作品タイトル不明
第324話 嫁達との会話、軍団祭りについて
受付嬢(従姉妹)さんが帰宅後、ミューアとの話をし終えたら丁度お昼だった。
お昼を食堂で取った後、いったん PEACEMAKER(ピース・メーカー) のトップ陣を集めて緊急会議を開く。
もちろん議題は受付嬢(従姉妹)さんが持ち込んだ 軍団(レギオン) 祭(仮)の件についてだ。
オレ達が現在私室として使っている新・純潔乙女騎士団本部の客間へと集まってもらった。
参加者はスノー、クリス、リース、ココノ、シアだ。
「あれ、メイヤは?」
「都合悪く外出する用事があったようで、すでに出た後だったのでお連れすることができませんでした。申し訳ありません」
「入れ違ったなら仕方ないよ。緊急会議と言っても内容はそれほど重要性が高いものじゃないから」
シアがオレの疑問に答え頭を下げてくる。
手を振り、『大丈夫、たいしたことじゃない』というのを彼女や妻達に伝える。
オレは改めて、皆に受付嬢(従姉妹)さんが PEACEMAKER(ピース・メーカー) を尋ねてきたのか、理由を話し聞かせた。
「なるほど…… 軍団(レギオン) 祭(仮)ですか。ちょっと面白くないお話ですね」
まず初めに一通りの話を聞いたリースが柳眉を不快気に吊り上げる。
彼女に同意するようにクリス、ココノも眉間に皺を寄せた。
「わたしは面白そうだと思うよ 軍団(レギオン) 祭(仮)! それに今の人が集まり過ぎて身動きできない状況を何とかしてくれるんでしょ? だったら拒む必要なんてないよ!」
一方、スノーは 軍団(レギオン) 祭(仮)をどうも単純なお祭りだと勘違いしているらしい。
どうやら彼女は 軍団(レギオン) 祭(仮)に潜む政治的意図に気付いていないようだ。
これでもスノーは魔術師学校を卒業し、『氷雪の魔女』の二つ名を持つエリート魔術師なのだが……
「いや、スノー、リースが言いたいことはそういうことじゃなくてな」
オレは微苦笑を浮かべつつ、リースの言いたいことを丁寧に伝える。
始原(01) 問題で亀裂の入った PEACEMAKER(ピース・メーカー) との関係修復。 軍団(レギオン) 祭(仮)を開くことで、オレ達が未だ 冒険者斡旋組合(ギルド) の下だと内外にアピール。また自分達の利権を侵されないための釘差し云々だということを話し聞かせた。
一通り話を聞くと、スノーは誰も触れていない雪原のような真っ白な肌を怒りで赤くし、『プンプン』と頬を膨らませて怒る。
「なにそれ酷いよ! エル先生を助ける邪魔をしたのに、都合が悪くなったら手のひらを返すなんて! 都合が良すぎるよ! どうしてリュートくんは 軍団(レギオン) 祭(仮)参加にサインしちゃったの!?」
『手のひらを返す云々』は今のスノーが口にしていい言葉なのだろうか?
リースが怒るスノーを『まぁまぁ』と宥め落ち着かせた後、彼女も同じように疑問をぶつけてきた。
「確かに私もそこが疑問でした。どうしてリュートさんは参加にサインをしたのですか? もちろん参加しても問題無いと思います。ただ今日、すぐにサインをする必要はなかったと思うのですが。逆に参加して欲しい要求を逆手にとって、 冒険者斡旋組合(ギルド) にこちら側の要望を飲ませるチャンスだったと思うのですが」
さすがハイエルフ王国、エノール、元第二王女であるリースだ。
本人の気質はドジッ娘だが、政治的なことには慣れている。
確かに 軍団(レギオン) 祭(仮)に参加するのを渋ってみせて、 冒険者斡旋組合(ギルド) へ要望を通すことも可能だった。
もちろんオレ自身そのことには気付いていた。
ミューアもオレが一回目の会談でサインをするとは考えていなかったほどだ。
オレは彼女達にサインをした理由を聞かせる。
「……受付嬢(従姉妹)さんが結婚するって聞いて。気付いたら意識がなくなり、書類にサインをしていたんだ」
『!?』
告げた事実にその場に居た全員が驚愕する。
オレと同じように『どうして同じ容姿等なのに彼女は結婚できるのか?』と驚く者、この事実があの人の耳に入り凶暴化する可能性に怯える者、反応は様々だ。
「……そ、そんな事情があったなら、仕方ありませんね」
リースは震える声音で優しくフォローする。
クリス&ココノは抱き合いぶるぶると小動物のように震えている。
場の空気を変えようとスノーが無理矢理明るい声で尋ねてきた。
「と、ところで 軍団(レギオン) 祭(仮)って何をすればいいの? 屋台やみんなの前に出てお話とかすればいいのかな?」
「えっと、渡された書類には……基本的には参加する各 軍団(レギオン) にスペースを与えられてその中でならスノーが言ったように屋台やステージ、お客さんの前で話をしてもいいんだって。つまり好きにやれってことだな。できれば 軍団(レギオン) アピール、特色を表したモノがいいとか」
他にもやりたいことがあれば、 冒険者斡旋組合(ギルド) に事前に許可を取れば問題ないらしい。
結構、自由度が高いようだ。
『 軍団(レギオン) アピールを好きにしていいと言われると逆にやり辛いですね』
「まぁ今回初の試みだから 冒険者斡旋組合(ギルド) 側も手探り状態なんだろう」
クリスのミニ黒板に返事をする。
彼女の隣に座るココノが案を出す。
「やはりここはお客様を集めて、リュート様が歩んできた道や PEACEMAKER(ピース・メーカー) を立ち上げた理由をお話するのがいいですね。これをきっかけにわたし達の理念を多くの方に知って頂く良い機会になるはずです」
元天神教の巫女らしい意見だ。
ある意味、まっとうだが真面目過ぎる。
魔王を倒した勇者効果で人は来るが、楽しんでもらえるかは微妙なアイディアだ。
『お話をするだけでもいいですが、集まった人達にもっと楽しんでもらえるようお菓子を販売するのはどうでしょう? お兄ちゃんの作るお菓子は斬新で美味しいので、みんなに喜んでもらえると思います。またお菓子をきっかけにより多くの人が PEACEMAKER(ピース・メーカー) のスペースに来てくれるはずです!』
クリスがミニ黒板を押しつける勢いで主張する。
確かに彼女の言葉にも一理ある。
単純にステージで説法するより、屋台でお菓子等を売った方が儲けも出るし、人も集まりやすいだろう。
決して、クリス本人がお菓子を食べたい訳じゃないはずだ。
……だよね?
「はいはい! だったらもっと PEACEMAKER(ピース・メーカー) らしい特色を出すのがいいと思うよ。AK47やM10リボルバーなんかの試射なんてどうかな?」
「銃器の試射か……それはオレも考えたが危なくないか? 色々な意味で」
本場アメリカでも銃器の試射の際、事故が起きている。
異世界の一般人相手に、試射をやらせるのはちょっと怖い。
いくらオレ達が側について1対1でやったとしてもだ。
また技術流出や持ち出しなどの危険性もある。
あまり賛成はし辛いな。
だがリースはスノーの意見に賛成の声をあげる。
「実弾を使用するのは怖いので、たとえば非致死性装弾のようなモノに限定するのはどうでしょうか? もしくは実際に発砲するのは私達で、お客さんには遠くで見てもらうとか、やりようはいくらでもあると思いますよ」
「確かにやりようはあるな」
「それに魔王を倒したともて囃されてはいますが、私達を前にすると侮るようですから。『女子供が本当に魔王を倒したのか?』と疑う気持ちも分かりますけどね。余計を揉め事を避けるためにも試射をするのはありだと思いますよ」
まさか守るべき相手側に対して脅し――示威行為を進められるとは……。
だがリースの言い分も理解できる。
「なら 8.8cm対空砲(8.8 Flak) や120mm 滑腔砲(かっこうほう) 、M998A1ハンヴィー(擬き)なんかを展示するのも有りだな。どれも見た目がいいから、注目が集まると思うし」
「若様」
「どうした、シア?」
黙って給仕に徹していたシアが珍しく横から口を挟む。
彼女は真剣な面持ちで告げた。
「展示か、試射に是非『コッファー』をお願いします。攻防一体最強兵器であるコッファーを前にすれば 8.8cm対空砲(8.8 Flak) など以上に、示威行為に役立つと思いますので」
さすがにそれはどうだろう……。
とりあえず頭ごなしに否定するのも可哀相なので、『考慮する』と言葉を濁しておく。
本当にシアはコッファーが好きだな。
「他に何かアイデアがある人はいる?」
『アイデアではありませんが、他メンバーにも意見を訊いておくのはどうでしょうか?』
クリスの意見に皆が納得する。
この後、一度、新・純潔乙女騎士団メンバー達も集めて、アイデアを求めることになった。
「それじゃこんなところかな……」
「あの、アイデアではないのですが」
「どうしたココノ?」
軍団(レギオン) 祭(仮)の書類に目を通してココノが挙手する。
「この最後に書かれている『 軍団(レギオン) 祭(仮)に参加した軍団に投票で順位をつける』と書かれているんですが。これ一番になると何かあるんですか?」
「どれどれ……」
ココノ指摘通り、一番最後に書かれてあったが、トップに立った場合の詳細は書かれていない。
「特に何も聞いてないけど、たいした品物をもらえるとは思えないし。それにこういうお祭りイベントで順位を付けるってどうなんだろうな」
恐らく 冒険者斡旋組合(ギルド) は順位を付けることで、 軍団(レギオン) を競わせて祭を盛り上げようとしているのだろう。
だが、わざわざ彼らの思惑に乗ってやる必要はない。
争うより皆に楽しんで貰えることを重視して、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) は祭に参加しよう。
一通り話も終わり、気を抜くと――狙ったようなタイミングで誰かの怒声がオレ達に居る部屋にまで聞こえてくる。
『メイヤ・ドラグーン!!!』
その声音には押さえきれない怒りと憎しみが滾っていた。
尋常じゃない気配が、ここまで届くほどだ。
オレ達は顔を見合わせ慌てて、声がした方へと走り出す。
新・純潔乙女騎士団本部を出て、グラウンドを渡り、正門前に人が集まっていた。
オレ達目当ての観光客達も昼時のため人数は少ないが、皆一様に2人の女性から距離を取っていた。
一人はオレ達がよく知る人物――メイヤ・ドラグーンである。
もう一人の女性はメイヤと同じ竜人種族で短く切った髪から角が出ており、着用している衣服もドラゴン・ドレスである。
彼女は鋭い殺気に満ちた視線をメイヤへと向けていた。
「メイヤ・ドラグーン……あたしは絶対に貴女を許さない!」