軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

軍オタコミックス6巻、なろう特典SS メイヤの評価

――三人称視点。

「いらっしゃいませ! 空いている席へどうぞ!」

酒場に入ると元気なウェイトレスの声が響く。

彼女達、新・純潔乙女騎士団団員、2名が休みを利用し、夜、息抜きのため酒場へと繰り出す。

「お姉さん、酒精と唐揚げ、まよねーず多めでお願いしますニャ!」

「私も酒精に唐揚げ3人前、ポテトチップスに、タルタルソースのフライドポテトで」

「はい、ありがとうございます!」

ウェイトレスは注文を受けると、元気良い返事をした。

団員2名は自宅に帰宅したような気楽さで、席へと座る。

「ふにゃぁ~、この店に来るのも久しぶりニャ」

「だねぇ。団長達の結婚式の後、本当に忙しかったから……」

語尾に『ニャ』を付けるのは、獣人種族、 猫人(ねこびと) 族のアリーシャ。

猫人族というだけあり、猫の獣人で猫耳と尻尾が特徴である。

彼女の向かい側の席に座ったのが、人種族のミラだ。

ミラは同世代に比べて背が低い。童顔で胸も小さく、栗毛の髪をお下げに結んでいるためか、見た目以上に若く見られる。

2人は純潔乙女騎士団へ同時期に入団した。

いわゆる同期である。

性格、波長も合うため 軍団(レギオン) でも特に仲が良い。

注文の品がテーブルへと並ぶ。

2人は酒精が入った木製のカップを重ねると、互いに口を付ける。

「団長達の結婚式、予想はしてたけど盛り上がったわよね」

「盛り上がったニャー。にゃー達が甲冑を着てパレードしている姿を弟や妹達にも見せたかったニャ」

「それは私も同じよ。でもあれだけ人が居たんじゃ無理でしょ」

アリーシャの愚痴にミラは肩をすくめて答える。

例え一世一代の晴れ舞台を親族に見せようと思っても、ココリ街城壁外まで人が埋め尽くした状態では、近くで見てもらうのはほぼ不可能だ。

リュート達側ですら主催者権限で枠を取るのに四苦八苦したのだから。

ミラやアリーシャ達一般団員がどうこうできるレベルではない。

「個人的には旧純潔乙女騎士団の人達が見に来てくれただけで感無量だけどね」

「分かるニャ、分かるニャ」

2人ともリュート達が来る前の純潔乙女騎士団時代を知っている古株だ。

故に感動は新規団員達に比べてひとしおである。

「あと個人的にメイヤさんが団長と結ばれた姿を見て、旧純潔乙女騎士団の人達が見に来てくれた以上に感無量というか……達成感があったわ」

「うわぁー……その気持ち凄く良く分かるニャ」

2人ともリュート達が来る前の純潔乙女騎士団時代を知っている古株だ。

故に竜人種族、魔術師Bマイナス級、メイヤ・ドラグーンがリュートに好意を持ち迫るが、長い間ずっと袖にされ続けてきた姿を目にしていた。

最初こそ『いつ団長がメイヤと結ばれるのか?』と賭けの対象になっていたが、後半はむしろ同情心が強く、団員達の誰もが彼女を応援するようになった。

故に最古参組からすると、長年の想いを遂げた姿を見せられ感じ入ってしまったのだ。

……気持ちは分からなくもない。

「団長もさっさとメイヤさんとくっつけばいいのに長々と待たせて」

「リュート団長がメイヤさんを待たせ過ぎて、一部の竜人種族達がちょっとピリピリしていた時期もあったからニャー。最終的に2人がくっついたからよかったけどニャ」

「本当によかったわよ。団長自身、自分の人気に疎いところがあるけど、メイヤさんの名声や人気が高いことを軽視して欲しくないわ」

ミラが愚痴をこぼしながら酒精を煽る。

飲みきると唐揚げと一緒に追加注文をした。

彼女達の指摘通り、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の知名度は高く、特に『勇者』で『英雄』のリュート・ガンスミスの人気は非常に高い。

魔王を倒した勇者で、世界を救った英雄。

現在、一番力を持つ 軍団(レギオン) のトップで、各種族トップや著名人と繋がりを持っている。

さらに性格も善性で温厚、リバーシや料理、ウォッシュトイレなど多岐に渡り新技術を開発している技術者でもある。

繋がりを持とうと貴族や大商などが、『自分の娘を』『妹を』と縁組を持ち掛けてきているだろう。

未だにそれら外部からの押しつけで嫁を娶っていないのは、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の外交を担う魔人種族ラミア族のミューア・ヘッド手腕によるところが大きい。

では内部ではどうなのか?

新・純潔乙女騎士団の新規団員の中には勇者で英雄のリュートに憧れている者が多数居て、『あわよくば見初められて……』と考えている者も居た。

しかし大抵メイヤの奇行――ではなく、リュートへの愛を目の当たりにして心が折られるのだ。

ミラが先程まで美味そうに飲んでいた酒精を、苦い顔で喉へと流し込む。

「メイヤさんて美人だし、スタイル良いし、団長さえからまなければ性格はちょっと上から目線が入るけど許容範囲でまともだし。魔術師で、血筋も、名声も、実績も凄いのに……。リュート団長が絡むとどうしてあんな風になるの? 団長のこと好きすぎない?」

「分かるニャ、その気持ち凄く良く分かるニャ」

彼女の言葉にアリーシャが何度も深く頷く。

メイヤがリュートに好意を抱いているのは、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団員のみならず、ココリ街住人なら常識レベルで知られていることだ。

PEACEMAKER(ピース・メーカー) 内で知名度でいえばリュートが一番高い。

しかし、例外がある。

その例外がメイヤ・ドラグーンだ。

彼女は『魔石姫』と呼ばれるほど高名な著名人で、竜人種族に限ればリュートより知名度が高い。

さらに誰もが振り返るほど美人で、スタイルも良いためどこに居ても自然と目立ってしまう。

そんな彼女が『リュート様のため!』と行動すれば、目を引くのは必然である。また彼女がどれほどリュートに好意を抱いているのか、ココリ街の住人なら誰もが知っていた。

どれほど好意を抱いているかというと……権力や金銭目当てでリュートに近付いた場合、自身のみならず関係者全員の身が危ないと直感するほどに。

純粋に好意を持って近付こうとした場合、メイヤのリュートに対する好意から来る献身を前に、彼女ほど愛せる、または三分の一も想える自信がなく心を折られるレベルだ。

ミラが視線をテーブルに落としながら、心の底から吐き出す。

「正直、将来的に誰かと結婚するとしても、メイヤさんほど団長を愛せる自信ないわ……」

「それはにゃーも同じニャ。メイヤさんの献身はむしろ乙女として心が折られるほどニャ……」

「……でも他の隊長達も凄いよね。メイヤさんのリュート団長に向ける偏愛――こほん、純粋な愛を目の当たりにしても腰が引けないなんて」

「にゃーが同じ立場なら、とっくに心折られてるニャ」

「そりゃ私もよ。あんな人を愛せるなんて、羨ましい通り越してちょっと怖いわよ」

ミラ、アリーシャが無言で酒精を舐める。

「……そう考えると、他のスノー隊長とかもメイヤさん級にリュート団長を愛しているってことよね。それってつまり隊長達もメイヤさんと同じぐらいやばいってことじゃ――」

「それ以上はいけないニャ。にゃーはまだ命が惜しいニャ……ッ」

ミラの台詞を遮り、アリーシャは真剣な顔で釘を刺す。

ミラ自身、自分が迂闊な発言をしていることに気付く。

彼女は顔色を青くし苦くなった唾液を飲み込んだ。

「わ、私だってまだ命は惜しいわ。家族に仕送りだってしたいし」

「ならこの話はもう止めるニャ。にゃーだって妹や弟達に身売りなんてさせたくないニャ」

「そうね。この話はもう辞めましょう。飲んで忘れましょ。お姉さん、酒精もう一杯お代わり!」

「にゃーもニャ! ついでに唐揚げも一皿お代わりニャ!」

2人の掛け声に酒場のお姉さんが元気の良い返事をする。

これを切っ掛けに2人は先程の話を打ち切り、別の話題を持ち出す。

今までしていた話など最初からなかったかのように振る舞いつつ。

こうして夜は更けていく――が、 軍団(レギオン) 、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の闇はそれ以上に深かったのだった……。