軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第437話 軍オタアフター アイナ放浪記

妻達と無事に結婚式パレードを終えた夜。

オレと妻達はようやくまともな休憩&ご飯を食べることができていた。

獣人大陸、ココリ街に急遽建築した女魔王アスーラ――改め、女神アスーラ教会で結婚式を挙げた後、ブーケトス。

そして一時、休憩を入れた後、街の外壁周辺に集まった人々に姿を見せるためのパレードが続行された。

馬車は角馬4頭立てで引く。

これだけなら普通の馬車と変わらない。

もっとも違う点は、馬車の内部に乗るのではなくその天辺にオレ達が立つように作られていることだ。

なるべく高い位置で大勢の人に見てもらえるように配慮した結果である。

オレと妻達は再び特別製の馬車天辺に乗り込み、落下防止ようの手すりに掴まり外壁へと出た。

街の外に出ると、まるで地平線を埋め付くように人種関係なく集まっていた。

大物歌手の野外コンサートでもここまで集まらないだろうという人数が、魔王を倒した勇者、天神化したランスを倒し世界を救った英雄達の結婚式パレードを一目見るため集合したのだ。

圧巻としかいえない光景である。

オレ達は決められたコースを進みながら集まった人々に笑顔で手を振る。

この『笑顔で手を振る』という行為が想像以上に辛かった。

常に腕を上げているためだるくなり、笑顔を作り続けるため顔の筋肉が痙攣を始める。

ここまで長時間、手を挙げて、笑顔を作り続けることはなかったため本当に辛い。

前世、日本に居た頃、テレビなどで祝勝パレードを何度か見たことがあるが、ここまで大変なものだったとは。

やり終えた後、『もう二度としたくない』と思うほどだった。

これなら普通にAK47を手に前線で戦っていた方がまだ楽だ。

なんとか結婚式パレードを無事にやり遂げると、陽は完全に沈んでいた。

後は街、外含めて大宴会である。

唯一、警備担当の 始原(01) 達だけが、治安のため飲み食いしているのを横目に仕事しなければいけないが……。

後日、差し入れをするので許して欲しい。

結婚式パレードを終えたオレと妻達も新・純潔乙女騎士団本部グラウンドに作られた宴会会場ひな壇に座り、出席者達と挨拶。

その後、ようやく食事や休憩を取ることが出来たのだ。

本当に長い1日である。

グラウンドに集まっているのは身内や知り合いだけなので、取り繕う必要がないだけマシだ。

一通り挨拶を終えた後は歓談となる。

妻達もそれぞれ友人や親族などと一緒に食事とおしゃべりを楽しんでいた。

ちなみにグラウンドの一角。

受付嬢さん&まーちゃん、ロン達の相手はメイヤが務めている。

他にも竜人種族代表として、メイヤパパこと竜人種族、魔術師Bマイナス級ハイライ・ドラグーン。

同じくメイヤの自称ライバルを自認する竜人種族、魔術師B級、リズリナ・アイファンが彼女の後について、2人の相手をしていた。

ハイライさんとリズリナの目から光が消えているのはきっと気のせいだろう。

時折、こちらに視線を向けて助けを求めているのもきっと気のせいに違いない!

ちなみにオレはというと、スノーと一緒に彼女の魔術師学校時代から親友である人種族と妖精種族エルフ族のハーフ、魔術師Bマイナスのアイナの相手をしていた。

他にもエル先生やギギさん、旦那様や奥様、ザグソニーア帝国のウイリアムやユミリア皇女などなど――回らなければならない客人は多い。

なのにアイナを優先したのには理由がある。

彼女の存在をすっかり失念して招待するのを忘れていたのだ。

今回グラウンドで開いている祝宴も、本来であれば事前に招待状を送った人物しか入れない手筈になっている。

これは警備上の観点からも当然の配慮だ。

しかし、オレ達は結婚式パレード中にアイナを発見。

スノーの親友で、多々世話になり、卒業証書まで持ってきてくれた。さらに白狼族を探しに向かう切っ掛けを与えてくれた人物である。

忘れていたことを謝罪するためにも、いの一番でこちらから声を掛ける必要があった。

警備責任者のテン・ロンにお願いして、急遽アイナをグラウンドへと入れてもらう。

彼女は旅先から直接来たのか衣服だけではなく手や顔なども汚れていた。

パーティーに参加できる姿ではないので、先にお風呂に入ってもらう。

衣服も背丈が近い団員のを貸してもらった。

……そういえば、昔、初めて彼女と会った時も旅で汚れていたためお風呂に入れて、服を貸した記憶があるな。

グラウンドの一角の席。

お風呂から上がりまだ時間が経っていないため、未だに乾いていない髪のままアイナは笑顔でグラスを掲げる。

「スーちゃん、リュートさん、お久しぶりっす! そして結婚おめで――ん? いや、もう結婚はしてたんすよね。なら結婚式おめでとうっす!」

「ありがとうアイナちゃん。ごめんね、結婚式の招待状を出さなくて……」

「本当に申し訳ない」

再会の挨拶をした後、祝いの言葉を貰う。

オレとスノーは結婚式パレードの衣服のまま揃って、アイナの正面に座って頭を下げた。

彼女はオレ達の謝罪にたいしてからからと乾いた笑いを返す。

「全然気にしてないからいいっすよ! だいたい自分も手紙一つ寄越さないで世界をふらふらしていたのが悪いっすから。連絡の取りようも無かったししょうがないっすよ」

オレ達が魔王や天神化したランスを倒したことも、結婚式パレードの件も旅先で耳にしたらしい。

「でも驚いたっすよ。まさか2人とも魔王を倒すだけじゃなくて、世界を救うなんて」

「オレとスノーじゃなくて 軍団(レギオン) の団員達や協力してくれた皆のお陰だよ。そういうアイナは今までどこで何をしていたんだ?」

「あれ、訊いちゃいます? それ訊いちゃいますっすか?」

アイナは上機嫌で酒精を飲み、食事をしながら得意気な表情で問う。

なんだか昔に会った時と比べて性格が明るくというか……大雑把というか、テンションが高くなったというか、とにかく変わった気がする。

アイナはコップの酒精を飲み干す。

スノーがお酌するのを眺めながら、彼女は今まで何をしていたのか話してくれた。

「リュートさん達と別れた後、まずはそのまま獣人大陸奥地まで行ったんすよ。獣人大陸の奥って魔人大陸みたいに少数の国――っていうか、部族単位で固まっていることが多いっすよね。そこらを暫く見たり、魔術師として小国の開拓事業の手伝いや事務の手伝いをしつつ旅の旅費を稼いだりしたんすよ」

アイナはスノーにお酌してもらった酒精を美味そうに飲み、ツマミに熱々の唐揚げを頬張りながら楽しそうに語る。

彼女の出身地はかなりの田舎で、将来の夢は『世界を見て回りたい』というモノだった。

実際、魔術師学校を卒業後、夢を叶えてこの世界を今まで見て回っていたらしい。

獣人大陸を出た後は、魔物大陸に渡るがさすがにきつくてすぐに竜人大陸へ。

そして、魔人大陸、北大陸。

妖人大陸に渡り、見て回っていない場所をふらふら巡っていたとか。

その間に旅費を稼ぐため魔術師として商隊の護衛や家庭教師、町や街の運営補佐、漁村で漁をしたり、冒険者とパーティーを組んでダンジョンに潜ったり、鍛冶場、魔術道具職人、橋や水車、建物だけではなく造船にも手を出した。

途中で世界を見て回るだけではなく、色々な職や仕事に手を出すのが楽しくなったらしい。

まるで若者がバックパッカーをしながら世界を見て回っているようだ。

前世、地球と比べても魔物や山賊など危険度が大きいはずなのだが……。

なんだかんだでアイナは、魔術師学校卒業のエリートだ。

スノー曰く、魔術関係はいまいちだが、それ以外は器用だったとか。

仕事の覚えも早く、魔術師のため現場では重宝されていたんだろうな。

お風呂に入って汚れを落とし日に焼けた肌を酒精で赤く染めながら、アイナはしみじみと語る。

「いやぁー! 旅をして色々な食事や風景、仕事や地元住民さん達と触れ合って今までの価値観が変わったっていうんすか? 自分自身で一皮剥けたのが分かるっていうんすか? 早い話が自分、めっちゃ成長したのが分かるんすよ! やっぱり旅をして世界に触れないと駄目っすよ!」

アイナは機嫌良く、大学在学中にインドに行って『価値観が変わった』と言い出す大学生のようなことを言い出す。

ちょっと『イラ』っとするが、それ以上に彼女の人材価値に目が輝いてしまう。

恥ずかしい話、孤児院があるホードという町を妖人大陸最大国家メルティアからぶんどったが扱いに困っている。

今までは魔術師Bプラス級のギギさん、魔術師S級のタイガが居るため孤児院は大丈夫だろうと楽観視していた。

しかし、天神化したランスの部下に攻められあわや死人が出来るところだった。

二度とこのようなことが起きないよう PEACEMAKER(ピース・メーカー) 主導で防衛するため、領地をメルティアから切り取ったのだ。

領地を得たのは良いが、団員を送るには町の受け入れ態勢が整っていない。

開墾しようにもどれだけの規模、人員、期間、必要経費がかかるのか等のノウハウがない。

測量や税の扱い方、町人に対して今までの慣習を継続するのか、それから法は新しく作るのか?

勢いで領地を得たが、運営するための知識がオレ達側に無かったのだ。

そのため現状は結婚式パレードがあったため、実質ストップ状態。

ツテを頼り人材を募集する案も出ているが、経験者は年配の男性達で占められている。

オレ達の軍団は若い女性がメインだ。

以前の小さい軍団時代ならともかく、今アドバイザーとしても年配男性を PEACEMAKER(ピース・メーカー) の代表として町を治めさせるのはいささか体面に関わる。

初めから外部から引っ張ってきて丸投げした場合、脅してまでメルティアからぶんどった意味がなくなる。早い話が若僧達のわがまま、見栄で領地を得たかっただけ。子供の遊び扱いされるだろう。

そうなった場合、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 、メルティア双方の面子が潰れる。

また町人達も不安を確実に抱く。

『自分達の生活は今後どうなるのか?』、『また気まぐれで投げ出されるのでは?』と。

なので理想は領地経営や開墾、事務の経験がある若い女性。

できれば魔術師なら代表者として押しやすい。

その点、アイナは数年間旅をし、様々な仕事を経験している。

領地経営や事務、開墾などにも携わったことがあるとか。

魔術はともかく、その他は器用にこなす彼女なら十分対処できるだろう。

これほどうってつけの人材はそうそうにいない。

(スノー、なんとしても、アイナを入団させるぞ!)

(分かったよ、リュートくん! それにアイナちゃんが一緒の軍団に入ってくれたらきっと楽しいもんね!)

オレとスノーは素速くアイコンタクトで意思疎通を図る。

ほぼ産まれた時から一緒に育った幼馴染みだからできる芸当だ。

オレとスノーは絶対に逃がさないため、アイナの接待を始める。

オレは空になったコップに新しい酒精を注ぎながら話を振った。

「しかし、魔術師とはいえ女性1人旅だと何かと大変だっただろうに。大きな怪我もなく無事で良かったよ」

「たしかに旅の途中何度かひやっとした場面もあったすけど、旅で出会った皆が女性の1人旅だと知ると色々気を遣ってくれるんっすよ。魔術師だから優遇されたこともあったっすけど。でも、そういう皆の優しさのお陰で、自分は大きな怪我も負わず旅を続けることができたんすっよね」

アイナを持ち上げるため、話を振ったが意外にも真面目な返答をされる。

この世界は前世に比べて危険度が高い。

にも関わらず、アイナは大勢の人々から優しくされたようだ。そういった気遣いが多く存在することに胸が温かくなる。

「むしろ、危険というなら旅の途中より、街中のほうが危なかったっすね」

「そうなの? 普通、逆じゃない」

注いだ酒精を啜るアイナに、スノーが小首を傾げた。

「街中の場合、命じゃなくて金銭的な危険が多いんすよ。例えばスリやぼったくり、押し売りや小金を持っていたせいでチンピラに絡まれたこともあったすね。まぁ自分、これでも魔術師学校卒業の魔術師っすから軽く撃退したっすけど。お金が無いと街では何もできないっすから。街中で有り金全部すられて呆然としている人も結構みてきたんっすよ」

お金が無ければ稼がなければならない。

しかし街外に出て魔物と戦う際、空腹だったりしたら勝率が著しく下がる。

薬草摘みでもその日暮らしになって、いつまでも貧困から抜け出せなくなってしまう。

街中で商売ができればいいが、有り金のない人物が生活を立て直せるほどのお金をすぐに稼げるとは思えない。

アイナの言う『街中の方が危険』はあながち間違いではないのかもしれないな。

彼女は思い出したように口を開く。

「そういえばお金関係で思い出したっすけど……前、行商人から聞いた話じゃ、お金持ちの商人とかが言葉巧みに騙されて資金を出す詐欺が流行っていたらしいっすよ。なんでもピンク色の長髪で兎耳の美人が、美味しい話を持って近付いてくるとか。リュートさんとこも大手 軍団(レギオン) ですから狙われるかもっす。なので気を付けてくださいっす」

ごめんなさい、その兎、今うちの 軍団(レギオン) に居ます……ッ。

今現在もグラウンドの会場で美味そうに高い酒精を選んで飲んでいる。

すぐ側でエル先生が実妹の無茶な飲み方を止めようと頑張っているが、徒労に終わっていた。

一応、アルさんの詐欺問題は9割方片づいていた。

諜報担当のラミア族、ミューア・ヘッドが情報を集め、被害者には騙された金額+色をつけて返金している。

残り1割も時間の問題だ。

当然、返金した分のお金はアルさんに返してもらうつもりである。

強制労働をしいてもだ!

しかし、そんな詐欺をおこなった人物が 軍団(レギオン) に居ると知られるのは不味い。

印象が悪くなってしまう。

この話題は不味いのだが、すぐに別の話が思いつかない。

混乱していると、アイナの方から話を振ってきた。

「でも危険というならスーちゃんやリュートさん達の方が凄いっすよ。まさか魔王を倒して、『魔力消失事件』まで解決するなんて」

「そ、そういえば、アイナは『魔力消失事件』の時、大丈夫だったのか?」

ランスが無理矢理魔力を奪ったせいで大勢の魔術師が、数日間、意識を失った。

ダンジョンや魔物がいる領域など、危険な場所で意識を失った魔術師は命を落としている。

アイナの場合、五体満足で目立った傷もないことから、無事に切り抜けたのだろうが……。

「自分の場合、馴染みの商隊の人達と移動中に意識を失ったんすよ。だから、他護衛の冒険者さん達も居て、安全に馬車で意識を失ったままでいられたんすよ。本当に運がよかったす」

それは運が良い。

アイナは酒精をあおり続ける。

「目が覚めた時、自分が意識を失っていたことにも驚いたっすが、上空にランスが浮かんでスーちゃん達を名指したのもびっくりしたっす。本当なら力を貸すためにもスーちゃん達の元に駆けつけたかったんすけど、当時は魔人大陸に居たっすからね。あの時は自分の力の無さを悔やんだっすよ」

さすがに魔力もない状態で、魔人大陸から獣人大陸に移動は不可能だ。

ほぼ正反対で、移動する足も無いのだから。

スノーが笑顔で告げる。

「ありがとう、アイナちゃん! その気持ちだけで嬉しいよ」

「えへへへ、照れるっすね。でも、悔しかったのは本当っすけど、スーちゃん達ならきっとあの天神化したランスを倒してくれるって信じていたっす。自分の親友であるスーちゃんならきっとあの卑怯なランスになんて負けないって」

「アイナちゃん……」

スノーは親友アイナの真っ直ぐな心情に胸を打たれる。

瞳が潤ませ、彼女の名前を呟いた。

アイナは照れくさそうに言葉を続ける。

「それだけじゃないっすよ。他にもちゃんとした理由があるんす。空に浮かんでいたランスの話を聞いて、すぐに彼が天神の力を十全に使えていないことに気付いたんすよ。だから付け入る隙があると気付いて、スーちゃん達の勝利をより確信することができたんすよ」

天神化したランスの話を聞いただけで、彼の力が十全でないと気付いた!?

改めて振り返っても、そんな素振りがあったのかまったく分からない。

さすが魔術師学校を卒業したエリートである。

もしくは世界中を見て回ったが故に身に付いた洞察力のなせる技なのかもしれないな。

オレは興味が湧き、どこで気付いたのか尋ねる。

アイナは隠すことなく、説明してくれた。

彼女はニヤリと口元を歪め、得意気な表情で告げた。

「ある意味、簡単な話っすよ。ランスはスーちゃんの親友である自分を標的に入れていなかった。だから、彼の力が完全ではないということに気付たんすよ」

「「…………」」

オレとスノーは種明かしに黙り込んでしまう。

恐らくだがランスもアイナの存在を知らないか、忘れていたため漏れたのではないだろうか?

同級生であるアム・ノルテ・ボーデン・スミスや 軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) 前に知り合ったリズリナですら呼ばれていたというのに……。

クソ! ランスの奴、本当にろくなことしやがらない!

やばい、この話題もやばい!

オレは再び慌てて話題を変えるため思考を回転させる。

オレが話題を提供するより早く、スノーが声を掛けてくれる。

「そ、そういえばアイナちゃん、この後どうするの? また世界を見に旅に出ちゃうの?」

「うーん、そうっすよね。魔物大陸はともかく、各大陸は行ったし、しばらくは落ち着こうかと思っているっすね」

「そうなんだ。だったら、うちで働かない?」

「スノーちゃん達のところででっすか?」

スノーの提案にアイナはニヤリと笑う。

「スーちゃん達のところで働くのも面白そうっすね。なにやら、自分に任せたい仕事があるようですし」

彼女の指摘にオレとスノーが目を見開く。

アイナは酒精を舐めながら、『スーちゃんとの付き合いは長いっすからね』と笑う。

「でも自分を雇うなら相応にかかるっすよ。友達だからってほだされたりなんかしないっすからね」

彼女はこちらを試すように悪戯っぽく語りかけてくる。

アイナは魔術師Bマイナス級と魔術師としては一番下だが、この世界はそれでも仕事に困ることはない。

さらに彼女は世界中を旅して、多くの経験を積み、技能を身に付けている。

いくらスノーの親友とはいえ、半端な金額では雇えないのは当然である。

オレは唾液を呑み込み、アイナへ条件を尋ねた。

彼女は酒精を飲み干すと、こちらを試すように条件を口にする。

「自分の条件はちょっと高いかもしれないっすけど……三食+おやつとお小遣いをくださいっす!」

「…………え?」

「ふふん! 今をときめく軍団団長さんも、自分の条件には驚いちゃったようすっね」

どうやらアイナは過酷な旅や辺境を回ったせいで価値観がずれてしまったようだ。

スノーから前に聞いた話では、アイナ自身元々田舎の農村出で旅をしている間に順応してしまったのだろう。

こちらとしてはありがたいが、いくら何でも安すぎる。

この条件で雇ったら、こちらが逆に後ろ指をさされてしまう。この条件で雇える訳がない。

オレとスノーが条件に呆然としていると、高すぎたと勘違いしたのかアイナは得意気に笑う。

「まぁでもさすがに自分もいい大人っすから、妥協するところは妥協するっすよ。オヤツは我慢しましょう!」

さらに条件が下がる。

これ以上、黙っていたらさらに下がりそうなのでオレはアイナに雇う条件を告げる。

彼女に三食+おやつ、どころかお小遣いではなく給料をしっかり払う、と。

アイナは最初、大盤振る舞いに驚き、喜々として軍団に加入することを了承した。

彼女の気が変わる前に、オレは会計担当の3つ眼族のバーニー・ブルームフィールドを呼び、契約書類を作成する。

こうしてアイナも PEACEMAKER(ピース・メーカー) に入団したのだった。