軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

連続更新SS ココノの射撃練習と空薬莢の再利用

「キャァ!」

午後、射撃訓練場に発砲音と妻、ココノの可愛らしい声が響く。

オレは背後からココノを支え、彼女の握っていた『S&W M10 2インチ』リボルバーを片手で支えた。

「大丈夫か、ココノ?」

「は、はい、ありがとうございます、リュートさま」

「とりあえず無事に全弾撃てて良かったよ」

「緊張しました」

彼女は手にしていたリボルバーをオレに預けると、背後を振り返りぎこちなく微笑む。

今日はココノとの休日が重なったので、2人っきりで発砲練習をおこなっていた。

別にココノが前線で銃器を振り回すためではない。

いざという時の護身のため、慣れてもらおうと思ったのだ。

『S&W M10 2インチ』リボルバーはスノーからの借り物である。

オレはホルスターにリボルバーをしまい、ココノと一緒に的へと向かう。

彼女の発砲した弾がどこへ当たったのかの確認をするためだ。

「あうぅ……全然当たってません」

ココノは落ち込んだ様子で、的を確認する。

的は魔術で土を固めた代物で、6発中、1発が端に当たっていた。

それ以外は全て上へと外れていた。

ココノは感心半分、自身には難しいと実感した感情半分の溜息を漏らす。

「射撃はわたしが想像していた以上に難しいんですね。撃つ前はそれなりに当てられると思っていたのですが……。クリスさまがバンバン当てていたので、こんなに難しいとは思いませんでした」

「いやいやクリスは例外中の例外だから。あれを基準にしちゃ駄目だって」

オレは微苦笑しながら、顔の前で手を左右に振る。

クリスは完全に例外だ。

いくら命中精度の高い狙撃銃を使っているからといって、数km先、見えない的、高速移動する小さい標的、暗闇だろうがヒットさせるのだ。

神業的射撃技術を持つクリスを参考にするのが間違っている。

「ココノは落ち込むほどじゃないよ」

「本当ですか?」

「本当だって、ラヤラに比べたら圧倒的に才能があるよ!」

「ラヤラさまと比べたらって……それこそ例外中の例外ではないですか」

珍しくココノに突っ込まれる。

オレは思わず苦笑してしまう。

ラヤラは『呪われているんじゃないか?』と思うほど、攻撃が下手だ。

今回のココノのように、自信をつけさせるためリボルバーで射撃の練習をおこなったのだが――弾丸がなぜか発砲後、真後ろに飛んだり、不発を連発した。

あまりの結果に、練習に付き合ったオレ自身がドン引きしたほどである。

今ではいい思い出ではあるが。

「でも、ココノの射撃はそこまで悪くないよ。初めて銃を撃つ人はどうしても上部に弾が集中するものだしね」

「そうなのですか?」

前世、日本で暮らしていた時、銃器雑誌で海外の射撃場でインストラクターを務めていた人がコラムを書いていた。

曰く、初心者は発砲音、衝撃に驚き、つい銃器を反射的に上へとずらしてしまう。

結果、弾丸は的の上部に集中するらしい。

某ゲーム漫画でも、緊張すると人は技を入れる際、レバーを上に入れてしまう云々と書かれていた。

恐らくそれと同じことなのだろう。

「だから、ココノも気にせず慣れていけばいいさ。最近、リボルバーはスノーしか使っていないから、銃弾が余り気味だしね」

「余り気味ですか……あのリュートさま、発砲した後の空薬莢って捨てるだけなのでしょうか? 余っているとはいえもし捨てているだけなら、何かに再利用できないでしょうか? ただ練習のために撃つのは心苦しいので」

彼女の言葉に思わず目を丸くしてしまう。

まさかココノがそんなことを気にするとは……。

いや、宗教関係者だから『もったいない』精神は普通なのか?

とりあえず、彼女の誤解をとくためオレは口を開く。

「大丈夫だよ、ココノ。撃った後の空薬莢は捨てたりせず、再利用して使っているから。だから、ココノは心配せずがんがん練習で撃っても大丈夫だよ」

「そうだったんですか! 失礼しました。素人が口を出してしまって……」

「気にするなって、むしろ知らなくて当然だよ。それが普通なわけだし」

オレの言葉に安堵したのか、ココノは照れ笑いを浮かべた。

彼女の笑みに釣られて、オレも口元が緩む。

次にココノは純粋な疑問の表情を浮かべて、首を傾げた。

「でも再利用って、普通にそのまま流用するのですか? それとも何か特殊な方法を使うのでしょうか?」

「うーん、一言で説明するのは難しいんだが……よし! 折角だし、空薬莢の再利用について説明しよう」

どうせ今日は休みだ。

妻の疑問に付き合うのも悪くない。

オレの言葉にココノが笑顔で同意する。

「はい、是非お願いします!」

彼女の元気な返事を聞いて、オレは笑み零しながら空薬莢の再利用について話をした。

空薬莢を再度、使えるようにすることを『リローディング』という。

リローディングの利点は、『空薬莢を再利用するため、一発当たりの単価が新品に比べて下がる(だいたい半額)』、『自分好み、銃器にあった 弾薬(カートリッジ) を作り出すことができる』だ。

オレ達の場合、魔術液体金属と魔力があるため、前世地球にあった工作機具を使う必要がない。

ルナなど複数の空薬莢を纏めて魔術液体金属に入れて、一息に『リローディング』してしまう。

完全記憶能力を持つ彼女だからこそできる芸当だ。

オレやメイヤの場合は、一つ一つ手に持ち詰め直さないといけない。

「リュートさま、空薬莢を再利用することができるのは分かりましたが、もしかしてずっと使い続けることができるのですか?」

「まさか。やっぱり再利用できるとはいえ、薬莢にも寿命はあるんだ」

空薬莢を『リローディング』していると、だんだん薬莢が伸びてくる。

これは使うたびに発射薬の爆発圧力によって薬莢本体の金属が伸ばされるためだ。

なので再利用し続けると、いつしか 薬室(チェンバー) に入りきれないほどの長さにまで薬莢が伸びてしまう。

では、 薬室(チェンバー) に入りきれないほど伸びてしまったら寿命なのか?

答えは『NO』だ。

実は伸びた空薬莢を削ってサイズを戻す機具も存在している。

つまり、伸びた空薬莢をごりごりと削ったりカットし、 薬室(チェンバー) に入るサイズに直して再利用するのだ。

なんという力業……。

こうしてサイズを戻し、繰り返し使う。

圧力で薬莢金属が伸び、削り、伸び、削り――を繰り返すウチに、本体の金属が薄くなって破れてしまう。

こうなったら空薬莢の寿命である。

10回以下ならまず空薬莢が寿命を迎えることはない。

それ以上になるとモノによってばらつきがあるため断言できないとか。

ココノは『再利用し続けると空薬莢が破れてしまう』という話を聞き、目を丸くする。

同時に新しい知識を得て感心もしていた。

「使い続けると空薬莢が割れるなんて知りませんでした……。リュートさま、面白いお話を聞かせて頂きありがとうございます」

「オレもココノと話が出来てよかったよ。普段、日常の話はしていても、銃器関係の説明ってしないから。とても新鮮だったよ」

「わたしもリュートさまの専門分野のお話が聞けて嬉しかったです。また少し、リュートさまを知ることができました」

ココノはニコニコと心の底から嬉しそうに、笑みを零す。

ココノ達とは日常会話をするが、銃器&兵器関係のマニアックな話はメイヤかルナにしか殆どしていない。

別に守秘義務があるからではなく、単に話すタイミングがなかったのと、彼女達が聞いても面白い話ではないと考えていたからだ。

昔、子供の頃、魔術液体金属がどれほど素晴らしいモノかをエル先生に話したが、興味がなかったので軽く流されてしまった。

これがトラウマではないが、以来、興味を持たれない相手にマニアックな銃器&兵器関係の話をしなくなった気がする。

これから機会があれば、スノー達ともこういう話をした方がいいのかもしれないな。

日常会話だけではなく、オレ自身がどんなことに興味を抱いているかの話をすることが、もしかしたら夫婦仲を維持するための秘訣になるかもしれないからだ。

「さて、それじゃ話も終わったところで、射撃練習の続きをするか」

「はい、よろしくお願いします!」

ココノは元気よく返事をする。

オレは彼女のやる気がある声に思わず笑みを作ったのだった。