軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第415話 ホワイトさんの捕獲

怪奇現象――ではなく、受付嬢さんの意外な登場に驚きつつも、魔術師S級のタイガ・フウーと、元黒メンバー、ノーラ、エレナ、メリッサを連れて新型飛行船ノアへと戻る。

そしてそのまま逃げるように獣人大陸、ココリ街へと向かう。

空の上で高速移動するノアなら、いくら受付嬢さんでも乗り込むことはできないはずだ……たぶん、きっと。

しかし、受付嬢さんの突然の登場には驚いたが、悪いことばかりではない。

彼女が突然姿を現してくれたお陰で、タイガは失恋を忘れるほど驚愕し、ある意味立ち直っていた。

……今度は失恋から、受付嬢さんの恐怖で潰れないか心配だが。

とにかく、無事にココリ街本部へと辿り着く。

本部に戻ると、まずタイガ達の寝床へと団員達が案内する。

現在、客室が少ないため彼女達は一塊でいてもらうしかない。

嫁達は休ませ、オレは大規模遠征の手続き準備に取り掛かる。

全員で行きたいところだが、100名以上にいる団員を乗せるスペースは無い。

一度の移動で運べるのはオレ達を含めて、50人がせいぜいだろう。

他飛行船では、期日まで移動するのは不可能だ。

また一度、人員を魔人大陸に戻し、旦那様が集めてくれているだろう婿候補を再度連れていかないといけない。

必要な書類を書き終え、会計担当の3つ眼族のバーニー・ブルームフィールドへと提出するようメイドへ回す。

今回の予算は団長権限で上限無しの無尽蔵だ。

命&世界の危機に金を惜しんでなどいられない。

一通りやるべき事を終えると、次に人員確保へと向かう。

メイヤが今回の元凶だが、もう一人、事態を大きくした人物が本部に滞在している。

その責任を取ってもらうため、オレは彼女を執務室へと呼び出したのだった。

「団長さん、急なお話とは一体なんでしょうか?」

執務室に姿を現すと、ほやほやした声音で質問してくる。

白い髪を一本の三つ編みに編み上げ結び、目を閉じ呼び出された意味が分からず不思議そうに小首を傾げる。

髪だけではなく肌や衣服、靴、手に持つ杖まで真っ白な女性で、華奢な体躯と白い印象で儚げにパッとみとても儚く見える人物だった。

だが実際はこの世界で現在は4人しか存在しない魔術師S級で、スノーの師匠でもある。

彼女こそ妖精種族ハイエルフ族、『氷結の魔女』、ホワイト・グラスベルだ。

「…………」

彼女を連れてきた護衛メイドのシアに目配せして退席してもらう。

これでホワイトと二人っきりで話ができる。

別に彼女と個人的に話をするため、シアに退席してもらった訳ではないが……。

「実はかなり急な話で申し訳ないのですが、準備ができしだい一緒に魔人大陸へ向かってもらいませんか?」

「はぁ…… 軍団(レギオン) でお世話になっている身ですから、団長の命にはしたがいますが、私を動かすほどの何かがあったのですか?」

ホワイトさんの疑問は当然である。

彼女は魔術師S級。

天神状態のランスなどの一部例外を除き、この世界最強の魔術師だ。

そんなホワイトさんを動かそうというのだから、何か問題が起きたと考えるのが普通である。

「はい、ちょっと自分達では対処しきれず、是非ホワイトさんのお力を借りたいんです」

「分かりました。僭越ながらお手伝いさせていただきますね」

「かなり面倒な事態になっているんですが……本当にご協力頂けますか?」

「任せてください。弟子のスノーちゃんのためにも頑張ります」

「本当の、本当にですか?」

「本当の、本当ですよ。ドンと魔術師S級、『氷結の魔女』に頼ってください」

ホワイトさんは微笑みを浮かべ、自身の胸を叩く。

言質は取った。

オレは一度咳払いをして、竜人大陸で起きた出来事を説明した。

一通り説明を終えると――ホワイトさんが逃げ出す。

手にした杖も使わず、全力で執務室を出る。

まさかここまで臆面もなく逃げ出すとは思っていなかったぞ!?

『キャァッ!?』

しかし執務室から逃げ出し、廊下を移動中、ホワイトさんの悲鳴が聞こえてくる。

遅れてオレが廊下に出ると、彼女は目を押さえて蹲っていた。

「うぅぅ、目が、目が……ッ」

「どうやら上手くいったようだな」

視線の先にはシアを含めた護衛メイド達が廊下を塞いでいる。

彼女達の手には 特殊音響閃光弾(スタングレネード) が握られていた。

ホワイトさんの能力はスノーや団員達から話を聞いていたため、いざという時の対処法を確立しておくのは難しくない。

彼女の力は魔術+精霊の加護による絶対零度クラスの凍結魔術で、さらに悪意ある攻撃を自動で防御してくれるモノだと知った。

だから 特殊音響閃光弾(スタングレネード) での足止めと無力化を思いついたのだ。

いくら自動で防御できるとはいえ、光の速さに対処するのは不可能だと踏んでいたが、どうやら上手くはまったらしい。

オレは悠々と目を押さえて、廊下に座り込むホワイトさんへと近付く。

「ホワイトさん、なに逃げようとしているんですか。協力してくれる約束でしょ?」

「物事には限度があります! なんであの子と敵対するようなマネをしたんですか! 敵対しようなんて考えは捨てて、婚約の破棄をしましょう! それが一番平和に問題が片づくじゃないですか!」

「ご指摘通り、今回の一件はメイヤに責任があります。ですが、ホワイトさんにも責任の一端はあるんですよ」

「わ、私に責任なんて……そんな……」

彼女の自身、理解しているため否定できず黙り込む。

オレは未だに座り込むホワイトさんを見下ろし告げる。

「ホワイトさんが受付嬢さんに余計なことを言うから、彼女は魔物大陸奥地まで行ってパワーアップした上、まーちゃんなんてペットを連れてきたんじゃないですか。受付嬢さんの師匠なら、弟子の暴走をちゃんと止めてください!」

「うぅぅ……」

ホワイトさんは何も言い返せず、目元に涙を浮かべ儚げにこちらを見上げてくる。

何も知らない男性なら、保護欲に襲われ騙されていただろう。

だがオレは容赦せず、指を鳴らす。

「シア、ホワイトさんをノアへ連行しろ。逃げられないように魔術防止首輪をつけて、見張りを立てて絶対に逃走できないようにしておくんだ」

「かしこまりました」

「うぅうぅ……団長さんの意地悪、人でなし!」

「自分のおこないを棚に上げて何言ってるんですか……」

オレは両脇を護衛メイドに抱えられずるずると引きずられていくホワイトさんを見送る。

ホワイトさんをノアへ入れたら、他団員達も搭乗してもらい出発しなければならない。

受付嬢さんが定めた期限まで時間が無いためだ。

オレは溜息を一つして、すぐに移動を開始する。

次に向かうのは竜人大陸だ。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

新型飛行船ノアで、竜人大陸へと到着する。

ノアには新・純潔乙女騎士団の団員達が50人乗っている。

すし詰め――とまではいかないが、快適な旅とは言い辛い。

メイヤ邸で一時休憩しつつ、竜人種族、魔術師B級、リズリナ・アイファンの工房へと向かう。

対受付嬢さん用に、多脚戦車を受け取りに来たのだ。

まだまだ実戦投入できるレベルではないが、無いよりマシである。

相手が相手なので使えそうなモノは何でも使うつもりだ。

リズリナと顔を会わせて、現在の状況を伝え、多脚戦車は『ランスの力で復活し力を増大させた『黒毒の魔王』、魔術師S級に最も近いと謳われたロン・ドラゴンを一撃で倒す元 冒険者斡旋組合(ギルド) の受付嬢さんを相手にする』ためと説明すると、胡散臭そうな顔をされた。

ソファーに座っているリズリナが足を組み、目を細めながら問い返す。

「それ本気で言ってるの? ただの元 冒険者斡旋組合(ギルド) の受付嬢にあたしの『クモクモ君あるふぁ2』を使うつもり? しかも魔王やロン・ドラゴン陛下を倒したなんて……」

「あの人の脅威は実際に見ないと分からないからな……」

オレはリズリナとの認識の差に深い溜息をつく。

暴走中の受付嬢さんを一目見れば、リズリナも絶対に納得するのだが……。

見た瞬間心が折れて廃人化する可能性があるため、易々と見せられないのが問題だ。

そしてオレ達は、リズリナからの許可をもらい多脚戦車をリースの『無限収納』へと入れる。

メイヤ邸に戻ると、メイヤ邸のメイド達が仕入れた情報では未だにロン・ドラゴンは目を覚まさないらしい。

できれば彼も対受付嬢さんの戦力として参戦して欲しいのだが……。

参戦は絶望的だろうな。

オレは肩を落としながら、飛行船ノアは真っ直ぐ魔人大陸へと向かった。

PEACEMAKER(ピース・メーカー) vs受付嬢さん&まーちゃんとの戦争(仮)まで後3日。