軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第400話 対策会議

メイヤの父である竜人種族魔術師Bマイナス級、ハイライ・ドラグーンが本部を訪れた夜、皆に集まってもらった。

PEACEMAKER(ピース・メーカー) の緊急会議である。

場所はオレ達が私室に使っている客間リビングだ。

一通り話を聞くとまず最初にスノーが反応する。

「何か隠しているとは思っていたけど、そういうことだったんだ」

「うぐぐ、申し訳ないです」

メイヤは何も反論できず、小さく背中をまるめる。

そういえば……スノーはリースとの結婚後、騒ぐメイヤに指摘してたってけ。

確か『決着をつけないと云々』と。

むしろなんでスノーはあの時点で『決着云々』なんて言葉が出てきたんだろう?

メイヤの婚約は知らなかったはずなのに。

スノーに尋ねると……。

「匂いでなんとなく分かったんだよ。そういう決着が付いていない匂いがしたの」

と、返事をされる。

なんだよ『決着がついていない匂い』って……。

久しぶりにスノーの『ふがふが』の脅威に戦慄する。

仮に浮気なんてしたら、匂いですぐばれるんじゃないだろうか?

いや、浮気するつもりなんてないけどね。

オレは咳払いをして話を戻す。

「メイヤのお父さん、ハイライさんって強いのか? もしくは強い部下の人が居るとか?」

「いいえ、パパは昔から運動が苦手で、わたくしと同じで戦闘技能はからっきし。逆にママはわたくし達とは正反対に運動神経も、戦闘技能も高かったですわね」

「そういえばメイヤのお母さんはどこにいるんだ? オレ達側の味方に付けることはできないのか?」

「いえ、無理……不可能ですわ。わたくしのママは遠い所に行っているので……」

メイヤは申し訳なさそうに告げる。

遠い所ってまさか……すでに亡くなっているということか?

「今もどこかのダンジョン奥地に居て、連絡が取れないのです。申し訳ありませんわ」

『ダンジョンですか?』

クリスが疑問を浮かべつつ、ミニ黒板を掲げる。

「はい、わたくしのママは生まれた時から貴族で魔術師にもかかわらず、根っからのダンジョンマニアで常にどこかのダンジョンに潜っているんですの。将来の夢はこの世の全てのダンジョンを制覇するのと、自分自身でオリジナルのダンジョンを作り上げることらしいですわ」

オリジナルダンジョンは、資金さえあればそれっぽいのは作れるんじゃないだろうか?

しかし、この世界全てのダンジョンを制覇するのはいくらなんでも不可能だ。

どんだけダンジョン好きなんだよ……。

リースが話を聞いて青い顔で声をあげる。

「ま、待ってください! では『魔力消失事件』の際ももしかしてダンジョンに潜っていたのではありませんか!?」

彼女の指摘に皆も顔を強ばらせる。

確かに魔術師で、魔力消失事件の際、ダンジョンに潜っていたら死亡率は激増する。

オレ達の心配を余所に、メイヤは皆を安心させようと笑顔を作った。

「ご安心下さいませ、わたくしのママはその程度で死ぬような方ではありませんから――その程度で死ぬぐらいならどれほど楽だったか(ぼそり)」

最後、やさぐれた台詞を告げる。

台詞にあわせて表情も顰め顔になっていた。

ブラックメイヤさん降臨ってところか。

彼女の態度から、実母ともなにかしらず確執や問題があるのだろうな。

ドラグーン家の問題は置いておいて、話を戻す。

「ハイライさん自身が強くないとすると、護衛や部下に強い人でもいるのか? もしくは PEACEMAKER(ピース・メーカー) を倒せるほど強い人を雇ったとか?」

「わたくしの知る限り、そこそこ強い護衛や部下は居ますが、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) を倒せるほどとなると絶対にいないと断言できますわ。パパに外部から強力な助っ人を雇う程の人脈も、政治的手腕も、頭もありませんからそっちの心配も無いと思いますわ」

「実の父親に対して容赦ないな……」

「事実ですから。冷静な判断こそ重要ですわ」

メイヤ曰く――ハイライさんの能力は並。

家臣達に支えれて現状維持が精一杯で、貴族としてドラグーン家を発展させる手腕はないとか。

もしかしたら、自分自身それを理解しているため、メイヤを正妃として嫁がせ『ドラグーン家を発展させた』という結果が欲しいのかもしれない。

たとえ凡才の自分でも、家を発展させることができるんだと。

まぁあくまで想像でしかないが。

「外部に戦力がないと仮定した場合、残る選択は……内部か?」

「内部とは、わたし達の 軍団(レギオン) に裏切っている方がいらっしゃるということですか?」

ココノは『信じられない』という表情で、ギュッと両手を胸の前で握り締める。

オレは微苦笑しながら、手を軽く振った。

「あくまでたとえば、仮定の話だよ。基本、ミューアのチェックを受けているから、裏切り者なんていないだろうけどね。第一、一人二人が裏切って内部から混乱させても、それでメイヤを連れて行ける訳じゃないから。それこそホワイトさんが裏切るぐらいしないと無理じゃないかな」

「師匠がリュートくん達を裏切ることなんてないよ! 今だって楽しく団員さん達とお話ししたり、歌や踊りの練習をしてるし。近いうちに慰安コンサート? するんだよね?」

『魔力消失事件』の事後処理もほぼ終わり、落ち着いてきた所で団員達のみで参加の『お疲れ様会』的なパーティーを開く予定だ。

その会場でホワイトさんには唄って、踊ってもらうつもりだ。

練習で忙しい彼女は、ハイライさんに関わっている時間はないだろう。

後、考えられることはなんだろう?

オレ達は腕を組んで首を傾げる。

しばらくするとシアが、小さく手をあげた。

発言の許可を求めているらしい。

水を向けると、彼女は表情を変えず告げる。

「我々が抵抗できないよう重要人物を人質に取るのでは? と愚行します」

重要人物を人質に?

オレだけではなく、その場に居る全員が無言で疑問をぶつける。

シアは表情を変えず淡々と答えた。

「たとえば我々にとっての重要人物……エル様、ソプラ様、フォルン様の一人でも人質の価値は高いかと」

台詞の途中で、殺気が部屋に充満する。

部屋の外で、夜にもかかわらず野鳥が悲鳴のような声をあげて飛び去るのを耳にした。

特にエル先生と繋がりが濃いオレ、スノーの殺気が最も強い。

「……シアの指摘はもっともだ。その可能性は忘れていた。でも、孤児院にはギギさんやタイガが居るんだ。そう易々と人質に取られるようなことはないだろう。もし人質に取られていたらギギさん達からか、ミューアの情報網に引っかかって連絡がくるはずだ」

だがもし仮にメイヤパパ、ハイライさんがエル先生達を人質に取っていたら戦争だ。

メイヤには悪いが、ドラグーン家やドラゴン王国を滅ぼす勢いで戦争をすることになる。

この考えについてメイヤは、

「神であるリュート様の逆鱗に触れたのですよ。むしろ滅ぼす以外どのような贖罪があるとでも?」

当然とばかりの態度で断言する。

あっさりと実家、祖国を切り捨てる彼女に若干冷静さを取り戻す。

ある意味、本当にメイヤはぶれないな……。

彼女のお陰で皆、冷静さを取り戻すことができた。

とりあえず話題も出尽くしたのと、夜も遅くなったので会議は解散となる。

明日は朝から、念のため警戒態勢を維持しないとな。

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一方、リュート達が会議をしている時、ハイライはというと――

ココリ街でも最も高級な宿のスイートルームの一室。

ソファーに座り、同じく正面に腰を下ろしている相手にぺこぺこと頭を下げ、揉み手で相手の機嫌を取っていた。

「明日の PEACEMAKER(ピース・メーカー) の件、先生のお力をどうぞお貸しくださいませ」

「ふふん、分かっているわ。私に任せておきなさい」

『先生』と呼ばれた人物――歳は20代半ば、背丈は女性にしては高く、巨乳に分類できるほど胸もある。

風呂上がりなのか、ピンク色の長い髪を湿らせ、宿に置かれているガウンだけを身に纏っていた。首から下げているハンドタオルで、濡れた兎耳を拭う。

ガウンの丈が短いためか、足が長すぎるのか真っ白な太股が露わになっている。胸の谷間と足を組み替える仕草がとても色っぽい。

『先生』と慕うハイライでさえ、つい目が行き生唾を呑み込むほど蠱惑的だ。

ハイライは自分の立ち位置を思い出し、慌てて視線を相手の顔へ戻すとおべっかを告げる。

「おお! なんという頼もしいお言葉! 調子に乗って鼻の伸びた若僧共に目に物見せてやりましょう!」

「大船に乗ったつもりでいなさい。必ず私が PEACEMAKER(ピース・メーカー) から娘さんを連れ出してあげるわ」

ピンク髪の兎耳女性は形の良い胸を張りながら断言する。

彼女はテーブルに置かれた高級料理に酒精を堪能しながら、ハイライへ指示を出す。

「とりあえず明日の鋭気を養うために、食事が終わったら可愛い女の子を2、3人用意してちょうだい」

「じょ、女性ですか?」

「今夜はそんな気分なの。何か問題ある?」

「い、いえ滅相もありません。すぐに部下へ娼館に向かうよう指示します」

ハイライの返事を聞いて、ピンク髪の兎耳女性は満足そうに頷く。

彼女は明日、この世界最強の軍団、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) と矛を交えるにもかかわらず余裕の態度を崩さない。

グラスに高級酒精をなみなみと注ぎ、水のように飲み干したのだった。