軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第367話 皆との作戦会議

シアがSAIGA12Kを手にするリースへと駆け寄り声をかける。

「姫様、お怪我はございませんか?」

「ええ、大丈夫よ。心配してくれてありがとう、シア」

リースが自身の護衛メイドに微笑みかけると、シアは珍しく目元を指先で拭う。

「昔はララ様の影に隠れていた姫様が、堂々と反論した姿を前に自分は感動いたしました。姫様のご成長を間近に見られて、このシア一生の幸福です」

「大げさね。それに姉様の影に隠れていたのは子供の頃の話よ。私はもう大人だし、それに仲間と共に多くの経験をしてきた。私が成長できたのも、皆のお陰よ。当然、『皆』の中にシアも入っていることを忘れないでね」

「姫様……このシア、今後も、いえ一生姫様にお仕えさせて頂きます」

「ありがとう、シア。これからもよろしくね」

「はっ! こちらこそよろしくお願いいたします!」

リース&シアは、 風船蛙(バルーン・フロック) の悪臭液&自身の吐瀉物まみれ、電気ショックで気絶している実姉を放置して主従の熱い会話を交わしていた。

まさかリースvsララの因縁ある姉妹対決が、こんな結果に終わるとは……。

もちろんリースが無傷で勝ってくれたのは嬉しいが、ララへの同情が無いとはいえない。

ちなみにリースvsララ戦を見ていた他妻達(弟子)の反応はというと、

『酷い戦いですね……』とクリス。ララを見つめ彼女に同情していた。

「うぅうぅ……こんなに離れているのに臭いです。ち、ちょっと気分が悪くなったかもしれません」とココノが、青い顔でふらつく。オレは彼女を支えて、背中を撫でてやる。

「さすがリュート様のお作りになった非致死性装弾! もちろんリースさんの『無限収納』があればこそ、SAIGA12Kで状況に応じてもっとも最適な装弾を使えたからこそとはいえ、悪逆ランスの右腕であるあのララさんをこうも簡単に無力化するなんて! あぁあ! さすがとしかいいようがありませんわ!」

メイヤは離れているとはいえ悪臭漂ってくるなか、いつもと同じテンションでオレを褒めちぎってくる。

正直、褒められるのが嬉しいより、こんな悪臭の中、普段と変わらない様子で賛辞を送ってくる彼女の姿に戦慄すら覚えた。

一方、今回の戦いで、最も味方側で被害を被ったのはスノーである。

彼女はギギさんと同じで魔術で強化しなくても鼻がいい。

そのため 風船蛙(バルーン・フロック) の悪臭液を発砲した時点で、飛行船ノアまで逃走。

飛行船の影から戦闘の様子を見守っていた。

「わ、わたし、今後は絶対にリースちゃんには逆らわないようにしよう……」

遠目でも分かるほど青い顔で、SAIGA12Kを手にするリースに震え上がっていた。

彼女のような鼻がいい獣人からすれば、『SKUNK』系の非致死性兵器は下手な重火器より怖いだろう。

さて、気を抜いてしまったが、まだ問題が片づいたわけではない。

ララが目を覚ます前に、魔術防止首輪を着けて魔術を封じなければならない。

問題は悪臭液&吐瀉物まみれの彼女に誰が首輪を着けるかだが……悪戯心でスノーへ視線を向けると、意図を読み取った彼女が首を激しく横へ降った。

期待通りの反応に思わず微苦笑してしまう。

遊んでいる場合ではないので、早速リースに声をかける。

「リース、ララに首輪を着けたいから彼女に『砂』をかけてくれ」

「はい、分かりました」

リースが手にしたSAIGA12Kを受け取り、スタンガンが入った非致死性装弾のッ弾倉を受け取る。

『砂』をかけているあいだに、ララが目を覚ました場合、早急に対応できるするための準備だ。

ちなみに『砂』とは悪臭液を吸収し臭いを抑える消臭剤のようなものだ。

さすがに悪臭を消す、または抑える物がなければ研究し辛い。

臭いが付いた際、取り除くことができないからだ。

そのため研究し作り出したのがこの『砂』だ。

砂という名称だが、言葉通りの砂ではなく木炭や石灰、他臭いを消臭する物を混ぜ込んだ代物だ。見た目はただの黒っぽい砂のためこの存在を知る者の間では『砂』と呼んでいる。

リースはやや――というよりかなり離れた位置から口、鼻をタオルで押さえながら『砂』を実姉に吹きかける。

気絶しているララの上に、黒い砂が撒かれ、量が増えるたびに臭いが抑えられていく気がする。

この砂で目を覚ますかもしれないため、SAIGA12Kの銃口はララへと向けたままだ。

少しでも動いたら発砲するつもりでいる。

……しかし、元とはいえ一国の王女に対して臭いからと砂をかけるとは凄い光景だ。

まるで犬、猫ペット用のトイレ砂をかけられる――いや、これ以上はさすがに敵とはいえ女性に対して使う表現じゃないな。

『GArarararararararaara!!!』

上空でララの騎乗となっていたドラゴンが威嚇音を発する。

その声にリースが反応し視線を向けると、あからさまに『ビクッ!』となって再び距離を取る。

臭いが抑えられ主を助けようとしたが、リースがやっぱり怖くて引き返したらしい。そのまま空の彼方へと逃げてしまう。

本当に『SKUNK』系は有効だな。

正直、あんまり使いたくないけど。

臭いが殆ど消えたところで、シアが魔術防止首輪をララへと付ける。

首輪の他にもララの手足を魔術液体金属で作り出した手錠などで拘束しておく。

これで彼女は魔術を使うことはできないし、身動きも取れない。

シアは『砂』を手に念入りに擦り込んだ後、リースが『無限収納』から出してくれた水で爪の先端まできっちりと洗っていた。

さらに匂いを嗅ぎチェック。

最後に手を拭いたハンカチは『後ほど処分します』と断言するほどだ。

彼女に悪気はないのだろうが、ララの扱いが完全にアレだな……。

「それでリュートくん、これでララさんは問題無いけど、この後はどうするの?」

臭いが大分抑えられたお陰で、側まで戻って来たスノーが声をかけてくる。

「とりあえずララを飛行船に入れておこう。魔術も使えなくしてるし、外から鍵を掛けておけば問題無いだろう。その後、皆にやって欲しいことがあるんだ」

「わたし達にですか?」

ココノの相づちに同意する。

そしてオレは皆にして欲しいことを告げる。

『それってリュートお兄ちゃんが凄く危険じゃないですか!』

「ああ、でもそれぐらいしないと今のランスは倒すことはできないだろう」

「確かに。それに姉様の言葉が本当ならランスさんを止めない限り、世界が崩壊。どちらにしろリュートさんや私達、全世界の人々が危険な状態にあるのは変わりませんよね」

「若様、姫様の仰る通りかと」

クリスがオレの作戦内容を聞いて驚き、悲痛な表情をする。

逆にリースは覚悟を決めた表情で同意の声をあげた。

シアは当然、リース側へと回る。

「わたしもリュートくんの案に賛成だよ! クリスちゃん、リュートくんならきっと大丈夫だよ!」

「ですわね! 偽神であるランスごとき、本物の神であるリュート様の神算鬼謀に抗える筈がありませんわ!」

「わたしも、リュートさまを信じています」

スノー、メイヤ、ココノも賛成の声をあげた。

まだ渋い表情をするクリスに声を掛ける。

「心配してくれてありがとう、クリス。でも、こうするしか方法は無いんだ。だからオレを信じてくれ、そしてオレは皆を信じている。きっと上手くいくさ」

『……確かに皆さんの仰る通り、他に方法はありません。お兄ちゃんを信じます!』

「ありがとう、クリス」

クリスのぎこちない笑顔に、オレ自身、微笑みを返す。

皆の賛成を取り付けたところで、早速行動を開始する。

オレはリースの『無限収納』から、持てるだけの武器・弾薬を手にする。

そしてランスが居る中心へ一人歩き出す。

「後はよろしく頼む。こっちもなるべく頑張って時間稼ぎするよ」

「任せて! すぐに準備して後を追いかけるから!」とスノー。

『無理しないでくださいね!』とクリス。

「リュートさんならきっと大丈夫です、信じています」とリース。

「リュートさま、お気を付けて」とココノ。

「若様、ご武運を」とシア。

もちろん最後はメイヤだ。

「リュート様! 一連の準備の指揮はリュート様の一番弟子であるこのわたくし! メイヤ・ドラグーンにお任せください! 可及的速やかに準備をして早急にお迎えにあがりますわ。ですがわたし達のことはお気になさらず、悪逆ランスを倒してしまってくださっても問題ありませんからね」

嫁達+メイドが声援を贈ってくれる。

その一方で一番弟子はフラグを立ててくれた。

メイヤの場合、嘘偽り無く心底本気で天神状態のランスを、彼女達が到着する前にオレ一人で倒せると信じている。

マジで勘弁してくれ……。

オレはメイヤの声援に微妙な笑顔を浮かべながらも、皆に手を振りランスが居る中心へと一人歩き出す。

そして皆に背を向けたまま、彼女達にも話していない『切り札』を服の上からギュッと握り締めた。