軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第365話 姉妹対決

島が見えてくる。

と、言っても霧が濃く全体を完全に目視することはできない。

まるで霧が島を守っているかのようだ。

ちらっと見えた限り人気はなく、ごつごつとした岩肌で雑草の一つも生えていない。

人が住むには適さないと一目で分かる。

「リュートさま、どうしましょうか?」

操舵室で新型飛行船ノアの舵を任せているココノが尋ねてくる。

操舵室にはオレとココノの二人しかいない。

他は装備を調えたり、機関室の調子をチェックしてもらっている。

「まだ飛行船の魔力にも余裕があるから、島を一周して様子を確認したいがこの天気だしな……。それに帰りのことも考えると、魔力の無駄も出来ないし、とりあえず島の中心に向かってくれ」

「分かりまし――ッ!?」

ココノの返事と同時に、透明度の高い蟲甲(ガラスの代わり)の向こうを光が走り抜ける。

咄嗟にココノが舵をきり、二度目に降った雷を回避した。

偶然、自然現象の雷がオレ達を襲ったのか?

ありえない。

そんな都合の良い事態を信じるほど、楽観視はできない。

どうやら飛行船で中心に向かおうとすると妨害を受けるらしいな。

なら一旦雲を抜け上空から直接向かうという手もあるが……

「リュートさま! 甲板に人影ありです!」

「!? あれは……ララか!」

リースの実姉にして、ランスの片腕である元ハイエルフ王国エノールのララ・エノール・メメアがいつのまにか甲板へと立っていた。

濃厚な霧を切り裂き、ドラゴンが飛行船ノアの周囲を旋回する。

どうやらあのドラゴンに乗って攻撃魔術で牽制、甲板へと飛び乗ったらしい。

ランスから魔力を分け与えられているのだろう。

彼女は甲板から中心地の端を指さす。

その地へ降りろということだろう。

「リュートさま、どうしましょう……」

「降りよう。ここまで来て飛行船を壊されるわけにはいかない」

下手に逆らって飛行船を破壊されたら、魔力が無い今は海上まで落下し、まず助からないだろう。

また帰りにも飛行船ノアは必要なため傷を付けられるわけにはいかない。

オレ達はララの指示通り、中心地の端へと飛行船を着陸させる。

中心地に着陸させると、ララはひらりと甲板から飛び降りた。

魔力を失った今、オレ達は階段を下ろさなければ降りることすらままならない。

こういう何気ない場面で魔力があったありがたみを実感する。

スノー達も飛行船の不自然な動きに気付き、操舵室へと顔を出す。

事情を話し、装備を調えて皆で中心地へと降りる。

中心地には不機嫌そうな表情のララと彼女の背後に乗っていたドラゴンが待ち構えていた。

「ララお姉様……」

リースは姉の名を呼び、ギュッと胸の前で両手を握り締める。

彼女が姉とこうして顔を合わせるのは、女魔王アスーラが眠っていた洞窟の時以来だ。

一方、ララは実妹を前にしても気にすることなく、オレへと向き直り話をする。

「リュート・ガンスミス……私は貴方が嫌いよ。大嫌い……ッ」

ララは眉間に皺を寄せ、憎しみの視線を向けてくる。

嘘偽りではなく、態度や声音から心底オレを嫌っているのが分かった。

「私はランス様の過去を知っている。誰か一人でもいい。誰かがあの時、手を差し伸べていれば……いいえ、小さな優しさでもいい。あの人に少しの心を向けてさえいれば今、あの人はここまで苦しむこともなかった」

ララが犬歯すら剥き出しに隠すことなく敵意を向けてくる。

「だから私は貴方が大嫌い……だから貴方は私の手で殺す……ッ! ランス様からのご許可は頂いている。ここで死んだらそれまでだとね」

彼女の言葉にオレ達は銃器を構える。

ララも腰を落とし戦闘態勢をとった。緊迫した空気が流中、唯一人だけオレ達の動きを止める者がいた。

「待ってください!」

「リース……」

ララの実妹であるリースが、声をあげ皆の視線を集めた。

その視線を真っ直ぐ受け止めつつ、彼女は要求を口にする。

「リュートさん、皆さん、時間がないのは承知していますが……どうか姉とは私一人で戦わせてください!」

この場に居る誰もがリースとララの確執を知っている。

オレは銃器を下げ、リースに道を譲る。

確かに時間は無いが、嫁の感情を無視することはできなかった。

リースがこの時を待っていたのを銃器製作依頼を通して知っているからだ。

彼女は一人、歩みオレ達より前へと出る。

その手に収まっているのはいつものPKMではなく、 弾倉が入っていない(、、、、、、、、、) SAIGA12Kだ。

二人が魔物大陸、元女魔王アスーラが眠る地下洞窟以来、久しぶりに対面を果たす。

ララ自身、やる気を削がれたように溜息をつく。

「やはり予知夢の通り話が進むのね。めんどくさい……」

リースから聞いた話だが――ララが彼女達の父親にあてた手紙には、『もしリュートさんの後を追い結ばれたなら、将来確実に自分達は姉妹で殺し合いをする。その覚悟があるなら、自身が望む未来を突き進むといい』と書かれていたらしい。

ララの口ぶりからしてその時が今のようだ。

ちらりと彼女の視線がリースの手の中のSAIGA12Kへと向けられる。

「しかもここまで来て、まだ私を無傷で捕らえようとしているなんて……本当に成長しないわね」

その瞳には侮蔑の光が宿る。

リースがハイエルフ王国エノール時代のコンプレックスを抱えていた彼女だったならば、姉の視線だけで怯んでいただろう。

しかしオレ達と出会い数多くの経験、試練に揉まれた彼女からすればどうというものではない。

リースは――リース・ガンスミスは実姉の強いプレッシャーを正面から受け止めながらもう一歩前へと進む。

「姉様、わたしが本当に成長していないかどうかはこの戦いの後、存分に考えてください。捕らえたら魔術防止首輪で拘束させて貰いますので、考える時間だけはたっぷりとありますから」

「リース……言うようになったわね……」

ララは額に青筋を浮かべ、再び戦闘態勢をとる。

リースも彼女に向けてSAIGA12Kの銃口を実姉へと向けた。

こうしてリースvsララの姉妹対決が開始された。