軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第424話 リースのお悩み?

お昼休み。

新・純潔乙女騎士団本部の食堂で嫁達と一緒に昼食を食べていた。

具だくさんのシチューにパン、サラダ、デザートの果物がついたバランスのいい昼食だ。

リースとシアだけは、午前の警邏が押しているのかまだ戻って来ていない。

こういう場合、何時戻ってくるか分からないため、先に食べていることになっている。

オレ達は団員達に混じり、昼食を摂りながら結婚式の準備について話をする。

「資金に関しては問題ありませんわ。リュート様の個人資産なら結婚式を余裕で開くぐらいはありますわ。もし足りない場合はわたくし自身が出すので、お金の心配は必要ありませんわ」

忘れがちだがメイヤは『魔石姫』と呼ばれるほど著名な魔術道具開発者だ。

彼女は開発した『七色剣』や『魔力集束充填方式』によって莫大な資産を今なお築いている。

どれぐらい稼いでいるかというと…… PEACEMAKER(ピース・メーカー) の総合資産を確実に越えているはずだ。

伊達に『魔石姫』と呼ばれている訳ではない。

ちなみにメイヤの個人資産があれば、PEACEMAKER会計のバーニーが資金について頭を悩ますことはなくなる。

丼勘定でも余裕で成り立つ。

今までしなかったのは、メイヤが仲間ではあるが身内ではなかったからだ。

さすがに弟子&部下の立場であるメイヤに予算を出させる訳にはいかない。

そして結婚腕輪を贈り妻となった今、彼女は自身の資金を出したがっているのだ。

お金はあって困るモノではないがメイヤの所持する資金が多すぎる。

現在、ナンバー1 軍団(レギオン) だからといって、小国の年間予算レベルの資金を持ち出されても扱いに困ってしまう。

とりあえメイヤの資金に関しては現在保留中だ。

話を戻す――故に結婚式の準備一番問題となりがちなお金に関しては心配が無い。

次は『どこでやるか?』が問題になった。

「わたしはどこでもいいよ。リュートくんや皆と一緒に結婚式を開けるなら」

スノーが嫁を代表して告げる。

クリス、ココノも問題無いと頷きあっていた。

「個人的にもリュート様達と結婚式をあげられるならどこでも問題ありませんわね。リースさんの意見も聞かなければならないので断言できませんが、基本はココリ街でやるということで」

「竜人大陸でやらなくてもいいのか?」

オレはシチューに口を付けながらメイヤに問う。

彼女のテリトリーである竜人大陸なら、結婚式の準備に必要な人員、ツテ、コネが大量にあるからやりやすそうなイメージがあるのだが。

この質問にメイヤが曖昧な笑みを浮かべる。

「リュート様、じゃなくて貴方様の仰る通り竜人大陸でやった場合、色々融通も利きますし準備し易いのですが……未だわたくしとロンを結婚させることを諦めていない派閥が邪魔をしてくる可能性もあるので。できればあちらではやりたくないのです」

彼女の答えに皆、納得した。

見た限りロンは受付嬢さんにベタ惚れだったから心変わりの心配はないだろうが、周囲は分からない。

危険性を認識せず下手な行動をしかけてくる可能性も捨てきれない。

そんな危険を冒すぐらいなら、大人しく自分達のテリトリーである獣人大陸、ココリ街で結婚式を開くべきだろう。

ここなら竜人種族は少なく、入ってきたらすぐに連絡が届く。

結婚式も大事だが、安全には替えられない。

昼食を摂りながら話をしていると、こちらに歩み寄ってくる影に気付く。

「だ、団長、フヒ、け、結婚式開くって、ほ、本当ですか?」

「ラヤラ……ああ、本当だぞ。今はその打ち合わせ中だ」

「お、おめでとうござ、います、フヒ」

新・純潔乙女騎士団団長、獣人種族タカ族、ラヤラ・ラライラが声をかけてくる。

彼女も昼食のためお盆を手にしていた。

彼女のお盆に載っているメニューはオレと同じ筈なのに、量が多い上に『肉! 肉! 肉!』の肉押しだった。

見ているだけで胃がもたれそうである。

彼女はココノの隣に座りながら、さらに質問を飛ばす。

「あ、後、本部以外に新たに、し、支部を作るっていう話も、フヒ、聞いたんですけど……」

「そっちも本当だ。オレとスノーの故郷に部隊を派遣するつもりだ。実質、第2支部みたいなもんかな」

「支部……し、支部、本当に作るんだ。団長のお墓に、報告しないと……」

最後の台詞は完全に独り言だったのだが、席が離れている訳でもないので自然と耳に入る。

ラヤラが言う『団長』とは旧純潔乙女騎士団のルッカのことだ。

彼女達古参は支部があった頃の旧純潔乙女騎士団を知っている。

故に弱体化し本部のみになった後に盛り返し、再び支部を作ることに感慨深い感動を覚えているのだ。

今の新・純潔乙女騎士団団長はラヤラなのだが……ここは黙っておくべきだろう。

人には変えられない部分があるのだから。

オレの微苦笑にラヤラ以外の皆が気付き、頷く。

彼女達もラヤラに気を遣い黙っていることを選択したのだ。

昼食を取り終えると、執務室へと戻る。

スノー達から食後のお茶に誘われたが、泣く泣く断った。

受付嬢さん問題で後回しになっていた書類が山積みになっており、未だに片づいていないためだ。

さっさと仕事を片づけないとバーニーの目が怖い。

何より早く終わらせて、エル先生に結婚式出席について尋ねに向かいたかった。

また支部作りや PEACEMAKER(ピース・メーカー) の領地になったことを話して、色々準備&環境作りをしなければならない。

やることは山積みである。

「結婚式の挨拶はエル先生達が終わったら、魔人大陸に行って旦那様に、次は北大陸でアム達に、妖人大陸でハイエルフ王国エノール、最後は竜人大陸の順番で問題ないかな?」

貴族や領主は挨拶の順番も気にするものだ。

旦那様やアム達なら一番最後だろうと文句は言わないが、心情的にも恩義的にも後回しにはできない。

結果、関係の薄いエノール、つい最近敵対したメイヤパパが後回しになる。

受付嬢さんやロンを結婚式に呼ぶつもりはない。

彼女達は今、色々忙しいだろうからだ。

そんな中で来てもらうのは心苦しいというものだ。何より二人は結婚を前提に付き合い始めたばかり、ラブラブなカップルの邪魔など常識的、現実的、理性的にもできるはずがない!

決して、これ以上、関わりたくないという理由ではないですよ?

「ハイエルフ王国といえば、昨日からリースの元気がないんだよな……。シアも心なしかピリピリしているし」

『問題でも起きたのか?』と思ったが、受付嬢さん問題を解決した今、たいした事件が起きるとは考え辛い。

大抵の問題はリースやシア自身で解決するし、できない場合は相談してくれるはずだ。

結婚式の準備で問題が起きているのならメイヤ達が気付く筈だし……。

「エル先生達の所へ行く前に、一度リース達と話をした方がいいか?」

手を止めず、仕事の書類にサインをしながら今夜やることを心のメモに書き込む。

問題がなければそれに超したことはない。

その時はリースとのんびり二人で酒精を飲みながら、たわいない話をすればいいだけだ。

たまには彼女と二人っきりでそういう時間を過ごすのも悪くない。

溜まった書類を片づけながら、自身の考えに満足する。

仕事を順調に片づけていると、扉がノックされた。

声をかけると、午前中警邏をしていたリースが顔を出す。

「リュートさん、今お時間よろしいですか? 実は少々込み入ったご相談があって……」

「もちろん。まだ昼休み中だし、リースのためなら仕事なんていくらでも後回しにするさ」

「嬉しいのですが、そんなことをしたら後でバーニーさんに怒られてしまいますよ」

執務室に入ってきたリースは、最初、暗い表情をしていたが、オレの冗談に笑みを零す。

まだギリギリ昼休みのため、仕事の手を止めても問題はない筈だ。

彼女にソファーを勧めて対面にオレが座る。

リースは警邏中も持っていたらしい一枚の封筒を取り出す。

「相談というのは……昨日、自国から手紙が届きまして……」

「手にあるのがその手紙?」

リースは気まずそうに頷く。

一体、手紙にはどんなことが書かれているんだ?

リースをここまで落ち込ませるなんて。

彼女は言いにくそうにやや躊躇いながら告げる。

「実は自国で姉様に関する問題が起きまして……」

「問題?」

「はい……脱走未遂が起きたのですが失敗して、結果、ララお姉様とお腹の赤ん坊と共に処刑すべきという派閥が優勢になってしまったのです」

「はぁッ!? だ、脱走未遂!?」

あまりに予想外の内容にオレは思わず声をあげてしまったのだった。