軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第402話 言い訳

「……で、あらためて聞きますがアルさん、貴女はいったい何をしているんですか?」

メイヤパパことハイライさんの切り札が、エル先生の双子の妹である駄目兎アルさんだと判明後、すぐに全員を拘束した。

途中、さすがにシア&護衛メイド一人では手が足りず、残りのメイド達も集め無事ハイライさん、アル、護衛2名の全員を捕らえることに成功した。

現在はメイヤパパ&護衛からアルさんを引きはがし、手首を体の前で縛り、グラウンドに正座させている。

オレは彼女の前で腕を組み半眼で見下ろしながら問い質していた。

戦闘用(コンバット) ショットガンのSAIGA12Kは護衛メイドに預けてある。

アルさんは媚びた笑みを浮かべた。

「リュート達も久しぶり、元気してた? リュートも少し見ない間に格好良くなってて、お姉さん嬉しいな。どう、今夜あたり二人っきりで一杯飲まない?」

「そういうのいいんで。なんでハイライさんに『先生』とかオレの『師匠』扱いされてるんですか?」

「えっと、話すと長くなるんだけど……怒らない?」

エル先生と同じ顔で、ウルウルと捨て兎のような瞳で見上げてくる。

外見だけはこの世界最高峰の女神のため、反射的に許しそうになったが、慌てて自身を戒めた。

咳払いをし、気持ちを落ち着かせてたら返答する。

「内容によります。とりあえず要点を纏めてできるだけ短くしてください」

「えへへへ、了解~」

アルさんはヘラヘラとした笑顔を浮かべながら、端的に事情を話し出す。

――話は 始原(01) のトップ、人種族、魔術師S級のアルトリウス・アーガーをオレ達が倒したところまで戻る。

PEACEMAKER(ピース・メーカー) が、あの魔術師S級のアルトリウス・アーガー率いる 始原(01) を倒したと魔物大陸まで瞬く間に広がった。

アルさんは奴隷として娼婦をしつつ、客に驕らせながら酒場で飲んでいると、その話を耳にしたらしい。

彼女はすぐにこれが利用できると判断。

全てを分かっていますという態度で、『リュート達はついにやったのね』と適当な呟きを漏らす。

さらに自身がオレことリュートの元師匠で、彼女のアドバイスに従って 始原(01) を倒したことをさりげなく風潮し始める。

リュート達が魔物大陸に来たのも、自分を探すため。

奴隷娼婦に身を落としているのもフェイクで、彼らの目を欺き自分の所に辿り着けるかを試していた、と適当な事を言い出す。

偶然とはいえ、実際にオレ達はアルさんと出会っている。

オレを騙し奴隷として売り払った一味の一人、悪魔族のミーシャが殺害された時、警備兵にも知り合いだと話をしている。

駄目押しでオレとスノーが出た孤児院を経営しているのは双子の姉、エル先生だ。

周囲がアルさんの話を信じるまで、そう時間はかからなかったらしい。

酒場や客から話を聞かれるたび、小金をせびって適当な思い出話をしていたとか。

さらにオレ達が『黒毒の魔王』を倒してからは、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) と繋がりを作ろうとする商人や小金持ちが集まってきた。

彼らはどうにかして魔王を倒した PEACEMAKER(ピース・メーカー) と繋がりを作りたいために、アルさんの言うままに金銭を貢いだ。

お陰で自身を買い戻す&当分の生活費を稼ぐことに成功する。

自由になってからは魔物大陸を出て、ふらふらと各地の大陸を回った。

肩書きは PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長、『リュートの師匠』。オレとスノーが卒業した孤児院を営むエル先生の妹という身分でだ。

各地でオレ達の適当なエピソードを話しながら、紹介するする詐欺を繰り返し小金を稼いでいた。

情報収集担当のラミア族、ミューア・ヘッドの耳に入らなかったのも、騙された相手側が本当に PEACEMAKER(ピース・メーカー) と繋がりのある人物で、騙されたと諦めがつくギリギリの金額だったため誰も被害を訴えなかったからだ。

「このギリギリ諦めるラインの金額を見極めるのが腕の見せ所なのよ」

アルさんがドヤ顔で自慢気に語る。

クズ過ぎる発言にオレ達側はドン引きした。

とはいえ、こんな詐欺行為をしていればいつかはミューアの耳に入るはずだった。

しかし『魔力消失事件』が起きる。

世界中が混乱し、誰もが小さな詐欺行為に関わっている暇をなくしてしまう。

さらにアルさんにとって幸運だったのは、『魔力消失事件』を PEACEMAKER(ピース・メーカー) が解決したことだ。

このお陰で、『魔力消失事件』後、より大物が彼女に接触するようになったらしい。

大物達の間をするすると渡り歩き、最後にいきついたのがメイヤパパことハイライさんだった。

一通り話を聞いて、オレは目頭を押さえる。

まさかアルさんが PEACEMAKER(ピース・メーカー) の名を貶めるようなマネをしていたとは……この駄兎どうしてくれよう。

普通に考えれば見せしめのためにも重い処罰が適切なのだが……問題はアルさんがエル先生の双子の妹という点だ。

エル先生がアルさんの行為を知り、オレ達の事情も理解すれば重い罰に賛成してくれるだろう。

しかし胸中は穏やかではないはずだ。

双子の妹でエル先生はアルさんに駆け落ちする際、背中を押してもらったと感謝している。

そんな妹に重い処罰をすれば絶対に悲しむ。

第一、エル先生そっくりの彼女に重い刑罰を下すのはオレ自身、精神的に辛い。

アルさんは PEACEMAKER(ピース・メーカー) にとって鬼門のような存在である。

唯一褒めるところがあるとすれば、彼女の話が妙に上手いことだ。

舌先三寸で渡り歩いて来たためか、生来のモノなのか……彼女の話は堂に入っており声質も聞いていて気持ちが良くついつい耳を傾けてしまう。

この容姿で、語りが上手いとかある意味最悪の組み合わせだ。

「話を聞いて気になった点が一つだけあるんですが、どうして PEACEMAKER(ピース・メーカー) 本部に来たんですか? エル先生ならともかく、アルさんの言うことを聞くなんてありえないのは分かっていたはずでしょ?」

オレの疑問にアルさんが媚びた笑顔で答える。

「師匠や先生って持ち上げられ過ぎて感覚が麻痺していたっていうのもあるけど、そろそろこの手も通用しなくなったっていうか、騙すのも限界ぽかったから手を引こうと思って。でも今更逃げ出すのも難しそうだから、リュート達に保護してもらおうかなって。あっ、もちろん久しぶりにリュート達の顔を見たかったっていう理由もあるぞ☆」

「こ、このクズが……ッ」

つまりアルさんは、詐欺行為に限界を感じていたが、ハイライさんの元から逃げ出すこともできないから、駆け込み寺よろしく保護してもらうために PEACEMAKER(ピース・メーカー) 本部へと嬉々として突撃してきたらしい。

PEACEMAKER(ピース・メーカー) ――特にオレやスノーが、エル先生にそっくりなアルさんには手出しが出来ないことをしっかりと計算してだ。

高原にある牧場の空気より清々しいクズっぷりである。

この発言に拘束されているハイライさんが激怒した。

「あ、アルぅうぅッ! 貴様、初めから私を騙すつもりだったんだな!」

「はぁ……パパったら、見る目もなければ、情報収集も満足にできないなんて……」

メイヤは激怒する父に対して呆れた溜息を漏らしつつ、首を振る。

彼女自身、『魔石姫』と持ち上げられてから、甘い汁を啜ろうと接近してきた有象無象を相手取ってきた。

メイヤの場合、部下達が優秀だったのもあるが、自身の慧眼でそれら全てを返り討ちにしてきたのだ。

なのに自身の父が、アルの詐欺行為に引っかかったことを嘆いているようである。

怒り心頭だったハイライさんも、娘の態度に冷静さを幾分か取り戻す。

これ以上、娘の前で無様な姿は親として見せられないためだ。

オレは落ち着いたのを察して、申し出る。

「うちの知り合いがご迷惑をかけて申し訳ありません。アルさんが使った金銭は全てこちらが負担します。なので後日、請求書をお送り下さい。また皆様はすぐに解放しますが、メイヤを渡すわけにはまいりません。これ以上は互いのためにもお引き取り願いませんか?」

「うぐぅ……ッ」

自信満々だった策は、最初から破綻していた。

それも見抜けなかった自身の無能さに加え、『次は無い』という言外の脅し。

ハイライさんは呻くことしかできなかった。

ちなみにアルさんの金銭補填はオレ達がやるしかない。

下手に放置したら、エル先生に請求書が回る可能性がある。エル先生の場合、孤児院の寄付金やギギさん&タイガの稼いだ賃金を使わず、自分自身の稼いだお金で支払おうとするだろう。

エル先生に余計な負担はかけたくない。

また後でアルさんを締め上げて、詐欺行為をした人物達にも同じように謝罪と補填をして回らなければならないだろう。

本当に頭が痛い問題を持ち込んでくれたものである。

オレがこれからのことを考えて頭痛を覚えていると、ハイライさんが絞り出すように言葉を吐き出す。

「……ドラゴン王国はどんなことがあろうと、メイヤちゃんを正妃とする。なぜならば、ロン陛下がお決めになったことだからだ。私を退けたからといって安心しないことだな」

まるで『四天王最弱の~』と語り出す悪党の台詞である。

ハイライさんは、メイヤと違って最後まで小物だったな……。

とりあえず、話は終わったので彼らを拘束したまま正門まで移動。

縄を解いて、外へと開放する。

残るはアルさんのみになる。

「団長、彼女はいかが致しましょうか?」

護衛メイドの一人が指示を仰ぐ。

「……アルさんは本部の地下牢に入れておいてくれ」

「かしこまりました」

「えっ、ちょ、なんで牢屋? 普通は客間でもてなしてくれるじゃないの!?」

「なぜ歓迎してもらえると思うんですか……。アルさんは牢屋に入って反省してください」

胸の前で手首を縛りグラウンドに座らされていたアルさんが、両脇を護衛メイド二人に支えられ連れて行かれる。

オレは念のため護衛メイド二人の背に声をかけた。

二人は立ち止まり、向き直る。

「見た目は女神で、口も達者だが中身は最低最悪だから絶対に気を許すな。後、彼女は男女関係なく手を出すから、口車にのってほいほい言うことを聞いたら酷い目に遭うから気を付けろ」

「「かしこまりました」」

護衛メイド二人は揃って返事をすると再び、アルさんを牢屋へと連行した。

連行されるアルさんは、最後の悪あがきか首をこちらに向け叫ぶ。

「予言するわ! リュートは近いうち自分から私を牢屋から出すって! 必ずね! ふははっはっはは!」

オレがアルさんを牢から出す?

詐欺行為関係の話を聞くためや、急な体調不良の時などは牢から出すつもりだ。

しかし当面は反省させるためにも、牢屋に入れておく。

オレがアルさんを牢屋から出すと言い出すなんて、ありえない。

第一、アルさんは魔術師でもなければ、ハイエルフ族のララのように『予知夢者』の能力を持っている訳でもない。

恐らくこちらの動揺を誘うトラッシュトークだろう。

一通り問題も解決したところで解散を告げる。

残るメイド達にスノー、クリス、ココノ、他待機している者達に状況を伝えるよう指示を出す。

スノー達メインメンバーは緊急会議をするため私室リビングに集まるよう声をかける。

会議の内容はもちろん『メイヤの婚約』についてだ。

根本的な原因である元を断たない限り、今回のようなことが繰り返される。

ハイライさんのように間の抜けた相手なら煩わしい程度で済むが、もし狡猾で手段を選ばない人物だったら……。

場合によってオレ達だけではなく、まったく関係ないココリ街住人が傷つく可能性もあるのだ。

街の守護を任されている立場上見逃す訳にはいかない。

「と、言うわけで当分『結婚腕輪』はお預けだ」

「そ、そんな、ではどうすれば『結婚腕輪』をいただけるのですか!?」

オレの宣言にメイヤは涙目で訴えてくる。

そんな彼女に即答した。

「当然、メイヤの婚約話が解決するまでだ」

「妥当ですね」

リースが告げ、その後ろでシアが静かに頷く。

メイヤは涙目になりながら、手にある扇子をギリギリと両手で締め上げる。

「こ、こうなったら是が非でもロンのアホに『絶対に結婚しない!』『わたくしの心も体も魂も全てリュート様のモノ!』宣言をして、婚約を解消してやりますわ! どんな手段を使ってでも絶対にッ!」

メイヤは怒りを青空へ向け吐き出す。

まるでドラゴンが炎を吐き出すようにだ。

こうしてオレ達は竜人大陸に行って、ロンと結婚しない宣言をすることになった。