軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第448話 軍オタアフター 対クラーケン兵器は?

無事にオレ達、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) は湯の町リリカーンへと辿り着くことができた。

飛行船ノアはその巨体からどうしても人目につく。

白銀邸(はくぎんてい) に向かう最中も、遠目から人々が注目しているのが分かった。

白銀邸(はくぎんてい) 広場に無理矢理、飛行船ノアを下ろす。

下りた後はリースの『無限収納』にしまった。

白銀邸(はくぎんてい) はハイエルフ御用達のため、彼女の『精霊の加護』を使っても問題はない。

休憩する暇もなく、持ち帰った情報を 冒険者斡旋組合(ギルド) 支部へ伝えるため馬車を手配する。

オレ達は馬車に揺られて湯の町リリカーン 冒険者斡旋組合(ギルド) 支部へ向かう。

辿り着くとすぐに今朝利用した 冒険者斡旋組合(ギルド) 個室へ、再度入り手に入れた情報を伝える。

先輩受付嬢と新人受付嬢は情報を聞くと揃って顔色を青くする。

「クラーケンなんて……国軍が動いて対処する魔物じゃないですか。どうしてこの海域に……生息区域が全然違うのに」

先輩受付嬢曰く、クラーケンはもっと北の海に生息する魔物で、本来この海域にはいない種だそうだ。

クラーケンを倒す場合は、国が所有する軍隊か、最低でも金以上の軍団複数で挑む必要がある魔物らしい。

対峙した今では『だろうな』という感想しか出てこない。

足場は不安定な海で、船から落ちたら魔術師以外はアウト。

クラーケンは巨大で擬態能力と高い再生能力を持つ。

下手なドラゴンと戦うより厄介な相手だ。

「で、でも魔王を倒し、世界を救った勇者である PEACEMAKER(ピース・メーカー) の皆様ならクラーケンぐらい倒せますよね!」

新人受付嬢が暗くなった空気を払拭しようと、わざとらしい明るい声を出す。

オレは腕を組んだ難しい顔で彼女の考えを否定する。

「悪いが現状、オレ達でもクラーケンを倒すのは難しい」

「ど、どうしてですか!? 魔王を倒した勇者様なのに!」

「ヤツを倒す火力が無いんだ。ノアの左翼を壊されたのがここで響いてくるとは……」

クラーケンを倒すことはそれほど難しいことじゃない。

オレ達なら再生機能が追いつかないほどの大火力を叩き込めばいいだけだ。

巨大なため的も狙いやすい。

問題はその大火力をどうやってクラーケンにぶち当てるかだ。

これが陸上なら多々方法はある。

8.8cm対空砲(8.8 Flak) を複数ぶち込めば片は付く。

だが今回は海上戦で、飛行船ノアも左翼を破損している状態だ。

破損した状態 8.8cm対空砲(8.8 Flak) を発砲したら最悪バランスを大きく崩して海中へと落下するだろう。

そうなった場合、中の搭乗員がどうなるか簡単に想像がつく。

オレの返答に新人受付嬢が顔色をさらに悪くする。

彼女は向かい側、ソファーに座ったまま深く頭を下げた。

「も、申し訳ありません! 私のせいで飛行船を駄目にしてしまって! が、頑張ってお給金で返済します!」

「いや、今回の破損はこちらの油断があったので弁償など気にしないで下さい」

彼女はさらに何か言おうとしたが、強く釘を刺して断る。

別に気を遣った訳じゃない。

彼女に返済を負わせたら、竜人大陸に居る某親戚がどういうリアクションをしてくるか分からないからだ。

藪をつついて蛇を出す――どころか世界を終わらせる怪物を出すつもりはない。

新人の話が終わると、先輩受付嬢さんが尋ねる。

「ならば飛行船を修復してはどうでしょうか? もしくは他飛行船で代用するとか?」

「それはオレも考えましたが飛行船ノアを修理するにも、予備エンジンはあるのですがオレとメイヤだけでは不可能です。ちゃんと人員が居たとしても、修理に最低でも1ヶ月はかかるかと」

壊れた左翼をくっつければ完成という訳ではない。

ちゃんとエンジンが動くか? バランスが崩れていないか? 耐久性がしっかりとあるか? などなど確認作業は山ほどある。

他飛行船に 8.8cm対空砲(8.8 Flak) や120mm 滑腔砲(かっこうほう) を乗せるにしても、大きすぎるし反動が強すぎるため改造に1ヶ月はかかる。

結局、同じ事だ。

通常の飛行船にM2や 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) なら乗せられるが、火力に不安が残る。

第一、クラーケンが律儀に攻撃を受け続けてくれるか分からない。

また一般的な飛行船だと速度が遅いため、触手の餌食にしかならない。

(魚雷があれば話が早いんだが……)

オレは1人胸中でぼやく。

軍事関係に詳しくない人でも一度は耳にしたことがある有名な兵器だ。

正式名称は 魚形(ぎょけい) 水雷だ。

魚形(ぎょけい) 水雷を縮めて、魚雷と呼んでいる。

1866年、初めて魚雷が誕生。

しかし技術的な問題で速度は非常に遅かった。

とはいえ有効な兵器のため研究が進み、海戦の主力兵器としてあり続けた。

では現代だとどうなっているのか?

現代の場合、ミサイル技術の発達により対艦戦闘ではその座を奪われてしまう。

とはいえ、海中深くに居る潜水艦に対しては未だに現役だ。

また魚雷は威力が高い。

同火薬量を空中で爆発させるより、水中で爆発させる魚雷の方が威力が高いのだ。

空中で爆発させると爆発エネルギーは空気中に霧散してしまうが、水中の場合は水の抵抗が強く破壊エネルギーがより強くなる。

空中爆破より、水中爆破の方が数倍破壊力が高くなるという研究結果も出ている。

なので過去、戦闘で魚雷1発で沈んだ艦船が多数存在するのだ。

ちなみによく船舶が海中に沈む際『轟沈』という言葉が使われるが、これは旧海軍用語で『船舶が約1分以内で沈む』ことを指す。

とりあえず、そんな魚雷が数本あれば、あの巨大魔物のクラーケンが相手でも倒すのは難しくない。

その上、 8.8cm対空砲(8.8 Flak) や120mm 滑腔砲(かっこうほう) に比べれば軽量なため一般的な飛行船に乗せて移動も可能だ。

問題は魚雷を製造できるかどうかだ。

正直、ほぼ不可能である。

進むための推進装置は魔石&魔術文字で代用し、火薬も魔術で問題無いだろう。

外側の外殻も魔術液体金属を使用すればいい。

しかし、スクリューや誘導装置は製造できないのだ。

スクリューは単純にプロペラのように羽根が複数枚付いているだけに見えるが、あれこそ技術力の塊である。

第一、真っ直ぐ進むスクリューや本体の流線型形状を作り出せるかどうかも怪しい。何度も実験を繰り返せばやれなくはないだろうが……。

そんな実験を繰り返していたら、軽く1ヶ月以上はかかってしまう。

真っ直ぐ進むようになったからと言って、誘導装置を作り出すことは現状不可能である。

できていたらとっくにミサイルを完成させている。

正直、ルナ主導で研究している最中だ。

だったら飛行船ノアを修復した方が早い。

なら機雷はどうだ?

機雷は海の中に設置する地雷のようなモノだ。

そのため敵味方問わず通ったモノを爆破する。厄介な兵器でもある。

性質上、敵の進路や出入りを防ぎたい場所(港や海峡など)に多数設置して、船の動きを妨げるのに使う。

構造自体はそれほど難しくない。

極論、木製の樽に火薬を詰め込んでも作れる。

樽で思い出したが……昔、読んだ本でアメリカ独立戦争時代、樽に火薬を詰めて川から流し海に停泊している敵船舶を破壊したらしい。

これも機雷なのだが、推進装置は無いがある種の『魚雷』と考えてもいいのではないだろうか?

と、本に書かれており、納得したことを思い出す。

――話を戻そう。

機雷については思いついてすぐに却下した。

機雷を設置している間にクラーケンに襲われるのがオチだろう。

では爆雷は?

爆雷は水中に投げ入れる爆弾のようなモノである。

現在は魚雷の発達により廃れてしまった兵器の一つだ。

爆雷という選択肢は悪くない。

リースの『無限収納』を使えばレシプロ機(擬き)でも大量に投下することが可能だ。

威力も十分でクラーケンを確実に倒せるはず。

問題はクラーケンが大人しく爆雷投下を待ってくれるかだ。

投下している間に触手攻撃を受け、誤爆しリース達が乗っているレシプロ機(擬き)が巻き込まれる可能性もある。

そんな危険な任務に嫁を送り出す訳にはいかない。

止めを刺す兵器としてはいいのだが……。

(結局の問題は爆雷で止めを刺せるほど、クラーケンの動きを止められる火力をどうやって出すかなんだよな……)

8.8cm対空砲(8.8 Flak) や120mm 滑腔砲(かっこうほう) ならそれが出来た。

一撃を叩き込み、クラーケンが動きを止めている間に爆雷を多数投下すればいい。

8.8cm対空砲(8.8 Flak) や120mm 滑腔砲(かっこうほう) の代わりをどう捻出するかが問題なのだ。

冒険者斡旋組合(ギルド) 支部での会議は、暗礁へと乗り上げてしまう。