軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第334話 1日目・最終。みんな大好き占い

軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) 、1日目も無事に終わり、会場に来ていたお客様達は近場の港街へ馬車に乗って移動する。

泊まっている宿に帰っているのだ。

祭を開催しているオレ達はというと、会場の側にある臨時宿泊場に今日も泊まっていた。

オレ達が使用している宿は、土色をした箱形の建物だ。

土魔術で急造で作り出されたため、他の 軍団(レギオン) 関係者達も似たような宿に泊まっている。

室内もシンプルで大きく広いだけ。

家具など何一つ無い。

雨露をしのぐだけの建物である。

オレ達にはリースの『無限収納』があるため、家具を配置し住みやすい環境を簡単に作り出すことができる。

他 軍団(レギオン) は、土魔術でテーブルや椅子を作ったり、近場の港街で家具などを買って配置しているようだ。

なんだかんだ言って、港街が近いので欲しい品物があれば馬車や徒歩、魔術師なら肉体強化術で走ればすぐに辿り着き買うことができた。

欲しい品物――たとえば、部下達をねぎらうための酒精や食料品を多種多様買っておくこともできる。

食堂代わりに使っている割り当てられた建物の一つに、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) &新・純潔乙女騎士団団員達が勢揃いしていた。

テーブルには事前に港街で買い込んでいた食料品と酒精、ジュースなどが並んでいる。

オレは酒精が入ったコップを手に立ち上がると、咳払いをしてから話を切り出す。

「みんな、お祭り一日目ご苦労様。お陰様で現在、 冒険者斡旋組合(ギルド) スタッフ曰く、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) が暫定の一位になっているらしい。これも皆が頑張って準備をしてくれたり、お客様に丁寧に応対してくれた結果だ!」

この報告に皆が色めき立つ。

騒ぎが静まるのを待って、話を続けた。

「今回は一日目を無事に乗り切り、暫定一位となった祝いを兼ねてささやかながら席を設けさせてもらった。明日もあるから羽目を外してくれとはいえないが、存分に楽しんでくれ! それじゃカンパイ!」

『カンパイ!』

オレのかけ声に皆が陶器製の杯を掲げる。

団員達は皆、楽しげにテーブルに並べられた食事に手を伸ばす。

「リュートくん、お疲れ様」

「ありがとう、スノー」

席に着くとすかさず左隣に座るスノーが、取り皿に料理を確保し置いてくれる。

オレは取り皿にある料理を口にしながら、酒精を飲む。

『暫定でも一位は凄いです』

「これも皆さまが一丸となって屋台や出し物をしたお陰ですね」

スノーとは反対側、オレの右隣に座るクリスとさらにその隣に座るココノが声をかけてくる。

「それに他 軍団(レギオン) は、大勢の人達を捌ききれず問題が起きていたというのもありますね。かなりの数諍いもあったようですし……。その点、うちは列整理でも、不埒者達の横暴にも即時対応出来たのが評価に繋がったのでしょう」

「これも全てリュート様の手腕! まさか魔術道具開発だけではなく列整理から応対マニュアルまで全て作り出すなんて、そこらへんに居る天才凡夫とは格が違うまさに唯一天才神ですわ!」

オレの向かい側に座るリースは、冷静に一日目の状況を分析し、なぜトップを取れたのか理由を推測する。

リースの隣に座るメイヤは、瞳を輝かせ毎度の意味の分からない台詞を叫ぶ。

ちなみに『天才凡夫』って、天才なの? 凡夫なの? どっちだよ。

リースの言葉ではないが、各軍団はこのようなお祭りごとが初めてのため事前に起きる問題を予想できず対応に苦慮していた印象がある。またその結果なのか客同士の諍いや軍団団員と客が争う場面もあったとか。

一方、オレ達は事前に作成した応対マニュアルのお陰で問題が起きても、スムーズに対処することができた。

このマニュアルの大筋を作ったのはメイヤの言う通り、オレ自身である。

前世、地球、日本の夏と冬。

世界最大のオタクの祭典についてネットで何度も見たことがある。

そのネットページで、紹介されていた問題&応対方法を参考にして、今回流用させてもらったのだ。

数十万人規模の人が来ているのに、一度も死亡事故等起きていない祭典のマニュアルである。

実際、オレ達が作り出した応対マニュアルが凄すぎて、 大々祭(だいだいさい) 運営委員スタッフから『できればマニュアルを写させて頂き、他軍団に貸し出したい』という申し出があった。

大々祭(だいだいさい) に来ている人数は、数十万人規模とはいかないがそれでも万は超えている。

このまま放置すれば、2日、3日目に怪我人ではなく事故が起きて死者が出るかもしれない。

そうなってしまったら後味が悪いため、今回は製作したマニュアルを無償で貸し出した。

スタッフ側はこれを早急に写し、各軍団に配り列の整理、混雑した場合の入場制限、入場滞在時間の設定などのやり方を学ばせるらしい。

考えてみると、前世の日本は食文化や製造技術だけではなく、こんな応対マニュアルですらチートなんだな……。

もしマニュアルなしで、軍人ではなく一般人が何十万人も集まるイベントが起きたら確実に死亡事故が起きるんだろうな。

「あら、これ凄く美味しいわ」

問題といえば――超弩級の問題を引き起こしてくれたハイエルフ族魔術師S級、『氷結の魔女』のホワイト・グラスベルは、美味しそうにスノーの隣に座り屋台のイモモチを食べていた。

屋台の商品はリースの『無限収納』に材料が大量にストックされているので、多少この席で食べられても問題は無い。

また食べている姿が小動物っぽくて、その姿を見ていると思わず和んでしまう。

ちなみに彼女の来ている衣服は、メイヤのドラゴン・ドレスである。

最初に着ていた衣服は、汚れていたため洗濯中。

イベントで着ていた露出の多い衣服は恥ずかしいと涙目になっていたので、メイヤのドラゴン・ドレスを貸し与えた。

露出的にはこちらの方がまだ少ない。

メイヤの方が大きいため、だぼっとしているが、そこがまた良い味を出している。

やっぱり、チャイナドレス――いや、ドラゴン・ドレスはいいデザインをしているよな。

最初こそホワイトが引き起こした問題、受付嬢さんを修行の旅に出す――で、恐怖し混乱したせいで対抗するために慌てて人材確保に走った。

しかし、考えてみればオレ達には、人柱――げふん、げふん、勇者であるケンタウロス族、魔術師Bプラス級、アームス・ビショップが居る。

受付嬢さんが戻ってきたら彼をあてがえばきっと万事解決である。

だが人材確保に走った結果、今日だけで150人の入隊希望者が集まっている。

驚くことにその中の約3割ほどが魔術師なのだ。

これは驚くべき数値である。

元々、現在の人数では限界を感じていたので団員増加は渡りに船だと思うべきだろう。

旗頭役のいい人材、ホワイトも成り行きで手に入った(?)訳だし。

今後のことを考えれば、彼女のミスも塞翁が馬である。

「そういえば師匠、お祭り会場で無許可で商売をしてたって聞きましたが、何の商売をしてたんですか? 手荷物も持っていませんでしたよね?」

「『恋の伝道師』は廃業しちゃったから、次に得意な占いでご飯を食べようと思って。もし『占い屋さん』で食べていけない時は、もう私に出来ることはないから、体を売るしかないと思い詰めてたのよ」

いやいや魔術師S級。その肩書きだけでいくらでも食べていけるだろう。

だがある意味、彼女は PEACEMAKER(ピース・メーカー) に『体を売った』ことになるんだろうな。肉体労働的な意味で。

さらに話を聞くと――ホワイトは、人が集まっている場所に移動し、空いているスペースがあったからそこで商売の占いを開始。

だが、途中で捕まってしまい、オレ達に引き渡される結果になった。

「師匠、占いなんてできたんですか?」

「ええ、昔、ちょっと囓ってたのよ」

占いって『ちょっと囓ってた』程度で出来るものなのか?

「あら、リュートくん、その顔は信じていないようね。これでも結構、当たるって評判だったのよ。せっかくだから占ってあげるわ」

ホワイトは止める間もなく氷魔術で、球体の氷と台を生み出すと手をかざし占い始める。

(魔術がある世界で占いって……)とも思わなく無いが、近くに居るスノー達も興味深そうにホワイトの占い結果を待っていた。

彼女は厳かに結果を語り出す。

「……リュートくん、貴方は近い将来、古くからの因縁との決着をつけることになるでしょう。その際、大変なことになるようですが……自分自身の心に正直になることで、事態に立ち向かうことが出来るはずよ」

「古くからの因縁ですか……?」

ふいに、ミューアの台詞が脳裏を過ぎる。

『あのランスが心臓を差し貫いた程度で死ぬのですか?』

彼女の指摘とホワイトの占い。その二つの言葉が重なり、オレの背筋を寒くする。

今更ながら本当にランス・メルティアは死んでいるのだろうか?

自分のあずかり知らない世界の裏で、悪意が這いずり動き回っている気がしてならなくなる。

オレの不安を打ち破るように、スノーが明るい声で告げる。

「師匠が占い得意だなんて知りませんでしたよ! わたしも占ってもらっていいですか?」

「もちろん、いいわよ」

『あの! 私もいいですか?』

「わ、わたしも……ご迷惑でなければ是非、占っていただけると……」

「わたくしは是非、某リュート様といつ結婚できるかを占って欲しいですわ!」

彼女の申し出を切っ掛けにクリス、ココノ、メイヤ、他の娘達も続く。

しかしメイヤ、『某リュート様』って『某』を付ける意味はあるのか?

他にもリースやラヤラなどの団員達もホワイトの周りに集まり、わいわいと占いで盛り上がる。

いつの時代、場所、世界でも女性は占いが好きらしい。

ホワイトは少女達に頼られて、ご満悦のようだから問題はないだろう。

こうして、にぎやかに宴会が続く。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) の暗がり。

そこに男達が集まり密談をしていた。

「くっくっくっ……今日1日で祭や軍団の警備レベルを把握することができたな」

「この程度なら、我々にとって自宅の庭に入るようなもの」

「では初期の計画通り進めるということで、異存はないな?」

最後の男の言葉に、その場に集まる皆が黙って同意し頷く。

話し合いが終わると男達の影は暗闇に溶けるように、その場から消えてしまった。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

――以下、皆の占い結果。

スノーの場合。

「スノーちゃんとリュートくんの相性はばっちり。でも、相手の嫌がることを無理矢理続けているといつか嫌われちゃうかも? だから、もし相手に断られたら、ちゃんと諦める余裕を身につけましょう」

クリスの場合。

「クリスちゃんはこれからも皆に愛され、可愛がられ、頼られるでしょう。クリスちゃん自身も今の状態に満足しているようだし、現状キープを心がけるのがベストね」

ココノの場合。

「ココノちゃんは自分の気持ちを抑えすぎ。もっと自分のしたいこと、やって欲しいことを相手に伝えた方がいいわ。遠慮し過ぎて我慢する方が、リュートくんやクリスちゃん、他皆を傷つける結果になることが多いでしょう」

リースの場合。

「貴女が望む願いは遠くない未来に叶うでしょう。でも、望みが叶うとしてもリースちゃんが願った結果になるかどうかは分からないわ。だから、どちらの結果になろうとも受け入れる心の準備をしておいた方がいいかも」

メイヤの場合。

「メイヤちゃんとリュートくんの結婚は……メイヤちゃんさえ諦めなければたぶん叶います。メイヤちゃんが諦めさえしなければ。将来、確実に古い知り合いの邪魔が入るけど、貴女さえ諦めなければ……」