軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

軍オタ9巻発売記念なろう更新SS スノーの評価

獣人大陸、ココリ街。

この街には五体大陸に名を轟かせている 軍団(レギオン) が本部を構えている。

軍団(レギオン) の名は、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 。

そんな PEACEMAKER(ピース・メーカー) の下部 軍団(レギオン) 、新・純潔乙女騎士団団員2名が、街の警邏をおこなっていた。

動きやすい戦闘服姿で、肩からはスリングを使って 戦闘用(コンバット) ショットガンのSAIGA12Kを下げ、弾倉には非致死性 装弾(ショットシェル) が入っている。

初期の頃はAK47を警邏に持たせていたが、威力や貫通力が強すぎたため、現在は非致死性 装弾(ショットシェル) が使えるショットガンに切り替わったのだ。

新・純潔乙女騎士団も団員が100人以上増えたため、全員分を用意するのはさすがに無理で一人一丁ではない状況だが。

時間は昼時を過ぎた午後。

住人達も昼食を摂り終え、再び緩やかに仕事を再開し始めた時間である。

昼を食べた後で、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) のお膝元のため治安がいいせいもあり、街全体が緩んだ雰囲気に包まれていた。

その空気は街を見回る団員達にも伝染する。

「ふわぁ~ニャ。お昼ご飯を食べた後の警邏は眠くなるニャ。とくにこんなぽかぽか陽気だとなおさらニャ」

語尾に『ニャ』を付けるのは、獣人種族、 猫人(ねこびと) 族のアリーシャ。

猫人族というだけあり、猫の獣人で猫耳と尻尾が特徴である。

彼女は言葉通り、眠そうな目で警邏をしていた。

「それにうちの 軍団(レギオン) が守護する街で、悪さしようなんて考えるアホはいないから何も起きないし、平和過ぎて暇ニャ」

「……同意はするけど口に出すの止めてよ。街の人達に聞かれるでしょ。それで苦情が本部に入って連帯責任で怒られたりしたらどうすんのよ」

アリーシャの隣を同じように歩く人種族のミラが、迷惑そうな顔で釘を刺す。

彼女は同世代の中でも背が低く、童顔で胸も小さい。栗毛の髪をお下げに結んでいるためか、見た目以上に若く見られる。

正直、彼女に睨まれてもあまり怖くない。

2人は純潔乙女騎士団へ同時期に入団した。

所謂、同期である。

性格、波長も合うため 軍団(レギオン) でも特に仲が良い。

警邏は基本的に二人一組でおこなうが、仲が良いからといって好きな者同士で組むことができるわけではない。

人数が増えたことで警邏をおこなう際、大まかに3つの組に分けられた。

午前、午後、夜と。

彼女達は今回、午後組でたまたまローテーションが重なり合ったため、気心しれた二人で警邏をしているのだ。

昼食後で、街の治安は良く、住人達の間にも弛緩した空気が流れている。

さらにアリーシャ、ミラは元純潔乙女騎士団時代から勤めている古参。警邏には慣れており、身のこなしやチェックする場所も全て把握している。

そのせいか特にアリーシャは気を緩めているようだ。

アリーシャはミラの苦言を笑い飛ばす。

「ニャははっは、ミラは真面目だニャ。ウチらの愚痴なんて誰も聞いてるわけないニャ。それに暇なのは平和な証拠ニャ。いいことニャ」

「言いたいことは分からなく無くないけど、やっぱりちゃんと真面目にお仕事はしないと駄目だよぉ」

「す、スノー隊長!?」

二人の会話に突然、背後から割って入る人物が居た。

雪のような銀髪をポニーテールに結び、獣耳が揺れている。

肌も髪の毛に負けないほど白く、瞳は大きくて真っ直ぐアリーシャとミラを見つめていた。

背丈はアリーシャに比べてやや低く、なのに胸は彼女より大きい。

雪の精霊のように美しく、また同時に可愛らしさを兼ね備えている美少女だ。

同性であるアリーシャとミラですら、嫉妬心など抱けないほどの魅力を放っている。

彼女こそ PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長、リュート・ガンスミスの妻、スノー・ガンスミスだ。

スノーは獣人種族で、北大陸に住む希少な白狼族と呼ばれる一族でもある。

魔術師Aマイナス級で、あの魔術師S級『氷結の魔女』ホワイト・グラスベルから、『氷雪の魔女』という二つ名を授かったほどの実力者だ。

リュートとは赤ん坊の頃、同じ孤児院前に置かれていた。

そのためリュートと最も付き合いが長い少女でもある。

スノーも二人同様、午後の警邏当番だ。

肩にはSAIGA12Kを下げている。

今回のスノーの相方は新人らしく、視界の端で居心地悪そうに遠目からこちらを見ていた。

スノーは可愛らしく膨らませていた頬を萎ませ、魅力的な微笑みを浮かべる。

「暇なのは確かに平和な証拠だけど、それでわたし達の気が緩んじゃ、いざという時動けないでしょ? だからちゃんとお仕事しないと! もう少し頑張ろうね」

「は、はい! スノー隊長、失礼しましたニャ!」

「彼女にはよく注意しておきますので!」

二人が背筋を伸ばし、やや上擦った声で返事をする。

スノーも二人の態度に満足したのか、笑みを浮かべたまま相方と合流し再び警邏へと戻っていった。

アリーシャとミラは、スノーの背中が雑踏に消えるまで背筋を伸ばしたまま見送る。

彼女の姿が見えなくなったことで、ようやく緊張を解く。

「――ぷっは! こ、怖かったニャ! 怖かったニャ!」

「だから、真面目にやろうって言ったじゃない! ほら、さっさと警邏を再開しよう!」

「にゃーすまんニャー。真面目にやろうニャ」

そして再び、二人は警邏を再開する。

暫し歩いてから、先程のスノー登場について語り出す。

「……ミラ」

「なによ」

「さっき、スノー隊長が近付いて来たのに気付いたニャ?」

「まったく気付けなかったわよ。いくら街中で気が緩んでいたからって……っ」

「ウチもニャ……自信なくすニャァ」

アリーシャとミラは古参の団員なため、厳しい訓練も修羅場も乗り越えてきた。

特に初期は人数が足りず、『全ての技能を団員に叩き込む』ことになっていた。

人数が増えて、適正によって技能を習得させるようになったのは、つい最近の話である。

故にそこらに居る冒険者と比べて、彼女達は実力があると自負していた。

なのにスノーが背後に接近して、声をかけてくるまで気づけなかった。

もしスノーが敵対者だったなら、二人とも何もできずに屍を晒していただろう。

アリーシャは獣人種族で人種族に比べて五感が鋭いため、ミラ以上にショックを受けていた。

「……でも、スノー隊長は間近で見ると本当に綺麗ニャ」

「あー、分かる。あれだけ綺麗だと、同性でも嫉妬するより見惚れちゃうよね」

「強くて綺麗で可愛いのに、面倒見もいいニャ」

「リュート団長が不在の時は、軍団を纏めてくれるし、頼りになるから格好いいんだよね」

二人は警邏をしながら、スノーの評価を口にする。

戦闘技術が高く、女性が見惚れするほどの美貌を持ち、性格も穏やかで頼りになる人物。

この評価はアリーシャとミラだけではなく、団員達皆の評価だ。

スノーを一通り褒めあうと、二人は深い溜息をつく。

「あれで匂いを嗅ぐ悪癖さえなければ完璧なのに……」

「ニャー……」

アリーシャとミラは再び深い溜息を漏らす。

「初対面で団員の匂いを嗅ぐのは……まぁギリギリありだと思うけど」

「ウチも初対面で挨拶した時、嗅がれたニャ。あれは最初、驚くけどスノー隊長の顔を間近で見れて役得といえば役得ニャ」

「でも訓練で汗と泥、汚れまみれのリュート団長の匂いを喜々として嗅ぎにいくのはどうかと思うわ」

「ニャー……」

二人はその時のことを思い返す。

「匂いを嗅ごうとするスノー隊長対嗅がせないように逃げ回るリュート団長。内容はくだらなくても、攻防技術は高度過ぎて見ていていい勉強になったわ」

「団長は魔術師でもないのに、相手の進路と行動、心理まで読み切って逃げ続けていたのニャ。対魔術師戦の参考になったニャ」

「それだけじゃないわ。団長は目や動きでフェイントを入れて、最小の動きで回避してたのよ。フェイントを入れることで行動の幅を増やすなんて流石としかいえないわ」

アリーシャとミラは感心しながら話を続ける。

「スノー隊長も魔術師として凄かったニャ。最終的には団長に傷を負わせず、拘束したんだからニャ」

「確かに並の魔術師じゃ、団長を無傷で捕縛なんて不可能よね。もちろんスノー隊長が相手を知り尽くしているからっていうのもあるけど、魔術と体術を組み合わせるとあんなに凶悪になるんだって勉強させてもらったわ。A級以上は戦おうとせず逃げろっていう団長の教えが凄くよく分かったわ」

「戦っている内容は凄くくだらないけどニャ」

「本当に心底くだらないけどね。無駄に能力が高いから参考になるんだけどね。本当は参考にしたくないんだけど」

「あぁー分かるニャ、その気持ち」

改めて二人は溜息を漏らす。

「あの悪癖がなければスノー隊長は完璧なのに」

「ニャー」

二人はスノー・ガンスミスの評価を互いに口にしながら、最後まで真面目に警邏を続けたのだった。