軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第80話 保険

日が完全に沈みきった夜、ウッドキャッスルで国王に現状を報告し終える。

オレ、シア、リースは王座ではなく、客間で王と対峙していた。誰にも漏らせない話だからだ。

オレ達の話を聞き終えた国王が最終判断を下す。

「申し訳ないが、この国から出て行ってくれないか」

(やっぱり、予想通りか)

オレ達の読み通り、国王は国外退去を命じてきた。

もちろん、リースが反対の意を唱える。

「待ってください父様! 大蠍(ジャイアント・スコーピオン) を討伐し力を示せば私達の好きにしていいというお話でした。一国の王である父様が約束を違えるつもりですか!?」

「一度交わした条件を違えるのは心苦しいが、その通りだ」

「ッ――」

国王は迷わず断言する。

改めてオレ達に向き直ると、悲しげな瞳で切々と語る。

「娘のララが姿を消し、妻は病床に伏せている。その上、まだ子供のルナを失うなど――考えただけで狂いそうだ。一国の王としてではなく、1人の父として願おう。どうかこの国から出て行ってくれないか。私はまだルナを、娘を失いたくなどないのだ」

もしスノーやクリスに子供が出来て、その娘が誘拐されたとしたら――オレ自身考えただけで狂いそうになる。絶対に誘拐した奴らを皆殺しにするが、それ以上に我が子の無事だけを必死に願うだろう。

「――分かりました。自分達は今夜にでもこの国を出ます」

「本当にすまない……」

国王は1人の父親として頭を下げる。

「予想した通りとはいえ本当に申し訳ありません」

国王が護衛者と共に退出し、客間にはオレとリース、シアだけが残される。

リースは改めて深々と頭を下げた。

「国王の気持ちも分かるよ。気にしてないから、リースも頭をあげてくれ。……それより今後の事だけど、本当に2人だけで大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。私達にはリュートさんが制作してくださった 汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン) 、PKMがありますから、皆様が戻ってくるまでの時間ぐらいは稼いでみせます」

「ボクも頑張って姫様をお守りします!」

2人は力強く拳を握り断言する。

ウッドキャッスルにルナ誘拐を報告する前に、オレ達は屋敷の居間で今後の方針をすでに話し終えていた。

思わず、その時の話し合いを思い出してしまう――

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

「どうか我が祖国と妹――どちらもお救いください」

リースは真っ直ぐな瞳でかなり無茶な要求をしてきた。

オレは思わず苦笑いを浮かべてしまう。

「祖国とルナどっちも救え、か……。リースも可愛い顔をして無茶言うよな」

「か、可愛いですか!?」

なぜかリースはオレの『可愛い顔』という言葉に反応して、頬を真っ赤に染める。

彼女はすぐに咳払いをして気持ちを落ち着けると、微笑む。

「私の信頼するリュートさん……仲間達なら、我が祖国と妹ぐらい同時に救ってくださると信じていますから」

そう言われると弱い。

周りを見渡すと、スノー達も微苦笑を浮かべていた。

彼女達の答えもどうやらオレと同じようだ。

「分かった。リースのため、大切な仲間の祖国と妹どちらも救うため最善を尽くそう」

「わたしも頑張るよ!」

『私も、大切な友達のルナちゃんを誘拐した方々は許せません。鉄槌を下します!』

「リュート様に牙を向けた代償をしっかりと支払わすべきですわ!」

「皆様、本当にありがとうございます……ッ」

リースは深々と頭を下げる。

そしてすぐさまオレ達は実務的な話に移った。

「まずは状況を整理しよう」

オレの提案に皆が頷く。

「記録帳に記された結界石が破壊される日については、詳細な日は分かっていないが、早くて数日中だ。これに間違いはないな?」

「はい、その通りです」

リースが頷く。

「次にルナの件だが、本当に誘拐されたと思うか?」

「ほぼ確実だと思うよ。だって、この髪の毛から、ルナちゃんの匂いがするもん」

スノーが髪を鼻に近づけ匂いを嗅ぎ断言する。

一級ふごふごニストが言うならまず間違いなく、この切られた髪はルナの物だろう。

「ならルナが誘拐されたとして……彼女なら自力で戻って来る可能性があるんじゃないか?」

「さすがにそれは楽観的すぎるとボクは思います。ルナ様は魔術師の才もあり、毎回ボク達を出し抜き城を抜け出しています。ですが誘拐相手も必死で逃がさないよう監禁していると思います。さすがに自力で脱出を期待するのは酷かと」

だよな。シアの言う取りだ。さすがに自力での脱出を期待するのは甘過ぎる。

「じゃぁ、オレ達が指示に従い国を出れば人質を解放すると思うか?」

この問いに皆が黙り込む。

安易に『解放される』とは言えない。

前世の世界でも『テロには屈しない』と某超大国が標榜していた。テロリスト側の要求を飲んだからと言って、人質が解放されるとは限らない。むしろ1度でも要求に従えば、さらなる要求を掲げてテロを何度も引き起こす可能性が高い。犯人側の要求を受け入れたからと言って、ルナが解放されると考えるのは甘過ぎる。

楽観視して、捜索せず傍観すれば最悪の結末を迎える可能性が高い。

「なら、ルナ誘拐を国王に話したらどうなると思う?」

「間違いなく、リュートさん達の国外退去を命じると思います」

リースが再度断言した。

つまり――

①記録帳のXデイは近日起きる。

②ルナの自力脱出は不可能。秘密裏に捜索すべし。

③国王からの国外退去命令はほぼ確実。

この状況でオレ達のすべきことは……

腕を組み考え込む。

「――まず国王に報告しよう。そして国外退去を命じられたら大人しく従うしかないだろうな。無理に反目してルナの捜査も、結界石破壊後に協力体勢を取れないのは厄介だ。だから念のためリースには現時点で完成している PKM等(装備一式) を渡しておく」

『リースお姉ちゃん、シアさんだけで倒させるつもりですか?』

「あくまで念のためだよ」

クリスの心配をやんわりと否定する。

「そしてルナの捜索に関してだが……」

皆の視線がオレに集まる。

オレならなんとかしてくれると視線で訴えかけてくるのだ。

下手に国の兵が動いたら、誘拐犯達がびびってルナを口封じに殺すかもしれない。

また何もせず放置していたら国外に連れ出され、二度と表に出てこない可能性もある。

自力脱出の目もほぼ無し。

彼女を救い出すことは出来るのは事情を把握しているオレ達だけだ。

だがどうやって少数でルナが監禁、捕まっている場所を特定する?

「――1つだけ彼女の居場所を特定する方法がある」

「本当ですか!?」

一番初めに姉であるリースが食いつく。

「可能性は高いと思うけど、絶対では無い。でも、恐らくこの方法しかないと思う……」

オレは皆に思いついた方法を話す。

「なるほど……確かにそれが一番ルナ様を見付け出す可能性が高いですね。さすが若様、こんな方法を思いつくなんてさすがです」

「本当に上手く行くか現時点では分からないけどな」

シアが納得し、称賛してくる。

オレは軽く受け流した。

「とりあえず一通りの方針は決まったな。それじゃまずリースには作業部屋にある装備一式を精霊の加護で収納してもらう。シアも来てくれ、 汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン) PKMの使い方を教えるから」

リース、シアが返事をする。

「スノー、クリス、メイヤは念のためいつでも国外退去出来るように荷物を積んでおいてくれ。メイヤが主導で保険で作っておいたアレも積んでおいてくれ」

「分かりましたわ! リュート様の一番弟子であるメイヤ・ドラグーンにお任せください!」

メイヤはオレに頼られて嬉しいのか、喜々として張り切る。

「それじゃ時間も無いし、手早く動こう」

オレの合図に皆、それぞれの役割を果たすため動き出す。

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意識が現実へと戻る。

打ち合わせは既に済んでいる。後はその通りに動くだけだ。

客間で向かい合っていたリース、その背後にメイドとして立つシアに声をかける。

「それじゃオレはスノー達の所へ戻るよ」

「妹を……ルナをどうか助けてください」

「ああ、任せろ。ルナもオレ達にとっては大切な仲間だ。絶対に助け出してやる」

「ありがとうございます、リュート様。では、これを」

目元を拭うリースから、ルナのハンカチを預かる。

そしてオレは立ち上がり、客間を後にした。