軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

133話 村作りが始まった

食事が終わったあと、リリスと一緒に森へ向かう。

前に、湖に到着したら、彼女を抱くと約束してしまったのだ。

まだ15歳の彼女だが、この世界ではなんの問題もない。

元世界の常識からすると、少々まずいことになるので、それが俺の心を引っ張るのだ。

心にモヤモヤがあるとはいえ、約束を果たさねばならない。

俺は貴族になり、彼女は元王族――この約束は、殊の外重大な意味を持つ。

手に持ったLEDランタンが、木の上のステージを照らす――以前、ツリーハウスを作った所だ。

舞台に載っていた小屋は、他に転用してしまっているので、今はなにもない。

そこに登ると小さなテントを出した。

「こんな場所だぞ? ここで良いのか? 屋敷が完成して、綺麗な部屋でやったほうがいいんじゃないのか?」

「そなたと一緒なら、どこでも同じじゃ。森の中で野獣のようにまぐわうのも一興」

「う~ん……」

「そなた、なぜにそのように消極的なのじゃ? 妾のことが嫌いかぇ?」

「そんなことはないんだけどねぇ。リリスのような若い娘と、したことがないからさぁ」

「なんじゃ、そのようなことかぇ。とりあえず、やればよい!」

リリスは凄い積極的だ。彼女の話では――このようなことは、全部を必要な知識として習うらしい。

テントの中にエアーマットを敷いて、LEDの明かりを灯す。

「一緒になったはいいが、子供の作り方も解らぬでは、話にならぬだろう?」

「王侯貴族ってのは、そうなのか?」

「そうじゃな」

それにリリスは、マイレンを使って性的な遊びを繰り返していた。

ひょっとすれば俺より手練かも……そのことが俺の顔に出てしまったか、彼女が俺に抱きついてきた。

「心配せずとも、妾の 女陰(ほと) は新品じゃ」

「別に、そんなことを疑っているわけじゃないぞ」

細く折れそうなリリスの腰を抱く。アマランサスは強靭なバネのような身体だったが、彼女の身体は、いかにも女の子のそれ。

ふわふわな揺れる金髪が、白く輝く裸体に絡みつく。

抱き寄せる腕に力を入れると、リリスがか細い吐息を漏らす。

まぁ、ここまできたらやるしかないよなぁ……。

などと考えていると、リリスが俺のものを握った。

「まずは、妾がするのじゃな――パクッ」

「あーっ!」

有無を言わさぬ先制攻撃に、先が思いやられる。

------◇◇◇------

――湖に帰ってきて、初めての朝。

小さな三角形の部屋の中で目を覚ますと、テントの生地を通して入ってくる柔らかい光に、リリスの裸体が照らされている。

ぱっと見、幼い身体に細長く伸びる脚、キラキラと光る金色の髪。

まるで妖精のように美しいが、幸せそうな顔は、だらしなく涎を垂らしている普通の女の子にみえる。

その美しさに感動するわけでも、可愛らしさにほっこりするわけでもなく、俺はため息をついた。

「ふう……やっちまったものは、しょうがねぇ……」

リリスは気持ち良さそうに眠っているので、起こすのも悪い。

彼女の服をアイテムBOXから出すと、枕元に置いて、ツリーハウスから降りた。

日は昇ったばかりで、湖にはモヤがかかっている。

家に行くと、メイドたちは既に起きて、自分たちの食事の用意をしていた。

メイドたちに、シャングリ・ラのパンと卵を支給する。

卵は街で買うと結構高価なので、彼女たちは恐縮していたが、栄養をつけて働いてもらわないとな。

飯の用意のために、ここからアストランティアまで買い出しに行くのも大変だ。

早く畑を充実させたり、大型のパン焼きの窯を作ったりしたいところだ。

「俺も飯の用意をするか……」

メイドたちに作ってもらってもいいのだが、彼女たちが作るのは、この世界の料理だからな。

プリムラがいないので、簡単にシャングリ・ラのパンとグラノーラにしよう。

リリス用にゆで卵も作るか。コンロに圧力鍋をかけて、卵を大量に茹でる。

食事の準備をしていると、アネモネが起きてきて、俺に抱きついた。

「……パンを作る」

アネモネは、目をこすりながら不機嫌そうな顔をしているが、自分の仕事をしてくれるのは、やっぱりいい子だ。

シャングリ・ラのパンにしようとしたが、彼女が作るというのであれば、任せるとしよう。

パンを焼くいい匂いがたちこめる頃、獣人たちとユリウスも起きてきた。

「ふわぁぁぁ! 久々に家で寝たって感じがするぜ」

「にゃー」

ずっと、長期旅行中だった身体をほぐすように、獣人たちが大きな伸びをしている。

「おはようございます」

「おはよう、ユリウス」

飯の用意をしていると、森の中からやってきたベルが、口に獲物を咥えてきた。

いつもは寄ってくる彼女だが、ちょっと離れた所で座っている。

「おお~、ありがとうな、ベル。久々に本格的な狩りができて、嬉しいだろう」

「……」

話しかけても黙っている彼女は、獲物を置くと、プイとまた森の中へ消えてしまった。

「あれは機嫌が悪いのだろうか?」

ベルからもらった獲物は、アイテムBOXに入れておこう。

料理ができて、最後に起きてきたのは、アマランサスとリリスだ。

「ケンイチ! しとねを共にした朝は、男の優しい言葉で起こすがよいぞ!」

「そりゃ、気がつかなかったなぁ。あまりに気持ちよさそうに寝ていた姿が可愛かったからさ」

「な……そういうことは、誰もいない場所で言うがよい!」

リリスの顔が真っ赤になっているが、こういう顔は初めて見たかも。

メイドを一緒にいじめようぜ! なんて言っているお姫様が、こういうことで恥ずかしがるのか……。

「むー」

俺とリリスを見たアネモネが不機嫌なので、あとでなだめないと。

飯を食いながら獣人が予定を聞いてきた。彼女たちも、なにをするのか気になるようだ。

「旦那、これからなにをするんだい?」「にゃー?」

「とりあえず、砂糖を作れる草を植えて、畑を整備して――家を建てる」

「家? また、あの家と同じやつかい?」

「ああ、いつまでも天幕ってわけにもいかないし、とりあえず住む所が必要だ」

本格的な屋敷や家を建てて使わなくなったら、物置小屋にでも転用すればいい。

「けど、すぐに屋敷を建てる算段をしないとダメだろうな。そこらへんはマロウ商会を頼ろうと思う」

「無難じゃな」

リリスがゆで卵を頬張りながらつぶやく。

「しばらく紋章官の仕事もなさそうだな」

「ケンイチ様、どんな仕事でもお手伝いいたしますが……」

「まぁ、無理しなくてもいいぞ。アストランティアから人手は集めてくると思うし」

「そうですか――お手伝いできることがあれば、なんなりとお申し付けください」

「その時はたのむ」

まぁ、まだ慌てる時間じゃない。時間はたっぷりとあるのだ。

俺の心情的には、まだまだ余裕だが――俺についてきた者たちのために、生活環境は早急に整えないとな。

俺たちの故郷を作る計画がスタートしたが、途中で頓挫する可能性もある。

難しい事業になると思うが、小さい村を作るぐらいはできるだろう。

朝飯を食い終わったので、早速仕事に取りかかる。

メイドたちには、草刈りの続きをしてもらう。ちょっと留守にしていただけで、草がボーボーになっているのだ。

鍬(くわ) と 鋤(すき) も渡して、畑もおこしてもらい、トウモロコシの取り込みもしてもらおう。

「私にも鎌をたもれ!」

なんだか、カナンが張り切っているのだが……。

「肉体労働をしたこともない貴族夫人が、あまり無理をすることはないぞ?」

「心配するな! 私はやる! 少しでも役に立つところを見せねば、ただの穀潰しではないか!」

「社交界に詳しかったり、ダンスが上手かったりするのでは……?」

「それも、元王族のお二人にかなうとは思えんし、ここではなんの役にも立たぬ」

それは確かにな。

女性陣が皆外に出ているので、シャングリ・ラから日焼け止めを買う。

ピンきりだが、高いやつにするか――1個3000円の日焼け止めクリームを人数分買うと、皆に配る。

「お~い! これは、日焼け止めの薬だ。肌が出ている所に塗ればいい」

「「「わぁ~っ!」」」

女たちが一斉に群がると、クリームを塗り始めた。

やはり気になるものらしい。マイレンに聞くと、外で作業をするときは、完全武装をするようだ。

「それって暑くないのか?」

「 勿論(もちろん) 、暑いのですが――背に腹は代えられません」

まぁ、女性にとってお肌は大切だからねぇ。

「日焼けすると、シミやそばかすになるからな。あと、なにか欲しいものはあるか?」

「あの……ご主人様、帽子が欲しいのですけど……」

メイドたちの後列から声がした。

日焼け止めといえば、麦わら帽子だな。早速、シャングリ・ラで検索して、1個1400円の麦わら帽子を人数分購入。

「皆、同じだけど、文句は言うなよ」

「ご主人様、これは凄い綺麗な帽子ですね。腕利きの職人が作ったのでは?」

こういうのって、多分機械編みだと思うんだけど……。

「アマランサス――貴族たちは、日焼けをどうやって防いでるんだ? 日焼けした貴族たちを王都では見なかったけど」

「厚着をしたり、携帯用の天幕を使うのじゃ」

「天幕?」

話を聞くと――パラソルみたいなもので、一人用のテントを組み立てて、その中に入るらしい。

カナンは作業をするため、麦わら帽子でいいようなので、アマランサス用に日傘を買った。

3000円ぐらいで、表は白くて裏は黒い。周囲にはフリルがついている。

日傘なんて使ったことないから、どのぐらい日光を防げるのか解らない。

試しに、広げてみた。

「これは、ちゃんと日陰になるな。ほら、アマランサス。これで影を作って中に入ればいい」

彼女に日傘を手渡す。

「これは軽くて素晴らしい、携帯用の天幕じゃの!」

彼女が日傘を広げると、くるくると回して喜んでいる。気に入ってくれてよかった。

ここで作業してもらうのは、こんなもんか……。

紋章官のユリウスは、早速事務仕事をしている。

手始めに――辺境伯の授爵と拝領の挨拶の手紙を、各貴族たちに送ると言う。

この世界には郵便のシステムがないので、使いの者が直接運ぶか商人に頼むのが普通。

できたてホヤホヤのこの辺境伯には、使いの者なんて余っている人材はいないので、マロウ商会を使わせてもらう。

こんな事務仕事は、素人貴族の俺には、まったく解らないからな。

紋章官のユリウスがいてくれるのは、非常に助かる。

「さて、まずは――」

とりあえず領内の唯一の村である、サンタンカへ挨拶に行ってみるか。

アイテムBOXからハ○エースを取り出す。

「ケンイチ! 妾にも、あの小さな天幕をたもれ」

リリスが、アマランサスにあげた日傘を見ていたようだ。

「あとで出してあげるよ」

話も、そこそこに車のドアを開ける。

「どこへ行くのじゃ」

「リリス、ちょっと乗ってくれ。隣にある村へ挨拶をしにいく」

「なるほど――そうじゃな。ハマダ領の領民じゃからな」

「私も行く!」

「アネモネ、村に挨拶したらすぐに帰ってくるんだぞ?」

「うん」

獣人たちとアマランサスにも指示を出す。

「周囲を警戒してくれ。しばらく留守にしていたから、魔物がやってきているかもしれない」

「解ったよ旦那」「にゃー」

一番敵に敏感なベルが、日向ぼっこして寝ているので、大丈夫だとは思うが……。

車を走らせて橋を渡り、サンタンカの村へ向かう。

直線距離で約3km――湖の畔を回れば4kmぐらいはあるが、車ならすぐ。

木造の平屋が立ち並ぶ、小さな村が見えてきた。以前訪れた時より、家や人が増えているように見える。

マスの干物やスモークサーモンを作っているので、仕事があるせいだろう。

何回かここには訪れているので、まっすぐに村長の家に向かった。

村長の家に行くと、中々上等な荷馬車が増えている――儲かっている証拠だ。

リリスと一緒に車を降りると、村長の家の扉を叩く。その様子をアネモネは車に乗ったまま見ている。

「村長! いるかい!?」

しばらく待っていると、村長が顔を出した。

「なんじゃい?」

短い顎ヒゲを生やした白髪の村長が顔を出した。

前は結構ボロい服だったが、以前に比べて着ている服が良くなっている。

「久しぶり」

「んん? ああ、あんたか。何か売りに来たのか?」

「いや、国王の命令で、この湖一帯の土地をハマダ辺境伯領として治めることになったから、挨拶にと思ってな」

「はぁ?」

村長は目をパチクリさせている。

「な、なんの冗談じゃい。ここらへんは、ユーパトリウム子爵領のはずで……」

「冗談ではないぞぇ、ご老人。ここらへんの土地は、子爵領から割譲されて、ハマダ辺境伯領となった」

「彼女は、俺の正室でリリスだ」

「よしなにの」

国王からの書状を見せても、村長は信じられないようだが、すでに決定事項。

騒ぎを聞きつけた、村人たちが集まってきた。

「皆も聞いてくれ。辺境伯領になったからといって、いまのところはなにも変わらない」

「本当でごぜぇますか?」

「ああ、なにか問題があれば、俺のところへ来てもらえばいい」

手土産に、シャングリ・ラから買った野菜のタネを渡す。

ほとんどが品種改良した中間種だと思うが、自家採種してどうなるかは不明だ。

「これが、野菜のタネでございますか?」

「この黄色い穀物は、隣の子爵領でも栽培が始まっているぞ」

「これが穀物ですか?」

実物を見せたほうがいいだろう。アイテムBOXから、以前に買ったトウモロコシを出して見せる。

「これだ」

「おおお~っ」「これは、珍妙じゃなぁ」「穀物なのか?」

「実を乾燥させて粉にすれば、小麦粉みたいに使える」

車にいたアネモネに来てもらい、魔法を使って加熱してもらう。すぐに白い湯気が出て、食えるようになった。

電子レンジいらずだ。魔法があれば、洗濯機も冷蔵庫も電子レンジも要らない。

氷を作る魔法もあるそうなので、製氷機も要らないよな。

そりゃ科学が発達しないわけだよ。

加熱されたトウモロコシを食べた住民たちが驚きの声を上げた。

「美味い!」「甘い!」「こりゃ、たまげた」

「上手く栽培しないと、こんなには甘くならないんだけどな」

「このタネを撒けば、この穀物になると――」

村長も、トウモロコシの美味さに驚いたのだろう。黄色い粒粒をじっと見つめている。

「そうだ」

住民たちは、あれやこれやと話し合っているが、とりあえずの挨拶は済んだ。

まだ半信半疑かもしれないが、なにかあっても子爵領からの手助けはないので、俺に頼むしかないし、当然俺にはその義務が生まれた。

そのことを住民に伝えると、車に乗って家に戻る。

「ケンイチ、それなりに儲かっているように見えたが、なにもせぬのかぇ?」

「村にはしないが、領にマロウ商会の支店を出させて、そこと取引をさせる」

「なるほど――そうすれば、マロウ商会から税を取ればいいわけじゃな」

この世界に人頭税や住民税などはないが、商業ギルドに登録している商人は利益から税金を取られる。

俺は貴族になったので、貴族として領を経営して利益が出れば、王国に税金を納めなくてはならない。

一般人には税金がないのが基本だが、街や領によって独自の税金を課している所もある。

そのへんは、各領や都市の裁量に任されているのが普通で、過酷な税に耐えられなくなった住民が離農したり脱領することもある。

「まぁ私腹を肥やすつもりもないし」

俺の家族だけなら、シャングリ・ラで購入した食料や、森で調達する獲物で十分に暮らしていけるからな。

「ケンイチならその心配もなさそうじゃな。じゃが私腹を肥やして領民をこき使い、生かさず殺さずしてこそ、貴族だという者もおるぞぇ」

「そんなこと、するはずもない――皆で幸せになろうよ」

「ふふ……ケンイチの申すことも、もっともじゃが、貴族らしくないのぅ」

そこに後ろの座席から、アネモネが割って入ってきた。

「もう! くっつかないの!」

「妾は、ケンイチの正室じゃぞ? のう、ケンイチ――昨夜のように、優しく妾を抱いてたもれ」

「ずるーい!」

「ははは、あのような身も心もとろけるような官能を味わえぬとはのぅ、かわいそうにのぅ、かわいそうにのぅ」

「むー!」

「リリス、アネモネを煽るんじゃない」

リリスがアネモネと言い争いをしている間に、車は家に到着した。

車から降りると、アネモネが俺に抱きついてきて離れない。

「これ、アネモネ。離れなさいって」

「や!」

彼女をずるずると引きずって、獣人たちを呼ぶ。

「ちょっと、湖の近くで畑仕事をするから手伝ってくれ」

「う~し!」「にゃ!」

水辺に近い所へ行くと、シャングリ・ラからサトウキビの苗を20本ほど買う。

地下茎を伸ばしてどんどん増えるらしいから、このぐらいでもいいだろう。

地下茎で増えるなんて、ススキや笹みたいな感じで増えるんだろうか?

アイテムBOXにも、俺が使っていたシャベルが入っているが、数が足りないのでシャングリ・ラで追加購入。

獣人たちにも渡した。

「これを埋めてくれ」

「これが砂糖になるなんてなぁ」「そうだにゃー」

「勝手にどんどん増えるらしいから、栽培は簡単らしいぞ」

「へぇ~」

皆で湖畔を掘り返して、サトウキビを植える。

作業を見ていたリリスも興味があるようだ。

「そんなに簡単に増えるなら、王国中が砂糖に埋まりそうだの」

「この植物の生育には、豊富な水が必要なんだよ」

「ほう――それでは、この湖の周りの土地が最適ということじゃの」

「そういうこと。それ故、このサトウキビと製糖は、この領の産業になるはずだ」

「ううむ……」

シャングリ・ラには甜菜もあるが、甜菜だとどこでも栽培できてしまうからな。

それを出すと、ハマダ領の優位性をなくしてしまう。汚いというなかれ、これは勝負なのだ。

やるからには勝たねばならないし、この領にやって来た者たちの未来と生活が、俺の双肩にかかっている。

植え終わったら、アネモネに成長促進の魔法をかけてもらう。

「む~! 成長促進(グロウ) !」

地下茎が横に伸びたのか、植えた場所以外からも芽が伸び始めた。

見る度に思う――こりゃ凄い。こんなの元世界のテクノロジーでも無理だ。

凄い魔法だが、対価なしで伸びているわけではない。植物の成長には、水と肥料が必要だ。

カラカラになって死んだ土地に、タネを撒き魔法を使ったとしても成長はしない。

魔法で成長促進させるには、ここにも肥料を沢山いれる必要があるだろう。

時間は少々かかるが、ある程度増えれば定期的な刈り入れが可能になると思われる。

「まったく、こんな草が砂糖になるなんてねぇ。旦那、次は?」

ニャメナが、サトウキビの葉っぱを、不思議そうにいじっている。

「これだ」

俺は、シャングリ・ラで見つけて購入した、あるものを見せた。

色は焦げ茶で、しなびたエンドウ豆のような形をしており、見た目とおりにマメ科の植物だ。

実際になっているところを見たことはないが、シャングリ・ラの説明には大きな木の写真が載っているので、木の実なのだろう。

その光景は、俺の地元に沢山生えていたニセアカシアを思い出す。

もっとも、ニセアカシアの実は毒なので何の役にも立たないが。

乾燥した殻を割ると、中から茶色の種を取り出した。

「マメかい?」

「まぁそうだな。ちょっと齧ってみろ」

取り出したタネを、ミャレーとニャメナに渡すと、彼女たちがそれを口に放り込んだ。

「ほんのり、甘いにゃ。ちょっと鉄っぽい味がするかにゃ?」

「あのチョコってやつの味がするぜ? これが原料なのかい」

「こいつはキャロブといって、チョコの原料であるカカオとは違うが、これもお菓子やパンにいれるための、材料として使えるだろ」

もしかしたら香辛料としても使いみちがあるかもしれない。

キャロブの利点は、マメ科の植物ってことだ。

これらは、根に共生している根粒バクテリアを使って空中の窒素を固定できるため、土地を選ばずよく育つ。

「私にも!」

「妾にもじゃ!」

俺にしがみついて離れないアネモネと、リリスにもキャロブの実を少し渡す。

「このタネには栄養もあるからな。飲み物としても使えるかもしれない」

「うん、美味しい」

「ほう、変わっている風味じゃの! あとからやって来るサンバクに渡せば、美味い菓子に変えてくれると思うぞぇ?」

「そうなんだよ。それを期待している」

カカオも栽培するが、上手くいくか解らないし、選択肢は多いほうがいい。

アイテムBOXから芽出しポットを取り出して、キャロブのタネと――以前購入したカカオのタネを植える。

作業の終了後、再びアネモネの魔法を使ってもらう。

「 成長促進(グロウ) !」

ポットに植えたタネが次々に発芽して、顔を出す。

「よっしゃ! こいつをもっと広い所に植えよう」

20個ずつ合計40個のポットを板の上に乗せて、アイテムBOXへ収納する。

崖に近い所に行くと、そこには、獣人たちが植えてくれたリンカーの木が生えている。

再び、獣人たちにシャベルを渡すと、キャロブの苗を植えてもらう。これらは木なので、少々離して植えたほうがいいだろう。

水と肥料をたっぷりとやって、再び魔法を使ってもらうと、あっという間に40cmほどに伸びる。

早い! キャロブのほうは、もう蕾が見えているので、花が咲きそうだ。

こんなに小さいのに、花が咲くってことは、実もなるってことだ。

ニセアカシアも増えまくるが、こいつも注意しないと、増えまくるかもしれない。

木も植え終わったので、畑にいるメイドたちの所へ行く。

俺が渡した麦わら帽子を被って、あちこちでメイドたちが忙しそうに働いている。

また芽出しポットに野菜のタネを植えて水をやり、アネモネに魔法をかけてもらう。

「なぜ、そのような器にタネを入れるのじゃ?」

「ん? 一箇所に集めた方が、水をやりやすいし、魔法もかけやすいだろ」

最初から 畝(うね) にタネを撒いてしまうと、一々歩いて回らなければならない。

「なるほどのう」

「発芽が悪いものを間引くのも、座ったままでできる――簡単だ」

「さすが旦那」「にゃー」

「さすがですわ、ご主人様」

マイレンのその言葉が恥ずかしいので、ちょっと提案をしてみる。

「マイレン、その『さすごしゅ』は恥ずかしいんだけど……」

「何をおっしゃいます。これも我々メイドの仕事でございますから」

俺の命令はなんでも聞くはずなのに、これはダメらしい。

主をおだてて仕事をさせるのもメイドの仕事の一つだと言いたいようだ。

「はは、実際にメイドたちが入れ替わっただけで、領の経営が傾いたみたいな話も聞くしのぅ」

リリスがそう言うのなら、間違いないのだろう。

華やかな表舞台を有能な裏方が支えている――結構ありそうな話ではある。

メイドたちを手篭めにして支配しているつもりが、実は操られていたとか――。

ポットで10cmほどに伸びた野菜を、皆で畑の畝に植えていく。

「なるほどのう、よく考えられておるわぇ。さすが賢者だのぅ」

それも止めてほしいのだが、自分でそういう設定にしてしまったからな。

これで畑に沢山野菜が育てば、メイドたちも自由に自炊できるだろう。

軽く皆で昼食を取ったあと、かねてから計画していた俺の作業をする。

それは、文明の利器である重機――コ○ツさんとファンタジー武器を合体させる試みだ。

俺の胸は期待で膨らんだ。