軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

連続更新SS ある意味の初体験(後)

髭男達との模擬戦後、オレ達が絡まれているのを囃し立てていた一部冒険者がいたためシアに目線で確保を頼む。

冒険者斡旋組合(ギルド) 訓練場で、気絶している髭男とその一味はとりあえず放置した。

これ以上、彼らに対して何かをするのは越権行為になりかねない。

何よりまずは囃し立てていた冒険者&無視を決め込んでいた 冒険者斡旋組合(ギルド) 社員達に説教をする。

「確かに冒険者は自己責任の職業だけど、アレは無いと思いますよ? まずあんな風に新人に絡む人達を見過ごした場合、冒険者のなり手が減ります。さらにこの支部の評判が悪くなり、冒険者自体が寄りつかなくなりますよね? そうなったらクエスト依頼も減り、冒険者の質も低下、町の治安も悪化して、町人の数も減る。そうなったら困るのは貴方達自身ですよね? 違いますか?」

と、いう感じで 冒険者斡旋組合(ギルド) 訓練場に冒険者と社員を座らせて説教し続けた。

途中で、この支部の長が姿を現す。

冒険者&社員が怒られていることに気付き、慌てて近付いてきたのだ。

支部長の話を聞くと、彼は用事があって外に出ていたらしい。

その用事を終えて戻ってきたら、大々的にお説教大会が開かれていて、さらにオレ達がクエストを依頼したあの PEACEMAKER(ピース・メーカー) なのだから、青ざめるとかのレベルではない。

この世界の通信手段は未熟だ。

そのためクエストを依頼したのはいいが、何日何時に来るなど特定するのは不可能である。

もしあの場に支部長が居れば、あそこまで大事にはならなかっただろう。

冒険者斡旋組合(ギルド) 社員達も責任者が居たら、見て見ぬふりはしていなかったかもしれない。

既にもう起きてしまっているため、後の祭りでしかないのだが。

支部長があまりに頭を下げ、以後自分の責任で 冒険者斡旋組合(ギルド) 社員達は再教育すると約束してくる。

他冒険者達も説教が効いたのか大人しくなったため、これ以上は反発を生むと考えて手を引いた。

その後はスムーズに話がつく。

指名依頼のクエスト内容を再確認。

支払われる金額を確認して、冒険者タグを提出し改めて受領する。

その日、すぐに仕事に向かわず、宿屋へ戻ることにした。

焦って急ぎ下手なミスをするよりいい。

今回の一件で冒険者達に少なからず憎まれたかもしれないが、力の差はハッキリと示した。

負けると分かっている戦いに挑む馬鹿はいない。

もちろん警戒は怠らず、町に居るあいだは奇襲に備える予定だが。

その点は、シアの得意分野のためあまり心配する必要はないだろう。

オレ達は楽観視しながら、宿屋へと戻ったのだった。

――しかし、人生とは自身の予想を超えた事態がまま起きることがある。

オレはその事実を数日後、味わうことになったのだった。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

「畜生が! この縄を解きやがれ!」

「……いかがしましょうか若様」

「…………」

シアの問いにすぐには答えられず、オレは頭を抱えて黙り込んでしまう。

指名依頼をこなすため、オレ達は町に滞在していた。

クエストの内容は森奥に居る特殊な魔物を倒して欲しいというものだ。

直ぐに魔物を倒しに向かわず、オレ達は数日森を探索。十分に問題がないことを確認してから、クエストに取り掛かる。

クエスト自体はそう難しくなかった。

問題の魔物を特定するのに手間取ったが、後は現代兵器で一気呵成に攻撃するだけだ。

一般の冒険者なら手も足も出ず、魔術師の場合は魔力に気付かれて逃げられてしまう。

だが、オレ達、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の使用する現代兵器なら、攻撃魔術を使用せずとも同等以上の火力を叩き出すことができる。

お陰で魔物は抵抗する間もなく、あっさりと倒した。

討伐の証明をするためリースの『無限収納』に魔物を収納。

後は来た道を帰るだけだ。

弾薬(カートリッジ) などは消費したが、待ち伏せで倒したため怪我は無いし、体力も殆ど消費していない。

まるで散歩か、ピクニックに来た程度である。

そしてその帰り道に、初日に 冒険者斡旋組合(ギルド) で因縁を付けてきた髭男と彼の部下達が奇襲を仕掛けてきたのだ。

説教をした冒険者達が奇襲をしかけてきたのなら、まだ分かる。

一度も矛を交えていないため、『もしかしたら自分達でも勝てる可能性が……』と考えても不思議はないからだ。

しかし襲ってきたのは 冒険者斡旋組合(ギルド) 訓練所で一方的に倒した髭男達なのだ。

あれだけ一方的に負けたのにどうして再び戦いを挑んでくるのか?

意味不明すぎて頭を抱えるしかなかった。

彼らは手に武器を持ち、森の中に隠れて、オレ達が通りかかると奇襲をしかけてきた。

だが、その前でシア&スノーがとっくに彼らの存在に気付き、警告してくれていたため奇襲の意味は無かったのだが。

さらに前回と違ってオレだけではなく、スノーやリース、シアが参戦しているため、模擬戦以上にあっさりと男達を倒してしまう。

現在は男達をリースの『無限収納』から出した縄で拘束。

主犯格の髭男を気絶から起こし、話を聞く。

彼の罵声を聞き流しつつ、オレ達を襲った理由を解読する。

髭男の話をまとめると――『 冒険者斡旋組合(ギルド) 訓練所での模擬戦で負けたのは正面から戦ったため。自分達のフィールドである森で待ち伏せて、オレ達が魔物と戦って疲れて帰ってきた所を襲えば勇者といえど負けるはずがない』と考えたらしい。

また彼らは揉め事を起こした罰ということで、支部長から半年間の冒険者活動禁止&奉仕活動を義務付けられた。

しかしオレ達を倒せば自分達の名前もあがり、冒険者活動の停止&奉仕活動の帳消し、さらにスノー達を自由に出来ると他部下達を唆して実行に移したらしい。

彼らのあまりに向こう見ず、無謀な行動力にオレは頭を抱えてしまう。

この町の支部長も彼らの行動理由を聞いたら同じように頭を抱えるだろう。それほど悪い方に突き抜け過ぎていた。

「若様、いかがしましょうか」

シアは再度問いかけてくる。

彼女の手にはコッファーではなく、USPが握られていた。

尋ねてはいるがシア的には殺る気満々だ。

コッファーではなく、USPを握っているのも縄で縛られ動けない相手の場合、そちらの方がやりやすいからだ。

「お、俺様を殺すつもりか!? いいのか! 俺様達を殺したら 冒険者斡旋組合(ギルド) が黙っていないぞ! それに勇者で英雄のオマエらの評判が悪くなってもいいのか! えぇえ!」

シアの声に混じる殺意を感じ取った髭男が、怯えつつも強気な態度で声を荒げる。

仮に無実の冒険者をオレ達がちゃんとした理由もなく殺害したら、 冒険者斡旋組合(ギルド) も黙っていないし、醜聞も悪くなるだろう。

だが、今回は彼らが奇襲をしかけてきたのだ。

ここで彼らを皆殺しにしても、 冒険者斡旋組合(ギルド) は何も言わないし、醜聞が悪くなることもない。

髭男はどうもそのことを理解していないようだ。

オレは溜息をつき、指示を出す。

「シア……うるさいからまずはそいつを黙らせてくれ」

「畏まりました」

「お、おい……何をするつもり、ギャァッ!」

シアはUSPをスカートの下に仕舞うと、コッファーを両手で握り締めて彼の側頭部を殴り飛ばし気絶させる。

他部下達はすでに気絶しているため、煮るなり焼くなり好きに出来る。

彼らをどうするかスノー達にも意見を募った。

「皆はどうすればいいと思う?」

「若様、僭越ながら具申させて頂きます。彼らを生かしても反省せず怨みを募らせるだけ。他者に被害が出る前に殺害が最善かと」

シアは珍しくスノー&リースより早く意見を口にする。

妻達の口から、『殺すべし』と言わせるより早く口にすることで賛同し易くしたのだろう。『殺す』という最初の泥を自ら積極的に被っているのだ。

シアの狙い通り、スノー&リースもシアの意見にすんなりと賛成した。

「わたしもシアさんの意見に賛成かな。この人達程度なら何度襲っても倒せるけど、その不満をわたし達以外に対しても向けるだろうしね」

「何より、名誉士爵とはいえ貴族の命を狙ったのです。極刑はやむなしです」

「そうだよな……」

オレの曖昧な返事に彼女達は顔を見合わせる。

「リュートくん、まさか彼らのことを『助けたい』と思っているの? リュートくんが優しいのは知っているけど、それはちょっと……」

「スノーさんの仰る通りです。リュートさんの優しさは美徳ですが、彼らは罪を犯したのです。罪には罰を。でなければ世の中はまわりません」

「奥様方の仰る通りかと」

「大丈夫、もちろん彼らを許すつもりはないよ。けど、殺すのもちょっと違う気がするって思ってさ」

今更、彼らを殺すのに躊躇いはない。

冒険者斡旋組合(ギルド) の訓練所を含めれば二回も命を狙われたのだ。ここで助けても再びまた襲いかかってくる可能性が高い。

だからと言って命を取るのも違う気がした。

哀れみからではなく、むしろ逆だ。

なんの反省もせず、後悔もさせないままあっさり殺すのは納得いかない。彼らにはしっかりと自身のおこないを悔いて欲しい。

なら、彼らを反省させるために拷問でもするか?

オレにそんな趣味はないし、方向性が違う。

もしくは『旦那様に彼らを預けて真っ当な人物にするか?』とも考えたが……。

旦那様に任せれば彼らを真っ当にし、自分達のおこないを悔やみ真面目に反省するだろうがこれも何となく違う気がした。

今更、彼らがまともになったところで、被害にあってきた人物達が報われる訳ではない。

だから個人的に納得できないのだ。

一通りオレ自身の考えを伝えると、嫁達も思い悩む。

「つまり、リュートさんは彼らがちゃんと反省し、自分達が今までおこなってきた行為を自ら懺悔させたいのですか?」

「うーん、リュートくんの言いたいことも分からなくないけど……難しくないかなぁ?」

拷問や旦那様の所へ連れて行くのは無しで、リースの指摘通り『今までおこなってきた自身の行動を後悔、反省させたい』というのは難しい。

そんな都合が良い方法があるのだろうか?

オレ達が3人揃って頭を悩ませていると、シアが手を上げ提案してくる。

「自分に案が一つございます」

護衛メイド、シアの案とは……。

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「くそったれ! うおおおぉえぇ……ッ!」

「うぉぉっ! 臭い! 臭すぎるッ! 鼻が曲がるどころじゃねぇぞコレ……!」

髭男とその一味は現在、罵詈雑言を叫びつつ 風船蛙(バルーン・フロック) 相手に奮闘していた。

場所は魔物大陸。

港街ハイディングスフェルトからすぐにある森林側まで、オレ達は髭男一味を連れてきて、 風船蛙(バルーン・フロック) と戦わせて悪臭液を回収させていたのだ。

もちろん彼らの首には魔術防止首輪が付けられ、逃げ出すこともできず悪臭で嘔吐しながらも、懸命に剣を振っていた。

なぜ彼らが 風船蛙(バルーン・フロック) と戦っているかというと、これがシアの提案した髭男一味に対する罰だからである。

彼らを捕縛後、 冒険者斡旋組合(ギルド) を訪ね支部長に何があったのかの説明をした。

彼は話を聞くとオレ同様、頭を抱えてしまう。

当然といえば当然だ。

ストレスで胃に穴があいて吐血される前に、こちらから提案をする。

髭男達を強制労働従事者として譲ってもらえるなら、今回のことは不問、 冒険者斡旋組合(ギルド) 対しても責任を求めない、と。

この提案に支部長はすぐに了承する。

髭男達は貴族であるオレ達を殺そうとしたのだ。その場で殺されても文句は言えない。

彼らを使役するのも問題はない。

反省し一定額以上稼げば解放することになっているため、むしろぬるい対応だと支部長達は考えているようだ。

実際は全然、優しくないのだが。

髭男達と契約した後は、新型飛行船ノアで一路魔物大陸へ。

港街ハイディングスフェルトにある奴隷商へ髭男達を渡す。

その奴隷商では奴隷達に 風船蛙(バルーン・フロック) を狩らせて、 悪臭液(毒腺) を納品してるのだ。

常時依頼として『 風船蛙(バルーン・フロック) の悪臭液』が出ているが、臭すぎて鼻が利く種族は絶対にやらない。

やるとしても一部の冒険者なのだが、体や防具、武器などに臭いが付くため、かなりの金額が出るのだがあまりやりたがる者達はいないのだ。

なのに一定の需要がある。

『 風船蛙(バルーン・フロック) の悪臭液』は魔物避けとして人気が高い。もちろん嗅覚が効かないゴーレムなどの無生物等には意味がないが。

魔物大陸でしか取れないため、割と高価な物なのだ。

オレ達、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) でも非致死性兵器の1つである『SKUNK』を製造する場合、わざわざ魔物大陸へ移動し入手する必要があるほどである。

しかし需要があり、お金になると分かっていながら放置する商人は異世界だろうが居るはずがない。

では、どうやって 風船蛙(バルーン・フロック) を倒し、悪臭液を回収しているのか?

答えは簡単で奴隷を使っているのだ。

借金奴隷や犯罪奴隷などが、 風船蛙(バルーン・フロック) を倒し、悪臭液を回収させている。

とはいえ奴隷すらやりたがる者は殆どいない。

魔物大陸は魔物が強い。

その中で 風船蛙(バルーン・フロック) は比較的弱い部類に入るが、悪臭が体に染みついたら、街で宿にも泊まれず、買い物もできず、娼館にも入れなくなる。

それほど悪臭が強く、相手にも容易に残るのだ。

いくら奴隷でも四六時中、悪臭まみれでいたくなどない。

結果、この商いは、多数の奴隷を扱う奴隷商人がメインでおこなうらしい。

悪臭液回収奴隷の数がある程度用意出来て、隔離された寝泊まり出来る建物、世話が出来る人物の準備が整えられる商人となると奴隷商人しかいなくなる。

オレ達を殺そうと襲いかかってきた髭男達を、強制労働者としてそんな奴隷商人へと引き渡したのだ。

奴隷商人はなり手の少ない悪臭液回収に従事する冒険者が多数入ったことに喜び、諸手をあげて歓迎した。

彼らは奴隷ではなく、反省し一定額を稼げば解放される冒険者として扱われる。悪臭に揉まれながら、自らのおこないを顧みるにはちょどいい落としどころだろう。

ちなみに『ラーノ奴隷館』の支店でも無いか探したがなかった。

さすがに魔物大陸まで手を伸ばしてはいなかったらしい。

現在はオレとシアだけで、髭男達が頑張って 風船蛙(バルーン・フロック) と戦っている姿を視察していた。

スノーは当然拒絶され、リースからもやんわりと同行を断られた。

一応、悪臭が届かないよう風上に立ち、シアの風魔術で逸らしてはいるため臭いがつくことはない。

だが白狼族のスノーと、元お姫様のリースが来たがる場所ではないよな。

そんなことをぼんやり考えていると、髭男が 風船蛙(バルーン・フロック) を倒しながら、再びオレとシアに向けて罵声を飛ばす。

「このクソ勇者が! げほぁおおぉおぉッ……ッ! 絶対に、うげぇえぇ、生きて、逃げ延びて、おおぉっ、復讐してやる!」

髭男は黙っていても目から涙が零れる悪臭のなか、元気よく叫んでいる。

彼の精神力はある意味で凄いのかもしれないな。

一方、部下達はあまりの悪臭に完全にグロッキーだ。一部など完全に吐いて、動きを止めている。

「あの髭男の態度をみていると本当に反省するかどうか不安になるな……」

「それならそれで仕方がないことです。自己を省みて反省するかどうかは彼ら次第ですから。もし仮に本当に生きて復讐しに来たら、その時は迷わず介錯すればいいだけです」

シアが淡々と答える。

実際、魔術防止首輪を外して奴隷商から逃亡し魔物大陸から獣人大陸に移動して、オレ達に復讐しに来る――なんてことはほぼ不可能に近い。

彼女が彼らを手に掛けることはほぼないだろう。

しかしまさか 冒険者斡旋組合(ギルド) で冒険者に絡まれるベタなイベントでここまで手を煩わせるとは……。

『今後はこんなことがなければいいのだが……』とオレは 風船蛙(バルーン・フロック) を狩る彼らの姿を眺めながらそんなことを考えたのだった。