軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

144 「収穫祭」という名の恋のイベント 3

「セリア様、私にはまだまだアイディアがありますから、必要であればいくらでも言ってくださいね!」

そう請け合うと、セリアは感激した様子で両手を組み合わせた。

「素晴らしいですわ、お姉様! 私はどこまでもついていきます!!」

意気投合し、2人で手を握り合っていたところ、ラカーシュが遠慮がちに口を開いた。

「一度に多くのことをやると、ルチアーナ嬢も疲れてしまうだろう。セリア、時間はあるのだから、少しずつやったらどうだ?」

思慮深いラカーシュらしい発言ではあったけれど、彼の疲れた表情から、どうもそれだけではないように思われる。

どうやらラカーシュ自身が疲れているようだ。

そのことに気付いたセリアが、兄の意見を受け入れる。

「ええ、そうですわね。……あの、お姉様、図々しいお願いだと承知しているのですが、お姉様の素晴らしいお考えをたくさんうかがいたいので、時々、……3日に1度、……いえ、2日に1度、……もしかしたら毎日、ほんのちょっとだけでもいいので、生徒会室に顔を出してもらえませんか? それとも、放課後はお忙しいでしょうか」

もちろん私も、楽しい乙女のイベントについて語り合うことはやぶさかでないけれど、いかんせん学生の本分がおろそかになっているので、そろそろ本気で勉強を始めなければいけないのだ。

「ええと……、それがお恥ずかしいことに、私は学園の授業に付いていけていないので、図書館で自習をしようと思っているのです。その前の時間でよければ、毎日でも寄れますわ」

私の言葉を聞いたセリアは、副会長用の机に向かっていたラカーシュを振り返った。

「まあ、でしたら、この部屋でお勉強するのはいかがですか? 分からないことがあれば、お兄様に聞けばいいのですから」

「あっ」

そう言われて思い出したけれど、ラカーシュから勉強を教わる約束になっていたのだった。

―――ウィステリア公爵家の晩餐会で、ラカーシュからセリアの運命を変えたことについてお礼を言われたのだ。

そして、ぜひフリティラリア公爵家の晩餐会に招待したいと申し込まれた。

けれど、攻略対象者にはできるだけ近付くべきでないと考えていた私は、咄嗟に『学業が遅れ気味なので、その点が解消されたら参加します』と返したのだった。

すると、ラカーシュが家庭教師役を買って出てくれ、その提案を受ける形で話が終わっていたのだ。

東星の一件があったため、すっかり忘れていたけれど、あの約束はまだ有効なのだろうか。

確認するためにラカーシュに視線をやると、彼は何一つ忘れていない表情で見返してきた。

「ルチアーナ嬢、君の気が変わっていなければ、私に君の学力向上の手伝いをさせてほしい」

「ええと……」

『私は驚くほど勉強ができないので、嫌になりますよ』『試してみようか』といった会話は既に交わしており、ラカーシュは決して忘れていないだろうから、繰り返す必要はないはずだ。

実のところ、一度、色々と抵抗した際に完全敗北を喫していたので、もはや抵抗する気が失せていた。

そのため、私は素直に頷く。

「はい、それではよろしくお願いします」

すると、セリアが嬉しそうな声を上げた。

「嬉しい! でしたら、お姉様は毎日、この部屋に来るのね」

「あっ、でも」

セリアとラカーシュは賛成しているにしても、残りの2人はどうだろう。

ここは生徒会室であって、決して勉強部屋ではないのだ。

そう心配になって、ジャンナとカレルを見つめると、2人は何でもないことのように頷いた。

「「(オレの邪魔をしないなら)問題ないですよ」」

カレルの言葉には何らかの言葉が付加されたように思われたが、まあいい。

表面的には賛成されたのだから。

「それでは、しばらく通わせていただきますね。よろしくお願いします」

そう言って、私は頭を下げた。

どのみち王太子は1か月の外遊中だ。

戻ってくるのは『収穫祭』の前後になるだろうから、それまでは聖獣に関して何もできない。

そうであれば、(お兄様が協力してくれるので、可能性は格段に下がったはずだけれど、それでも)もしものもしもで断罪され、放逐された時のために勉強を頑張り、かつ、王太子の学園の本拠地である生徒会室に通い詰めることで、王太子との接点を確保しておくのは非常に有効な行動に思われる。

しかも、話が合いそうなセリアと一緒になって、イベントについてのアイディアを語り合えるなんて、楽しいことこの上ないはずだ。

生徒会室での勉強は素晴らしいアイディアだわ!

私は心からそう思うと、満足のため息をついたのだった。