軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

クリス・スナイパー 後編

朝日が昇ると同時に、灯台に火が灯る。

その灯台台座の上に、偽玉が置かれていた。

このまま何もせず指をくわえていれば、この偽玉に光が差し込み四方を照らし出す。

仮に昔からの伝えられている話が本当なら、大災害が起きるだろう。

警備を担当する男達は心情的には町人達に味方したいが、仕事を受けた以上はきっちりとこなさなければならない。それが警備を請け負った彼らの軍団の理念である。

男達は灯台から距離を取りながらも、彼らを窺っている町人と睨み合う。

周囲には篝火が焚かれて昼間のように――と、まではいかないが十分、周囲を警戒するだけの光量がある。

とはいえ、さすがに海側奥まで照らすほどの光はないが。

町人達が暴力で押し通ろうとするのを警戒し、男達は陸側に意識を集中していた。

当然、この配置もリュートの発案である。

町人の協力を得て、陸側に意識を向けさせる。

その間に、海側から偽玉を破壊するつもりなのだ。

では、どうやって海側から偽玉を破壊するのか?

その答えが夜空から姿を現す。

今夜は運が良いことに曇りで、星や大月明かりを隠してくれている。

お陰でただでさえ暗く奥まで見ることが出来ない海が、より濃い闇に飲み込まれていた。

目を凝らしても何も見えない。

せいぜい激しい風や波音、海の匂いなどする程度だ。

「クリス、この辺か?」

『もう少し前に進んでください』

そんな永久の闇に飲み込まれた海側上空を飛行する物体がひとつあった。

レシプロ機(擬き)である。

いつも PEACEMAKER(ピース・メーカー) で使用している物とは形は同じだが、色が違う。

暗闇に溶け込むように、翼の先端まで全て真っ黒に塗られていたのだ。

操縦席に座るリュート・ガンスミス、後部座席に腰を下ろす嫁のクリスも頭から爪先まで黒い衣服を身に纏っていた。

リュートは嫁クリスの指示で黒色レシプロ機(擬き)を操縦し、ベストポジションを探す。

ちなみに『レシプロ機』と見た目から言ってはいるが、性能的には気球に近い。

機体の底には魔石が敷き詰められており、スイッチを入れると魔石が起動し機体が浮かび上がる。

あとはプロペラを回せば前進する。

なので地球に存在したレシプロ機と違いこの擬きは、滑走路がなくてもヘリコプターのように垂直離陸が可能で一定時間同じ場所に滞空し続けることも出来る。

故にクリスに確認をとりながらよりよい位置を探すことはそう難しいことではなかった。

『リュートお兄ちゃん、ここです! ここで問題ありません』

「了解っと」

クリスの言葉にリュートは、エンジンを止めレシプロ機(擬き)を滞空させる。

灯台から直線距離で約800m。

下を覗けば海面まで数kmほどある。

クリスはレシプロ機(擬き)が動きを止めると、準備を開始する。

ボルトアクションライフルのM700P。

今回はより精度の高い射撃が求められるため、ボルトアクションライフルをクリスは選んだ。

一通り準備を終えるとベルトを外し、レシプロ機(擬き)の縁へ立つ。

『では行ってきますね、リュートお兄ちゃん』

「気を付けて。泳ぎは問題ないと思うけど、もし邪魔ならM700Pとか手放していいからな」

リュートは暗闇でも分かるほど心配そうな表情で嫁の身を案じる。

一方、クリスは心配されるのが嬉しそうににこにこ笑みを浮かべていた。

彼女は『大丈夫ですよ』と言いたげに手を振ると、改めてレシプロ機(擬き)の縁へ立ち正面――灯台を見る。

彼女の約800m先には偽玉が置かれている灯台があるが……レシプロ機(擬き)は現在、灯台の高さより圧倒的上空を飛んでいた。

なので角度的にここから発砲しても偽玉を破壊することは出来ない。

全面が黒く塗られているため、灯台を警備している男達も発見出来ずにいるのだ。

仮に灯台と同じ高さにレシプロ機(擬き)を移動した場合、大きさ的に警備をしている男達に気付かれる可能性が高い。

そのためこれ以上、下手に高度は下げられないのだ。

では一体クリスはどうやって偽玉を破壊するつもりなのか?

その答えはすぐに判明する。

クリスはまるで散歩に出るような気軽さで縁から飛び降りてしまう。

落下、落下、落下。

飛行系の魔術道具を身に付けている訳でもなく、羽根があって種族的に飛べる訳でもない。

必然、クリスは暗い海の底に引きずり込まれるかのごとく落ち続ける。

耳元で先程以上にうるさく騒ぐ強風、コンマ数秒ごとに加速していく落下速度、内蔵が上へと持ち上がる浮遊感、etc。

なのに彼女の表情には一切の恐怖心もない。

強風と比べると儚い呼吸音。

「すぅー……はぁー……」

高速で過ぎ去る世界でクリスは躊躇いなく 引鉄(トリガー) を絞る。

一瞬だけ『パッ』と発射炎が灯り、発砲音は海風に紛れる。

発射された『7・62mm×51 NATO弾』はクリスがイメージした通りの軌跡を描き灯台台座へと飛翔し、偽玉に着弾。粉々に砕いてしまう。

灯台台座を警備していた男達は突然、粉々に砕けた偽玉に驚愕するがクリスはその結果を目にすることは出来ない。

むしろ彼女にはまだこの後、やらなければならないことがある。

着水だ。

パラシュートも無く、約数km上空から海面に向かって落下しているのだ。このまま何もしなければ海面に体を強く打ち死亡してしまう。

クリスは発射し終えたスナイパーライフルを手にしたまま、真っ直ぐ足を伸ばし、近付く海面を睨む。

タイミングを読み衝突する刹那、二つの魔術を起動する。

一つは抵抗陣、一つは肉体強化術だ。

抵抗陣により海面に直接ぶつかるダメージを軽減。

肉体強化術で一瞬だけ体を強化することで衝撃を吸収する。

魔術師ではないクリスが一度に二つの魔術を使用した場合、気絶してもおかしくない。

しかし彼女はほんの僅かの時間だけ使用することで気絶を回避する。

激突&衝撃を避けることが出来れば、あとの問題は海に放り出されることだけだ。

クリスは沈んでいく流れに逆らわず身を委ねる。

ある程度、沈み勢いが衰える頃、服に縫いつけている紐を引っ張る。

衣服の一部が急激に膨らむと、沈んでいた体が今度は浮き上がり始めた。

今回、浮き輪代わりに衣服へライフジャケット(擬き)を装備しておいたのだ。

「ぷはぁっ……!」

海面から人魚のごとくクリスが顔を出す。

長い金髪が海面にユラユラと揺らぐさまは、月光がある時ならばとても幻想的だっただろう。

仕事を終えた彼女は海面を漂いつつ、ポケットから取り出した小型魔術光を灯す。

打ち合わせ通り、光に気付いたアンがお願いした漁師が小型漁船で助けに来てくれる手筈になっている。

例え今、灯台を警備している男達にこの光を見られて問いつめられても問題はない。

なぜなら既に偽玉は破壊した後で、今のクリスは『誤って海に落ちてここまで流された可哀相な少女』だからだ。

決して、偽玉破壊にかかわっているなんてことはないし、第一彼らがそれを証明する術はない。

小型漁船が運良く近くで待機していたのかすぐに駆けつけてくる。

漁船にはアンも乗り込み心配そうにクリスを窺っていた。

彼女は傷一つないことをアピールするように笑顔で手を振る。

こうして無事に、アンが依頼してきたクエストを無事に達成することが出来たのだった。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

オレが立てた作戦は以下の通りである――『陸側から偽玉を破壊するのが不可能なら、深夜レシプロ機(擬き)に乗って海側から接近。飛び降りて落下しながら偽玉を破壊する』。

現場を確認した限り、警備を務める 軍団(レギオン) も陸側を厳重に警戒していたが、海側は一応程度の警備しかしていなかった。

普通、海側の空から飛び降りて、偽玉を破壊しようなどと考える奴はいない。

お陰で考えた通り作戦は推移して、無事に偽玉を破壊することに成功する。

クリスが飛び降りた後、オレは闇夜に紛れやすいように黒く塗ったレシプロ機(擬き)を灯台から大きく迂回して漁師町へと戻った。

レシプロ機(擬き)を町外れの雑木林に隠す。

魔物や夜盗などに盗まれたり、壊されないよう協力者の漁師達と一緒に隠し終えた後、見張りを頼み急いで灯台へと駆け出す。

近付くまで辿り着くと、漁師や町人達が焚き火を囲み遠目で灯台の様子を眺めていた。

灯台出入口の警備員達が、昼間と違った混乱した様子で動いている。

周囲にも焚き火がたかれ明るいとはいえ、遠目のため詳細に確認することは出来ないが、激しく動揺しているのは雰囲気で分かる。

どうやら無事にクリスは偽玉を破壊することが出来たようだ。

『リュートお兄ちゃん、お疲れ様です!』

「クリスもお疲れ様、無事でよかったよ」

成果を確認していると、クリスとアン、他漁師達が駆け寄ってくる。

彼女は先程までの戦闘服(ライフジャケット擬き付き)ではなく、いつもの私服に着替え上から毛布を被っていた。

衣服はともかくシャワーや風呂を浴びた訳ではないので、髪はべたついていた。

オレは海中に落ちた嫁を気遣い、焚き火の前を譲る。

漁師達も事情を知っているため、率先してクリスへと場所を明け渡した。

奥様達はカップに温かな飲み物を注ぎクリスへと手渡す。

オレは彼女の無事を確認しつつ、アンへと向き直る。

「アンさんもお手間をかけて申し訳ないです。うちの嫁が誤って海に落ちたのを偶然助けてくださって」

「いいえ、溺れている人を助けるのも漁師の勤めですから。お礼など必要ありませんよ」

茶番と分かっていながら、互いにお礼を交わす。

クリスは灯台に火が灯る町のイベントに興味を抱き、夜間に宿を抜け出してしまう。

しかし、地元民でもない彼女は道に迷い暗くて気づかず、海に落ちてしまった。

そこを偶然通りかかったアン達に助けられたのだ。

決して上空から落ちながら、灯台にある偽玉を破壊した訳ではない。

茶番と分かりつつも、オレとアン達は互いに悪戯っぽい笑みを浮かべつつ言葉を交わす。

「アンさん! アンさん!」

依頼人のアンと会話を楽しんでいると、町の方から1人の男性が慌ただしく駆け寄ってくる。

見た目は若いが、体は日に焼け、髪には海水と海風が芯まで染みこんでいた。この町の若い漁師らしい。

彼は慌てた様子でアンの側に駆け寄ると耳元で何かを報告し始める。

一通り話を聞いたアンが、焚き火の光でも分かるほど顔色を悪くした。

空気の変化にオレとクリスも敏感に反応する。

「アンさん、何か問題でも起きたんですか?」

「ッゥ……はい、灯台に設置されていたのは確かに破壊されたようですが……代わりに予備を出してきたそうです」

「ッ!?」

驚きで大声を出しそうになるのを慌てて堪える。

偽玉を作るのも 無料(タダ) ではない。

例え爵位が高い貴族でもおいそれと出せる金額ではないはずだ。

なのに予備まで準備するなんて酔狂を通り越して、狂気の領域である。

そこでまでして災害が起きるかどうかの確認をしたいのか!?

オレ自身、人の趣味にとやかくいう資格はあまりないが、それでもこの貴族は『頭がおかしい』と断言できるレベルだ。

灯台出入口が慌ただしくなる。

丈夫な木箱を1人で運び、周りを警備を担当する軍団達が囲み進む。

隙が無くしっかりと周囲を警戒し、灯台へと運び込もうとしていた。

恐らくあの木箱に『偽玉』が入っているのだろう。

今、手を出したらあからさますぎて契約不履行になる。

かといって灯台に運び込む前に破壊しなければ、日の出までに偽玉を破壊することは不可能になってしまう。

オレは声を押し殺しながら、嫁へと問いかける。

「クリス、VSSは持ってきているよな? なら、今すぐあの箱に入っているだろう偽玉を破壊できないか?」

『無理です。警備の人達が厳重に周囲を警戒して隙がありません』

念のためM700Pの他にSVD、VSS、 対物狙撃銃(アンチマテリアルライフル) なども持ち込んでいた。

目立たぬよう箱に入れて漁師の人達に預かってもらっているため、すぐに取り出し射撃可能だ。

しかし、クリスの指摘通り警備に隙がない。

魔術師も混ざり、目や耳などを魔力で強化。周辺を警戒しているため、発砲しても防がれてしまうだろう。

もちろんあからさまに破壊するならいくらでも手はあるのだが……。

そうこうしていると木箱が灯台へと入る。

これで運び込まれる前に破壊する術を失う。

「だ、団長さま、このままでは偽玉が台座に置かれてしまいます! なんとか壊すことは出来ないのでしょうか……ッ」

「…………」

アンが今にも泣き出しそうに瞳で迫ってくる。

周囲に居る漁師達も最後の希望に縋るような視線を向けてくる。

オレは彼らの期待に応えるべく、なんとか新しく持ち込まれた偽玉破壊方法を模索した。

(またレシプロ機に乗って海側から破壊するか? いや相手はプロだ。次は海側も警戒するから二度も同じ手は喰わないだろう。なら今度は反対に陸側から奇襲をかける? レシプロ機にクリスを乗せて 対物狙撃銃(アンチマテリアルライフル) で1km先から強引に破壊するのはどうだ? ……さすがに陸側は目立ち過ぎるか。それに時間的に間に合わない可能性が高い。準備を終えて飛び立つ頃には朝日が昇ってしまう……)

脳内で作戦を立案・検討するが、どれも決め手に欠ける。

悩んでいる間にも灯台台座に偽玉が設置され、朝日と共に灯が灯り周囲を照らし出す。

攻略する糸口すら見つけられず時間だけがジリジリと減っていく。

『このままでは忠告通り大災害が起きるぞ!』と訴えかけるように海側から強風が吹き荒れ、オレやクリス、アン、その場に集まった皆を急かす。

不味い、本当に何も思いつかないぞ!?

「…………」

冷や汗を流し、考え込むも妙案は思いつかない。

次第に思考が空回りし始める頃、袖を引っ張る感触に気付く。

「……クリス?」

『リュートお兄ちゃん、アンさん、皆さん、後は私に任せてください』

彼女はミニ黒板を掲げると、防風林の影へと移動する。

防風林の影には漁師達に預けた木箱――各種銃器が置かれている。

その中の一つ、クリスは VSS(サイレンサー・スナイパーライフル) が分解され収められている鞄を選び手に取った。

彼女は一体何をするつもりだ?

クリスはVSSが入った鞄を手にすると、灯台へ向き直る。位置を探るように歩き出す。

まさか彼女は狙撃・跳弾で偽玉を破壊しようとしているのか?

確かにVSSならほぼ無音で、風も強いため警備をしている者達に気付かれることはないだろう。しかし、陸側からの狙撃や跳弾は不可能だと結論が出ているはずだ。

第一、クリス自身がそれを認めていたではないか。

位置に満足したのかクリスは防風林の影で立ち止まり、鞄を開くとVSSを組み立て始める。

位置的に防風林の影に立っているため、灯台を警備している者達に気付かれる心配はないが……。

オレは声量を落とし尋ねる。

「クリス、まさかそこから偽玉を狙撃で破壊するつもりなのか?」

『はいです。思いつきですが、時間や手段的にももうこの手しかないと思うので』

詳細な説明をしている時間はない、と言いたげにミニ黒板から手を離しVSSを構える。

アン達もクリスに望みを託すように見守っていた。

水平線から朝日が顔を覗かせる。

海風はこれから起きるかもしれない大災害を嘆いているのか、歓喜しているのか、一段と荒々しく吹き荒れた。

「すぅー……はぁー……」

クリスから一番近くに居るオレだけに聞こえる静かな呼吸音。

だが、彼女が構える銃口は灯台ではなく、大きくズレて夜明け前の水平線を狙う。

クリスが何を狙っているの分からないが、ここまで来たら嫁を信じるしかない。

『ッゥ!?』

一方でアン達が息を呑む気配を感じる。

灯台に視線を向けると、台座に火が灯ったのか『赤い』光が水平線から顔を覗かせた朝日を照らす。

アン達の話では毎年『黄金色』の光が差し、灯台らしくぐるりと一周するらしい。

だが偽玉を設置したせいか、まるで危険を示すように光は誰の目にも『赤』かった。

赤い光線がぐるりと一周するため動き出す。

このまま一周してしまったら、依頼は失敗してしまう!

『パスッ』と、本当に微かに聞こえる発砲音。

クリスは赤い光が太陽を照らすとほぼ同時にVSSの 引鉄(トリガー) を絞る。

9mm×39の専用の亜音速弾は灯台から大きく外れた水平線へと飛翔する。

このまま突き進めばいつしか勢いを失い海へ落下するだけだ――が、亜音速弾はまるで意志があるかのように曲がる。

大きくカーブを描き、灯台へと吸い込まれてしまう。

弾丸が灯台へと入り込むと同時に赤い光は夢か、幻だったかのように消えた。

海風と波音だけがその場を支配する。

オレやアン、漁師達は目の前で起きた出来事に驚愕して動けずに居るのだ。

陸側からの狙撃は跳弾をおこなっても不可能だと事前の話し合いで理解していた。

なのにクリスは跳弾もさせず、VSSから発砲した亜音速弾をまるで魔法で操っているかの如く大きく曲げて灯台台座に置かれた偽玉を破壊したのだ。

驚愕でフリーズしても仕方ないだろう。

当然だが、VSSの亜音速弾に目標に設定したモノへ自動追尾するような機能はないし、そんな魔術をクリスは使えない。

当事者であるクリスは暴風に髪を靡かせ、朝日に照らされながらスナイパーライフルを構えていたが、狙撃が成功したことで軽く息を吐き出し笑顔を浮かべる。

『咄嗟の思いつきだったのですが、上手くいってよかったです』とミニ黒板に指を走らせ見せてくる。

アンや漁師達はミニ黒板の文字を目にして再起動。

口々にクリスへお礼を告げ、彼女を褒め称えた。

クリスは褒められて恥ずかしそうにはにかみながら、VSSを分解し鞄にしまう。

オレはそんな光景を眺めながら、口元に手を当てクリスがどうやって亜音速弾を曲げたのかをつい考察してしまう。

少し考え込むと、すぐに前世地球で似たような事例があったことを思い出した。

答えに気づくとオレは再び驚愕で戦慄する。

前世地球でネットか軍オタ系雑誌かは忘れたが、とある記事を読んだ。

戦争中、アメリカ海兵隊の狙撃手が強い風の中で狙撃しなければならない事態に陥ってしまう。

彼はスッポッターと協力して強風の中、発砲。

発砲された弾丸は10数m以上も空中で大きく曲がり敵兵を撃ち抜いたとか。

クリスはこの狙撃手&スポッターのように本来条件が悪い強風を利用して、弾丸を曲げて灯台台座に鎮座した偽玉を撃ち砕いたのだ。

彼女はそんな前例が有ることなど知らず、自身で風を利用することを思いつき、ぶっつけ本番で成功させた。

もう笑うしかないレベルの射撃能力である。

――物語の『魔弾の射手』は魔法で6度だけ好きな場所に弾丸を当たることが出来るらしい。

しかしクリスは魔法が無くても、好きな場所に弾丸を当てることなど造作もないようだ。

彼女こそまさに本物の『魔弾の射手』である。

クリスはアンや漁師達から手放しで褒められ、恥ずかしそうに頬を染めてはにかんでいた。

眺めているとオレと目が合うと心底嬉しそうな満面の笑みを返してくれる。

オレも釣られて笑顔を作ってしまう。

クリスが嫁で本当によかった。

こんな可愛らしい『魔弾の射手』なら、大歓迎である。

皆で笑いあっている頃、灯台内部は騒がしくなる。

流石に二度も偽玉を破壊されたため、代わりはもう無い。

漁師達とクリスを褒めていたアンが、輪の中から抜け出し灯台へと歩み寄る。

契約通り本物の宝玉を使用して正式に儀式を再開するようだ。

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偽玉を破壊した後は、話がスムーズに進む。

契約通り、もう灯台台座に設置する偽玉はなくなったため、宝玉を設置する。

既に宝玉は灯台側に持ち込み済みだったため、入れ替えにそう時間はかからずすぐに儀式を再開することが出来た。

お陰で例年通りの儀式をおこなうことが出来たと、アンに感謝される。

こうしてオレとクリスは、無事に依頼内容をクリアすることが出来たのだった。