「ここから、離れた場所に洞窟がある。その中はまだ調べてないが色々とあるかもしれない。後で場所を教えるよ」

蜘蛛を倒した後は放置したままだ。

「ありがてぇ」

ここは川から離れているから井戸が必要だろう。

「井戸が必要なら掘るのを手伝ってやるぞ? 湖の近くだから、少し掘れば水は出るだろう」

「ありがてぇ」

「どこにする?」

「え? あ~、あそこらへんか?」

「よし、すぐに掘ってやるよ」

「「「え?」」」

俺は、ドワーフが指した場所へ行くと、アイテムBOXから重機を出した。

「コ○ツさん、召喚!」

地響きを立てて、黄色の鉄の巨人が落ちてきた。

「「「おおお~っ!」」」

最近、コ○ツさんが活躍していなかったからな。

動かしていないが、アイテムBOXの中なら錆びることもないし、下手をすると以前のエンジンの温かみが残っていたりする。

俺は、コ○ツさんに乗り込むと、エンジンを始動して、ドワーフが指した地点を掘り始めた。

バックホーでも、深さ5mぐらいは普通に掘れるし、そのぐらい掘れば水は出るだろう。

さすが文明の利器――5分ほどで5mほどの穴が開いた。

底には水面が見える。これなら井戸として使えるだろう。

「すげぇ! これが、鉄の召喚獣か……」

俺はシャングリ・ラから、太さ10cmほどの塩ビ管を購入した。

こいつを立ててから埋め戻し、その上にガチャポンプを接続する。

物作りが得意な彼らだ、アダプターなどは自作できるだろう。

この世界でもガチャポンプが普及し始めており、これで十分に使用できると思われる。

「この灰色の管を立てて、埋め戻せばいい」

「こ、これは? 軽い!」

ドワーフたちが塩ビ管に群がり、覗き込んだりしている。

「俺が魔法で作った管だ。水に強いし、数十年は腐らない」

「こいつはすげぇ……こんな貴重なものを、いいんですかい?」

「ああ、早く生活の拠点を整備して、鉄を打ちたいだろ?」

「まぁ、そうですが……まさか領主様にこんなことまでしてもらえるとは、思ってみませんでしたぜ」

「農具やらを待っている農民がいるんだ。早く配ってやりたい。色々と作ってもらいたいものもあるしな」

「わかりやした」

「この管の上には、こいつをつける」

シャングリ・ラからガチャポンプを購入して、ドワーフたちに見せた。

「こりゃ、ガチャポンプですな。同じものを作りましたぜ」

「ええ? そうなのか」

「帝国のやつらが作れて、俺たちに作れねぇ道理はねぇ」

「まぁそうだろうな」

それなら使い方や設置などは心配いらないな。

ドワーフたちに手伝ってもらい、採取口にシャングリ・ラで買ったコンクリブロックを積む。

土砂が流れ込むのを防ぐためだ。

「こ、こりゃ石?」

「いや――石灰に色々と混ぜて固めたものだ。製造法は教えられないが、粉が欲しいなら譲ってもいいぞ?」

彼らに、シャングリ・ラで購入した、セメントを見せてやる。

この世界にも漆喰や、コンクリートに近いものがあって利用されているが、製造は極秘で表に出てくることはない。

「まったく、たまげることばかりだぜ……」

「ここに来てよかっただろ?」

「ははは……」

ドワーフたちは、顔を見合わせて呆れたような笑いを浮かべる。

最後に塩ビ管を立てて穴を重機で埋め戻す。

もちろん塩ビ管1本では長さがたりないので、途中でジョイントを使って繋いである。

埋め戻しが完了したら、重機のカタピラで押し固めて完了だ。

地面から灰色の塩ビ管が飛び出ているので、ここに土台を作って井戸を作るだけだ。

「し、信じられねぇ。井戸がこんな簡単に……1日もかからずに……」

「あとは、お前たちが持っているガチャポンプを、ここにつなげばいい」

ドワーフたちと今後の打ち合わせをしていると、リリスが自転車に乗ってやってきた。

この世界のドライジーネではなく、俺がシャングリ・ラで購入したマウンテンバイクだ。

アマランサスが一緒だが、彼女は走ってきた。

王族というと、あまり運動しない――なんてイメージがあるのだが、彼女は剣の達人で他の運動能力も高い。

さすがに、獣人たちにはスタミナでは劣るのだが、パワーと瞬発力はひけをとらない。

「ケンイチ――そなた、ドワーフとも知り合いだったのかぇ?」

彼女はひらりと自転車から降りると俺の所にやって来た。

「ああ、ソバナで知り合ってな」

「ほう」

リリスを紹介しようとしたのだが、ドワーフたちの様子がおかしい。

「領主様、その乗り物を見せてもらっても……」

「ああ、これか? ドライジーネだが……」

ドワーフたちが、一斉に自転車に群がった。

「なんじゃこりゃ」「この管の正確無比なこと……寸分の狂いもねぇ」

「つなぎ目が見えん。どうやって繋いだんだ?」「この鉄の鎖はなんだ? おそろしいほど精密な作りだぞ?」

しまった――この世界の住民にも自転車は見慣れたものかと思っていたのだが、ものづくりの達人である、彼らからみればこの自転車が、オーバーテクノロジーで作られたものだとバレてしまったようだ。

「俺が魔法や魔道具を使って作ったものなので、詳細は教えられない」

「なんと……」

ドワーフたちは残念そうだが、正直説明しろと言われても説明できない。

「それよりも――紹介するよ。正室のリリスだ」

「見知りおくがよい」

「はは~っ」

ドワーフたちは一斉に膝をつく。

「こちらは俺の護衛だ。気にしなくてもいい」

ドワーフたちは、アマランサスのことをチラリと見ると、ボソボソとなにか話している。

首にある奴隷紋のことだろうか。

「どうした?」

「これは失礼をいたしました。その者は闘奴らしいですが、武器は? なければウチにいいのがありますぜ?」

「ああ、彼女はアイテムBOX持ちでな」

アマランサスが、自分の剣を出してみせた。

「む! その剣は――」

「これがどうかしたのか?」

「いいえ……もし可能であれば、見せていただくことは……」

「いいかい?」

アマランサスに確認を取ると、いいということだったので、彼女の手からドワーフへ剣が渡った。

もらった剣を引き抜き、日に掲げ刃を確かめる、ドワーフ。

「これは、間違いねぇ」

「知っているのか、らい……じゃなかった、知っている剣なのか?」

「ええ、こいつは――俺が打った剣ですぜ」

「え? そうなのか?」

「先代のソバナの公爵に頼まれて打った剣が、なぜ闘奴の手に……」

ありゃーそういうことか。レインリリー公爵家から、贈り物かなにかで、王家に渡ったものなのだろう。

こりゃ作った本人が目の前にいるなら、説明しないとダメだろうなぁ……。

「あ~、なんというか……他言無用で頼む」

「はい、もちろんでございます」

「この女はな、元王族なんだよ」

俺はアマランサスを指した。

「は?」

ドワーフたちが固まる。

当然だろう、こんな辺境に、王族――しかも元王妃がいるなんて。

冗談にしても質が悪い。

「正確に言うと元王妃で、国王陛下と離縁して俺の所にいるという……」

「嘘とか冗談ではねぇ……でございますよね?」

慌てて、ドワーフが剣を返してくる。

「こんな冗談なんて言ったら、不敬で首が飛ぶだろ」

「まぁ、たしかに……しかし、なぜに王妃様に奴隷紋が……」

「それもまた、説明すると長くなってしまってなぁ。まぁ聞かないでくれ」

アマランサスが、剣を自分のアイテムBOXにしまった。

黙って話を聞いていたリリスが口を開く。

「ドワーフの民よ、ケンイチの言ってることは、皆事実じゃぞ? 妾も元王族じゃ」

「リリスは、元王女な」

「は?」

再びドワーフたちが固まると、すぐに頭を下げた。

「知らぬこととはいえ、ご無礼をいたしました」

「よいよい、今は辺境伯夫人ゆえ。普通の貴族扱いでよいわぇ」

「驚き過ぎて、心臓に悪いぜ……」

「面白いだろ?」

「こんなの人に言っても信じてもらえねぇ」

「まぁ、集落でも事情を知っている人間もいるんだが、口には出さないように頼む」

「承知いたしました」

話が終わると、アマランサスが俺に飛びつく。

「妾は、聖騎士様の奴隷なのじゃ!」

「領主様――もしかして、王妃様を寝取ったんじゃ……」

「いやいや待て待て。それは違うから止めてくれ。わけがあって離縁が先だからな」

「はぁ……」

彼らが、この先にある洞窟を見てみたいと言う。

時間もあるので、リリスの自転車をアイテムBOX収納すると――代わりにラ○クルを出した。

湖の上ばかりにいたので、久々のラ○クルだ。

「「「おおお~っ! これも鉄の召喚獣か?」」」

「まぁそんなところだ。乗ってくれ」

車のドアを開けた。

「妾も行くぞぇ!」

「妾もじゃ!」

リリスとアマランサスが同時に手を挙げる。

「すぐそこだぞ?」

「よいのじゃ!」

「妾は聖騎士様の護衛ゆえ」

「解った解った」

リリスは助手席、アマランサスは俺の後ろの座席に乗り込んだ。

人数が増えてしまったので、ドワーフからは代表を2人だけ乗せた。

「なんじゃこりゃ、こんな精密なものをどうやって作ったんだ?」

ドワーフが、車の室内を見回し、あちこち触りまくって驚嘆している。

「ははは……」

苦笑いしながらエンジンを始動すると、ドワーフが飛び上がった。

「唸ってるぞ?!」「なんじゃ!」

「噛みつきはしないから大丈夫だよ。俺の言うことしかきかないから」

俺と王族2人、ドワーフを2人乗せて、ラ○クルは森の中を崖伝いに走り始めた。

崖沿いは余り木が生えていないので、なんとか行ける。

茂みなどは、そのまま突破だ。

「乗り物が馬もなしに進んでおる!」「たまげた!」

「それに、こんな森の中を進んでいるのに、この乗り心地!」「馬車では進むことすら難しいぞ?」

さすがドワーフ――ラ○クルを品定めしまくりだ。

「見ろ! あの丸い輪っかで、進む方角を決めているようだぞ?」「なるほどなぁ」

室内にドワーフのデカい声が響きまくる。

そんなにデカい声を出さなくてもいいのに――と思うのだが、いつも騒がしい鍛冶工房にいるので、自然と大声になるようだ。

それにしてもヤバい。車の操作方法などが、解明されまくっている。

これが召喚獣じゃなくて、内燃機関で動いているってバレるんじゃないか?

俺の家族の中でも、アネモネが車の運転の仕方をいつのまにか覚えてしまったようで、運転ができる。

オートマだから、セレクターを入れて、アクセルで進みブレーキで止まる――ハンドルを回せば進む方向を決められる。

異世界だから、小難しい交通法規もない。

アネモネぐらい賢ければ、操作を覚えられてしまって当然だ。

それはさておき、森の中を30分ほど進み、ラ○クルは件の場所に到着した。

以前、俺が巨大な洞窟蜘蛛を退治した、ダンジョンだ。

ダンジョンと言っても、中は一直線で迷路のようにはなってない。

獣人たちの話では、迷路になっているマジダンジョンもあるようなので、それに期待だ。

「ここが洞窟だ」

皆をラ○クルから降ろすと、洞窟へと案内をする。

アイテムBOXからLEDランタンを出して、皆に手渡した。

「これは魔法で光るランタンだ。こうやって上に引っ張ると点灯する」

円筒形のランタンを上下に引っ張るとスイッチが入り、LEDが点灯する仕掛けだ。

「おお! 眩しい!」「こりゃ凄い!」

「特殊な魔導具なので、俺にしか充填できないのが、玉に瑕だがな」

「これでどのぐらいの時間光ってるんで?」

「そうだな、丸1日ぐらいは……」

「おお……」

皆を洞窟の中に案内するが――リリスたちはどうしよう。

「リリス、一緒に行くのか?」

「もちろんだわぇ!」「妾もじゃ!」

俺が先頭になって、列をなしてあるく。

「ここの奥に巨大な洞窟蜘蛛がいたんだが、俺が退治した」

「あの洞窟蜘蛛は、ここで仕留めたのかぇ?」

リリスが暗い洞窟にビビって、俺にひっついている。

「そうだ。あんなデカブツが奥にいるなんて思わなくてな。新しい魔物が住み着いてなけりゃいいんだが……」

まぁ、ドワーフたちもいるし、アマランサスもいる。

狼や熊ぐらいなら、なんとかなるだろう。

しばらく進み、俺が水晶を掘り出した地点にやってきた。

「ここでデカい水晶を掘り出したな。まだ鉱脈が残っているかもしれん」

「こりゃ、中々いい洞窟ですぜ」「まったくだ」

心なしか、ドワーフたちの機嫌がいい。

「どうした、なんかウキウキしてないか?」

「ガハハ、いやぁお恥ずかしい。ドワーフってのは、こういう洞窟に入ると興奮してしまってな」「そのとおり」

「化け物がいそうで怖いとか、暗くて恐ろしいとかは?」

「そんな感情は全然ない」「むしろ安らぎを感じる」

そういえばドワーフは穴やダンジョンを掘っているなんて話があったなぁ。

途中の段差をアルミハシゴで降りて、俺が蜘蛛を退治した、広い空間へ出た。

「「おおお~っ!」」

ドワーフたちが辺りを見回している。

ここは、天井に少々穴が開いているので、うっすらと光が入ってきている。

「ここに蜘蛛がいたのかぇ?」

リリスも広間を見回している。

「そうそう。オスの蜘蛛がせっせと餌を運んでいたのに、メスに蹴られて死んでしまったんだ」

「それは、魔物とはいえ不憫だのう」

喜んでいたドワーフたちだが、なにやら話し合いを始めた。

「どうした?」

「領主様! ここを、俺たちに使わせてくれねぇか?」

「ここをか? まぁ別に使う当てもないから構わんが……なにに使うんだ?」

「ここに皆で住むんだ」

「え~? ここにか?」

ドワーフは本来、こういう場所に棲家を作るらしい。

この場にやって来て――その本能の赴くまま、血がうずいて仕方ないようだ。

彼らの話では、今日井戸を掘った場所に鍛冶場を作って、ここに居住区を作りたいという。

俺としても断る理由はない。

久々にここに来たので、ぐるぐると回ってみることに……。

「そういえばここに、雌蜘蛛がいたんだっけなぁ」

壁にちょっと凹んだ場所があるが、蜘蛛はここに糸で壁を作って卵を産んでいた。

LEDランタンでその場所を照らすと、なにかが動いた。

「なんだ?」

「グアァァァ!」

なにか巨大な毛むくじゃらが、雄叫びを上げていきなり立ち上がった。

「聖騎士様!」「ケンイチ!」

離れた場所からアマランサスとリリスの声が聞こえる。

「うわぁぁ! く、熊か?」

暗いし真っ黒なので、正体が解らん。

LEDランタンに照らされて、立ち上がったそのポーズは、熊のそれとよく似ていた。

多分、以前出会った牙熊であろう。

「こ、コ○ツさんを……」

いきなり遭遇したので、あたふたしてアイテムBOXがうまく開けない。

「聖騎士様!」

凄いスピードでやって来たアマランサスが、俺と熊との間に入った。

「アマランサス! 内側から外へ払う腕に気をつけろ!」

「はい!」

熊は立ち上がるのを止め四脚に戻すと前に突進――右前脚を内側に入れて、アマランサスを外へと弾き飛ばす攻撃に出た。

俺の言葉を受けて、アマランサスは右へと飛ぶと、水平に熊の右前脚を半分に切り裂く。

「グアァァァ!」

腕を切り裂かれた牙熊が再び立ち上がった。

「チャンス! 戦闘獣コ○ツさん召喚!」

俺がアイテムBOXから出したのは、アームに大剣を装備した、コ○ツさんの戦闘バージョン。

アマランサスが黒い毛むくじゃらを牽制している間に、重機に乗り込みエンジンを始動させた。

「行くぜぇ! アマランサス! 下がれ!」

咆哮を上げた重機が、大剣を掲げて牙熊の前に立ち塞がると、毛皮の動きが止まった。

自分より遥かに強大ななにかの出現に覚悟を決めたのかもしれない。

「コ○ツ大切断! それは大地を割る史上最強の男の一撃!」

高く振りかざしたアダマンタイトの大剣を獣の脳天へ振り下ろした。

攻撃を受けた牙熊は、紙のように真っ二つに裂け、勢い余った大剣が地面に激突して火花を散らす。

半分になった黒い毛皮が、その場に崩れ落ちると――ホールの中に、コ○ツさんのエンジン音だけが響く。

「ふう……焦ったわぁ。いきなりだもんなぁ」

エンジンを止めて、重機から降りるとアマランサスが抱きついてきた。

「聖騎士様!」

「ありがとう、アマランサス。助かったよ」

「ケンイチ!」

リリスも走ってきて、俺に飛びついた。

ドワーフたちもドタドタと走ってくると、コ○ツさんを見上げている。

「俺が売った剣を、本当に持たせたんですかい?」

「ああ、こいつは役にたっているぞ。いいものを売ってもらって本当に感謝している」

「滅相もねぇ。若気の至りでこんなものを作っちまったのに……」

「これなら、ドラゴンとも戦えるかもな」

「開いた口が塞がらねぇ……領主様が、こんな化け物を作っちまうとは……」

闖入者とコ○ツさんに驚いた様子のドワーフたちであったが、ここに住みたいという意向は変わらないようだ。

ぐちゃぐちゃになってしまった熊は、もう駄目だな。

肉も毛皮も使えないが、とりあえずアイテムBOXに収納した。

「ここは自由に使っていいぞ。ただ、鉱山にするつもりなら、税金を少々払ってもらうことになる」

「承知いたしました」

早速戻って、仲間たちと協議をするらしい。

人間だけじゃなく、種族によって様々な文化があるから、まったく予想もつかないな。