軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第68話 ハイエルフ王国、エノール観光

ハイエルフ王国、エノールがある場所は妖人大陸の妖精種族領。

オレ達はメイヤが個人で所有する飛行船に乗って竜人大陸から、約1ヶ月半かけて辿り着いた。

ハイエルフ王国、エノール――そこは美しい森、湖、ハイエルフ達が住む幻想的な国だった筈なのだが……

「いらっしゃい! いらっしゃい! 安いよ! 名物のハイエルフ焼き、安いよ!」

「ハイエルフ様になれるペンダント! 今なら銀貨5枚!」

「ハイエルフ様の肖像画いかがですか? 持っているだけで寿命が延びますよ」

「うわぁー」

両側に広がる屋台には所狭しと品物が置かれている。

呼び込みの人種族達は、懸命に観光客らしき人物達に声をかけていた。

割合的に人種族の人数が圧倒的に多い。

恐らく7~8割は占めているだろう。

しかしハイエルフの姿などどこにも見あたらない。

先頭を歩きオレ達を誘導するシアに声をかける。

「ここがハイエルフの国じゃないのか? ハイエルフどこか、妖精種族自体あんまり居ないみたいだけど」

「はい、そうなんですが……」

と、シアが説明を始める。

彼ら人種族はハイエルフの長寿にあやかろうと集まった観光客、その相手に商売をする者達らしい。

獣人種族で約200歳。

竜人種族で約300歳。

魔人種族で約100~500歳。

人種族は約80歳と、寿命が他種族に比べると短い。

反対に妖精種族のハイエルフが、全種族中もっとも長寿。

通常のエルフが約1000年。

ハイエルフの寿命は約10000年と言われている。

「い、1万年!?」

「5種族勇者の妖精族代表がハイエルフで、勇者達の中でもっとも長く生きその時の寿命が1万年だったらしいんだ。実際は2000年過ぎたあたりから心が摩耗して亡くなっちゃうけど」

さらにハイエルフは生涯に1人としか結婚しない。

故に長寿と夫婦愛を司る種族として、人種族から絶大な支持を受けている。

だから、屋台ではハイエルフを摸したお菓子、絵画、木彫りの人形。果てはハイエルフに姿を変えられる魔術が込められたペンダントなどが売られている。

少しでもハイエルフの恩恵に与ろうとしているようだ。

(まるで鶴と亀と鴛鴦を合体させたようだな)

また長寿故、人口も少なく現在は約300人ほどしかいない。

そのため滅多に人前に姿を現さず、人種族の間では一目見たら1日寿命が延び、触れることが出来たら1年延びると言われている。

どこの世界でも人はジンクスや願掛け的なことが好きらしい。

「だったらこの人達はハイエルフに会いに来ているのか?」

「いえ、ハイエルフに無理に会おうとするのは禁止されてるから。それに彼らが住んでいる場所は特殊で特別な者しか立ち入ることが出来ないんだよ」

「特殊な場所?」

「その場所があそこ。アレがハイエルフ達が住む島です」

「おおぉー」

屋台を抜け、シアの後を付いて歩くと、目の前に巨大な湖が姿を現す。

大きさは琵琶湖の約2倍はあるだろう。

その湖の中心の島に巨木が、城を飲み込むよう立っている。

ハイエルフ達は城で暮らしているらしい。

「あのお城にわたし達は行くの? でも、船らしき物は見あたらないみたいだけど」

見とれていたオレに代わり、スノーが質問をする。

シアは苦虫を噛み潰したように苦渋を浮かべる。

「いえ、その……若様達をすぐにお連れする訳にはいかなくて……」

シアがしどろもどろに説明した。

「湖へ許可無く船を出したら逮捕されてしまうんです。さらに若様達はまだ一介の冒険者。しかもレベルⅡ。例え申請を出しても許可は出して貰えません」

「馬鹿にしているわ! 天下のリュート様がわざわざ請われて来てくださったと言うのに! そんな態度なんて!」

メイヤは説明を聞くと、激昂する。

シアはひたすら頭を下げ謝罪した。

「すみません! すみません! 若様達に失礼なのは重々承知してるけど、こればかりは無理なんです。兎に角、ボクはこれからあの城に戻り若様方をお連れしたことを報告して来るので、一晩だけ宿で待ってて下さい」

シアの指定した宿へ行けば、話が通してあり無料で宿泊出来る手筈になっているとのことだ。

どうやら彼女がこの国を旅立つ時、すでに話をしていたらしい。

手回しが良いというレベルじゃないだろ……。

「どうどう、落ち着けメイヤ。それじゃ折角だから一度宿に荷物を置いて、観光とでもしゃれ込もうぜ」

『ですね。折角だしのんびり見て回りましょう』

「シアはその間、報告を済ませてくるといい」

「ありがとうございます!」

そしてシアから宿の場所を聞き、彼女とはその場で別れた。

明日の朝には宿に戻ると、シアは言っていた。

彼女が戻ってくるまでの間、オレ達は観光することに満場一致する。

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シアが話を通してくれていた宿はこの辺では一番グレードが高かった。

そこのスイートルーム的最上の部屋を割り当てられる。

窓からは湖が一望でき、スノー&クリスも見晴らしに喜んでいた。

一応宿主が気を遣ってくれたのか、部屋割りはオレとスノーとクリスで一部屋。

メイヤが別の一部屋となる。

早速荷物を置いて、先程通り過ぎただけの屋台を冷やかしに行く。

まずは名物らしき『ハイエルフ焼き』を食べる。

ハイエルフ型に焼いた小麦の中にジャムが入っている一品だ。

タイヤキに近いのか?

けどいいのかハイエルフを焼いても……。

「ちょっともさもさしてるけど美味しいね」

「口の中の水分を凄い勢いで奪われますわ」

スノー&メイヤは物珍しそうに食べていた。

一方、魔人種族で甘味にうるさい妻のクリスはというと――

相変わらず『甘味は遊びじゃありません』と眼で訴える真剣な表情で、ハイエルフ焼きを食べていた。

『小麦粉の溶かし方が甘いです。生地自体に甘さが無いのはいいけど、ジャムの甘さがたりません。砂糖を節約してますし、ジャムの味も1種類だけではなく、他にも増やした方がいいですね。10点満点で、2.17点です』

相変わらず点数が細かい。

今回の『ハイエルフ焼き』は口に合わなかったらしい。

名物に美味いもの無し、とも言うしな。

単純にお嬢様のクリスの舌に合わなかった可能性もあるが。

そして、オレ達は『ハイエルフ焼き』を食べながらぶらぶら歩く。

「あっ、リュートくん、ハイエルフさんだよ」

スノーが指さした先には金髪、長い耳、緑の瞳をした一見、エルフっぽい少女が歩いていた。胸には随分目立つペンダントを下げている。

「いえ、あれは偽物ですわ。胸のペンダントがその証拠です。エノールでは有名なお土産品で、装着するとハイエルフに容姿を変える簡単な魔術が施されているのですわ」

また使用する際は犯罪や誤解を生まないため、ペンダントは外部から見える位置に付ける決まりになっているらしい。

どうやら本物がいない代わりに、ペンダントを売り観光客にハイエルフの真似事をさせているようだ。

前世の京都で、舞妓衣装を観光客にレンタルして外を歩かせて、他の観光客に京都らしさを強調する役目を果たさせていたのと一緒か。

この国は湖を中心に発展しているらしく、そこそこ大きい規模の 冒険者斡旋組合(ギルド) を発見する。

「折角だから、 冒険者斡旋組合(ギルド) に挨拶してレベルアップ審議の件を伝えておかないか?」

冒険者斡旋組合(ギルド) を前に思い出す。

オレ達はレベルⅡ、Ⅲに関わらず懸賞金首の魔術師とツインドラゴン(幼生体)を倒してしまった。そのため現在、いくつレベルを上げるか審議中なのだ。それを早めにハイエルフ王国エノールの 冒険者斡旋組合(ギルド) に伝えておいた方がいいだろう。

「そうだね、忘れないうちに寄っておこうか」

『時間もまだありますしね』

「リュート様の行く場所がわたくしの行く場所ですわ!」

嫁達と弟子の了承を取り付け、 冒険者斡旋組合(ギルド) 建物内へと入る。

内部は相変わらず銀行やお役所的な作りだ。

オレ達は番号札を受け取り呼ばれるまで待つ。

番号札の番号を呼ばれたカウンターへ向かうと、そこには――

「いらっしゃいませ、今日はどのような用件でしょうか?」

竜人大陸でいつも担当してくれている受付嬢が居た!

メイヤ以外は驚きの表情をしてしまう。

「? あのどうかなさいましたか?」

「どうもこうも、どうして貴女がここにいるんですか!? 竜人大陸の 冒険者斡旋組合(ギルド) に居た筈でしょ!?」

「竜人大陸……もしかして、姉のことですか?」

「――え?」

落ち着いて話を聞くと、彼女はいつも受け付け担当してくれている女性の妹らしい。

だが見た目は本当に双子のように瓜二つだ。

魔人種族(まじんしゅぞく) らしく頭部から羊に似た角がくるりと生え、コウモリのような羽を背負っている。当然、 冒険者斡旋組合(ギルド) 服がよく似合っていた。

「すみませんお騒がせしてしまって」

「気にしないで下さい。双子でもないのによく似てるので、子供の頃からよく間違えられてましたから。姉は元気にやっていますか?」

「はい、お元気です。いつもお姉さんにはお世話になってます」

「そんな。むしろ姉の方が迷惑をかけているんじゃないかと心配してるんですよ」

迷惑ではないが……ちょっと結婚や婚期、嫁の話になると絡まれるのが怖い程度で。

「ところでリュート様達はどういったご用件で?」

「実は今、僕達レベルアップの審議中で。お姉さんにも勧められ、念のためこちらにも話を通しておこうと思いまして」

「わざわざありがとうございます。それでは確認のためタグをお預かりしても宜しいでしょうか?」

オレは言われるがまま首から提げているタグを手渡す。

妹さんは慣れた様子でタグを魔術道具で確認する。

「ありがとうございます。それではこちらでクエストを受ける場合は、竜人大陸での功績も含めて審議させて頂ければと思います」

タグ返却後、席を立つと『姉に宜しくとお伝え下さい』と頭を下げられた。

しかし前世の世界では、自分によく似た人物が3人居るといっていたが、あれはちょっと似すぎだろう……。

冒険者斡旋組合(ギルド) を後にすると、オレ達は民芸店に寄った。

そこにはハイエルフの肖像画、木彫り人形、ブローチ、髪留めなどが売っている。

「わぁ、リュートくん見て見て、これって」

スノーが店内で気付いた品物、それは――ハイエルフの横顔が刻まれたリバーシのコマだ。脇には折りたためるゲーム台も置いてある。

どうやらこのコマはハイエルフ王国、エノールでしか手に入らない限定品らしい。

ご当地アイテムというやつか。

「へぇー、リバーシってこんなところにも広まってたのか」

『なんですかこれは?』

「どうかなさいました?」

遅れてクリス、メイヤが眼を向ける。

彼女達はどうやらリバーシを知らないらしい。

確かに魔人大陸や竜人大陸でリバーシが売っている所は見たことがないな。

スノーは嬉しそうに2人へ説明する。

「これはねリュートくんが子供の頃に作った玩具でリバーシって言うんだよ。とっても面白い玩具なんだ」

「これが『リバーシ』ですの? 調査報告書で読んで知ってましたが、実際見るのは初めてですわ」

『これはどうやって遊ぶ物なんですか?』

メイヤを追求しようとした矢先、クリスに袖を引っ張られ質問される。

とりあえず彼女の発言は一時保留にして、妻にリバーシの遊び方を教えた。

リバーシのルールは簡単で、すぐにクリス&メイヤは覚える。

「ねぇ折角だから1つ買ってみんなで遊ばない? 久しぶりにリュートくんともやってみたいし」

スノーの提案でご当地コマのリバーシを買う。

コマ、ゲーム台込みで銀貨1枚とやや高めだ。

オレは買ったリバーシを受け取り持つ。

荷物を持つのは男の甲斐性だ。

それにこれで夜、嫁2人を相手にリバーシで負ける度、服を脱いでいくゲームをしよう!

野球拳ならぬリバーシ拳!

昼間は紳士で気さくな夫だが、夜は野獣へとリバーシしちゃうってことか!

我ながら上手いこというな。

……上手いよね?

そんな感じで観光を済ませると、日が暮れてきたので混み合う前に夕飯を摂る。

店は地元レストランだ。

この店の名物は目の前に広がる湖に住む魚料理らしい。

ハイエルフの湖で採れるため、食べれば1年寿命が延びると言われている。何でもかんでもそっちに結びつけるとは……。

やや呆れたが、料理は素朴な感じで美味かった。

地精酒も少しだけ飲み、オレ達はほろ酔い気分で宿へと戻る。

部屋の前に辿り着くと、スノーが表情を引き締める。

「リュートくん、部屋に誰か居る」

オレ、クリス、メイヤが彼女に倣って表情を引き締めた。この一帯では値段の高い高級宿屋だ。警備もしっかりしているから、物取りの線は無いだろう。

もしかしたらシアが戻って来たのかもしれない。

一応、念のためオレは腰に下げているリボルバーに手を伸ばしておく。

スノーもクリス、メイヤを庇うように立ち、自身の『S&W M10 2インチ』リボルバーを何時でも抜けるよう構える。

オレは準備を終えるのを確認して、ゆっくりと扉を開いた。

「――お帰りなさいませ、若様」

「……シアなのか?」

部屋に入ると2人の女性が待ち構えていた。

1人はここまでオレ達を連れてきたシアだ。

しかし、昼間着ていた冒険者ルックでは無い。

紺のロングスカートで足首近くまで隠して、真っ白なエプロンを結び、頭にはヘッドドレスで纏めている。裾は暗器でも隠せそうなほどゆったりしているが、正統派メイドのような恰好をしていた。

ギャップに一瞬、シアだと判別出来ないほどだ。

もちろん彼女にとても似合っている。

もう1人は部屋に居るのにも関わらず、頭をすっぽり隠すタイプの外套に袖を通していた。

身長は高くない。クリスよりもう少しだけ高いぐらいだ。

どうして顔を隠しているのに女性と分かったかというと、外套でも隠しきれないほど胸が大きい。

恐らくスノーよりも大きい。つまり背は低く、巨乳――ロリ巨乳ということか!

テーブルには湯気が昇る 香茶(かおりちゃ) が淹れられていた。どうやらシアはこのロリ巨乳の給仕をしていたようだ。

「どうぞ、皆様お部屋にお入り下さい」

シアに促され部屋に入る。

席に座っていたロリ巨乳も席を立ち、オレ達と向き合う。

シアが間に立ち、少女を紹介する。

「こちらの方がボクを若様に遣わせたお方です」

少女が外套の帽子部分を脱ぐ。

長いストレートの金髪がふわりと流れ落ちる。

尖った長い耳、新緑の若葉を彷彿とさせる瞳、神が手ずからお作りになった端正な美少女だった。しかし問題はそこではない。

シアが淡々と紹介を続ける。

「ハイエルフ王国、エノール。第2王女、リース・エノール・メメア様です」

ハイエルフ王国、エノールの王女様!?

ハイエルフの中のハイエルフが今、ここに存在する。

少女――リースは友好的な笑みを浮かべる。

「お会いしたかったです。我らの勇者様」