軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第342話 健康的な地獄

軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) 、3日目。

マスク男達によってスタッフ本部が占拠され、人質を取り立て籠もる事件が起きた。

しかし無事に人質も救出し、無差別テロを防ぐ。

箱トラップの爆発も、 8.8cm対空砲(8.8 Flak) の空砲と楽団員達のお陰で演出の一種として受け入れられ下手な混乱を避けることができたのも大きい。

死者が出なくて本当によかった。

スノー達によるカウボーイコスでのガンプレイがステージで見られなかったのは残念だが、人死にや怪我にはかえられない。

いつかお披露目する機会もあるだろう。

お客様達による投票――『 大々祭(だいだいさい) で一番よかった軍団は?』の結果は集計待ちだが、今回の派手なステージによる影響もあり、ほぼぶっちぎりで PEACEMAKER(ピース・メーカー) が首位を取りそうだとのことだ。

人質救出や無差別被害を出さないため頑張ったが、目に見える形で評価されるのはやはり嬉しいものである。

ちなみにリズリナが所属する軍団、 宝石と石炭(ジェム&コール) の順位はというと――ぶっちりぎの最下位らしい。

リズリナは目を覚ましたが、情緒不安定らしく『早く結婚しなくちゃ……あの人のようになる……ッ』と怯えているらしい。他軍団員も昨夜のマスク男達の乗っ取りでショックを受けているため、3日目はスペースを開かなかった。

祭り期間中、スペースを訪れたお客様は『20人いないのではないか?』とさえ言われている。

あのゴーレムは凄かったが、魔石の原石などは地味過ぎたもんな……。

祭も終わり夜、ようやくスタッフ本部を占拠したマスク男達を尋問する時間が取れる。

場所はオレ達が止まっている臨時宿泊場の一室だ。

室内には家具一つ、窓もないただっ広い空間だ。壁も厚いため外へ声が漏れる心配もない。

倉庫や物置として使って欲しいと建てられた部屋だったが、リースの無限収納があるので放置していた。

尋問として使うとは想定していなかったが。

なぜこれほど遅くなったかというと……演奏終了後、 8.8cm対空砲(8.8 Flak) の片づけもだが、祭り会場で爆音に驚き怪我人や重傷者が出ていないかの確認に奔走した。

また他に似たような箱トラップが無いかの一斉調査&注意勧告にも走り回った。

もちろん祭スタッフだけでは手が足りず、オレ達 PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバーも協力して動いた。

お陰でステージ後はスペースを開くことができなかった。

そんな中、投票でほぼぶっちぎり首位だというのだから本当にありがたい。

調査の結果、スタッフ本部以外に箱トラップのような代物はなかった。

『あれだけの代物をそうそういくつも作れるものではありませんわ』とメイヤが言っていたが、確認が取れて安堵する。

「しかし今回はメイヤに色々助けられたな。箱トラップの分析や解決方法。とくに急遽、ステージで演奏してくれる楽団員達を連れてきてくれたのは本当に助かったよ」

「リュート様のお役に立てるとは、これ以上の喜びはありませんわ!」

「後で彼らにもお礼を言いたいんだけど、まだ祭り会場にいるのか? もし宿がなければオレ達と同じで申し訳ないが、スペースを空けるけど」

「い、いえ! お気になさらず! 彼らにはわたくしから十分に礼を尽くしておきますから! それに宿屋のご心配も必要ありませんわ! 彼らはすでに会場から出発しておりますので!」

メイヤが慌てた様子で喋り出す。

まるでオレと楽団員達を接触させたくないような口ぶりだ。

メイヤと楽団員達は一体どういう関係なんだ?

「そ、そんなことより今は彼らの尋問を優先すべきですわ!」

彼女は慌てた様子で矛先を目の前に拘束されているマスク男達――現在はマスクを取られ素顔を晒している元マスク男達の尋問へと向ける。

3人中二人は人種族で、リーダー格らしい男性は竜人種族だった。

今回は前回の失敗を踏まえ、口内までチェックしている。

そのリーダー格の竜人種族男性が代表して答える。

「クッ、殺せ!」

まるで魔物に捕まった女騎士のような反応だ。

男にされるとただただうんざりする。

「すぐにどうこうするわけないだろ。まずはオマエ達に指示を出している『頭領』のことや、どうしてメイヤを狙っているかの話を聞かせてもらわないといけないんだから」

「ふん! たとえどれほど苛烈な拷問を受けようとも、偉大なる頭領のことを話す訳がない!」

「また偉大なる頭領か……」

昨夜、捕らえた男達も似たような反応をしていた。

本当にその『偉大なる頭領』というのは人望があるな。

ただ昨夜、捕らえた男達と違うのはなぜか、同席するホワイトに対してちらちらと怯えた視線を向けていた。

ホワイトの姿に気付いてから、男達が怯える様子を見せていたので尋問の役に立つかと思い彼女に付いて来てもらったのだが……。

オレは気になって男達に聞こえないようこっそりとホワイトに尋ねる。

「あのホワイトさん、どうして彼らが怯えているか分かりますか?」

「いえ、とくに思い当たる理由はありませんが……」

彼女は不思議そうに首を傾げる。

本当かな……。この人は氷系統の最高峰、魔術師S級の『氷結の魔女』。魔術師としてエリート中のエリートだが、数日一緒に過ごしてポンコツな人だと理解した。

スノーも魔術師として氷系統が得意なエリートだが、アホの 娘(こ) なんだよな。

氷系統が得意な魔術師は等しくポンコツになるのか、またまた師に似て弟子もポンコツ化したのか、もしくはその逆か。

つい余計なことを考えてしまう。

そんなオレに対して、リーダー格の男が意味深な笑みを浮かべる。

「くっくっくっ……素直にメイヤ様を渡さなかったことを後悔するがいい。貴様らは我々を敵に回したのだ。たとえこの場で我々が殺されようとも第2、第3の刺客が送られるだろう」

脅しなのだろうが、彼らの今までの言動が間抜け過ぎてまったく怖くない。

ただただこれからも彼らのような相手が向かって来ると考えただけで鬱陶しい。

とはいえミューアに彼らを引き渡したら、確実に『死んだ方がマシ』なことをしても口を割らせようとするだろう。

「…………」

背後にある入り口を振り返る。

入り口の隙間から、禍々しいオーラを発して男達を引き渡すよう目で訴えるミューアが居た。

今回の一件で、未だに男達の素性が特定できていない。そのせいで彼女のプライドは大いに傷つけられている最中である。

ミューアの瞳が『早く身柄を引き渡せ』と訴えていた。プライドに懸けて意地でも男達の口を割らせるつもりなのだ。

しかし今は 軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) ――お祭りなのだ。

祭で血を流すのも、死者も拷問も似合わないし、怪我人は出したくない。

かと言って、このまま男達を放置する訳にもいかないし……。

腕を組み考え込む。

すぐにとある人物の姿が思い浮かんだ。

オレは意地の悪い笑みを浮かべて、男達に話しかける。

「もう一度訊くが、素直に頭領やメイヤを狙う理由を話すつもりはないか?」

「くどい! 絶対に口を割らんぞ! 我々の忠誠を侮るなよ、小僧!」

リーダー格の男含めて、全員が強い意志を瞳に宿し睨みつけてくる。

「くっくっくっ……ならばその忠誠心がどれほど持つか試してやろう」

オレは自身の思いついた責め苦方法に思わず悪い笑みを漏らしてしまう。

男達はオレの意地の悪い笑いに一瞬だけ怯むが、覚悟を決めた表情をすぐに取り戻す。

「いくらでも試すがいい。だがどれほどの責め苦を、飢えを、拷問を受けようとも我々は決して口を割らん!」

「責め苦? 飢え? 拷問? おいおいまさかその程度の生やさしい目に遭うと思っているのか? だったらそんな意識はさっさと捨てた方がいいぞ。オマエ達が考えている以上の出来事が待っているんだからな」

男達は緊迫した表情で唾液を飲み込む。

オレは彼らに対して嗜虐的な笑みを浮かべ断言した。

「これから健康的な地獄へ送り届けてやる」

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軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) 終了後、翌日。

後かたづけをラヤラ達に任せて、オレ達は新型飛行船ノアで一路魔人大陸へと向かった。

ちなみに集計結果が出て、見事 PEACEMAKER(ピース・メーカー) が1位を獲得。リズリナの軍団は最下位となった。

彼女との賭けに勝利したのはいいが、今は急いでいるためリズリナの土下座は戻ってきたらになる。

だが自分としては彼女に土下座させる代わりに、ある要求をする予定だ。

魔人大陸に辿り着くと、真っ直ぐクリス実家のブラッド家へと向かう。

目的の人物はもちろん旦那様である。

前に『黒』の下部組織が存在する孤島で海賊風の男達を尋問してもらった。

今回も事情を話、旦那様に 大々祭(だいだいさい) でテロ行為をおこなった男性12人を引き渡し、海賊男達にしたような『筋肉トレーニング』をしてもらう。

前回、海賊男性は約一時間でギブアップした。

今回の男性達は異常に忠誠心が高いので、1日ぐらいは持つかもしれない。

旦那様には『手加減無しでお願いします』と伝えてある。

血の代わりに汗を。

拷問の代わりにトレーニングを。

飢えや粗末な食事の代わりに、筋肉を育てるため上質な肉を腹一杯以上食べてもらう。

さぁ楽しい楽しいトレーニングの始まりだ!