軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

263 イベント前女子会

「いよいよ明日は聖夜祭ですね」

聖夜祭前日、私とユーリア様は寮のセリアの部屋でまったり過ごしていた。

準備万端整ったので、衣装のお披露目会という名目で、恒例となったパジャマパーティーを開いていたのだ。

パジャマパーティーという名前の通り、全員がパジャマ姿だったのけれど、「お披露目会」という名目を満たすため、それぞれ聖夜祭の衣装を一つだけ身に付けるのがお約束事だ。

ちなみに、私のアイテムは紫の撫子をメインにして作られた花冠で、それを頭に被っていた。

そして、ユーリア様は色とりどりの菫で作られた花冠を、セリアは黒百合で作られた花冠を被っていた。

「ああー、まるで示し合わせたように3人とも花冠を被ってきましたね」

滅多にない偶然に驚いたけれど、ユーリア様は予想していたようで、ゆったりと微笑んだ。

「ふふふ、去年と同じように、今年もほとんどの女子は同じ格好をしそうね」

「そうですね。少なくとも、私たち3人は同じ格好のようですね」

セリアが嬉しそうに頷く姿を見て、その通りだわと私も同意した。

聖夜祭のコンセプトは「聖なるあべこべの日」なので、普段とは異なる衣装を着る者が多く、過去の聖人にちなんだ衣装を着る者や、農夫や騎士の格好をする者などバラエティに富んでいる……というのは男子の話だ。

女子の場合は、毎年の流行りに合わせて衣装を選ぶ者が多く、去年は大半の者が流行りだった『星々の聖人』の格好をしていた。

そして、今年の流行りは……。

「『花の妖精』ですよね?」

セリアがにこりと微笑みながら尋ねてきたので、その通りだと頷く。

今年の聖夜祭の流行りは『花の妖精』ということで、『小さな妖精が花を身にまとったようなドレス』がコンセプトだ。

本物の花そっくりの色と手触りの布を使い、衣装そのものが一輪の花のように見えるように作られていて、その可愛らしさといったら身もだえするほどだ。

来年になったら流行りが変わるだろうし、この衣装は今しか着られないと考えると、どうしても女子の手は流行りの衣装に伸びてしまう。

そして、誰でも簡単に入手できるよう、街中の服飾屋に花の妖精の衣装が売ってあった。

平民や下位貴族のご令嬢であれば、それらのドレスを購入し、自分なりにアレンジしたものを身に付けるものだけれど、高位貴族になると話が違う。

家紋の花を持っているので、その花をメインにしたドレスを作るよう、何か月も前からお店に注文するのだ。

「お姉様は撫子、ユーリア様は菫ですよね」

セリアが確認するように尋ねてきたので、私もユーリア様もその通りだと頷く。

すると、セリアは赤らめた頬を嬉しそうに押さえた。

「私は黒百合のドレスを作ったんですが、花びらが外向きにカールしていて、それはもう可愛らしいんです。きっとお姉様のドレスも、ユーリア様のドレスも素敵なんでしょうね」

「うふふ、明日が楽しみね」

そう答えたものの、明日のイベントがスタートするのは夕方からだ。

だから、明日はどれだけでも寝坊できるわと、今日はのんびりセリアの部屋で過ごしているというわけだ。

「ところで、ルチアーナ様はサフィア様と同じチームになったんですよね」

やはり気になるのは聖夜祭のことのようで、セリアが興味深げに尋ねてきた。

もちろん、聖夜祭は私も気になるところだったので、大きく頷く。

「そうなんです。兄は時々とんでもないことを考えるので、大丈夫かしらと心配していたところ、案の定、外部から強力な助っ人を呼んだらどうかと言い出したんです。しかも、魔術師団長2人をですよ!」

ジョシュア陸上魔術師団長とアレクシス海上魔術師団長の名前を出された時のことを思い出し、私はため息をつく。

すると、兄と同じクラスのユーリア様が、理解したように頷いた。

「ふふ、サフィア様であれば、普段通りの顔をして突拍子もないことを言い出しそうね」

私はユーリア様に向かって顔をしかめる。

「そうなんです! 私がそんなことをしてはダメだと当然の注意をしたら、『私が立つぞ』と兄は言ってきたんです。もちろん兄が対応すべきことなのに、わざわざいいかと確認してきたんですから呆れますよね」

こういうところは怠け者なんだから、とぶつぶつ言っていると、セリアが首を傾げた。

「サフィア様がどこに立つんですか?」

「私を獲得しに来る男性陣の前に、だそうです。『聖夜祭ではお前を狙う男性陣と、正々堂々勝負することとしよう』と嬉しそうに言っていましたもの」

私の言葉を聞いたユーリア様とセリアは顔を見合わせる。

「まあ、それは……脅しね」

「ええ、控えめに言っても宣戦布告です」

私はきょとりとして聞き返した。

「え、誰に対してですか?」

「お兄様やエルネスト様を始めとした多くの男性に対してですわ!」

セリアが間髪をいれずに答えたため、私は顔をしかめる。

「……そう思いますか?」

実のところ、兄の言葉を聞いた直後は、兄は聖夜祭で好き勝手に振る舞うんじゃないかしらと嫌な予感を覚えたのだ。

しかし、時間が経つにつれ、兄は偽悪的なことを言う割には常識的だったことを思い出し、冗談を言われた気になっていた。

まあ、兄は本当に私のために、他の男性たちと戦うつもりかしら。

うーんと考え込んでいると、セリアがしょんぼりと俯いた。

「サフィア様はまだ、お兄様やエルネスト様を許していないのだと思います」

「ああー、それは……」

私もそんな気がするわ。

普段の兄はさっぱりしているけど、私が関係すると、色々と根に持つ場合があるのよね。

申し訳なさで私も俯きたい気持ちになっていると、ユーリア様がおかしそうな笑い声を上げた。

「ふふふ、私はフリティラリア公爵家から帰る馬車の中で、サフィア様が言っていた言葉を思い出したわ。『私の夢は、妹にまとわりついてくる有象無象の若者たちを返り討ちにすることだ』と、嬉しそうに語っていたわよね」

「……その通りです」

ああ、ユーリア様も兄の言葉を思い出しちゃったわ。

本当に兄は多くの男性をやっつける気かしら、と顔をしかめていると、ユーリア様が楽しそうに続けた。

「サフィア様はもうすぐ卒業でしょう。在校生への最後の贈り物として、彼の全力の魔術を見せてくれるつもりかもしれないわ」

ユーリア様の言葉が理解できずに首を傾げる。

「お兄様が魔術を見せることが贈り物になるんですか? というか、いくらお兄様でも、学園のイベントで魔術を発動させることはないんじゃないですかね」

兄のとんでもない魔術が発動されたら、学園の一部は間違いなく壊れるし、あの魔術は何だと噂になるだろう。

兄がそんな目立つ生活を望むとは思えないわ。

そう思っての発言だったけれど、ユーリア様は謎めいた表情で首を傾げた。

「どうかしらね」

それから、ユーリア様は考えるように首を傾げると、言葉を続ける。

「サフィア様はこの国でもトップレベルの魔術師だわ。だから、サフィア様の魔術を間近で見ることは非常に勉強になるの。立派な魔術師になることを望む学園の生徒たちにとっては、最高の贈り物になるはずよ」

「……そうなんですね」

でも、その望みは叶えられない方がいいわ。

私の心の平和のために、私はそう心の中で祈ったのだった。