軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第325話 メイヤ・ドラグーンのライバル(自称)

竜人種族魔術師B級、リズリナ・アイファン

リズリナの父は竜人大陸1の商人である。

商売内容は多岐にわたるが、元々は魔石を扱う事業から現在の地位まで上り詰めた人物である。

故に魔石の扱いに関しては、他大陸の商人と比べて圧倒的に優れていた。

子供であるリズリナも幼い頃から、魔石を玩具にして遊んだこともあるほど親しんでいる。

彼女はアイファン家の長女。

上に兄が2人居るが、リズリナだけが魔術師としての才能を持っていた。

彼女は10歳になると、竜人大陸にある魔術師学校へと進学する。

そこで初めてリズリナは天才魔術道具開発者と呼ばれるメイヤ・ドラグーンと顔を合わせた。

竜人王国で五指に入る貴族出身。

竜人王国王子の幼馴染み。

3歳で複数の言語、文字書き、各種演算を習得した麒麟児、それがメイヤ・ドラグーンである。

顔を合わせたと言っても、入学式で並ぶ列から遠目で見ただけであるが――それでも彼女から放たれる圧倒的オーラにリズリナだけではなく、他新入生や教師陣も気圧されてしまう。

この時点でリズリナは、メイヤについて特別何かを思うことはなかった。

彼女は、メイヤを自分とは違う別世界の人物だと考えていたからだ。

だがある日、そんな彼女の考えは根底から覆された。

魔術道具に関する授業。

リズリナは商売柄、魔石の扱いに関して同学年では右に出る者はいないと自負していた。

しかしその自信はすぐに砕け散る。

メイヤはこの時点で天才魔術道具開発者としての才能を発揮し、魔石に関する知識はすでにプロの商売人、研究者以上のモノを習得していた。

リズリナは魔石の知識で、メイヤに圧倒的敗北を喫したのだ。

竜人種族は他種族に比べてプライドが高い。

この事件によってリズリナのプライドは大きく傷つけられた。そのため彼女はメイヤをライバル視するようになる。

魔術、運動に関してリズリナは勝利を収めることができたが、大本命である魔術道具や魔石に関するテストや知識にはまったく歯が立たなかった。

そして2人は魔術師大学校へと進学。

リズリナは魔術道具開発の研究を開始する。

魔術師大学校で本格的な魔術道具開発の知識を得て、メイヤより早く新しい魔術道具を開発することを目標に掲げた。

今度こそ彼女より上に立つという誓いを胸に、リズリナは寝食を忘れる勢いで授業を受け、空いた時間を新しい魔術道具開発の研究に当てた。

しかし彼女が授業を受けながら研究をしている間に、メイヤは1年で全世界の人々を驚愕させるまったく新しい魔術道具を開発してしまう。

その時、発明したのが『 七色剣(ななしょくけん) 』だ。

当時、『同じ武器に複数種類の魔石を付け替えることは不可能』というのが研究者の間での定説だった。しかし彼女は複数の金属、魔術文字を組み合わせることで魔石の付け替えを可能にしたのだ。

この発見、発明によりメイヤはたった1年で魔術師大学校を飛び級で卒業してしまった。

『 七色剣(ななしょくけん) 』の開発によって、メイヤ・ドラグーンは人々から『 魔石姫(ませきひめ) 』と呼ばれるようになる。

その名声は竜人大陸に限るなら国王に比類するほどになった。

一方、リズリナは努力したものの魔術師大学校では芽が出ず、普通に卒業。

卒業後は父親の支援を受けつつ魔石に関する研究を続けた。

途中、メイヤがスランプに陥ったことを知ったが、心配はしていなかった。

あの天才メイヤ・ドラグーンが表舞台から消えることなどありえないと確信していたからだ。

そしてメイヤは『魔力集束充填方式』を開発。

リズリナの予想を遙かに超えた発明を引き提げ、メイヤはついに歴史にすら名前を刻んだのだ。

「さらに貴女はいつのまにか魔王すら倒すなんて……さすがあたしの認めたライバルね!」

突然、誰も聞いていないのに過去話を語り出したリズリナは、正面に立つメイヤへと指先を向け高らかに宣言する。

つまり、リズリナは一方的にメイヤを敵視してライバル認定している訳か。

また迷惑な……。

リズリナは短く切った髪に竜の角、伝統衣服のドラゴン・ドレスに袖を通している。

胸はメイヤに比べて小さいが、腰回りや露出する太股が男性陣の視線を釘付けにする魅力を持っている。

顔立ちは目は大きいがやや鋭い。眉間の皺を寄せているせいで、気難しい美人といった印象を受けた。

もっと笑顔を浮かべれば、周囲の男性陣が放って置かないほどの器量なのだが。

まったくもってもったいない。

メイヤはリズリナの言葉に溜息を漏らす。

「リズさん、久しぶりに会ったというのに……昔とちっとも変わりませんわね」

「うぐぐぐぐ……ッ、自分以外の全てを見下したその態度……メイヤも全然変わらないわね!」

リズリナはメイヤの態度に歯ぎしりし、熱い視線を向ける。

ふいにその視線から熱が消える。

「ふっ、いつまでもそんな余裕の態度を取っていられると思ったら大間違いよ。今度開かれる 軍団(レギオン) 祭(仮)で、凡人が天才に勝てるということを証明してあげるわ!」

「 軍団(レギオン) 祭(仮)ですか?」

メイヤは『なんのこっちゃ?』という表情で首を傾げる。

当然の反応だ。

彼女は外出していたため 軍団(レギオン) 祭(仮)そのものを知らないのだから。

むしろなぜ、リズリナはオレ達が参加すると勝手に決めつけているのだろう。

思いこみの激しい娘なのかもしれない。

「メイヤ、メイヤ!」

「はい、なんでしょうか?」

オレはメイヤの側へ行くと簡単に 軍団(レギオン) 祭(仮)についての説明をする。

「なるほど 軍団(レギオン) で競い合うお祭りですか」

「そうよ! あたしもとある 軍団(レギオン) に加入しているの。今度こそ、貴女を下して才能が全てではないことを思い知らせてやるんだから!」

メイヤは面倒そうに肩をすくめる。

「まったくやれやれですわ。わたくしと貴女どちらの才能が優れているか比べるなど、意味のないことを……」

「ッ!? 勝負するまでもなく、『自分の方が優れている』と言いたいのね!?」

「いいえ、違いますわ」

リズリナの指摘をメイヤは一蹴する。

「わたくし達の才能などリュート様の天才性の前では、塵ゴミ同然。貴女は今、雲すら突き抜けそびえ立つ山の前で、どちらの砂山が大きいか競い合いましょうと言っているのに等しいですわ!」

「り、リュート様? リュート様ってあの今話題の魔王を倒した『黒髪の美丈夫』、『あまりの美しさ、かっこよさに視線だけで女性を恋させる、女殺しのリュート様』のこと?」

おい、ちょっと待て。なんだ今の二つ名は……。

適当にハードル上げやがって、その煽り文句のまま人前に出たら『あ、うん……』っていう空気になるのが目に見えるじゃないか!

メイヤもツッコミを入れず、話を進める。

「ええ、そのリュート様よ。わたくしは今、魔術道具開発の大天才でもあらせられるリュート様の下で弟子として勉強させて頂いているの。あの方の神才能の前には、わたくしなど足下にすら及ばないわ」

「う、噂には聞いていたけど……まさか本当にあのメイヤ・ドラグーンが弟子になっていたなんて。あたしはてっきり魔王を倒せたのも、貴女が勇者達をバックアップしたお陰だと思っていたのに……」

「わたくしの力など微々たるもの。簡単なお手伝いをしたに過ぎませんわ」

メイヤはフッと、自身の実力不足を示すように微苦笑する。

彼女は謙遜したが、実際魔王戦でメイヤが居なければオレ&ルナの2人で『マジック・バンカー・バスター』やM2の弾丸などの製作や補給をしなければならなかった。

さすがにオレとルナの2人だけでは手が回らず、過労で倒れていたはずだ。

メイヤの存在や貢献度は決して低くない。

なのに彼女の謙遜に対して、リズリナが攻める箇所を見つけたような悪い笑みを浮かべる。

「ふっ、メイヤ・ドラグーンも落ちたものね。まさかあの天才魔術道具開発者が、勇者様とはいえ一介の人物の下につき満足しているなんて。今回の 軍団(レギオン) 祭(仮)の勝者はあたしに決まったようなものね」

なぜそうなる。

本当に彼女はただ単純にメイヤに勝ちたいだけらしい。

しかし、メイヤが他者から悪く言われるのは妙に腹が立つ。

知り合い同士ということで黙って見ていたが、オレは我慢しきれず2人の間に割って入る。

「いい加減にしてくれませんか。メイヤを貶めるのは」

リズリナから守るようにメイヤの前に立ち、背後に庇う。

「外野は黙っててもらえるかしら」

「外野じゃないから黙っていられなかったんですよ」

「りゅ、リュート様……」

背後からメイヤの声が聞こえる。

その声は暖炉前に置いたアイスのようにトロトロにとろけていた。

リズリナが彼女の言葉を耳にして、目を大きく広げる。

「そう、貴方が『黒髪の美丈夫?』、『あまりの美しさ、かっこよさに視線だけで女性を恋させる、女殺しのリュート様?』と呼ばれている勇者リュートね?」

なぜか彼女の台詞には『?』が付いて回る。

ほら! やっぱり! 微妙な空気になったじゃないか!

誰だよ! 変な二つ名を広めた奴は!

オレは空気を変えるため、咳払いした後、改めてリズリナに向き直る。

「と、兎に角、メイヤは PEACEMAKER(ピース・メーカー) でオレの一番弟子として頑張ってくれています。だから、彼女を貶めるような発言は止めてください」

「なるほどメイヤ・ドラグーンのことを勇者様は弟子として信頼しているんですね」

「もちろん。彼女が居なかったら、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) を立ち上げることすら出来なかった筈ですから」

事実、メイヤが協力してくれなかったらクリスの母親であるセラス奥様を助け出すことすらできず、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) を立ち上げる所ではなかっただろう。

リズリナが挑戦的な笑みを浮かべる。

「では、賭けをしませんか?」

「賭け?」

「そうです。 軍団(レギオン) 祭(仮)であたしが所属する軍団が、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) に勝ったらメイヤ・ドラグーンと一緒に土下座をすると。もちろん信頼厚い弟子のためならこの程度の条件呑めますよね?」

「リュート様、そんな条件呑む必要はありませんわ!」

メイヤが背後から袖を掴み止めようとする。

しかし大切な弟子を馬鹿にされ、こんな挑発をされて黙って引き下がれるオレ達ではない。

「分かった。その条件を呑もう。ただし、オレ達が勝ったらあんたがメイヤに土下座して謝るんだぞ?」

「もちろんよ! ふふふ! 楽しいお祭になりそうね! メイヤ・ドラグーン! PEACEMAKER(ピース・メーカー) ! 土下座の練習をしておくことね!」

リズリナは高笑いを残すと、正門から去って行く。

オレがその背中を見送っていると、メイヤが正面へと回り込み深々と頭を下げる。

「り、リュート様! わたくしのためにあんな約束をさせてしまい大変申し訳ありませんわ!」

「気にするなって。メイヤを馬鹿にされて黙っていられる訳ないだろ」

「り、リュート様……ッ」

顔を上げたメイヤは感動で瞳を潤ませ、鼻水をすすった。

オレはそんな彼女に会心の笑顔で断言する。

「それにオレが何の勝算もなく、あんな勝負を受ける筈がないだろ。 軍団(レギオン) 祭(仮)で確実にトップを取る方法があるから、相手の賭けに乗ってやったんだよ」

「さすがリュート様ですわ! 魔術道具や兵器、乗り物だけではなく、お祭りに関しても精通しているなんて! やはり天才は何をやらせても天才ということですわね! 森羅万象有象無象全てリュート様の手のひらの内! 是非、どうかリュート様の一番弟子であるわたくしにもその方法をお教えくださいませ!」

「もちろん教えるに決まっているだろ。でもここだと人が多いからな……」

昼ということで見物客は少ないが、それでもそこそこの人数は居る。

「も、申し訳ありません。つい興奮してしまって……」

「いや聞きたい気持ちは分かるよ。絶対に勝てる方法なんて聞いたら、気になるよな。だからこの場ではヒントだけ教えてあげるよ。メイヤもヒントを聞けばすぐに何のことか分かるはずだから」

オレは得意げな表情を浮かべてメイヤに告げた。

「ヒントは『ウ』で始まって、途中に『シュ』が入って、最後に『レ』が付く代物さ!」

メイヤはこのヒントを聞くと、なぜか絶望に顔色を染めた。

<第18章 終>

次回

第19章 大軍団祭編―開幕―