軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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湯あみを終えて、眠る少し前の時間。

いつものようにカイルと寝室で過ごしている。

ただ、今日のカイルは口数が少なかった。

クリスと三人での夕食時もあまり話してはいなかった。

やっぱりクラウスと会わせないほうが良かったのだろうか。

気になっていたアーレンスの状況は詳しく知ることができた。

だが、立ち会ったクリスから話を聞いて、クラウスがカイルに謝ったことも知った。

今さら謝っても取り返しがつかないこと、

それでも謝りたかったクラウスの気持ちもわからないでもない。

だけど、許す気のない相手から謝られ続けるというのは…。

カイルにとってつらいだけの時間だったのではないだろうか。

寝室に置いてあるソファに後ろから抱きかかえられるようにして座る。

カイルが私の身体に両腕をまわし、肩に額をのせるようにしてうなだれる。

耳元で小さなため息が聞こえた。

「大丈夫?疲れた?」

「…いや、疲れたというかなんというか。

もういいやと思っていたはずなのに、少し考えてしまって。」

「クラウス王子のことを?それともアーレンスのことを?」

「そうだなぁ。両方かな。

俺には母親の記憶が無いんだ。

産まれてすぐに離されて、母親には乳母だけが最後までそばにいたらしい。

その乳母は嫁ぐときに本家についてきたらしいが、

母親が死んだらまた分家に戻されて、俺は会ったことも無いけど。

そんな状況で母親が死んだことをクラウスはどう思っていたんだろうな…。」

「自分のしたことを、自分の罪を認識するのはきついよね。

その罪が重ければ重いほど、認めたくない。

アーレンスの人たちがカイルに冷たくしたのは、

きっと認めたくなくてカイルにあたってたんじゃないかな。」

「罪を認めたくなくて?」

「そう。自分たちが間違ってたと後悔しても、

もうお母様は亡くなってしまっているでしょう?

罪を償おうと思っても、もう遅い。

かといって、罪を背負うにも重すぎて耐えられない。

だから、カイルに冷たくすることで、

やっぱり自分たちは間違ってないって思いたかったんじゃないかな。」

「そう言われてみたらそんな気はする。

ずっと俺に会わないで放っておくこともできたはずなのに、

わざわざ会いに来てまで石を投げてきた。

本当に嫌いなら、会いに来なきゃいいのにって思ってた。

クラウスはなんというか、追い詰められているような顔をしていた。

もしかしたら、あの頃から薄っすら気が付いていたのかもしれないな。」

カイルに石を…。

罪の意識から逃げたかったとしても、幼い弟を傷つけていいはずはない。

穏やかに話すカイルに、胸が締め付けられる。

「それでもつらかったのはカイルとお母様だわ。

…無理に理解しようとしなくてもいいと思う。」

「そうだな。」

「多分、クラウス王子はカイルに罵ってほしかったんじゃないかな。」

「え?」

「謝罪しても意味が無い、だけど何かしなくてはいけない、

そう追い込まれていたんでしょう?

だったら、カイルに責めてもらったほうがマシだと思っていたかも。」

「…そうかもしれないが、俺は何も言いたくなかった。

言っても、もう何も変わらない。

今さらクラウスを責めたところで、意味のないことだ。

救ってほしかった時期はとっくに過ぎている。」

「カイルは救ってほしいと思っていた?」

いつだろう。アーレンスにいた頃だろうか。

居場所がなかったと言っていた。

私に出会う前、私には何もできなかっただろうけど…くやしいな。

「救われて、初めて気が付いたんだ。

誰かに必要とされたかった。

この手を取って、大事だと言われたかったんだって。」

ふいに抱き上げられ、くるりと逆向きにされてもう一度座る。

カイルのひざの上に正座するように座り、向き合う形になる。

つかむところが欲しくて、カイルの胸のあたりの服を両手でつかむ。

見上げたら、お互いの額をくっつけるようにして、カイルがささやいた。

「ソフィアだよ。

ソフィアが俺を必要としてくれたんだ。

俺がそばにいたらさみしくないって。

ずっとそばにいてって言ってくれたんだ。」

「私がカイルを救ったの?」

確かに私がカイルにお願いしたことだ。

初めてカイルの顔を見て挨拶されたとき、この人だと思った。

私に返事をくれた人。

前世から記憶が戻ったばかりで、ソフィアとしての自覚は薄かった。

だから、目が覚めるとまだあの塔の中に一人でいるんじゃないかって、

怖くてさみしくて、人の気配を探した。

最低限の家具しかない西宮の部屋は、あの塔の部屋にとてもよく似ていて。

栄養失調の身体は、魔力を吸われ続けた老婆の身体と同じくらい重くだるかった。

朝起きて、自分がソフィアだと思い出すまでの時間が一番怖かった。

あの時、監視人だったカイルがコツンと返してくれた。

人がいる。私の言葉に反応を返してくれる人がいる。

ここはもうあの塔じゃない。私のそばに人がいて守ってくれる。

それがどれほど心強かったか。

だから、ずっとそばにいてほしかった。

一番誰かにそばにいてほしいと思った時にいてくれたカイル。

居場所がないというのなら、私が居場所を作りたいと思った。

それが、カイルを救ったの?