軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

SS リースの評価

「はにゃ~、お腹いっぱいニャぁ」

語尾に『ニャ』を付けるのは、獣人種族、 猫人(ねこびと) 族のアリーシャ。

猫人族というだけあり、猫の獣人で猫耳と尻尾が特徴である。

彼女は木陰の下、お腹を撫でながらごろりと腕を枕に寝る体勢をとりだす。

「ちょっともうすぐ警邏の時間なんだから、寝たりしないでよ」

アリーシャの側に座り幹を背もたれ代わりに座る少女が注意を飛ばした。

彼女は人種族のミラだ。

ミラは同世代の中でも背が低く、童顔で胸も小さい。栗毛の髪をお下げに結んでいるため、見た目以上に若く見られる。

2人は純潔乙女騎士団へ同時期に入団した。

所謂、同期である。

性格、波長も合うため 軍団(レギオン) でも特に仲が良い。

現在は昼食をとり終え、天気もいいためグラウンド端にある木陰で休んでいた。

ミラの言葉通り、午後からは警邏の仕事があるため、寝る訳にはいかない。

アリーシャは目を閉じたまま、ひらひらと手を振る。

「分かってるニャ。時間になったら起きるから、大丈夫ニャ」

「本気で寝るつもりみたいね……。アンタ一度寝るとすぐに起きないから困るんだけど」

口では文句を言うミラだが、寝る邪魔をするつもりはない。

猫人族が睡眠欲求の強い種族ということを知っているからだ。

また時間になったら彼女を起こせばいいという考えもある。

しかし結局、アリーシャは眠らなかった。

彼女の猫耳がピクピクと動く。

何か不穏な音を拾っているようだ。

彼女は目を開き、むくりと起き上がる。

「なんかお説教する声が聞こえてくるニャ……」

「お説教? ……あぁリース隊長がまたルナちゃんを叱ってるみたいね」

ミラが気付き、指を向けた。

彼女達が居る木陰から大分離れているが、グラウンド端に大型兵器研究・開発所がある。

文字通り 8.8cm対空砲(8.8 Flak) やレシプロ機(擬き)、M998A1ハンヴィー(擬き)、 燃料気化爆弾(FAEB) 、バンカー・バスターなどなど――大型の兵器を開発、研究している場所だ。

そのため体育館のように大きく、機密を守るため窓が殆ど無い。

研究所を管理……殆ど根城にしているのが妖精種族、ハイエルフ族のルナ・エノール・メメアだ。

彼女はハイエルフ王国エノールの第三王女でもある。

しかし、汚れた白衣姿と何日もお風呂に入っていないぼさぼさの頭のせいで、浮浪児とまではいかないが下層市民の子供のような感じだ。

そんな彼女を研究所から引っ張り出し、叱っているのがルナの姉であるリース・ガンスミスである。

研究に没頭する妹をリースが叱り、お風呂と食事を摂らせようとしているらしい。

2人のそんなやりとりは本部ではよくある光景のため、誰も慌てていなかった。

アリーシャもリース&ルナのいつものやりとりだと気付き、再びごろんと横になる。

眠気は吹き飛んだのか、ズルズル引きずられていくルナと引きずるリースを目で追う。

「相変わらず仲の良い姉妹だよね」

「だにゃ~。でもうちの弟妹も仲がいいニャ」

ミラの言葉に同意しつつ、アリーシャは自分の家族の仲が良いことを付け加える。

2人の間に風が吹く。

微妙な沈黙の後、ミラがリース&ルナを眺めながら呟いた。

「……リース隊長ってエロいよね」

「分かるニャ。リース隊長はエロいニャ」

ミラの呟きにアリーシャはすぐさま同意する。

「見た目が可愛い上に、あの巨乳って羨ましいんだけど。しかも言動がいちいちエロい」

「エロいニャ。M2の組み立てや発砲する時、胸が揺れるからどうしても目がいくニャ。撃ち終わった後も、熱っぽい吐息を吐いて、頬を紅潮させる姿が妖艶で『この隊長、うちを誘ってるのかニャ?』と思うことがあるニャ」

「安心しなさい、私もだから」

「女のうちらでもこんな風になるんだから、他男性の前でやったら絶対に勘違いするニャ」

年頃の少女である2人が、リースを眺めながら中年オヤジのようなやりとりをする。

2人の視線は当然、歩くたびに『たゆんたゆん』と揺れる胸に釘付けだ。

「ちなみにクリス隊長狙いのあの子、リース隊長相手にも発情した匂いを出しているニャ」

「……それ大丈夫なの? リース隊長はスノー隊長やクリス隊長に比べて体術とかあんまり得意じゃないはずでしょ?」

ミラが何もない所で転んだり、躓いたり、間違って水を頭から被るリースのドジ現場を思い出しながら告げる。

一方、アリーシャは『大丈夫ニャ』と気軽に返事をした。

「リース隊長の側には大抵、シア隊長が付いているニャ。下手に手を出したら確実に殺されるニャ」

「あぁ……」

ミラが納得した声を出す。

ルナを引きずるリースを見守るシア。

現在は姉妹仲を深めているため、差し出がましいマネをしないよう2人に気付かれない位置に隠れているようだ。

シアは護衛メイド達専門のため、ミラ&アリーシャ達とシアの繋がりは薄い。

だがシアや護衛メイド達の練度は一目で分かる。

よくグラウンドで訓練をしているため、嫌でも分かってしまうのだ。

特に室内戦に置いて彼女達には勝てないと2人は実感していた。

「でも一度はリース隊長のおっぱい揉んでみたいニャ。絶対に気持ちいいのにニャ」

「しかも揉んだら絶対リース隊長は恥ずかしそうに顔を赤くするよね。滅茶苦茶可愛いだろうなぁ」

「シア隊長に阻まれて絶対にできないだろうけどニャ」

完全にオヤジ的発言である。

「後、気になることって……リース隊長ってハイエルフだよね。瞳の色を魔術道具で変えているみたいだけど」

「だニャ。ハイエルフだニャ」

「だよね……ハイエルフのしかも王族と一緒の所で働いているなんて、田舎の家族が知ったら卒倒するだろうな」

ミラは遠い目でしみじみと呟く。

ハイエルフ族は長寿のため、リース達の自国では『長寿と夫婦愛を司る種族』として観光地化している。

ハイエルフに会うため人種族の貴族、大商などが金銭を積むこともあるほどだ。

一般市民が目にする機会などほぼないと断言できる。

なのにハイエルフ、しかも王族が王族に目の前でお説教をしているのだ。

「でも不思議なのニャ。どうしてリース隊長は瞳の色を変えて普通のエルフの振りをしているのに、ハイエルフのルナちゃんが『姉ちゃん』と言わせているのニャ? そんな呼び方をしたらリース隊長もハイエルフってばれるのにニャ。……もしかして団長達は気付いていないのかニャ?」

「その可能性は高いと思うよ。団長達て基本的能力が高いし、興味の向く分野には異常に強くなるけど、意外と抜けてるもんね」

「もしくはリース隊長の天然がうつったとかかニャ」

アリーシャが『にゃにゃにゃ』と笑いながら冗談として告げる。

ミラも笑いながら『ありえるわね』と同意の笑い声をあげた。

一通り笑い終えると、2人とも目元の涙を拭う。

「まぁでも団員もだけど、町の人も気付かないふりをしているんだから、そのあたりが団長達の人徳よね」

「団長達には恩義があるからニャ~」

ミラ、アリーシャだけではない。

ココリ街住人達も恩義だけではなく、リュート達を支持しているから黙って生暖かい目で見守っているのだ。

それだけ PEACEMAKER(ピース・メーカー) の存在が、ココリ街住人達にとって掛け替えのないモノになっているという証明である。

アリーシャは再び目を閉じ、あくびをする。

ミラも幹に背中を預けぼんやりとした。

微かに聞こえてくるリースがルナを叱る声をBGMに2人は警邏の時間までのんびりとした時間を過ごしたのだった。