軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第407話 祝! メイヤさん、結婚?

飛行船甲板。

ロンとの結婚を破棄後、オレは初めてメイヤ・ドラグーンと二人っきりで向き合う。

「りゅ、リュートしゃま……」

メイヤは決闘に受付嬢さんを呼び込んだことで、スノー達に酷く怒られていた。

呼び出しを受けたせいで、オレにも怒られると身構えているらしい。

微苦笑を浮かべ、まずは彼女の緊張をとくことにした。

「落ち着いてメイヤ。別に受付嬢さんを呼び込んだことを怒るために呼んだ訳じゃないよ。その件はスノー達にしっかりと怒られたんだろ? だったら、それ以上オレが言う事なんてないよ」

「リュート様!」

怒られないと知ると、メイヤは夜空にも負けないほど輝く瞳を向けてくる。

あまりにもあからさまな態度の変化に、思わず笑みを零してしまう。

「呼びだしたのは結婚についてなんだけど……。メイヤとロンの結婚は破談になったから、前にした約束『メイヤの婚約話が解決するまでお預け』という話を解除しようと思う」

「リュート様!」

「ただ今回は、結婚破棄をするためとはいえ、危険行為をした訳だから安易に結婚腕輪を渡すのもどうかと思うんだよ」

「りゅ、リュートしゃま……」

「とはいえ、約束は約束。しっかりと腕輪を渡すべきかとも思うわけで」

「リュート様!」

「でも、やっぱり……」

「りゅ、リュートしゃま……って、いい加減にしてくださいまし!」

珍しくメイヤがツッコミを入れてくる。

「ごめん、ごめん。メイヤの反応が可愛くてついからかいすぎたよ」

「わ、わたくしが可愛らしい!? リュート様に褒められるなんて大変嬉しく、光栄ですわ!」

先程までプンプンと怒っていたメイヤが、一転褒められると体全体を光り輝かせる勢いで喜ぶ。

咳払いをして、改めて彼女へと向き直った。

「とりあえず、メイヤ。結婚についてオレの素直な気持ちを伝えようと思う」

「りょ、了解しましたわ……」

真面目な空気が流れたので彼女も居住まいを正す。

互いに真剣に向き合いながら、オレは素直に気持ちを吐露する。

「メイヤと初めて会ったのは旦那様の兄弟達から、クリスと一緒に逃げてきた時だったよな」

「リュート様が、まだクリスさんの奴隷兼執事の時ですわね」

「懐かしいな。メイヤとの付き合いも随分長いんだよな。リースやシアより前なんだから……」

そう考えるとメイヤとは本当に長い付き合いになる。

あの時、彼女の支援があったからこそ、旦那様の兄弟達を倒し、奥様を救い出すことができた。

それから色々あった。

シアと出会い、リースの実家を助けに向かったり、ココリ街で黒達と戦ったり、北大陸でスノー両親&白狼族を救ったり、 静音暗殺(サイレント・ワーカー) を倒し、天神教を脅して最後はココノを嫁に娶ったりもした。

「あの後、メイヤが怒っている振りをして、竜人大陸に戻ったんだよな」

「怒っている振りではなく――いえ、なんでもありませんわ」

いいかけて、すぐに黙り込む。

ある意味、オレ達を騙し結婚腕輪を得ようとしたため何も言えないのだ。

オレは微苦笑をしながら話を続ける。

「あの時、スノー達に迫られたんだよ。『メイヤをどう想っているのか?』って。オレは彼女達に答えた。『メイヤのことが好きだ』って」

「り、リュート様!」

「ただ結婚したいほど愛しているかと言われると……当時はちょっと自信がないというか。自分の気持ちに対して、メイヤの愛が重いというか……」

「りゅ、リュートしゃまあぁ……」

至福の笑顔から一転、絶望の泣き顔になる。

「スノー達と重婚しているオレが言っても説得力は無いけど……やっぱり結婚は特別なことだから。病める時も、健やかなる時も――何があっても愛し続けることができるのか。相手が真剣なだけに、オレ自身中途半端な気持ちで向き合ってはいけないと思うんだ。だからオレは考え、考え抜いて――メイヤと結婚することに決めた。そして、腕輪を作ろうとしてランスに邪魔をされたけど」

最後の台詞で思わず肩をすくめてしまう。

あの時、ランスの邪魔が無ければメイヤに結婚腕輪を贈っていた。

しかし、あの邪魔がなければロンとの結婚問題を知らず、現在より面倒な事態になっていたかもしれない。

「そして、今回のロンとの決着を付けるため『ドラゴンの間』の決闘に受付嬢さんを連れてきたわけだが……スノー達は怒っていたけど、オレは逆に今回の件で、メイヤとの結婚する意識をよりかためたよ」

「ほぇ?」

予想外の返答に、メイヤが間抜けな声を漏らす。

「オレはメイヤのことが好きだし、愛している。そしてそれと同時に、受付嬢さんを呼んだり、やさぐれた振りをしたり、暴走して無茶をする危なっかしいメイヤの側に居ないといけないなと思ったんだ。メイヤの側にはオレが居てやらないとって」

オレはポケットに入れていた小箱を取り出した。

蓋を開くと、二つの腕輪が姿を現す。

一つはシンプルだが、もう一つは東洋竜のように細身のドラゴンが、自身の尻尾をくわえていた。

竜はもちろんメイヤの竜人種族をモチーフに、尻尾をくわえさせたのはウロボロスのように『永遠』を表現したデザインである。

「待たせたぶん、時間をかけて作らせてもらったよ。どうかオレと結婚して欲しい」

「リュートしゃまぁ! リュートしゃまぁ! リュートしゃまぁぁぁぁっぁぁッ!!!」

メイヤは涙を決壊したダムのように流し、胸に飛び込み泣き続ける。

長年求めてきた結婚腕輪をようやく差し出されたのだ。

感極まるのは当然である。

オレは首に腕を回し、泣き続ける彼女の頭や背中を撫でた。

メイヤが落ち着くまでずっと……。

「うん? メイヤ?」

「あふぇ……」

落ち着いた後、感動的に結婚腕輪を着けようとしたが――。

気付くとメイヤは感極まり過ぎて、絶頂したような表情で気絶していた。

結婚腕輪を渡そうとした相手が、感激し過ぎてアヘ顔で意識を手放していたなんて……。

この顔でダブルピースしたら、薄い本によく似合う感じの気絶顔である。

「ええぇ……」

感動的空気が一気に霧散する。

……正直、結婚腕輪を贈るのは時期尚早だったかもしれない。

いや、もしこれ以上遅れていた場合、喜び過ぎてメイヤの心臓が止まる可能性もあったのか?

歓喜の表情で気絶しているメイヤを抱えながら、ついそんなことを考えてしまう。

「……『意識を失うほど喜んでもらえてよかった』と前向きに考えよう」

オレは両腕でメイヤをお姫様抱っこで抱きかかえる。

結婚腕輪は彼女が目を覚ましたら、改めて渡そう――と、彼女を抱きかかえ船内へと戻った。

この時、オレ達はまだ知らなかった。

悲劇はまだ終わっていないことに。

底無しの絶望はまだ始まってすらいないことに。

夜空に浮かぶ星々を隠すように暗雲が立ちこめる。

まるでこの先の未来を暗示するかのように――。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

ロンとの決闘が終わって3日後。

オレ達はメイヤ邸で魔人大陸に行く準備をしていた。

ロンとの結婚破棄が決まったので、協力してくれた受付嬢さんにケンタウロス族のアームス・ビショップを売り渡す――げほん、ごほん、紹介するため魔人大陸へと向かわなければならないのだ。

飛行船ノアで行けばすぐに辿り着けるが、ドラゴン王国での疲れもあり休んでいるのと、クリス実家に泊まる予定なので手土産の準備などをしていた。

クリスは『気にしなくても大丈夫ですよ』とは言っていた。

実際、旦那様達は気にしないだろう。

しかし、何よりお世話になっている旦那様達にたいして、オレがしたいのだ。

それにビショップ家に行くのにも、手ぶらというわけにはいかない。

魔人大陸で買ってもいいが、とってつけた感があるので、竜人大陸で購入しておきたいのだ。

他にも飛行船ノアのメンテナンスや消耗品の交換など多々作業をしていた。

そんな中、家主であるメイヤ・ドラグーン――改めメイヤ・ガンスミスは、左手にある結婚腕輪を眺めては変な笑いを漏らし、悦に入っていた。

「ぬふふふふふふふ……っ」

ソファーに座り、うっとりした表情で左腕にある結婚腕輪を眺め続けている。

彼女は暇さえあれば比喩ではなく一日中、結婚腕輪を眺めているのだ。

屋敷に帰ってきて、荷物を置き各自休むことになった。

メイヤはリビングソファーに座り結婚腕輪を眺め続けていたが、翌朝、起きたらそのままでいたのだ。

喜んでもらえて嬉しいが、限度を知らなすぎる。

正直、ちょっと引いてしまった。

そして、さらに三日後。

準備を終えたため、まずは魔人大陸にあるブラッド家を目指し出発する。

ちなみに出発前にロンの容態を確認したが未だに目覚めていないらしい。

受付嬢さんとアームスの仲立ちが終わり、帰る際、お見舞いに行ったほうがいいかもしれないな。

こうしてオレ達は魔人大陸を目指し、飛行船ノアで飛びたった。