軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

157話 カニ

シャングリ・ラで売っている商品から、ヘキソーゲン爆薬を製造して、起爆の実験に成功。

続いて、それを使ってアンホ爆薬の起爆にも成功した。

これで、 爆裂魔法(エクスプロージョン) なしでアンホ爆薬を起爆できることになり、爆雷の実戦投入へと一歩近づいた。

完成した爆薬をドラム缶に詰めれば爆雷になるのだが――実戦投入するには、まだ調べることがある。

爆雷を水中に入れたときに、沈降速度がどのぐらいなのか調べる必要があるのだ。

これをしないと、敵がいる目的の深度で爆雷を起爆させることができない。

アイテムBOXから、この前買ったFRPの漁船を出して湖に浮かべた。

膝まで浸かりながら、湖に脚立を出して船に乗り込むが、こいつを作戦に投入するなら、桟橋を作る必要があるな。

「私も乗る!」

「アネモネ、すぐに戻ってくるぞ?」

「いいの!」

さて、湖の水深を測ったり、水中の敵を見つけるためには――魚群探知機だな。

シャングリ・ラで検索をかけると、色々と売っている。

金はあるし、画面のみやすさから、8インチの画面搭載モデルを購入してみる。

値段は13万円と結構高額だが、この先も使うのか? ――と言われると少々微妙。

まぁ使わなかったら、下取りに出してもいいだろう。

「ポチッとな」

大きな液晶画面の魚群探知機が落ちてきたので、早速スイッチを入れる。

どうやらGPS搭載モデルらしいが、当然異世界に人工衛星などないので、マップは出ない。

水中にセンサーを入れると、原色に彩られた水中が表示された。

「お? 魚探か?」

アキラがカラフルな液晶画面を覗き込む。

「ふふふ――そう! こいつでクラーケンを探す」

「おおっ! こりゃもう、やるっきゃないぜ」

「アキラ、ちょっとゆっくりと進んでくれ。水深10m地点を探す」

「はいよ~」

水深10mの場所へ来たら、アイテムBOXからドラム缶を、直接湖の上へ出すわけだ。

これなら重い爆雷を運ぶ必要はない。

画面に水深も表示されてるので、場所の選定は簡単だ。

もちろん、魚影も白くしっかりと表示されている。

水深10m地点に到着したので、アキラには水中メガネでドラム缶の着底を見てもらう。

「アキラ、底は見えるか?」

「まぁ、暗いけど水は綺麗だから大丈夫だ。おっ! ケンイチ! カニがいるぞ!」

「ええ? 淡水だから、モクズガニか?」

「どうもそれっぽいな」

「上海蟹ってやつと一緒なんだろ? それじゃ、これが終わったら、カニ釣りでもするか?」

「いいねぇ!」

「カニってなぁに?」

俺たちの会話を聞いたアネモネが首を傾げている。

そうか、カニを見たことがないのか。川にもいると思うんだがなぁ……。

「アキラ、川にカニっていないのか?」

「さぁ? 俺は見たことがなかったなぁ」

「それじゃ、ここの固有種なのか?」

「そうなら、カニも特産になるかもな」

「そりゃいいな」

「私にも見せて」

「ほい」

アキラから水中メガネを渡されたアネモネが、湖底を覗く。

「地面に虫みたいのがいるけど、あれ?」

地面っていうか、湖底な。

「まぁ、虫って言われればそうかなぁ。同じ汎甲殻類だし」

俺の言葉に、アネモネが覗くのを止めた。

「あれを食べるの?」

「食えるかどうか、食ってみないとな。毒のある蟹っていたっけ?」

「スベスベマンジュウガニとか?」

アキラから聞いたことがある固有名詞を含む返答が返ってきた。

「ああ、それは聞いたことがあるな。なにやら太った蟹だろ?」

「けど下にいるのは、見た分にはモクズガニだぞ?」

食える蟹なら産業になるな。なんだ、色々といいものがあるじゃないか。

まぁ、それよりも――爆雷の実験だ。

ここに模擬爆雷を落として、着底するまでの時間を測る。そうすれば、爆雷の沈降速度が解るって寸法だ。

俺はシャングリ・ラから買ったストップウォッチを構えた。

「アキラいいか~?」

「おお、いつでも来い!」

「よ~し、爆雷投下!」

アイテムBOXから、爆雷を出して湖へ落とすと同時に、ストップウォッチを押す。

「おお、ドラム缶が潜っていくぞ! かなり重いはずだが、すごいゆっくりだな…………もうちょい、今!」

「ほい!」

ストップウォッチを止めると、タイムは5秒。

水圧でドラム缶が潰れるかと思ったのだが、中身が詰まっているので、大丈夫のようだ。

そもそも、中身に空気が入っていたら沈まないしな。

「う~ん――ということは、毎秒2m沈降するのか」

「本物の爆雷もこんなに遅いのか? 潜水艦に逃げられちまう」

「本物は、涙滴型になっていて、沈降速度はもっと速いらしい」

「へぇ~そりゃ、そうだよな」

実験は上手くいってるな。

これで実戦で使うのと同じ、ドラム缶爆雷を作って起爆に成功すれば、すべての準備が整うわけだ。

さて、盛り上がってきたぜ。

化け物退治でワクワクしちゃイカンと思うんだがなぁ。

家族を危険に巻き込むわけだし……。

実験が終わったので、早速カニ釣りをする。

釣り竿をアイテムBOXから出したのだが……アキラから、物言いがついた。

「釣るより、籠を仕掛けたほうがよくねぇか?」

「ああ、ベーリング海のカニ漁みたいな?」

「そうそう、それのほうが大量に取れそうだぞ?」

「そうだな」

アキラの助言に従い、シャングリ・ラで魚用の籠を探す。

探すと色々と売っているようだが、軒並み評価が低い。

どうやら彼の国製らしく、ものが良くないようで、すぐ壊れるらしい。

とりあえずやってみるだけなので、使い捨てでいいだろう。

1500円で購入。

「ポチッとな」

船の上に、針金の枠に緑色の網が張られた籠が落ちてきた。

穴が8箇所に開いており、ここから魚やカニが入る仕様らしい。

「へぇ~ガキの頃に、もっと簡単なの作って魚獲りしたぜ」

アキラが籠をぐるぐると回している。

「俺は竹竿の先につけた網だったな。石やらブロックにつけて、反対側から棒で突く」

「魚が逃げた先に網があるって寸法か」

「そうだな。大人は、鉄筋と金属ネットで籠を作ってたが」

「それって違法じゃ……」

「今はダメだろうな」

早速、試してみることにした。

「餌はなんにする?」

籠を見ているアキラからの質問に答える。

「昔はイカのゲソとか使ったけど、ちょうどアイテムBOXの中にクラーケンの脚を切ったものがあるから、それでいいんじゃね?」

「タコとかイカとか定番だな。ザリガニも釣れるしな」

「俺は、網で魚を獲ってから、それをブツ切りにして、カニ釣りをした」

「やるなぁ」

まぁ懐かしいね。異世界でカニ獲りをするとは思わなかったが。

アイテムBOXからクラーケンの脚をブロック状にカットしたものを出して、テキトーにブツ切りに。

籠の中に放り込もうとしたのだが――。

「おい、ケンイチ。これ、穴が開いてないぞ?」

「ええ?」

見れば、アキラの言うとおりに、穴が開いてない。

網は筒状になっているのだが、その先が閉じてしまっているのだ。

使うやつがテキトーに穴を開けて使え――ってことなのか? さすがアチラの国製だな。

まぁ安いからこんなもんだろうけど。

本格的に使うなら、もっといい材料で自作すればいい。

「テキトーに切って穴を開けよう」

「すぐにバラバラになりそうだな」

「まぁ、一回使えりゃいいよ」

籠を吊るすために、峠で崖を降りるときに使った登山用のロープを取り出したが、こいつは20m以上ある。

ちょっと長すぎだし、カットするのももったいない。

アイテムBOXに収納して、シャングリ・ラで安いナイロンロープを買う。

ドラムに巻いてある50mの緑色のロープが800円で売っている。

これなら、カットしてもいいだろう。

「アキラ、籠にこのロープを結んで底に下ろしてくれ。テキトーな場所でカットしよう」

「オッケー!」

アキラが、クラーケンの脚が入った籠を湖に下ろし始めた。

「あの網の中に虫が入るの?」

「そう、多分うじゃうじゃ入ると思うな」

「ああ、多分入るな」

最後にオレンジ色のプラスチックブイを2000円で購入して、カットしたロープの端に結びつける。

ブイの大きさは直径30cmだ。こんなものまで売っているんだな。

「はは、このブイって海岸に行けば、結構落ちているよな」

アキラが、湖面に浮かんでいるブイを指で突いている。

「ああ、落ちているといえば、真っ黒な漁船の油が落ちてて、それを踏むとベッタリ……」

「俺は、金属探知機を使って砂浜で宝探ししたことがあるぜ?」

アキラも結構アクティブに色々とやっているなぁ。

まぁ、彼は世界旅行とかもしているようだし。

「なにか見つけたか?」

「コインとか指輪とか」

「指輪?」

「別れた男の指輪を海に捨てたりする場面があるじゃん。それを真似して捨ててるんじゃね?」

「質屋にでも売ればいいのに」

「海に来たついでに、勢いでやったとか……ははは」

「売れないような安物だったのか?」

「いや、18金で石もエメラルドの本物だったぞ?」

いやはや、勿体ないことをするやつもいるもんだ。

カニの仕掛けは済んだ。明日まで待とう。

「アキラ、今日は泊まっていくか?」

「おう、そのつもりだ」

「レイランさんは、なにも言わないのか? 浮気を疑ったり」

「ははは、それはいつもの話だからな、今更だな」

アネモネとアキラは、サクラに戻り、俺は研究室で爆雷の製造を行う。

とりあえず――4発ぐらいあればいいか。

時限装置で、爆発深度を調整するようにしよう。

その日の夕方は普通の飯を食って、アキラと話して――夜はアネモネと寝た。

寝たといっても、今の彼女となにかするつもりもない。

普通に寝ただけだが、ベッドの上で彼女の愚痴を聞く。

アネモネの不満は――人が沢山増えて、俺と2人きりの時間が少なくなったことらしい。

まぁねぇ。でも、俺1人じゃ領の運営なんてできないしなぁ……。

------◇◇◇------

――カニ籠をしかけた次の日。

普通に朝飯を食うと、昨日仕掛けたカニ籠の所へ行く。

アキラも期待しているようだ。日本人だから、カニの旨さは知っているからな。

彼のプ○ドに乗せてもらったのだが、そのあとを獣人たちがついて来た。

なにか面白いことをやるんじゃないかと思っているようだ。

この世界の住民はカニを食べないみたいだから、果たして面白いかは疑問だ。

皆で昨日の場所に到着した。

俺の研究室に使っているコンテナハウスが置いてあるから、すぐに解る。

こんな所まで来るやつもいないと思うが、一応扉には鍵がかけてある。

ガラス窓を割られたら、盗まれるだろうが、中にあるのは価値の解らん特殊なものばかりだ。

肝心なものは全部アイテムBOXの中に入れてあるし、盗られたとしてもダメージはない。

「アキラ、まずは桟橋をつくろうか」

「そうだな、船に乗る度に水に浸かるのもな」

アネモネの魔法で乾燥はできるが、可能ならば濡れないほうがいい。

少々考えたのだが、建築現場などで使う単管で足場を組んで桟橋にすることにした。

家の裏にある崖を登る際に足場を作った、あれである。

単管組みは、以前獣人たちにもやらせたので、一緒に手伝ってもらうことにした。

「はは、まさか異世界で単管を組むとは思わなかったぜ」

アキラも器用にレンチを扱っている。

「この鉄の管は色々と使えて便利だにゃー」「そうだけど、こんなの旦那だから用意できるんだぜ?」

「水に入れたら錆びそうだがな」

「その時は新しいのを作ればいいさ。木で作っても腐って落ちるからな」

アキラがレンチを振っている。

「そりゃそうだな」

「でも、淡水だから、海よりはマシだと思うぜ?」

俺たちの作業を、アネモネはじっと見ている。

ちょっと力仕事なので、子供には無理だろう。最後のナットを締めるのだけ、ちょっと手伝ってもらった。

一応、出来上がったら、水に浸かる単管に防錆用のシリコン塗料を塗る。

一旦完成したものを、アイテムBOXに収納して、水際に出す。

こうすれば、重たいものを一々運ばなくて済む。

最後に渡り板の高さを調整すれば完成だ。

「にゃー! 立派な桟橋が出来たにゃー!」「鉄の桟橋とは豪勢だな。でも盗まれそうだけど……」

ニャメナが腕を組んで心配している。

「やっぱり、その心配はあるか」

「ああ、だってまるごと鉄だぜ?」

「しかも鋼鉄だからな。これで剣が打てる」

「だろ?」

「まぁ、そんなに心配するなら、大工に桟橋を作ってもらおう」

「絶対にそのほうがいいって、旦那!」

ニャメナは基本心配性だが、彼女の言い分にも一理ある。

出来上がった桟橋を使い、アイテムBOXから出した船に乗り込む。

「旦那、何を獲るんだい?」「魚にゃ?」

「カニだよ」

「カニ? クロ助、カニってなんだ?」「知らないにゃ」

意外と物知りのニャメナもカニを知らないのか。

やっぱり、他じゃ見かけない生物なのか。アキラも帝国じゃ、見たことがないと言っていたしなぁ

皆で船に乗って、オレンジ色のブイの所へ行く。

船の運転はアキラに任せた。

船が進んできた波に煽られて、ブイがぷかぷかと上下している。

「これだこれだ――さて、中身は入っているかな?」

「底に結構いたからな、沢山入っているんじゃね?」

ブイを引き寄せ、緑色のロープを獣人たちに引き上げてもらう。

「なにが入ってるにゃ~」「楽しみだな」

いやぁ、獣人たちが楽しみにしているようなものじゃないと思うぞ?

「おおっ、見えてきた」

緑の網が張られた籠の中に、黒いワシャワシャが沢山うごめいている。

多分30匹ぐらいだろうか。

子供の頃に地元でサワガニと呼んでいたが、サワガニとモクズガニは違う種類らしい。

これは、サワガニじゃなくてモクズガニだな。

「ふぎゃー!」「虫じゃねぇか!」

獣人たちの毛が逆立つ。驚くだろうとは思っていたが、こんなに嫌がるとは思ってなかったな。

「虫じゃないが――なんと説明したらいいか……見たことはないのか?」

「ええ? いやまぁ――この辺で見たことはあるけど……」

ミャレーは知らないようだが、ニャメナは一応知っているらしい。

「はは、説明が難しいな」

アキラのいた帝国でも、カニは見かけなかったらしいが、やはりここらへんの固有種なのか?

「帝国で、川エビの類もいなかったのか?」

「いねぇなぁ。デカいヤゴならいたが……」

「ヤゴは虫だしなぁ。ヤゴとシャコのどこが違うと言われたら、少々説明が難しい」

「そのとおりだな」

「旦那! まさか、その虫を食うつもりじゃ……」「ふぎゃー!」

獣人たちが、少々パニックになっている。

どうやら、ここらへんの住民の認識では、カニは虫のようだ。

俺たちもフナムシは食わないから、それと似たような感じなのだろうか。

「そのまさかだ。美味いぞ――多分」

「ふぎゃー!」

「アキラも楽しみにしてたしな」

「おう! こりゃ間違いなく、モクズガニだしな」

川にはいないが、海に行けばエビやカニがいるのだろうか?

国中の珍味を食べまくっている、王族の2人なら知っているかもしれない。

「別にお前達に食えって言わないから、心配するな」

「食えって言われても食わないよ!」

「私は食べてみる!」

「おお、アネモネは挑戦するか」

「多分、リリスは食べると思うし」

「ああ、彼女は食べるな。美味いものなら、なんでも食うしな――って別に対抗する必要はないんだぞ?」

「いいの!」

好きにさせてあげよう。

騒いでいる獣人たちを尻目に岸へ向かう。

「さて、これって泥抜きする必要があるだろ?」

川や沼の底に住んでいる水棲動物は、泥臭いのが多い。

綺麗な水に一晩浸けて、泥抜きをする。

「そうだな――でもケンイチ。先に1匹食ってみねぇか? 毒の有無もそうだが、不味くて食えん代物だったら、泥抜きしてもしゃーないし」

「それもそうだな。全部煮てから食って、おえ~っ! ってことになったら、無益な殺生か……」

「そゆこと」

とりあえず、小さな鍋をアイテムBOXから出して、2匹を煮てみることにした。

鍋に、ペットボトルの水を注ぐと、カニを入れる。

脱走しようとするので、蓋をした。

アイテムBOXから出した、カセットコンロにかけるが、加熱はアネモネにやってもらう。

「アネモネ、鍋を温めてくれないか?」

「うん、 温め(ウォーム) !」

すぐに鍋がクツクツと蓋を動かし始めた。

「はい、カニさんは、ご臨終です」

アキラが鍋に向かって手を合わせる。

「そう言われると、生きたまま煮ているから、ちょっと残酷だな」

「そんなこと言ってたら、食肉工場とかもっとあれだし」

アキラが、蓋を取って中身を覗いている。

「丸ノコで、鶏の頭を落としたりするんだよな?」

「そうそう」

和気あいあいのオッサン2人の後ろで、獣人たちがおそるおそる、こちらの様子をうかがっている。

「そんなに気持ち悪いなら見ることないだろう?」

「旦那たちが本当に、その虫を食うのか、見たいじゃん」「にゃ」

猫に似ているので、好奇心は旺盛らしい。猫と言ったら怒るので、言わないが。

「そろそろいいだろう」

アキラが蓋を開けると、熱湯の中でカニが真っ赤になっていた。

「あ~なんで、真っ赤になるの?」

「アネモネもお風呂に入ると赤くなるぞ?」

「それと一緒?」

「まぁ、似たようなもんだ」

ちょっと違うと思うが、俺もなんで赤くなるのか知らんし。

「あつあつ!」

手づかみしたアキラが、カニをまな板の上に放り投げた。

どうやら、すごく熱いらしい。

「これ、どうやって食うんだ? 子供の頃、モクズガニを釣ったはいいが、食うのは親父かウチの犬だったし」

正直、食ったことがない。

「犬にカニを食わせるとか、なんて贅沢な」

「あの当時、ドッグフードなんてなかったしなぁ……」

熱い熱い言いながら、アキラはカニの脚を全部取って、ふんどしを外した。

ふんどしってのは、カニの腹にある三角形の部分だ。

そして、バカっとカニの甲羅を開けた。

「おおっ! ミソが沢山入っているぜぇ、こいつは期待できるんじゃねぇ?」

アキラがカニの甲羅に入っているウグイス色のなにかを、しげしげと見つめていたのだが――。

パクリと口にいれて、ジュルジュルとそれを吸い始めた。

「ぎゃぁ! 本当に食ってる!」「ふぎゃ!」

後ろにいる獣人たちがうるさいが、アキラは黙々とミソをすすっている。

「いきなりいって、大丈夫か?」

「ちょっと、泥臭いが――大丈夫だ! こりゃうめぇ! 濃厚だぞ!」

「ビール飲むか?」

「いいねぇ!」

「それじゃ、エ○スを」

「おほほ!」

黄金色のビールを見た、アキラが小躍りをしている。

俺も食べてみる。

なるほど、濃厚な内臓の味だ。少々苦味と泥臭さはあるが、十分に食える。

「泥を抜けば、もっと美味いな」

俺の言葉にアキラが反応した。

「そのとおりだな。残りは泥抜きしようぜ」

「ケンイチ、私も食べてみる」

アネモネが俺の袖を引っ張った。

「それじゃ、内臓は危ないかもしれないから、脚だな」

内臓には毒がある可能性が否定できないからな。

俺とアキラには祝福があるから、多少の毒は平気だろうが。

ハサミを出して、脚の両端を切ってやる。

カニが小さいので、あまり食うところがないが、ストローみたいに吸えば、チュルンと口の中に入ってくる。

「甘くて、美味しい!」

「よかった」

その間も、アキラは黙々とカニを食っている。

「カニを食っていると、無口になっていけねぇ」

「はは、そのとおりだな」

食えるのが解ったので、泥抜きをする。

押入れなどに入れる透明なプラケースに、水とカニを入れる。

アイテムBOXに、滝の水が汲んであったので、それをプラケースに注いだ。

「餌もいるだろうな」

アキラが、プラケースの中でうごめいているカニを眺めていると、森から黒い影がやってきた――ベルだ。

「ベル、パトロールか?」

「にゃー」

ベルがケース内で動いているカニを気にしている。

「ああ、カニはダメだぞ? 生で食うとヤバいはずだ」

「寄生虫がいるんだろ? 肺に穴が空くらしい……」

ベルが咥えるとまずいので、餌を入れて蓋を閉めることにする。

「餌がなくなって死んだらヤバそうだな」

「でも、共食いするんじゃね?」

「ああ、ザリガニを釣って、そのザリガニの身を使ってザリガニ釣りをするのを見たことがあるな」

餌はクラーケンの脚をやろう。沢山あるからな。

「旦那、その白いのって……」

「あの化け物の脚だ」

「うえ~、そいつら、あれを食うのかよ」

「こいつら湖底の掃除屋だから、なんでも食うぞ。ニャメナが溺れて沈んだら、こいつらが集まってきて、食われる」

「そうそう、水死体を上げたら腹からこいつらが、ドバー!」

アキラが、腹からなにかが飛び出るアクションをする。

「ぎゃー!」

俺とアキラのからかいに、ニャメナの尻尾が極太になっている――すごく触りたいって言ったら、怒られるだろうか。

「カニかぁ――こりゃ、楽しみが増えたなぁ」

アキラが湖の沖を眺めて微笑む。

「カニを食いたくなったら、釣ればいくらでも食えるわけだからな」

「はぁ~帝国での苦労はいったいなんだったのか……」

「まぁまぁ――これから楽しめばいいじゃん」

「そうだな……」

水に浸けたカニは蓋をして、俺の実験室に一日置く。

カニでちょっと横道に逸れたが、皆はサクラに戻り――俺は爆雷の製造を続けることにした。

ついでに爆破実験も行い、爆破にも成功した。

準備万端整いつつある。