軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

148 「収穫祭」という名の恋のイベント 7

「まあ、このテーマが1位になったのね!」

セリアが黒板に書きつけた得票数を見ながら、私は興奮した声を上げた。

収穫祭の新しい試みとして、生徒参加の人気投票で共通の仮装テーマを決めることにしていたのだけど、その結果が出たのだ。

ちなみに、候補となっていたテーマは4つだ。

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1 月の住人たち

2 砂漠の一族

3 獣人の一族

4 竜宮城と人魚の一族

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どれもこれも楽しそうで、どのテーマが選ばれても満足できるわ、と思っていたのだけれど……。

「ええ、意外な結果ですわね!」

セリアが黒板を見つめながら、驚いた声を上げた。

一歩下がって成り行きを見守っていたラカーシュは、腕を組むと難しい表情を浮かべる。

カレルも嫌そうに顔をしかめていたけれど、ジャンナはにまにまとした表情を浮かべていた。

そんな風に、皆が異なった反応を見せる中、私はセリアの意見に同意した。

「ええ、私も驚きましたわ! 学園のお祭りなので、可愛らしく『獣人の一族』が選ばれるのではと予想していたのですが、まさか『砂漠の一族』になるなんて!」

そう、2位と僅差ではあったものの、人気投票第1位のテーマは「砂漠の一族」だったのだ。

ちなみに、第2位は「獣人の一族」で、第3位は「月の住人たち」、第4位が「竜宮城と人魚の一族」だった。

「驚くことに、この人気投票に9割近い生徒が参加していますわ。これほど人気がある投票は生徒会長選くらいですから、皆さまの興味の高さがうかがえますわね!」

セリアが嬉しそうに感想を漏らす。

「ええ、本当に。『砂漠の一族』の説明に、『頭部布を巻き、装飾具で飾った露出度高めな、異国情緒溢れる世界』と書いていたのですけど、……『露出度高め』という部分が女子生徒に響いたのではないかと思うんですよね」

「まあ! ですが、それは……」

言い淀むセリアの言葉を私が引き取る。

「そう、諸刃の剣ですよねー!!」

投票用紙の文字から推測するに、「砂漠の一族」をテーマに選んだのは、大多数が女子生徒だと思われる。

そんな彼女たちの気持ちは分かる! すごく良く分かる!!

私だって王太子やラカーシュの薄着を見てみたい。けれど……。

「男性陣の薄着姿を見るためには、自分たちも薄着になる必要がありますよね。ですから、文字通り、女子生徒たちは一肌脱ぐ気で選んだのでしょうけれど、……普段は慎ましやかな貴族令嬢の選択としては、非常に大胆ですわね!!」

「砂漠の一族の衣装」と聞いた時に思い浮かぶ、あれやこれやの大胆な服装を想像して答えたところ、セリアがぎゅっと私の手を握ってきた。

「ルチアーナ様、これは高等教育ですわ!!」

「えっ、高等教育!?」

セリアの意外な言葉に、目をぱちくりとする。

「ええ、我が魔術学園に通う方々は、将来、魔術師になりたいとの志を持たれていますよね。そして、魔術師は肉体を誇示する必要がないため、いつどんな時でも、きっちりがっちり着こんでいらっしゃるでしょう? 一方、騎士を育成する剣術学園では、割とラフな格好をされている方が多いらしいのです」

ああ、そう言えば、ビオラ辺境伯家ユーリア様のお兄様2人は騎士だったわね……と、記憶を辿る。

先日、セリアとともにユーリア様のお宅にお泊りしたのだけれど、その際に2人のお兄さまの記録映像を見せてもらったのだ。

そして、その映像の中で、なぜか2人は簡単に上半身裸になっていた……。

ひるがえって我が学園の生徒を考えてみるに、ラカーシュにしろ、王太子にしろ、何があっても気軽に服を脱ぐことはないだろう。

「つまり、我が学園の生徒は、男性にしろ、女性にしろ、普段からきっちり着込んでいるので、肉体の構造について詳しくないのです。これはその不足を補うための、千載一遇のチャンスですわ!」

「な、なるほど?」

セリアの迫力に、思わず同意する。

「それに、今回採用されたのは『砂漠の一族』の衣装で、実際に砂漠地帯にお住まいの方々が着用されている服ですわ! それらを身に付けることに、何の問題があるのでしょうか?」

「ないです! ないです! 全く何一つ問題ありません!!」

全くの正論だわと思った私は、両手で拳を作ると、ぎゅっと握りしめた。

どのみち、収穫祭は学園の生徒だけが参加する、閉ざされたイベントなのだ。

内輪のお祭りで外国の衣装を身にまとったところで、問題になるはずもない。

私は片方の拳を突き上げると、高らかに宣言した。

「分かりました! でしたら、私は(悪役令嬢という)立場に恥じない、とっておきの衣装を着用しますわ!!」

すると、セリアも両手を合わせて追従する。

「まあ、頼もしい! 私もお姉様に負けないように頑張りますわ!!」

それから、そろりと一歩後ろに下がったラカーシュに対し、セリアは笑顔を向けた。

「お兄様の衣装も、とっておきのものを私が用意しますね! 任せてください!! お兄様は脱いだら凄いことを、学園中に見せつけて差し上げましょう!!」

「いや、セリア、それは本当に不要な気遣いだ! そういうのはひっそりと隠しておいてこそ、価値が高まるのであって……」

ラカーシュの心からの辞退を、セリアが一蹴する。

「お兄様ったら、お戯れを! ひっそり隠していたら、誰にも気付かれることなく卒業してしまいますわ! お兄様は凄い魔術師ですが、それは鍛えられた肉体があってこそということを、他の生徒に分かってもらわないと、誰もが魔術師に必要なものを理解せず、成長し損ねますよ」

セリアの言葉はまごうことなき正論だったため、ラカーシュは口を噤む。

すると、今度はジャンナが楽しそうに口を開いた。

「でしたら、エルネスト殿下のお衣装も生徒会で準備しておきましょう! お戻りになるにしても、きっと収穫祭の直前で、ご自分で作る時間はないでしょうからね」

「まあ、いい考えだわ! 黒百合(フリティラリア) と対になる 白百合(リリウム) の衣装だなんて、考えただけでもうっとりしますわね」

きらきらと目を輝かせるセリアを、ラカーシュが思い留まらせようとしていたけれど、成功しているようには見えなかった。

それはそうだろう。

戦いの火ぶたは切られたのだから、前進あるのみなのだ!

―――翌日の早朝、生徒会からのお知らせが、学園の掲示板に示された。

『収穫祭の衣装は、テーマに合ったものにすること

〇テーマ:砂漠の一族

〇説明:頭部布を巻き、装飾具で飾った露出度高めな、異国情緒溢れる世界』

学園近くの全ての手芸店において、その日のうちに薄布が売り切れたという。