軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

川沿いの道と、衛兵たち

朝の光が木々の隙間から差し込む中、俺たちは朝食と夜営の片付けを始めた。

「いいか、ロウェナ。焚き火の始末は一番大事だ。火が少しでも残ってると、森が全部燃えちまうからな。こうやって、水をかけて、土を被せて、熱が完全になくなるまで確認するんだ」

俺はロウェナに手本を見せながら、焚き火の始末の仕方を教える。

ロウェナは、こくりと真剣な顔で頷き、小さな手で一生懸命に後片付けを手伝ってくれた。

最後に、昨夜仕掛けた鳴子を一つずつ丁寧に回収する。これは、これからも世話になる大事な旅の道具だ。

俺たちは再び川沿いに戻り、注意深く歩き始めた。

万が一、昨日の水蛇がまた現れてもいいように、川側を俺が歩き、常にロウェナを守れる位置を保つ。

静かな川の流れと、鳥の声だけが聞こえる中、俺はぽつりぽつりと、自分の過去について話し始めた。

「俺はな、お前と同じで、生まれて気がついた時から一人だったんだ。孤児ってやつだ」

「でも、代官騎士様っていう、偉くて、とても優しい人が拾ってくれてな。その人のおかげで、飯も食えたし、字も覚えることができた」

「それで、大きくなってから、その人がいた領都で、衛兵っていう仕事をしてたんだ。街の平和を守る、まあ、用心棒みたいなもんだな」

ロウェナは、俺の顔をじっと見上げながら、黙って話を聞いている。

難しい話は分からないかもしれないが、俺が何か大切なことを話しているのは、伝わっているようだった。

地図を確認すると、もう少し進めば、川沿いに人の手が入った道があるはずだ。

「ロウェナ、もう少しで歩きやすい道になる。そこまで、もうひと頑張りだ」

俺が声をかけると、彼女は力強く頷いた。

しばらく川沿いを進むと、視界が開け、そこには確かに川に沿って続く一本の道があった。

そして、微かに人の話し声が聞こえる。

声がする方へ向かうと、道の脇で数人の衛兵たちが座り込んで休憩していた。

俺たちは、彼らが座っていたせいで、近づくまでその存在に気づかなかった。

「誰だ!?」

俺たちの姿に気づいた衛兵たちが、慌てて立ち上がり、剣の柄に手をかける。

「待ってくれ、落ち着いてくれ。俺はエドウィン。昨日、この森の別の場所で、あんたたちの仲間に出会った者だ」

俺は両手を上げて敵意がないことを示し、前回と同じ説明を繰り返した。

事情を理解した彼らは、すぐに警戒を解いてくれた。

「そうか、巡回ご苦労。俺たちも少し休憩させてもらってもいいかな?」

俺たちもその場で腰を下ろし、衛兵たちと短い休息を共にすることにした。

「実は昨日、この川で水蛇に襲われてな。あんたたちも気をつけるといい」

「水蛇か! やはりこの雨で奴らも気が立ってるらしいな。俺たちの班も昨日、巨大な猪に遭遇してよ。新人が一人、危うく吹っ飛ばされるところだった」

「幸い、怪我は大したことなかったがな。それにしても、あんた、大した腕だ。子連れで水蛇を追い払うとは」

衛兵たちとそんな会話を交わしていると、ロウェナが何人かの衛兵から、おやつ代わりに干し肉や飴をもらっていた。

隊長らしき男が、地図を広げる俺に声をかける。

「この川沿いの道を行けば、あと1日もかからずに森を抜けられるはずだ。そこから先は開けた平原だから、もう安心だろう。気をつけてな」

「夜営の時は気をつけるようにな!」

俺たちは衛兵たちに礼を言い、別れた。

彼らは森の奥へ、俺たちは森の出口へと、それぞれ反対方向に出発する。

日が傾き始めた頃、俺はロウェナに、川沿いで夜営することを伝えた。

するとロウェナは、不安そうな顔で、身振り手振りで「水蛇は大丈夫か?」と伝えようとしてくる。

俺は彼女の頭を優しく撫でた。

「大丈夫だ。俺がいるから」

その一言で、ロウェナは安心したように頷き、一緒に夜営の準備を始めた。

食事を終え、ロウェナの文字の練習をする。

教えたそばから吸収していくのを見て感心してしまう。

練習を終えた後もロウェナは、旅の疲れがあるだろうに、水蛇の事が心配なのか必死に起きていようとしていた。

だが、やがてその小さな頭が、こくり、こくりと舟を漕ぎ始める。

しばらくすると、ついに力尽きたのか、俺の腕に寄りかかったまま、静かな寝息を立て始めた。

俺は自分の外套を彼女に掛け直し、その背中を優しく撫でてやった。

翌朝、俺たちは夜明けと共に出発した。

川沿いの道は、昨日までの獣道とは違い、人の手が入っているだけあって格段に歩きやすい。

俺たちは順調に歩き続けた。

そして、昼過ぎ。

木々の密度が徐々に薄くなり、目の前に、眩しいほどの光が差し込んできた。

森を、抜けたのだ。

目の前には、どこまでも広がる緑の平原と流れる川が広がっていた。

俺とロウェナは、どちらからともなく、大きく、大きく伸びをした。

「おーーっ!」

解放感から、思わず声が漏れる。

二人で空に向かって叫びながら、森の空気を肺から全て吐き出した。

黒葉の森は、これで終わりだ。