軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

120 ラカーシュ逆攻略計画 2

「「ひっ、筆頭公爵家のご嫡子様とお出掛けですって!?」」

授業終了後に寮に戻り、2人の侍女にこれから外出する旨を伝えると、目をむいて驚かれた。

「お、お嬢様、正気ですか? 筆頭公爵家というのは、公爵家の中でも1番偉くて、王家の次に家格が高い家ですよ?」

「しかも筆頭公爵家のご嫡子と言えば、フリティラリア家のラカーシュ様のことですよね? 『歩く彫像』と呼ばれる完璧な美貌と、強力な魔力を持った選ばれし方ですよね? そんな雲の上の方が、どうしてうちのお嬢様と……」

危ういところで侍女は言葉を飲み込んだけれど、いや、もう核心的な部分をほとんど口にしているからね。

そこまで口にしたら目の前で私を批判しているのと同じだからと思いながらも、彼女たちの感想はもっともだと納得する。

「そうよね。普通に考えたら、ラカーシュ・フリティラリアという一級品が、私のような投げ売り品を相手にするわけないわよね。攻略対象者とはできるだけ関わらないでおこうと決めたけれど、本当にその考えは正しかったのかしら?」

前世の記憶を取り戻して数週間が経過した今、かつての決断は正しかったのかしらと疑問が湧いてくる。

そもそもゲームの中のルチアーナは、全ての攻略対象者から嫌われていた。

にもかかわらず、あの手この手の汚い手段で主人公とヒーローの関係を邪魔したため、それを理由に断罪されたのだ。

ルチアーナの断罪に直接手を下したのは超高位者であるヒーローで、彼が情け容赦なくルチアーナを断罪したのは、元々ヒーローからの好感度が低かったから、というのも大きな理由ではないだろうか。

……あれ? だとしたら、私は攻略対象者たちの好感度を上げるべきじゃないのかしら?

勿論、攻略対象者と恋愛関係に陥るのはもっての外だ。主人公から敵視されないためにも、それだけは避けなければならない。

けれど、同じように誰からも嫌われている状態というのも避けるべきじゃないかしら。

「うーん?」

「お嬢様、お化粧中ですので、顔を傾けないでください」

「あ、すみません」

侍女が2人がかりで私を飾り付けている最中に、不用意に動いてしまったため怒られる。

私は傾けていた頭をまっすぐに戻すと、再び、自分の考えに戻った。

前世の記憶を取り戻すまでの私は、典型的な悪役令嬢だった。

王太子にしつこいくらいアプローチをして迷惑がられていたし、その行為を間近で見ていたラカーシュからは不愉快に思われていたはずだ。

つまり、2人からの好感度はどちらも地を這うほどに低いだろう。

もしかしたらラカーシュは、最近一緒に行動したことで仲間意識が形成され、少しはましになったかもしれないけれど、王太子のそれは低いままのはずだ。

その他の攻略対象者は……よく分からないけれど高くはないだろう。

直接かかわった部分以外にも、間接的に攻略対象者の友人に何かをしでかしたとか、知らないうちに好感度が下がっている可能性はあるし、これまでのルチアーナの行動を見ている限り嫌われる要素しかないからだ。

そもそも『悪役令嬢』なのだから、嫌われることが役割なのだ。

あれれ、だとしたら、私は攻略対象者を避けまくるのではなく、ちょうどいい距離を保つことがベストじゃないかしら。

たとえば断罪されそうになった時、『ルチアーナはそう悪い奴じゃないから、少しは手心を加えてやれ』と思ってもらえたら最高よね。

「うーん、うーん」

「お嬢様、髪型をセット中ですので、顔を傾けないでください」

「あ、すみません」

……何が正解かが分からなくなってきたわよ。

とりあえず、最高級品であるラカーシュが私を好きになるなんて、天変地異でも起こらない限りあり得ないから、試しに今夜は友人のように接してみるのはどうだろうか。

罪悪感からだとしても誘ってくれたということは、私のことを嫌っているわけではないはずだし、最近のラカーシュは友人とはいかないまでも、知り合いと呼べるくらいの関係になれたと思うからだ。

そのうえ、新生ラカーシュはいい人で性格イケメンだから。

人間には誰だって欠点があると理解して、できの悪い私にも優しくしてくれるかもしれないと期待する。

「ふう、どのみち望みを叶えてもらうために、何とかして王太子を攻略しなければと思っていたのだから、1人も2人も同じことよね! 今夜はラカーシュ様を攻略してみようかしら」

大いなる野望を口にすると、2人の侍女から安心したように微笑まれた。

「あ、よかった。お嬢様はいつも通りですね」

「最近は我儘も言わず、勉強を頑張られていたため、何か悪い物を食べたのではないかと心配しておりました。けれど、現実的でない野望を抱かれるご様子は、やっぱりルチアーナ様ですわ!」

……うーん、私の侍女2人は、発言が自由過ぎやしないかしら。