軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第443話 軍オタアフター 観光

ズッポン料理を食べた翌日。

オレ達が目を覚まし寝室を出たのは、昼を回っていた。

なぜこんなにも起きる時間が遅かったのか?

ズッポン料理の効果は抜群だったとだけ言っておこう……。

時間的にはお昼だが起き抜けのため、軽い食事を頼む。

食べる場所も、昨晩は暗かったため開放されなかった海が見えるバルコニーにテーブルセットを準備。

陽を浴びながら、キラキラと輝く海原を眺めながら朝食兼昼食を摂る。

料理はズッポン――ではなくサンドイッチ、サラダ、果物が並ぶ。

妻達は食事を摂りながら、昨日とは明らかに違う艶々とした姿で今日の予定を話し合う。

「今日はやっぱり町中を見てみたいよ! わたし、あの弓矢がやってみたい!」

『私も町で食べ歩きがしてみたいです』

スノー、クリス組は町での食べ歩き&観光を希望する。

「私は折角海に来たので、海岸に行ってみたいですね」

「海、いいですね。わたしも砂浜というのを見てみたいです」

リース、ココノ組は海岸を希望する。

クエストや仕事で何度も飛行船ノアで大陸間を行き来し、海を見てきた。

しかし、『海で遊ぶ』というのはしたことはなかった。

軍団(レギオン) の立ち上げや維持、魔王問題や魔力消失事件、他多くの出来事があったからだ。

せっかくの新婚旅行だし、今までせわしなかった分、のんびり海岸に行くのも悪くない。

「リュート様が赴く場所こそがわたくしの望みですわ!」

メイヤは起きたばかりにもかかわらず、高いテンションで声をあげる。

本当に元気がいいな……。

妻達の意見が出そろったところで、オレに視線が集まる。

個人的には昨日――正確には昨晩、色々あったため大人しく部屋で休んでいたい。

妻達に比べて、オレはやつれ、体も重かった。

原因はシアの指摘通り、寝室は何があろうと音や震動等が外部に漏れ出ることはなかったせいだ。お陰で多くの水分を体から失ってしまった。

朝食兼昼食も食事より、水分を摂取することを優先していた。水がこんなにも美味しいとは……ッ。

もちろん、昨晩について不満はない。

むしろ、幸福だと心から思っている。

旅行2日目から観光もせず部屋に引きこもるのも妻達に悪い。また引きこもっていたら昨晩の続きが……という懸念もある。

個人的にも歓迎なのだが、少し休憩する時間が欲しい。

その点、観光するのはベストな選択といえるだろう。

「なら町の観光と海辺、両方に行こう。来たばかりで時間もあるし、まずはどこに何があるか軽く見て回るのがいいんじゃないか?」

明日、より詳しく見て回る場所を決める提案をした。

この案に皆が賛成する。

食事を終えると、外出する準備を始めた。

準備を終え玄関まで出ると、すでに馬車が準備されている。

馬車に乗って移動を開始。

馬車は門で止まると思いきや、そのまま越えて店が並ぶ出入口まで移動してくれる。

出入口までそれなりに距離があるため、これはありがたい。

馬車を降りると早速、オレ達は町の観光を開始する。

湯の町リリカーンのメイン通りには多数の店が並んでいる。

基本はやはり観光客相手の土産物屋が多い。すぐ目の前の海から取れた魚の干物、ホタテやサザエに似た貝の焼き物、小魚の丸ごと揚げなどが並ぶ。

装飾品は貝殻を彫って作ったアクセサリー、珊瑚、珍しい物として海の魔物の剥製や骨、牙などが並んでいる。

前世日本での子供時代、博物館で恐竜の牙レプリカを前にした気分になる。

こういうのを見ると無性にわくわくしてしまう。

軽く土産物屋を冷やかした後は、スノーの希望で弓矢屋に行く。

昨日、子供達が玩具の弓で的に当て、得点に応じて商品を受け取るというものだ。

今日も子供達が楽しそうに遊んでいる。

オレ達もその中に混じった。

店はファーストフード店のようにカウンターがあり、そこでお金を払い弓矢を借りる。

借りた後は店主が横にずれたら、渡された本数分の矢(五本)が無くなるまで続けるというシステムだ。

「と、意外と難しいなこれ」

弓矢は作りがちゃちなため、物によって癖が違う。

何も考えずただ撃っていたら的にも当たらず終わってしまう。

とはいえ、その癖を確認するだけであっという間に矢が尽きる。新たにお金を払えば矢が新しく追加されるが。

矢5本という数はまさに絶妙な本数だった。

「駄目だ、一本しか当たらなかったよ」

「リュートさまは十分凄いですよ。わたしなんて、まず的に届いてませんから……」

「私は的までは届きますが、掠りもしませんでした」

「わたくしもリースさんと一緒ですわね」

ココノの場合、筋力が低いせいか矢が的に届かず中程に落ちてしまう。

リースとメイヤは矢が的まで届くが、大きく外れていた。

残るスノー、クリスはというと、

「わたしは3本当たったよ! 最後の一本が中心からちょっと外れちゃったのが残念だけど」

スノーは三本の矢を中心の赤い部分に当てていた。

ちなみに景品は5本全てを中心に当てると銀貨1枚(約1万円)。

4、3本は大銅貨1枚(約1000円)。

2、1本はお菓子詰め合わせ。

外れは参加賞として飴一つだ。

最後は当然、クリスである。

彼女はすぐに矢を撃たず、弓の具合を確かめるように弦を引いていた。

矢の具合も凝視し、確認してから撃つ。

当然とばかりに5本全ての矢を真ん中へと命中させた。

店主が苦笑いを浮かべ、銀貨1枚を差し出す。

クリスは『むふぅー』と鼻息を漏らし、得意気な顔をする。

オレ達だけではなく、店に集まったお客さん達全員から拍手喝采を頂いたのだった。

店を楽しんだ後、オレ達は海岸へと向かう。

飛行船ノアで多くの港街に立ち寄ったが、観光として海岸へ来たのは初めてのことだ。

オレと妻達は白い砂浜へと足を踏み入れる。

砂浜が白いため、海と空の青さが際だつ。

砂浜はあまり観光客がいない。

この世界では海に魔物がいるため、『海遊び』自体が存在しないせいだろう。

またもう一つの理由は――

「痛ぁ! 痛いよ、リュートくん!」

「り、リュートさん、砂浜はこんなに風が強いものなんですか? って! ココノさんがと、飛ばされてます!?」

リースの指摘に振り返ると、ココノが砂浜をごろごろと転がる。

オレ達の中で一番体重が軽く、筋力も低いため耐えきれず転がったようだ。

クリス、シアが慌てて駆け寄っていた。

「砂浜には何も遮る物がないのと、今日はたまたま風が強いせいでこれほどの強風になっているようですわね。風景は一見の価値がありますが、砂も細かいせいで風の影響を簡単に受けるので、体や目に当たって痛いですわ。ここはあまり長く居座る場所ではないようですわね」

メイヤは風に対して背を向け、扇子で顔を隠しつつ冷静に状況を分析する。

彼女の指摘通り、強風&砂が細かいため簡単に飛んで体へ散弾のごとく叩きつけられて地味に痛い。

また妻達は目が大きいためか、瞳に入って痛がっていた。

「今日はタイミングが悪かったな。もう少し風が弱ければ、砂遊びぐらいはできたのに」

「砂遊びですの?」

「砂を集めて城を造ったり、砂に文字や絵を描いて遊んだり、後はちょっと準備に手間がかかるけど、大きめの果物を準備して目隠しをして棒で割ったりとか。遊び方は色々あるけど、この強風じゃ無理そうだな」

「ですわね。今はマトモに風景も見られない状態ですもの」

オレ達は海に対して背を向け、風と砂に耐える。

さすがにこんな中で遊びは出来そうにない。

「うぅぅ……口の中がじゃりじゃりします」

『大丈夫、ココノちゃん?』

クリスとシアに髪や服についた汚れを払ってもらいながら、ココノが涙目で訴えてくる。

本人に悪いと思いながらも、つい微苦笑を漏らしてしまう。

「砂浜はここまでにしておこうか。今日はタイミングが悪かったみたいだし」

「さ、賛成、せっかく綺麗な風景を見ようとしてもこれじゃ、全然見れれないよ。後、素肌に砂が当たっていたい!」

「風が強いせいでスカートがめくれそうになるのも困りますね。砂浜と海は綺麗なのに……」

この提案にスノー、リースがすぐに賛成の声をあげる。

他妻達も拒絶しなかった。

『次、また風が強くない日に来よう』と声をかけ、オレ達は砂浜で何もせず後にしたのだった。

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砂浜から戻ってくると朝食兼昼食を摂っただけだったので、小腹が減ったオレ達は夕飯前に軽く何か摘むことにした。

目指すは表通りの土産物屋ではなく、裏通りである。

裏通りは湯の町リリカーンの住人達が普通に買い物をするための市場が当然、存在する。

土産物屋や宿屋などの建物が風防代わりになって、ここまでは強風も入ってこない。

市場には野菜や果物、肉、香辛料に、魚だけではなく、屋台や軽食が摂れる店もある。

まるで前世日本の上野にあるアメ横のような雰囲気だ。

時間的にピーク時ではないため、歩けないほどではないが、そこそこ人通りがある。

早速、気になった屋台へと立ち寄った。

オレは小魚のフライ、エビ&貝の串焼きを購入する。

行儀は悪いが、歩きながら頬張る。

「美味い! やっぱり海が近いだけあってどれも新鮮だな!」

小魚のフライ、エビ&貝の串焼きどちらも身がぷりぷりで、塩味が利いている。塩味の中に魚介類特有の甘みが口いっぱいに広がった。

忘れかけていた日本人としてのアイデンティティーが、魚介類によって激しく刺激を受ける。

本来であれば昨晩、夕食でこの幸せを噛みしめるはずだったのだが……妻達が勧める『ズッポン料理』で腹を満たしてしまった。

朝もサンドイッチやサラダがメインで、今まで一度も魚介類に口を付けていない。

だがようやくありつけて、満足感が胸をいっぱいにする。

『お魚も美味しいですが、甘味も気になります!』

クリスはオレと同じ小魚のフライを食べながら、ミニ黒板を掲げる。

「甘味か、昨日食べたあのサツマイモのお菓子は美味しかったな。素朴な甘さがあって」

『是非、ドライフルーツのも食べてみたいです!』

甘味にうるさいクリスが喜々としてミニ黒板を突き出す。

オレは思わず微苦笑を漏らしてしまう。

とはいえこの市場には売っていないようだ。

同行するシアに尋ねると、宿屋に備蓄があるので戻ったら出すと約束する。

話を聞いたクリスの機嫌が上昇したのは言うまでもない。

他、魚介類をメインに買い食いしていると、市場を抜け出てしまう。

左右を見渡すと、宿屋がメインの通りのようだ。

「このあたりの宿屋にはわたし達の泊まる宿とは違って、お湯が湧いていないのですよね。近くに入れるお風呂屋さんがあるんでしたか?」

「はい、お嬢様、あちらがその風呂屋になります」

人目があるためシアはリースを『姫様』ではなく、『お嬢様』と呼ぶ。

あくまで念のための対処だ。

シアがリースの疑問に右手を向ける。

彼女が伸ばした方向に他宿より二回りほど大きい建物があった。

建物奥からは白い湯気がうっすらと昇っている。

「風呂屋ってけっこう大きいな」

「他にもありますが、基本大人数が入っても問題無い作りになっているのです」

「風呂屋ってああいう大きいのだけなのか? 他に足湯とかないの?」

シアが疑問に答えてくれたので、再度尋ねる。

オレの『足湯』発言にシアだけではなく、皆が首を捻った。

「リュートくん、リュートくん、足湯って何?」

「湧き出すお湯に足だけをつける湯のことだよ」

「それって体は洗えないんだよね? 足だけ綺麗にしてどうするの?」

スノーが代表して疑問を口にする。

……言われてみれば、確かにそうだ。

しかし、実際、前世日本で足湯に入る観光客の姿をテレビで観た覚えがある。

『ではアレには一体どういう意味があるのか?』と問われると、答えは出てこない。お湯に足をつけると気持ちいいのは確かだろうが。

オレ自身、答えに首を捻っているとあることに気付く。

風呂屋の建物に観光客だけではなく、体が汚れた筋骨隆々の男や女性も中へと入っていく。

どうみても一般観光客には見えない。

「シア、あの人達ってもしかして冒険者か?」

「はい、若様のご明察通りです。湯の町リリカーンは冒険者の湯治や魔物狩りで他町と比べても大勢集まっているのです」

シア曰く、湯の町リリカーンは海と山に挟まれた町だ。

山に近く、街道も限られているため魔物退治に力を入れている。

周囲の安全のため町が補助金を出し、他と比べて1・5倍ほどクエスト達成金が高く設定されているとか。

達成金が高いだけではなく、温泉があり、魚介類も美味しいため冒険者が集まりやすい傾向にある。

「ちなみに左手奥にありますのが、この町の 冒険者斡旋組合(ギルド) 支部になります」

シアが観光ガイドのごとく 冒険者斡旋組合(ギルド) 支部を指す。

湯の町リリカーン 冒険者斡旋組合(ギルド) 支部は、町が補助金を出しているだけあり建物自体も綺麗だ。

午後4時前、早朝に出かけ周辺の魔物達を狩ってきた冒険者達がちらほら集まって来ているが、基本まだ閑散としている

『…………』

全員が急に黙り込む。

先程まで楽しく観光していた空気が霧散する。

原因は 冒険者斡旋組合(ギルド) だ。

オレ達は今まで各大陸を行き来してきた。

新しく立ち寄った 冒険者斡旋組合(ギルド) でいつも受付嬢さん本人や関係者に出会ってきたのだ。

まさかとは思うが今回も……と、考えてしまい皆、黙り込んでしまったのである。

いや、しかし、まさか結婚式パレード&パーティーで、受付嬢さん関係者は全員集まっていた。

もし他に居れば混じっていたはずである。

あの場に他受付嬢さん似が現れなかったということは打ち止めということで、他に出てくることはないはずだ。

オレは1人胸中で結論をつけていると―― 冒険者斡旋組合(ギルド) 支部出入口から1人の女性が出てくる。

その女性は――