軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第78話 第3王女

大蠍(ジャイアント・スコーピオン) を退治して数ヶ月。

ハイエルフ王国の結界石が破壊されると予言されたXデイまで、数日に迫っていた。

今日もオレとメイヤは、湖外の与えられた屋敷でひたすら兵器製造に勤しんでいる。

お陰で 汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン) であるPKM、7.62mm×54R 弾薬(カートリッジ) も無事完成した。

また念のために制作した保険も稼働テスト済みだ。

苦労すると考えていた7.62mm×54Rも、今まで積み上げてきた技術蓄積により短期間に作成することが出来た。完成品が出来上がって以降はメイヤに日夜、 弾薬(カートリッジ) を作ってもらっている。

他にもオレとメイヤは攻撃用『爆裂手榴弾』と防御用『破片手榴弾』、パンツァーファウスト60型、鉄条網などを製作し続けている。

部屋の扉がノックされる。

扉から顔を出したのはスノーだ。

「2人ともオヤツ出来たから休憩にしない?」

「ありがとう、ちょうど甘い物が欲しかったところだったんだ。メイヤも一息入れよう」

「ええ、そうですわね」

オレとメイヤは朝から作業していた疲れ顔で、部屋を出る。

スノーの手作りオヤツが準備されている居間へ入ると――

「ねぇねぇクリスちゃん、早く食べさせて~」

『もうルナちゃんは甘えん坊さんですね』

クリスはねだられるまま、プリンをすくいルナに食べさせる。

「うーん、美味しい。クリスちゃんに食べさせて貰うといつも以上に美味しいよ! 次はルナがしてあげるね。クリスちゃん、あーん」

クリスは小さな口を開け、ルナの木製スプーンを咥える。

『ルナちゃんに食べさせて貰って美味しいです』

「もうクリスちゃんたら可愛い! クリスちゃんはルナのお嫁さんになってぇ!」

「お菓子を食べた上、人の大切な嫁まで誘惑するな」

「ぶぅー、もう邪魔者が来たー」

ルナは不満そうに唇を尖らせる。

ラフなスカートの私服に、いつものツインテールを解き金髪のストレートにしている。なぜか耳は短くなっており、瞳の色も緑ではなくなっている。

だが歴としたハイエルフ王国、エノールの第3王女、ルナ・エノール・メメアだ。

本人曰く、首から提げているペンダントに耳を短くし、瞳の色を変える魔術が込められているらしい。ハイエルフになれる魔術道具のペンダントの人種族バージョンと言ったところだ。

オレ達が 大蠍(ジャイアント・スコーピオン) を退治した後、湖外の屋敷で兵器制作を開始すると、ルナは城を抜け出しては遊びに来るようになった。

すぐさま、絵本好きで勇者物好きのルナとクリスは意気投合。

プリンを始め、ミル・クレープ、ポテトチップスのお菓子で餌付けまでしてしまった。

気付けばほぼ毎日、城を抜け出し遊びに来るようになっていた。

クリス&ルナは本当に仲が良い。

ルナの見た目がほぼ人種族でクリスと同じ背丈、金髪のため、詳しい事情を知らない第三者が2人の姿を見たら、仲の良い姉妹としか思わない。

それほど2人は仲が良いのだ。

相手が一国の王女様で、クリスと仲がいいから気を許したが、最近は彼女をオレから引き剥がそうとしやがる。まったくもって油断ならん。

「クリスちゃん、あんな人と別れてルナのお嫁さんになってよ」

ルナはクリスに抱きつき、頬をくっつけお願いする。

『駄目ですよ。私はお兄ちゃんのお嫁さんですから』

「えぇ~いいじゃん。リューとんより大切にするし、一杯優しくするからぁ~」

『お兄ちゃんやスノーお姉ちゃんに十分、優しくして貰ってるから。それにお兄ちゃんには優しくしてもらうだけじゃなくて、夜になると気持ちよくもしてもらって……もう体も心も離れられないですよ』

おいおいクリスさん、幸せそうな顔で子供(見た目は)に何を言い出すんですか?

後、その変な呼び名『リューとん』は止めて欲しい。

「夜になると気持ちよく……? 夜になるとマッサージでもしてもらってるの?」

幸いルナは意味が分からないらしく首を捻っている。

ある意味、マッサージで合ってはいるな。

昨夜もスノー&クリスと一緒にマッサージをしたり、されたり、されあったりしたけどね!

「兎に角、人の嫁を誘惑するのは止めろ。いいから子供は黙ってプリンでも食べてろ」

「ぶぅー! こう見えてもルナ、リューとんより年上なんですけど!」

「だったら、もっとそれらしい態度を取れ、態度を」

オレとルナは睨み合い火花を散らす。

「はいはい、2人とも仲が良いのは分かったから、じゃれ合いは止めて。折角、プリンを作ったんだからちゃんと冷えてる間に食べちゃおう」

「すまん、スノー」

「スノーお姉ちゃんがそういうなら」

ルナはクリスに合わせてスノーを『お姉ちゃん』と呼んでいる。

オレ達は席について、スノーが作ったプリンを食べた。

「でもルナさんではありませんが、本当に毎日食べても飽きませんわね。このリュート様が製法を開発したプリンというお菓子は」

メイヤも女子らしく甘い物が好きでプリン、ミル・クレープも喜んで食べる。

「でも、さっきの食べさせ合うのは良かったな。ねぇ、リュートくん、わたしにも『あーん』して欲しいな」

もちろん、大切な嫁であるスノーに頼まれたらノーとは言えない。

むしろ、喜んで食べさせてあげたい!

「もちろん、喜んで! はい、スノー『あーん』」

「あーん♪」

スノーは親鳥にエサをねだる小鳥のように口を開ける。

自家製プリンを食べさせてると、嬉しそうに尻尾を振った。

「はうぅん、リュートくんの味がして美味しさ3倍だよ」

美味さ3倍って……オレの木製スプーンには旨味成分でも付着していたのか?

クリスも頬を染めながら、ミニ黒板を掲げる。

『お兄ちゃん、私にも『あーん』して欲しいです』

「もちろんだよ!」

『ちゃんと一度、お兄ちゃんがスプーンを咥えてから、『あーん』してくださいね』

指示が細かい。

もちろん逆らうつもりは無く、オレは要望通り一度スプーンを咥えてからプリンを食べさせる。

『お姉ちゃんの言う通り、お兄ちゃんの味がして3倍美味しいです』

「ルナに食べさせて貰った時より、嬉しそう! 酷いよ、クリスちゃん! 女の友情は男で壊れるって本当だったんだ!」

ふはっはっはっ! 馬鹿め! クリスが誰を一番愛しているかこれで分かっただろう小娘が!

「り、リュート様! わたくしにも『あーん』してもらっても宜しいでしょうか!」

今度はメイヤが鼻息荒く、勢いよく挙手する。

「で、出来れば、フヒ、りゅ、リュート様がそ、そそそそのスプーンをですね。一度、ほひょ! 咥えてから、わ、わわわわたくしにプリンを、ふひひ、『あーん』して頂きたいのですが」

「い、いや、それはちょっと無理かな」

メイヤは目を血走らせ、鼻息荒く迫り『あーん』を要求してくる。

正直、怖い。

オレが断りを入れると、メイヤはこの世の終わりみたいな表情で滂沱の涙を流した。

「ど、どうしてですか! わ、わたくしに何か問題でもありますか! あるなら仰ってください! 全身全霊、命を投げ出すつもりで修正いたしますから!」

「いや、別にメイヤに問題はないよ。ただもうオレのプリンがないんだ」

「そ、そんな……盲点ですわ」

メイヤもプリンを食べきっているため、自身のを提供するという訳にはいかない。

「スノー、まだ冷蔵庫にプリンってあるよな」

「うん、あるけど食べちゃ駄目だよ。あれは――」

スノーの言葉を遮るように玄関のノック音が聞こえてくる。

彼女は『ちょっと待ってて』と声を出し、玄関を開けに廊下へと出た。

程なくして、知った顔が2つ居間へと現れる。

「ルナ! やっぱりここに居た!」

「ごめんなさい、皆様、突然お邪魔して」

リースは妹を見付け眉根を吊り上げ、シアはすまなそうに恐縮した。

「ルナ、貴女どうやって自室から抜け出したの! 扉も、窓の外も見張らせていたのに!」

「ちっちっちっ、相変わらずリースお姉ちゃんは甘いにゃ~。あれぐらいでルナちゃんを止められると本気で思ってるの? ルナを本当に引き止めたかったら魔術防止首輪を付けて、手足を鎖で縛った後、鉄越しの箱に入れて最低10人の兵士で監視しないと」

だからこの娘はどこのル○ン三世?

毎回、ルナが城を抜け出し、リース&シアが迎えに来るという構図が成り立っている。そのためスノーは彼女達の分のオヤツとして、プリンを準備し冷蔵庫にしまっているのだ。

「いつも済みません、リュートさん、皆さん。妹はすぐ連れて帰りますので」

「いや! まだここに居る! お姉だけ帰ればいいでしょ。それにちゃんと今日の分の課題は済ませたもの。文句を言われる筋合いはないもん!」

「王女である貴女が湖外にいるのが問題なの!」

「なら、お姉だってここに居ちゃ駄目じゃない」

「わ、私は今回の件の責任者だからいいの!」

リースは肉体強化術で身体能力を補助。妹を捕まえようとするが、

「甘い!」

彼女はその動きを見きり、姉の背後に回り込む。

その両手は姉の大きすぎる胸を鷲津噛む!

「こ、こら、何するの止めなさい……やぁンンッ」

「うわぁー柔らかい。ルナと身長殆ど変わらないのに、こんなにおっぱい大きくて、感度も良いなんて反則でしょ。あぁ、ルナもリースお姉ちゃんの半分ぐらい欲しいな」

「んんっ、ぁン! りゅ、リュートさんの見てる前でこんな――んっ、はしたないっ、嫌……いいから、止めなさいってばぁッ、ふぁ……ッ」

「ふっはっはっはっ! 止めて欲しかったら、ここに居ることを許可しなさい!」

「分かったから、今日は許すからもう止めてぇえ」

あっけなくリースは降参して、ルナが手を離す。

「姫様お気を確かに!」

まさか王族であるルナをシアが突き飛ばす訳にもいかず、見守るしか出来なかった。

ルナが離れると、慌ててシアが胸を押さえてへたり込んだリースに駆け寄る。

だいたいこんな風にリースが屋敷に来て、ルナに敗北するのが定番化している。リースは運動神経は悪くないが、胸や首筋、耳などが感じやすいのが敗因らしい。

オレは未だに座り込んでいる彼女に手を貸す。

「大丈夫か、リース。とりあえず、2人のオヤツもあるから食べて行けよ。少し屋敷でのんびりしてから城に帰ればいいさ」

「で、でもXデイに向けて準備をしているリュートさん達のご迷惑になりますし……」

「大丈夫、気にしないって」

オレは腕に力を込めて彼女を立たせる。

リースは離れる瞬間、僅かに手の指に力を込めたような気がした。

なぜか頬も先程より上気している。

動いて体が熱くなったのだろうか?

「……本当に居てもよろしいのですか?」

「もちろん! リースとシアなら大歓迎だよ。オレ達、友達で仲間じゃないか!」

「あ、ありがとうございます」

「お姉ちゃん、よかったね~」

ルナが反省していない顔で、ニヤニヤとリースに声をかける。

リースはさらに顔を赤くして、妹を叱った。

「な、何が可笑しいのですか! その笑みを止めなさい」

「もうお姉ちゃんも素直じゃないんだから。ここはルナちゃんが少しは素直になるようにしてあげなくちゃいけないかしら」

「きゃっ! も、もう、指を動かして近づくのは止めなさい!」

ルナが両手を広げ指を動かすと、リースは胸を隠して後退る。

2人の攻防はスノーのプリンが運ばれて来るまで続いた。

笑い声で満ちる部屋。

それは正しく幸せな一場面だろう。

だが確実に、ハイエルフ王国エノールが壊滅するかもしれないXデイは近づいていた。