軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第428話 ハイライ・ドラグーンへの結婚報告と愚痴

買い物から帰ってきたアスーラと顔を会わせたが、あまり話はできなかった。

すぐに部屋に引きこもってしまったためだ。

皆、彼女をどう扱っていいか分からず戸惑っている。

アスーラに『昔、愛している人と顔が似ておる!』と出会った当初は、色々絡んできたのだが……。

まるで思春期を迎えた娘の相手をしているようだ。

他にも挨拶をしないといけないので、魔人大陸を後にした。

次に向かうのは北大陸である。

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「うぅぅ……まだ臭いが残ってる気がするよ……」

飛行船ノアのリビングでスノーが自身の髪の臭いを嗅ぎ顔を顰める。

彼女を挟むように座るクリス、リースが髪の臭いを嗅いだ。

『そうですか? 臭いはしませんが』

「スノーさんにだけ分かるほど微かにだけ残っているのでしょうね」

「お城に戻ってからあんなに頑張って洗ったのに……」

スノーは涙目で肩を落とす。

彼女が落ち込んでいる理由は、ホワイトドラゴンの群れを追い払うために使った『濃縮悪臭<改>』の臭いがまだ残っているらしい。

北大陸に向かったオレ達 PEACEMAKER(ピース・メーカー) は、無事にノルテ・ボーデンを現在治めている当主、アム・ノルテ・ボーデン・スミスと会うことが出来た。

彼の妻である白狼族のアイスと娘のシユとも顔を会わせて、オレ達の結婚式出席の約束を取り付けた。

その後は城に一泊。

次にスノーの両親が居る白狼族の村へ行くことになる。

アイスが気を利かせて、街に居る連絡要員の白狼族男性一人を案内に付けてくれた。

お陰で道中は途中まで順調だったのだが――以前、クリスにびびって逃げ出したホワイトドラゴンが、プライドを取り戻すため群れで襲いかかってきたのだ。

急襲だったのと、雪という特殊な環境、敵が群れているため反撃が難しい状況に陥ったのだ。

ピンチを乗り越えるために、 風船蛙(バルーン・フロック) の『濃縮悪臭』をパワーアップさせた『濃縮悪臭<改>』を使用。

臭さに悶えている隙に、反撃をしかけ無事に乗り越えることができた。

結果としてホワイトドラゴンの群れを追い払うことはできたが、臭いがオレ達の体や衣服についてしまったのだ。

お陰で折角スノーの両親に結婚式の挨拶をしに行ったのに距離を取られ、白狼族の村から早々に帰る嵌めになってしまった。

さらに極寒の雪山で風呂に入る訳にもいかず、臭いを体にまとわせ続けたのだ。

「わたくしの屋敷についたらすぐにお風呂の準備をさせますわ。それまで我慢してくださいまし」

「お風呂に入ったら、わたしも髪を洗うのをお手伝いしますね」

スノー達が座る反対側ソファー。

オレを真ん中に、メイヤ&ココノがスノーに声をかける。

ちなみにシアは飛行船ノアの操縦のため、リビングには居ない。

「ありがとう、メイヤちゃん、ココノちゃん! それにしてもまったくリュートくんはとんでもない兵器を開発してくれたよ……」

スノーは涙目で感謝した後、正面に座るオレにジト目を向けてくる。

彼女の視線を受け流し、肩をすくめた。

「そう言うなよ。実際、役立っているわけだし」

「確かにそうだけど! こっち側の被害も大き過ぎるんだよ!」

スノーは頬を膨らませてぷんぷんと怒る。

その態度に思わず皆が笑ってしまう。

スノー本人にとって真面目な話でも、彼女の態度が可愛らしかったためだ。

とはいえスノーの指摘も分からなく無い。

悪臭兵器は便利だが、最近乱用しすぎている。また他兵器と違いマネするのは容易い。

敵が使ってきても対応できるように準備をしておいた方がいいかもしれないな。

(ガスマスクとか、防護服とか作ったほうがいいのかな?)

皆が談笑しているのを眺めながら、一人ソファーに体を預けガスマスクや防護服の作成方法に思考を向ける。

(木炭を砕いて使うんだっけか? 魔術道具や魔術にそれ系統のモノがありそうだから後で調べてみるのもありだな)

早急に製造しなければならないほど切羽詰まってはいない。

結婚式の話し合いが終わったら、のんびり取り掛かろうと胸中のメモに書き込んでおく。

――しかし、この時は流石に後々、ガスマスク等が役立つことになるとは想定していなかった。

こうして飛行船ノアは順調に竜人大陸へと向かうのだった。

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竜人大陸にあるメイヤ自宅へ辿り着くと、スノー達は予告通り仲良くお風呂へと入る。

オレもひとっ風呂浴びたい所だが、その前に一仕事を終わらせた。

メイヤパパこと竜人種族、魔術師Bマイナス級、ハイライ・ドラグーンへ手紙を書いたのだ。

メイヤパパに話があるから、内密にこちらへ来て欲しいとしたためる。

嫁父を呼び出すなど失礼にあたるが、それ以上にドラゴン王国へ近付きたくない。

下手に首都へと近付いて、ロン&受付嬢さんを刺激したくないのだ。

わざわざ自分達からあからさまな危険地帯に飛び込むほど命知らずでも、自殺志願者でもない。

とはいえ親族であるメイヤパパに結婚式報告をしない訳にもいかず、妥協案として『手紙でメイヤ邸に密かに呼び出す』という方法をとらせてもらった。

これならロン&受付嬢さんに気付かれず、挨拶ができる――はずだ。たぶん。

――手紙を出して約2週間後。

メイヤパパこと、ハイライ・ドラグーンから先触れが来た。

明日の午後、メイヤ邸を訪れると報告を受ける。

予告通り、ハイライ・ドラグーンが午後、メイヤ邸に姿を現したのだが、最初目を疑ってしまった。

彼はこちらが驚くほどやせ細っていたからだ。

「お久しぶりです。その……随分とお痩せになりましたね」

「……嫌味か。理由は分かっているだろう」

痩せたと口にしたが、実際は『窶れた』と言った方が正しい。

獣人大陸ココリ街、新・純潔騎士団本部に乗り込んできた時の覇気は影も形もなくなっていた。

何があったか予想が付くのが嫌だな……。

屋敷リビングにはオレとメイヤ、向かい側にハイライ・ドラグーンが座る。

シアは当たり前という態度で、皆に香茶ではなく竜人大陸らしく 茶々(ちゃちゃ) を置いて回る。

茶菓子も 茶々(ちゃちゃ) に合わせた竜人大陸産を使っていた。

ハイライ・ドラグーンは目の前に置かれた茶々や茶菓子に目も向けず、前のめりになって尋ねてきた。

「あれは何なのだ? あれは一体なんだというんだ!? リュート・ガンスミス! 貴様は一体、ロン陛下になんてモノを紹介したんだ!」

『何だ』ってむしろこっちが聞きたいよ!

だいたいロンに紹介……対面させたのは貴方の娘なのだが。

こっちだって当時は寝耳に水で、心底驚かされた側である。

ハイライ・ドラグーンに指摘すると、彼は苦い顔をして『ぐぬぬぬ……ッ』と唸る。

オレの隣に座るメイヤに視線を向けると、手にした扇子を広げて『今日はなんだかとても暑いですわね』と明後日の方角を向いて仰ぎ始める。

二人の対応を前にして、彼女達が親子なのだとなぜか納得してしまった。

誤魔化し方の空気感が似ているからだろうか?

ハイライ・ドラグーンは唸るのを止めると、疲れたように頭を抱えた。

以降は受付嬢さんへの愚痴を聞かされ続ける。

「彼女の連れているペットの力で『ドラゴンの間』が修復された。他にもペットから抜け落ちた歯から砕かれた 聖竜昇竜刀(せいりゅうしょうりゅうとう) に替わる魔剣が大量に作られたり、抜け落ちた鱗で鎧や盾を製造されている。功績だけ見るなら、ロン陛下の后候補としては申し分ない。しかし、アレは無い! 魔王の類なのか!? アレが元 冒険者斡旋組合(ギルド) の受付嬢さんとか嘘だろ! ロン陛下もロン陛下だ! あの怪物の本性を見ているのに惚れている意味がわからん! 器が大きければいいという問題じゃないだろ! 大きすぎるわ!」

受付嬢さんはともかく、あれだけ崇拝していたロンに対しても愚痴り出す。

ハイライ・ドラグーンだけではなく、彼ら家臣団は相当追いつめられているようだ。

メイヤパパが、捨てられた子犬のような視線を向けてきた。

嫌な予感しかしない。

「リュート・ガンスミス――いや、リュート殿、メイヤちゃんの結婚式の件は了解した。二人の結婚を祝福しよう。だから、頼む。どうか PEACEMAKER(ピース・メーカー) の力でロン陛下を説得してくれないか? あの受付嬢とロン陛下をどうか別れさせてくれ……」

「いや、無理です」

義父であるメイヤパパの願いを速攻で却下する。

ハイライ・ドラグーンが絶望した表情をするが、何があっても首を縦に振る訳にはいかない。

ロンと受付嬢さんを別れさせる?

絶対に無理だ!

彼女を 封印(結婚) させるためにどれだけ多大な犠牲を払ったか!

特に魔術師S級、タイガ・フウーの被害が一番酷い。彼女の淡い恋心を犠牲にしてまで 封印(結婚) させたんだ。

そのタイガは未だに絶賛引きこもっているんだぞ!

彼女の犠牲を無駄になんてできるはずがない。

何より、ロンと受付嬢さんを別れさせる話をしているだけでヤバイ!

もしこの話が受付嬢さんの耳に入りでもしたら……。

想像しただけで震え上がる。

「!?」

「り、リュート様? いかがなさいましたか?」

オレは反射的に立ち上がり、リビングを見回し、窓を開き外、廊下、家具の影まで確認する。

以前、受付嬢さんはビショップ家、タイガ自宅へ唐突に会われ、忽然と消えた。

まるでホラー映画の怪物のようにだ。

今回もどこからともなく姿を現し、警告を発する可能性があったため確認したのだが……どうやら大丈夫だったらしい。

オレは冷や汗を拭い改めてソファーに座ると、メイヤパパに釘を刺す。

「いいですか、ハイライさん。自分達、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) は絶対に別れさせ屋のようなマネはしません。今一番側にいる貴方達ならその理由は分かりますね。自分は団員達や世界を危機に陥れるマネはできません!」

「うぐぅ……ぐぐぐッ……」

ハイライ・ドラグーンは涙ぐむ。

中年男性の涙ぐむ姿は悲しみを誘うが、意思を変えるつもりはない。

きっぱりと断った上で、話を結婚式に戻した。

以後、結婚式の話だけをする。

メイヤパパは現在、王宮内部で問題が発生しているため、来られるか微妙とのことだ。

メイヤママも迷宮に潜ったままなので連絡が取れず、捕まらない。

またロン&受付嬢さんには、結婚式の話をしないように念入りに釘を刺しておいた。

祝福してくれるのは嬉しいのだが、問題が起きる可能性を考えると出席しない方がありがたい。

一通り話を終えると、ハイライ・ドラグーンはメイヤ邸を後にする。

ドラゴン王国でまだ仕事があるらしく、このままトンボ返りするらしい。

彼の背中から凄く哀愁が漂っていた。

何度か立ち止まり、振り返ってくるが絶対に仏心など出さないぞ!

とりあえずこれでメイヤパパには義理を無事に果たすことができたのだった。