軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第406話 決闘の決着

『ドラゴンの間』。

竜人種族、王族や貴族などが互いの面子をかけて一対一の決闘に使われる場所だ。

ロンとの結婚を破棄するためメイヤは、この『ドラゴンの間』を利用した。

彼女は代理人に受付嬢さん&まーちゃんを指名。

結果、ロンvs受付嬢さん&まーちゃん(小)という戦いがおこなわれることになった。

二人(+魔物1匹)が『ドラゴンの間』に入ると、自動的に扉が閉まる。

これで内部から扉を開けるまで、外部からの干渉はできなくなる。

心配だ。

受付嬢さんの無事ではなく、敵であるはずのロンを心配してしまう。

確かに彼の言動は鼻につくことが多かった。

結婚にしろメイヤが『好きだから』、『愛しているから』ではなく、『能力的に一番優れているから』結婚しようとしている。

互いにそれで割り切れるなら問題は無いが、メイヤははっきりと拒絶している。

にもかかわらず強行に結婚しようとするから質が悪い。

しかも、指摘しても何が悪いのか分からないと首を捻る重傷っぷりだ。

だからと言って、受付嬢さん&まーちゃんと正面切って戦わせるほどの罪を彼が犯しただろうか?

ちょっと――いや、大分やりすぎな気がする。

「うふふふ……この扉が再び開いた時、わたくしとリュート様の輝かしい未来が開かれるのですわね!」

一方、メイヤは微妙に上手いことを言って、恍惚な表情を浮かべていた。

幼馴染みを自らの手で死地へ送り出したというのに、今にもふわふわと浮かび上がりそうなほど上機嫌だ。

彼女の望み通り100%――いや、1000%確実に受付嬢さん&まーちゃんが勝利するだろう。

しかし、以後、今回の件で味を占めて二度、三度と同じことをされても困る。というより命がいくつあっても足りない!

オレはメイヤに釘を刺すため声をかけようとしたが、

『!?』

『ドラゴンの間』の扉から濃密な黒い気配を漏れ出る。

視覚できるのではないかと思うほど濃密な気配。

感じただけで吐き気と怖気、心が折れそうになる絶望を感じる。

オレだけではなく、スノー達も気付き慌てて扉から距離を取った。

城の兵士など一部、床に倒れる。

『ドラゴンの間』は高位のドラゴンによって完璧に結界で塞がれているのではないのか!?

「リュート様、皆様? どうかなさいましたか?」

メイヤは『本気で分からない?』と首を傾げていた。

マジかよ……。

彼女に問いつめようとした刹那――世界が揺れる。

あちこちから悲鳴があがり、オレ自身その場で地面に手を突き振動に耐える。

元日本人として地震ではないことがすぐに分かった。

むしろ大型兵器を発射した際に叩きつけられる衝撃に近い。

ただし今感じている衝撃は、大型兵器など比較にならないレベルだが。

振動が収まると、『ドラゴンの間』の扉が開く。

開くと言うより、先程の衝撃で周囲に亀裂が入り、崩れて『扉が倒れた』と言った方が正解である。

ロンと受付嬢さん&まーちゃんが部屋に入って、約1分少々のことだ。

倒れた扉から、『ドラゴンの間』を確認することができた。

決闘をおこなう前、オレが中を覗き見た際、天井ではなく壁を一周して照明が付けられていた。

光量もあり、扉を閉じても暗くなることはないだろう。

代わりに上まで光が届かず、天井部分を視認することは叶わなかったが。

今、倒れた扉から中を覗くと、壁斜め上部に大穴があいていた。

先程の衝撃のせいで、壁にあった照明は壊れたのか発光を停止している。

だが穴は地上まで到達しており、日の光が本来差し込まないはずの『ドラゴンの間』に届いているお陰で暗くなることはなかった。

「いやいや……『ドラゴンの間』はエンシェントドラゴンの力で絶対に壊れない結界が張っているから、どれだけ暴れても大丈夫じゃなかったのかよ……」

思わず一人ツッコミを入れてしまう。

その大穴から差す光を当然とばかりに、一人の女性――受付嬢さんが浴びていた。

あれだけの衝撃があり、相手がロンだというのに彼女は無傷で、衣服に汚れすら付いていない。

分かっていたさ!

たとえ相手が誰だろうと、受付嬢さんが勝利するって!

一方、対戦相手のロンはというと、宝刀、『 聖竜昇竜刀(せいりゅうしょうりゅうとう) 』の柄だけを握り締め、仰向けに倒れている。

国宝である『 聖竜昇竜刀(せいりゅうしょうりゅうとう) 』の刃部分は、完全に粉々に砕け散っていた。

メイヤの話曰く、エンシェントドラゴンの牙を鍛えて製造された究極の刃らしい。

その刃部分を砕くとか……。

強度的にもだが、他国の国宝をよくここまで壊せたものだ。

その力があっても、普通躊躇うものじゃないのか?

ロンは足を受付嬢さん側に向けているため、状況から推測するにまーちゃんの一撃を受け吹き飛び倒れたのだろう。

なのになぜか味方であるまーちゃんですら泡を吹いて意識を失っている。

なんでだよ! 何があったんだよ!?

受付嬢さんがオレ達の視線に気付くと、振り返り満面の笑顔を浮かべてくる。

「えへへへ、大勝利!」

はにかみながら、白目を剥くまーちゃんを片手で抱きしめ、空いた手でピースサインを向けてきた。

広大な『ドラゴンの間』の中で笑顔を浮かべる受付嬢さん。

美人が子供っぽく笑顔でピースサインをする姿は、本来であれば可愛らしいはずなのにまったくこれっぽちも可愛くなかった。

むしろ、恐怖心しか感じない。酷い光景である。

こうしてロンvs受付嬢さん&まーちゃんの決闘は、一方的蹂躙で受付嬢さんが勝利した。

ちなみに敗北したロンはというと――

「へ、陛下!? 陛下の息が止まっている!? 心臓が動いていないぞ!」

『!?』

治癒にあたろうとした治癒魔術師が絶望的な声をあげる。

オレ自身、声に気付き慌てて駆け寄る。

右腕は千切れかけ、左腕も折れ曲がっている。

顔面は砕けた刃が突き刺さったのかズタズタに皮膚が引き裂かれ、血まみれになっていた。

両足も骨折。右足は白い骨が露出している。

一目で重傷だ。

「すぐに治癒を開始しろ! 邪魔だ、どいてくれ!」

「て、敵である貴様が陛下に何を――」

「その陛下を死なせたいのか! いいから言う通りに動け!」

オレは有無も言わさず、ロンの臣下を押しのけ心臓マッサージを施す準備を始める。

臣下の一人が喰ってかかるが、怒鳴り勢いのまま治癒魔術師に治癒をさせた。

体の治癒と平行で、心臓マッサージをおこなう。

効率を優先するため、人工呼吸は臣下の一人に指示を出し任せる。

心臓マッサージをおこない、同時に息を送らせた。

視界の端。

先程まで笑顔を浮かべていた受付嬢さんが、『も、もしかしてやりすぎちゃった?』とおろおろしているのを捕らえる。

その姿に妙な安堵を覚えた。

一応、受付嬢さんにも良心、理性が備わっていることを知ったからだろう。

「げほ! ぐほッ!」

ロンが息を吹き返し、苦しそうに咳き込む。

咳と一緒に血の塊が吐き出されたのが痛々しい。

だが無事に心臓は再び活動を始め、優秀な治癒魔術師のお陰で体の傷も癒える。

ロンはギリギリ一命を取り留めることができた。

オレは額に浮かんだ汗を拭うと、その場にへたり込む。

こうしてロンvs受付嬢さん&まーちゃんの決闘は死者を出さずに勝敗が付いたのだった。

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ロンは無事に一命を取り留めることができた。

優秀な治癒魔術師を揃えていたのと、彼を慕う臣下が彼を助けたい一心でオレの指示に従ったお陰である。

ロンの態度は気に食わないが、部下の忠誠心は本物らしい。

決闘に勝利したことでメイヤとロンの結婚は白紙になったが、問題が全て解決した訳ではない。

まず一命を取り留めたロンだが、傷は治ったのだが未だに意識を取り戻していない。

治癒魔術師曰く、血を流し過ぎたのと、一度は心肺停止したためだとか。

また決闘であっさりと敗北した精神的ショックもあるかもしれないと言葉を付け足していた。

気持ちは分かる。

魔術師S級にもっとも近い魔術師で、一国を収める皇帝。

それなのに国宝である宝刀、『 聖竜昇竜刀(せいりゅうしょうりゅうとう) 』を目の前で粉々にされ敗北してしまったのだ。

プライドの高いロンからすれば、精神的ダメージはもしかしたら肉体が受けたダメージより大きいのかもしれない。

『哀れ』と思うより、同情する気持ちが大きい。

どう考えても相手が悪すぎた。

彼自身はなにも悪くない。

しかし……もしかしたら、現実に嫌気がさし、意識を失ったまま目を覚まさない可能性もある。

シャナルディアがかかった『生夢』のように……。

次に破壊された『ドラゴンの間』についてだ。

本来、『ドラゴンの間』は 聖竜昇竜刀(せいりゅうしょうりゅうとう) の素材となった牙を提供したエンシェントドラゴン自ら強固な結界を張ったといわれている。

その結界強度はこの世界随一だ。

故にこの中に入り一度扉を閉めれば、どれほどの大魔術を使おうが外部に被害が漏れることはない――はずだったのだが、先の決闘で大穴が空いてしまった。

不幸中の幸いで、結界は破壊されたが攻撃が斜め上空に放たれたお陰で、城下街を壊すことなく虚空へと消える。

城の裏庭が消失したが、人的被害は0だった。

最後に受付嬢さんについてだ。

彼女はロンの無事を確認すると、安堵から胸をなで下ろしていた。

トラウマスイッチを押さなければ基本、受付嬢さんは良い人だ。

一線さえ越えなければ、優しくて美人で、気遣いができ、仕事でもなんでもそつなくこなす優秀な女性なのだ。

トラウマスイッチと一線さえこえなければ……。

その受付嬢さんは、決闘が終わり、ロンの無事も確認したところでまーちゃんを起こすといそいそと魔人大陸へと戻ってしまう。

彼女曰く、

「急いで戻って色々準備しないといけませんから☆ それに~実家に居る両親に~『紹介したい人が居る』、『結婚を前提にお付き合いする』、『結婚、秒読み』って言って親を安心させたいですからぁ」

年甲斐もなく語尾に『☆』をつけるのはどうだろう。しかも結婚結婚、言い過ぎではないだろうか?

口にはしないけど……。

今まで見たことがないハイテンションで、胸焼けどころか焼き付くすような甘ったるい言葉を残し魔人大陸へと戻っていく。

正直、受付嬢さんとはあまり関わりたくない。経験則的に、関わると絶対にろくな目に遭わないからだ。

これでケンタウロス族、魔術師Bプラス級、アームス・ビショップさんを紹介しなかったら、魔人大陸――いや、全世界が滅ぶ可能性が高い。

気疲れで鉛のような重い溜息をついてしまうが、受付嬢さんを敵に回すよりましである。

とりあえず、さっくりとアームスさんに紹介して爆弾処理――ではなく、二人とも幸せになってもらおう。

残る最後の問題はオレとメイヤについてだ。

オレはポケットにとある物を入れて、飛行船ノアの甲板へと向かう。

『ドラゴンの間』での決闘終了後、オレ達は宿屋を引き払うとすぐにドラゴン王国を後にした。

結婚破棄できたとはいえ、居残って観光する気分ではなかったからだ。

また決闘の結果を無視して、臣下が暴走して襲撃をしてくる可能性もある。あくまで可能性だが。

なのでオレ達は早々にドラゴン王国を後にしたのだ。

夜、空に宝石箱をひっくり返したような満点の星空の下。

オレはメイヤに『話がある』と事前に呼びだしていた。

甲板に出る。

すでにメイヤは甲板で待っていた。

いつもなら、エンジンを回し高速で移動する飛行船ノアだが、彼女と話をするため一般的な飛行船の速度まで落としてもらっている。

お陰で夜空を見上げながら、ゆっくりと話をすることができた。

「メイヤ……」

「リュートしゃま……」

メイヤは皆に黙って決闘に受付嬢さんを呼び込んだことを、スノー達に怒られていた。

オレにも今回の一件で怒られるのかと、落ち込んでいるらしい。

色々言いたいことはあるが、スノー達にすでに怒られた後だ。

これ以上、追い打ちをかけるつもりはない。

オレはズボンのポケットに入れたモノの感触を確かめ、改めてメイヤを見つめる。

ロンとの結婚を破棄後、オレは初めてメイヤ・ドラグーンと二人っきりで向き合った。