軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第356話 ランス過去編 魂

ケスラン王国が完全に征服される。

戦後処理中、シラック・ノワール・ケスラン王の執務室から一冊の古い手記が発見された。

恐らくこの手記が、ケスラン王を狂わせた原因だろう。

状態維持の魔術がかけられているからか、状態はよかった。

中身を確認すると、どうやら最後の魔王、アスーラと恋仲になっていた初代ケスラン王の物だと判明。

初代国王個人の私物。

密かに記した手記だったため、メルティアが回収を取りこぼしたのだろう。

そしてシラック・ノワール・ケスラン王が偶然、城内のどこかにある隠し戸か何かを見つけ、手記を発見したのだろう。

彼は中身を読み進めると、五種族勇者が女魔王アスーラを裏切っていたことを知る。

初代ケスラン王は女魔王アスーラに見捨てられ、裏切られた訳ではない。

しかし、その事実を知ったのは初代国王が歳を取り、老い先短い老人になってから。

さらに五種族勇者達は、 冒険者斡旋組合(ギルド) を設立し、他にも制度や他大陸との貿易、通貨制度制定、人材育成機関などを整える。

五種族勇者達は、魔王討伐後の急速な復興の中心であり、象徴、原動力となっていた。

さらにケスランは、『最後の魔王が手を貸し作られた国』ということで、当時の人々に白眼視されたらしい。

そのせいでケスランの人口は激減。住人の流出は抑えきれなかった。

また他大陸の街の方が若く、活気があり、人も物も集まる。

結果、ケスランは縮小を余儀なくされた。

時代が進み『最後の魔王が手を貸し作られた国』という白い目は下火にはなった。

だが国力は落ち『歴史と伝統だけが取り柄の小国』になってしまう。

真実をなぜか知った初代ケスラン国王だったが、今更、小国の老い先短い王が何を言っても無駄だと悟る。

手記には『どうしてあの時、信じてやれなかったのか』云々と泣き言がつらつらと書かれていた。

読み進めうんざりしたところで、興味深い内容が書かれていた。

初代国王は、女魔王アスーラから結婚指輪として『 番(ツガイ) の指輪』なる物を受け取ったらしい。

国王曰く、『彼女の手が光ると同時に、二つの指輪が生み出された』『指輪には彼女の綺麗な横顔が刻まれていた』云々と。

指輪は以後、代々ケスラン内部で脈々と受け継がれていたらしい。

(魔王が作り出した指輪か……)

しかし城内を制圧し、調べた限りそれらしい指輪を発見していない。

もしこの指輪を手にして、未だに魔物大陸奥地で現存するといわれる女魔王アスーラと接触すれば、彼女を味方に出来る公算は高い。

この価値に気付き、僕と同じように考え、女魔王を味方につけメルティアに牙を剥くことも十分ありえる。

念のため城内をもう一度調べ直すように指示を出す。

僕の予想では国外脱出した生き残り達が持っている可能性が高いが……。

(ララが戻ってきたら、そのあたりについても尋ねてみるか。もしかしたら彼女の『精霊の加護』の『予知夢者』で指輪がどこにあるのか、誰が所持しているのか分かるかもしれない)

昨夜、ララを協力者として手を結んだ。

その後、すぐ彼女は組織『黒』を立ち上げる際、頭となる人物の救出へと向かっていた。

その人物はケスラン王族の生き残りであるシャナルディア・ノワール・ケスランだ。

ケスラン最後の国王――シラック・ノワール・ケスラン王の弟、その娘らしい。

『黒』はケスラン復興と理想の世界を創り出すため、魔王復活を目論む組織、となる予定だ。

さらに『黒』のトップがケスラン王族なら内外に強い説得力を持たせられる。

メルティアや 始原(01) 、他関係者の目を向けさせるスケープゴートにはもってこいだ。

一方、昨日到着したハイエルフ王国側は、トップであるララが突然行方を眩まし、戦争どころの騒ぎではなくなっている。

事情を知る自分としては申し訳ない気持ちだが、彼女を手放すつもりは今のところ無い。

僕自身が立場的に動けない以上、世界中を回る代わりが必要だ。

ララほど、その役目に適している人物はいない。

とはいえ、未だ出会ったばかり、彼女を心の底から信じるのは無理だ。

いつ彼女に裏切られてもいいように手を打っておく予定だ。

――しかし、実際に『裏切られても』を考える必要はなかった。

ケスランとの戦争後、ララ・エノール・メメアは精力的に世界中を動き回った。

人材を集め、情報網を構築し、『黒』の組織力を強化。

着実に魔王や 神核(しんかく) 、五種族勇者の過去などの情報を伝えてくれた。

さらに彼女の『精霊の加護』、『予知夢者』で転移技術を教えてくれた。正確には、未来で僕が習得した転移技術をララ経由で過去へと教えてくれたのだ。

転生者でもないのに、ララはまさにチート能力者としかいえない。

現状、ララとの情報交換の場は、短い場合は三ヶ月、長い時は半年に一度、深夜、メルティア城の一角でおこなわれる。

誰も近付かないのを把握した埃臭い部屋で、僕が裏から手を回し通行を許可したララが報告書を提出するという流れになっている。

転移技術に関してもその場で報告書に記載されていたが、

「なにぶん、視た物を覚え書き写しているだけなので私にはまったく意味が分からなくて……。ご説明できず申し訳ありません」

「いや、これはしかたないよ。正直、僕でも理解に苦しむもの……」

報告書には複雑な数式と概念的言葉がつらつらと書かれてあった。

前世、地球のSF小説に出てきそうな文書説明だ。

これでも精一杯、可能な限り分かりやすいように書こうとしている努力が行間や文章から伝わってくる。

とりあえずこの報告書を参考に転移魔術の技術を磨くしかない。

時に彼女は自国すら裏切った。

ハイエルフ王国エノール領内に存在する結界石。

魔王の封印場所に入るためにはどうしてもあの結界石を破壊する必要があった。

その上でララが立てた計画は――結界石を破壊し、注目を集めている間に魔王の封印場所へと侵入するというものだ。

正直に言えば、僕はその作戦に反対だった。

別にハイエルフ王国エノールがどうなろうと構わない。

しかし、結界石破壊の際、リュート――あの 掘田(ほった) 葉太(ようた) くんにひっかきまわし注目を集める役をやらせるのが気に入らなかった。

彼は僕の復讐相手の一人だ。

その相手が魔術の才能も持たず、この魔術、魔物が跋扈する世界に転生した。

結界石を破壊した場合、大量の魔物が溢れ出る。

もしその魔物達に掘田くんが殺害でもされたら……僕の復讐はいったいどうなる!?

だが、結局はララの要求を飲む。

別に彼女の言葉を尊重した訳ではない。

これから先に起きる出来事に掘田くんが必要だからだ。

何に必要かというと…… 神核(しんかく) をこちらの想定通り扱うための生け贄として捧げる必要があった。

現在、ララが『黒』を使い、また『予知夢者』によって得た情報から分かったことがある。

神核(しんかく) 、6つに分裂された 魔法核(まほうかく) 、さらに分かれた 魔術核(まじゅつかく) ――全て魂に直結し、その『核』を通して魔術や魔法、神法を行使することができる。

魂がガソリン、『核』がエンジンのようなモノだ。

ただし問題があり、前世地球の魂を持つ僕達では、エネルギーの質が違うため本来このエンジンを動かすことができない。

むしろ僕が魔術師Aプラス級の魔術師に到達したのも奇跡に近い。恐らく僕の魂がこの世界のモノに近かった結果だろう。

まだ魔術核が質の悪いエネルギーでもまだ動くエンジンだから出来ている芸当だ。

しかしより高度な魔法、神法を行使しようとした場合、暴走を引き起こし魂そのものを喰われることになる。

そうなったら生まれ変わることすらできなくなるだろう。

では、どうすれば 神核(しんかく) や 魔法核(まほうかく) を正常に扱うことできるのか?

そこで必要になってくるのが掘田くん――同じ世界の魂を持つ人物である。

わざと 神核(しんかく) か 魔法核(まほうかく) に同じ世界の魂を持つ人物のを喰わせる。そうすることで核を、その世界の魂の基準に合わせることができるらしい。

だから同じ復讐を果たしたい人物の一人である掘田くんが、目の前に居ても手を出せずにいた。

神核(しんかく) を手に入れるためには、どうしても彼の魂が必要だからだ。

さらに下手な刺激を与えれば、 魔法核(まほうかく) を与えた際、手痛い反撃を受けてしまう。

魂を喰わせるためにも、力を使ってもらう必要があるからだ。

不完全とはいえ 魔法核(まほうかく) の力は魔術師S級を遙かに凌駕する。

そんな相手を敵に回して僕が殺害されたら本末転倒だ。

問題は『どうやって、掘田くんに 魔法核(まほうかく) の力を使わせるか』だ。

最初は『黒』をぶつける予定だったが、想像以上に掘田くん――正確には彼らの 軍団(レギオン) が強すぎた。

僕自身、『転移魔術』なんてチート魔術を身につけたが、彼も大概だ。

まさか魔術と魔物の世界で、前世地球の軍事兵器をあそこまで開発するなんて……。

いくら魔術や魔術道具、人材に恵まれたからといって、あれはやりすぎだ。

さすがに実力者を揃えた『黒』でも、現代兵器で武装した掘田くん達には手も足も出ないだろう。

悩んでいると、幸運にも良い人材を手に入れた。

僕を前世でいじめ抜いた 相馬(そうま) 亮一(りょういち) だ。

彼もこの世界に転生していた。

すぐにでも拷問にかけ、今まで味わってきた屈辱以上を与えたいところだったが、思いとどまる。

一芝居打ち、相馬を掘田くんにぶつける作戦を思いついた。

最初、ララは僕をふりとはいえ殺害するマネを嫌がったが、なんとか説得。

お陰で相馬は面白いように踊り、 魔法核(まほうかく) を手に入れた後、存分に力を使ってくれた。

最後は魔王となり暴走。

掘田くんの手により、葬られた。

そして僕はついに念願の前世、地球人の魂に調整された『 魔法核(まほうかく) 』を手に入れることに成功したのだった。

<第21章 終>

次回

第22章 崩壊編―開幕―