軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第422話 故郷に錦を飾る?

――時間は魔人大陸からの帰還まで遡る。

受付嬢さん問題を片づけて魔人大陸から、新・純潔乙女騎士団本部がある獣人大陸へ帰還すると、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 外交部門担当のミューアが待ち構えていた。

彼女はこちらをからかうような笑みを浮かべ報告する。

「リュートさんから任されていた案件――アルジオ領ホードを PEACEMAKER(ピース・メーカー) の領地として無事切り取ってきましたわ」

受付嬢さんのインパクトが強すぎて忘れていたが、『ランス天神化事件』の賠償として孤児院がある領地を切り取ってくるよう彼女に依頼していた。

さすがに肉体的・精神的疲労は無視できずまともな話し合いが出来ないため、簡単に礼を告げてから詳細は後日となった。

そして、翌日。

会議室に PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバーとミューアが集まる。

シアは護衛メイド長らしく、どこか楽しげにお茶を配り歩いていた。

ブラッド家ではメルセさんにお株を奪われていたため、鬱憤が溜まっていたらしい。

一通り配り終えたところで、オレの口から今回の一件の詳細を伝える。

詳細と言っても『なぜ大国に喧嘩を売ってまで、孤児院のある領地をもぎ取ったのか?』という理由説明だ。

以前、ランスが天神化し世界中から魔力を奪い、オレ達に縁がある人々に刺客を放った。

そうなるまでは孤児院にはギギさんとタイガが居るため、何が起きても大丈夫だろうと楽観視していた。

結果、孤児院を危険にさらしてしまう。

誰一人死ななかった、犠牲者が出なかったのはただ運が良かっただけである。

普通は全滅していただろう。

今後、このようなことが無いとは限らない。

だから、各種現代兵器&兵士を配置するため、大国に喧嘩を売ってでも領地を得ることにしたのだ。

最初は勝手に兵器を置くことを考えた。

しかし現実的ではない。

領主からすれば、侵略するための準備にしか見えないだろう。

いちいち許可を取ろうとしても、その度に誰かが邪魔をしてくるのが目に見えている。

だったら最初からその場所を合法的に自分達のモノにしたほうが早かったのだ。

メルティア王国は PEACEMAKER(ピース・メーカー) に多々借りがある。

始原(01) との関係、『黒毒の魔王』問題、ランス天神化や兵士が孤児院を狙ったなど――あげればきりがない。

とはいえ、領地を他者に与えるのは屈辱以外の何物でもない。

いくらメルティア王国が PEACEMAKER(ピース・メーカー) に対して後ろめたい事が多くても、早々首を縦には振らないだろう。

そこで交渉が得意なミューアに一任したのだ。

彼女は無事、役目を終えて戻ってきた。

正直、これほど早く話が纏まるとは思っていなかったが。

一通りの説明を終えると、ミューアが肩をすくめる。

「たいしたことありませんわ。リュートさんが仰る通りメルティアはこちらに多大な借りがありますから。ただ手続きの問題があって、現時点で私達のモノという訳にはいきません。ですが、好きに防衛準備を整えていいとの言質はとっているので、問題はありませんわ」

「さすがミューア。なら後は誰がどの兵器を持って孤児院があるホードに行くかだが……」

オレは咳払いを一つして、皆に真剣な表情で向き直った。

「ここはやはり団長としてオレ自身が向かおうと思う。どうだろうか?」

『絶対に反対!』

その場に居る全員から『反対』という返事をされる。

まさか一人も賛成するものがいないとは予想外だ!

オレは慌てて弁明しようとしたが、それより早く皆が反対意見を述べる。

「団長であるリュートくんが、孤児院に戻ってどうするの? 本部を疎かにしちゃ駄目だよ」とスノー。

『スノーお姉ちゃんの言う通りです!』とクリス。

「リュートさんが孤児院の防衛準備に取り掛かったら本部の事務作業等が止まってしまいますから、現実的に考えて無理ですよ」とリース。

「団長が真っ先に街を出て行ってしまったら、ココリ街の住人の皆さまは、自分達が見捨てられたと考えてしまうでしょう。残された団員達が説明や対応に苦労するだけで、利点がないと思います」とココノ。

「ですわね。避けられる問題や軋轢をわざわざ作り出す意味はありませんわ。折角、少なくない時間を掛けてココリ街住人の皆さんの信頼を得たというのに。それをわざわざ捨てるようなマネをするのは感心しませんわ」とメイヤが答えた。

正直、メイヤだけにはその台詞を言われたくない。

誰のせいで余計な問題に巻き込まれたと思ってるんだ……。

だがツッコミを入れている場合ではない。

このままでは孤児院に滞在する部隊から外れてしまう。

オレは咳払い一つして反論する。

「皆の気持ちは分かった。しかし団長として、 軍団(レギオン) の責任者として、まず自分自身が隊員達の範になるよう孤児院へ行くべきだと思うんだ。それに故郷であるホードに戻って、孤児院に居る子供達を元気づけるためにも名を上げた姿を見せてやりたいんだ」

「リュートさんは十分世界的に名を上げてますから、孤児院の子供達もそれは理解していますよ。なのでエルさんやソプラ、フォルンの側に居たいからって、ホードに行こうなんて思わないでくださいね?」

こちらの狙いをミューアが完全に潰してきた。

オレが反論を考え口にするより先に、彼女が話を進める。

「私としてはホードに滞在する人員を固定するのではなく、団員達を交代で行かせるべきだと考えいます。そちらの方が常に緊張感があり、遠征の訓練、指揮する幹部候補生のいい練習にもなると思いますから。もちろん、リュートさんはお留守番ですが」

ミューアの意見に皆が賛成する。

特に安全に人材育成の場が出来ることに喜んでいた。

兵士はある程度鍛えれば一定水準に達するが、指揮官は教えだけではなく場数を踏まなければ成長しない。

特に多数の部下を扱うことに関してはだ。

そのための場としてエル先生が居る孤児院は最適といえる。

ミューアが皆の反応を確認しながら話を進めていく。

「あちらも受け入れ態勢はまったく出来てませんから、まず現地で滞在する人数は50人。持ち込む各種武装は対戦車地雷と大型特殊武器を除くほぼ全て」

対戦車地雷は、いくら人が乗っても爆発しないとはいえ孤児院周辺に埋めるのはまずい。

のどかな田舎の風景が一転、悲しみと悲哀の漂う戦場跡地のような状態になってしまう。

マジで洒落にならない。

また大型特殊武器とは、『 Bunker(バンカー) Buster(バスター) 』や『クモクモ君あるふぁ2』のことだ。

どちらもまだ研究中の兵器のため、持ち込んでも意味がない。

それら兵器を除いても、他国と戦争しても勝利する兵士&武装である。

もし PEACEMAKER(ピース・メーカー) に土地の権利がなかったら、文句を付けられてもしかたないレベルだ。

エル先生達が住まう大切な地を守護するなら、これでも足りないぐらいだが。

やはりここはオレ自身が陣頭指揮を執り、率先して守護しなければ!

「各種兵器を持って行くなら、整備とチェックをする人員が必要だろう? ルナは研究所に篭もりっきりだから、代わりにオレが担当してもいいんだが」

「大丈夫です。基本的な整備に関してはホードに行く人員に覚えてもらえますから。もしそれでも問題が発生した場合はすぐに連絡をすればいいだけです。何よりそれらを含めての訓練、勉強ですから」

ミューアに笑顔で反論される。

彼女の指摘通り、その時、自分の頭で考えてどう動き問題を解決するかが勉強になる。

近くにエル先生&ギギさんも居るから、オレ達と離れていても早々大きな問題にはならないだろう。

故に勉強地としては最適な場所でもある。

反論のしようがない。

「な、ならせめて一度は話をしに孤児院に行かなくちゃならないだろ? その際、オレが代表として話をするから。 軍団(レギオン) トップとしてそれだけは譲れないからな。後、タイガの件もあるし……」

『タイガの件』で場が一気に暗くなる。

エル先生やソプラ、フォルンに会いたい一心で口が滑ってしまった。

口にしたオレ自身、後半は頭が冷え呟きレベルで小さくなってしまう。

現在、獣人種族、 虎族(とらぞく) 、魔術師S級、タイガ・フウー、 獣王武神(じゅうおうぶしん) は客室に引きこもっている。

受付嬢さんとの最終決戦前、ギギさんに告白。

予想通り振られてしまった。

そして戦いがロン・ドラゴンの告白により、こちらの想定以上にあっさりと片づいてしまう。

結果、決死の思いで告白したタイガが、ババを引いた形になってしまった。

連れてきた手前、申し訳なさすぎてかける言葉がない。

せめてもの償いとして、本部客室に引きこもってもいるのを黙認していた。

タイガが獣人大陸の新・純潔乙女騎士団本部で預かっていることは、元黒メンバーを送り届けた時、エル先生達に伝えている。

居場所が判明しているのと、オレ達が預かっているので身元の心配はしていないだろうが……。

「リュートくん、タイガちゃんをなんとか元気にしてあげられないかな?」

スノーが心配そうな声音で告げてくる。

「オレ自身、元気にしてやりたいのはやまやまだが、どうすればいいんだ?」

『やはり失恋の傷には新しい恋が一番だと思います!』

クリスが珍しくドヤ顔でミニ黒板を掲げてきた。

彼女自身すでに結婚しているが、親しい者達は基本独身である。

彼女達に混じって恋愛話などをしているから、そんな答えが出たのかもしれない。

「クリス……言いたいことは分からなく無いが最低でもギギさん並の人物じゃなきゃ駄目だろ? そんな人物、早々居るか?」

「アームスさんはどうですか?」

「アームスさんか……」

「アームスさんですか……」

リースの言葉にオレ&メイヤが思わず遠い目で呟く。

ケンタウロス族、魔術師Bプラス級、アームス・ビショップ。

カレンの兄で、やや特殊な趣味を除けば基本的には好青年だ。

しかし、受付嬢さんと対面して、精神的にやつれてしまってタイガの夫としては無理だと思う。

「アームスさんは今精神的に色々大変だから……無理だと思うぞ」

「では、また旦那さまや帝国の方々にお願いするのはどうでしょうか?」

ココノが提案する。

悪くはないが……。

「つい最近、受付嬢さんとの結婚のためにお願いしたばかりだろ? またすぐって言うのは頼み辛いかな。後、受付嬢さんの一件が広がっているだろうから、受けてくれる人物がいるかどうか……」

「恐らく誰一人いないかと思います」

オレの言葉にシアが同意する。

冷静な彼女が断言するならきっとそうなるんだろうな。

オレが言えた義理じゃないが、タイガは受付嬢さんとの戦いに巻き込まれギギさんに告白して振られ、新しい恋を探そうにも受付嬢さんの一件で相手がいない。

タイガの恋に全て受付嬢さんが立ちふさがっている状態だ。

受付嬢さんはタイガを『受付嬢さん2号』にしようとしているのだろうか?

「あっ……」

「? どうかしたのリュートくん?」

「い、いやなんでもない。と、とりあえずタイガの一件は置いておいて、エル先生達に話を通すためにも一度はオレが行くから。ではそういうことで」

やや強引に会議を打ち切る。

皆は『仕方ないな』と微苦笑を浮かべつつ、エル先生への挨拶の件は認めてくれた。

オレは皆の視線を受けつつ、喜びよりも戸惑いを覚えていた。

原因はタイガの結婚相手を思いついてしまったからだ。

一人だけ彼女に相応しい相手が居た。

その相手とはエル先生&ギギさんの息子である『フォルン』だ。

彼ならタイガもある意味文句は言わないだろう。

逆光源氏計画。

タイガは知り合いの中では常識人のため早まったマネはしないと思いたいが……。

追いつめられたら何をするか本人でも分からないものである。

受付嬢さんがその典型だ。

なので口に出さず心の内に留める。

赤ん坊の頃からフォルンの選択肢を狭めるようなことはないようにしたい。

「リュート様、少々よろしいでしょうか?」

フォルンの将来について考えていると、メイヤが声をかけてくる。

彼女はハッとした表情をして、モジモジと頬を染めながら改めて言い直す。

「貴方様、今お時間よろしいでしょうか?」

どうも夫婦であることを強調したいらしい。

ある意味、こういう面倒なところも可愛いのだろうか?

「あー、とりあえず大丈夫だけどどうしたんだ?」

「実は折り入ってお願いがありまして――って、貴方様! どうしてそんな嫌そうな顔をするのですか!」

「だって……メイヤのお願いって絶対に面倒事じゃないか」

トラブルメーカーであるメイヤの『お願い』など、絶対に問題が起きる。

つい最近、受付嬢さん問題で尻ぬぐいをしたのだから、当分はのんびりさせて欲しいものだが……。

一方、メイヤは人差し指を得意気に左右へと振る。

「面倒事なんてとんでもありませんわ。わたくし、皆様が幸せになれるアイデアを出すつもりですもの!」

ますます胡散臭い。

オレは訝しげな瞳でメイヤを見続ける。

彼女はそんな視線など気にせず、堂々と胸を張り断言した。

「その幸せになれるアイデアとは――」

「アイデアとは?」

「貴方様とわたくし達全員の結婚式を開きませんか?」

メイヤの言葉に退出しようとしていた他嫁達が目を輝かせる。

どうやら会議はまだ終わらないらしい……。