軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第297話 帝国での出会い

帝国が政略結婚を狙っているからといって距離を置くわけにはいかない。

今、彼らの国は魔王レグロッタリエに狙われているのだ。

少しでも詳細な情報を渡し、備えてもらう必要がある。

それに政略結婚するつもりはないし、妖人大陸の覇権に手を貸すつもりもない。

その立場を堅持していれば、相手も諦めてくれるだろう。

予定している兵器開発をルナに任せて、オレ達は飛行船に乗ってザグソニーア帝国を目指す。

今回使用するのは、通常の帆船型飛行船である。

現在、新型飛行船ノアは改造中なので使用することができないためだ。

昔は通常の帆船型飛行船を使用していたが、ノアに慣れた身ではとても遅く感じてしまう。

これでも一般的には速い移動方法の一つなのだが。

しかし遅いことが必ずしも悪いことではない。

久しぶりに少しだけのんびりできるし、スノー達も帝国に着く前に化粧や衣装、装飾品を着こなす練習に没頭している。

どうもザグソニーア帝国についたら、『政略結婚の隙など微塵もない!』ということを言外に一発見せつけるつもりらしい。

この日のために出発前、彼女達はココリ街で買い物をして飛行船へと積み込んでいた。

メイヤなど金糸を惜しげもなく使った見事なドラゴン・ドレスを準備する気合いの入れようである。

スノー達もメイヤに負けないほど気合いを入れて準備に取り掛かっている。

問題がおきず、無事にレグロッタリエに関して話が出来ればいいのだが……。

一抹の不安を抱えながら、飛行船はザグソニーア帝国領内へと入っていく。

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ザグソニーア帝国。

妖人大陸で大国メルティア王国に次ぐ、第二の実力国家である。

首都人口、8万人。

貧民(スラム) 街など一部を除いて、それ以外は治安維持により比較的安全が保証されている。

帝国の特徴として他国と違い魔術師育成に力を注いでいる。

魔術師としての素因があれば種族、年齢、出生、犯罪歴すら問わず採用され、または帝国が運営する魔術師学校へと入学。授業料・生活費一切免除される。

だがこれほどの好条件でも、帝国の運営する魔術師学校へと入学する者はそう多くない。

理由は卒業後は帝国軍部への入隊が必須だからだ。

領内ではともかく、他大陸からわざわざ入学する物好きはほぼいない。

まれに多々問題を抱えた人物が外部から入学する場合はあるが……。

そのため帝国は他国と比べて圧倒的に軍に所属する魔術師が多いのだ。

飛行船が帝国につくと専用の飛行船倉庫へと案内され停泊した。

倉庫へ入れると後は帝国兵に任せる。

オレ達は飛行船を下りると、すぐに帝城へと案内される。もちろん向かう先は、ザグソニーア帝国皇帝が待つ部屋だ。

部屋は豪奢な客室で、入った瞬間に贅を尽くして作られていることが分かった。

部屋に入ると、ザグソニーア帝国重鎮らしき人物達がすでに部屋で待機していた。

その中心に品のいい紳士的な人物が立っている。彼こそザグソニーア帝国のトップ、ガリアル・ザグソニーア皇帝だ。

「お初にお目にかかります。 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長を務めますリュート・ガンスミスです」

「ザグソニーア帝国、ガリアル・ザグソニーアだ。リュート殿、遠いところから足を運んで頂き感謝する」

銀髪に髭、細身で昔はさぞハンサムだっただろうと思わせる面影がある。

皇帝というより、屋敷の執事をするほうがイメージ的にぴったりだ。

次にガリアルの口から順番に、背後に控える人物――やはりザグソニーア帝国重鎮達が紹介される。

皆、基本的には友好的な態度を取っている。

なかには態度や言葉こそ友好的だが、目がまったく笑っていない者が何人かいた。どうもオレ達が帝国に取り込まれるのが迷惑な人物もいるらしい。

特に軍部関係者にその反応が顕著のようだ。

そしてある意味で一番、オレを歓迎していない人物がいた。

「そして我が娘のユミリアだ。ユミリア、リュート殿に挨拶を」

「……はい、お父様。ザグソニーア帝国、第一王女、ユミリア・ザグソニーアと申します。以後お見知りおきを」

ユミリアは父親と同じ銀髪で、腰などは掴んだら折れそうなほど細い。なのに胸は大きく、お尻も女性らしいラインを描いている。

顔立ちも整っており、銀髪もあわさって神秘的な美しさを漂わせていた。

聞いた話ではその美しさから彼女は『 銀薔薇(シルバーローズ) 』と呼ばれ、貴族達からは羨望の的になっているとかいないとか。

そんな彼女はオレが部屋に入ると、眉根を寄せた。

気持ちは分かる。

スノー達は息荒く声高に否定していたが、一見すると女性と見間違うほどの美青年であるランスと比べれば、どちらが格好いいかは一目瞭然だ。

美青年、妖人大陸一の次期国王だった王子様、魔術師A級のランスと婚約していたのに、彼が死亡すると今度は有力 軍団(レギオン) とはいえ元一般人のオレと政略結婚させられそうになっている。

結婚相手がランスからオレでは、その落差が顔に出てもしかたないだろう。

帝国側の挨拶が終わると、次はこちらの番になる。

スノー達が妻として挨拶をする。

その中でガリアルが反応したのは、2人だ。

1人はリース。

ガリアルが目を広げ、問いかける。

「まさかとは思うが……リース殿は、ハイエルフ王国、エノールの第2王女、リース・エノール・メメア殿か?」

「はい、皇帝陛下。お久しぶりです」

リースはよそ行きの笑みを浮かべて礼儀正しく挨拶をする。

飛行船でこちらに向かう際、リースから昔、まだ皇帝となる前のガリアルと顔を合わせたことがあると聞いた。

なんでもハイエルフ王国、エノールでのパーティーに当時の皇帝と一緒にガリアルが顔を出して挨拶を交わしたとか。

そのため正体を隠すのは難しいとのことだったので、今回はこちらから明かすことにした。下手に隠して問題扱いされても面倒だからだ。

とはいえ会ったのはその一回だけだが。

「まさかリュート殿が、ハイエルフの王族を娶っているとは……。しかもリース殿はあの当時と変わらず美しいままですな」

ハイエルフ族は長寿で、生涯に1人としか結婚しない。

故に長寿と夫婦愛を司る種族として、人種族から絶大な支持を受けているのだ。

そんなハイエルフ族の王族が、オレの妻の1人になっている。

皇帝の瞳には驚きもあったが、羨望も混じっている気がした。

もしかしたら当時一目惚れしたが、立場上彼女を嫁に迎えることができず泣く泣く諦めていたのかもしれないな。

リースは営業スマイルを浮かべて答える。

「ハイエルフ族は生涯1人と結ばれ添い遂げると一般的に言われていますが、歴史上側室を持ったり、私のように一夫多妻制の輪に入る者もいます。ですが表沙汰になると面倒なので、どうか内密にお願いします」

「分かりました。帝国皇帝である我が名に誓い内密にいたしましょう」

この一件をネタに帝国側が、オレ達を自分達に取り込もうとする可能性がある。

だがリースは別にやましいことをしている訳ではない。もしそうなったら大義名分として脅されたことを掲げて、帝国に抗議すればいいだけだ。

そしてガリアルが次に反応したのはメイヤ・ドラグーンにだった。

さすが『魔石姫』という二つ名まで持つメイヤだ。

妖人大陸の帝国皇帝にまで名前を覚えられていたのは驚きである。

「話には聞いていたが、まさか魔術道具開発の天才であるあの『魔石姫』が本当にリュート殿の下に居るとは……」

「皇帝陛下のお耳にどのように届いているかは分かりかねますが、わたくしの才などリュート様の前ではゴミ屑、ガルガルのフン以下ですわ。リュート様こそこの地上に舞い降りた魔術道具開発の神。その英知、知識、発想力は天神様を超えて 超神(ちょうかみ) レベルだと断言しても言い過ぎることはありませんわ」

メイヤ、褒めすぎだ。

オレに対して冷たい態度を取っていた帝国魔術道具開発のお偉いさんが、文字通り目の色変えたじゃないか。『あの魔石姫にそこまで賛美される存在はどれほどなのか!?』と驚愕し、絶対に帝国に引きずり込もうと文字通り目の色を変えてしまった。

だいたい 超神(ちょうかみ) ってなんだよ。

ゴロ悪いってレベルじゃないだろう。

「あの魔術道具開発の天才である魔石姫にここまで手放しに褒められるとは、リュート殿は本当に素晴らしい開発者なのだな。是非、我が帝国の魔術道具開発部門で指導して頂きたいぐらいだ」

「自分など帝国魔術道具開発部門の皆様と比べたら……。彼女は少々物事を誇張する癖があるだけです」

帝国皇帝はメイヤの話を聞いて、興味深そうに食いついてきた。

一方、娘であるユミリアはよそ行きの微笑みを作っているが、瞳はまったく興味なさそうだった。もし人目がなければ枝毛探しを始めそうなほど冷めている。

挨拶も終わり、魔王の話に移ろうとしたが皇帝から、オレ達が移動で疲れているだろうからと詳しい話は明日ということになった。

帝国に居る限り、帝城への滞在するよう勧められ、また後日オレ達を歓迎するパーティーを開くとも言われた。

パーティーはともかく、帝城への宿泊は辞退し城下街で宿を取ろうとしたが、わざわざ魔王の件で話を聞くため呼び出し、城にも泊めなかったら外聞が悪い。なのでどうか帝城へ泊まって欲しいと言われた。

さすがに固辞するわけにもいかず、帝城へと泊まることになる。

正直、城にいるとユミリアを側につかされ、既成事実を積み上げられそうで嫌なのだが……。

とりあえず、その場は一度解散。

魔王の話は明日午後、関係者を集め会議室で話し聞かせることになる。

オレ達は部屋を後にすると、客間へと案内された。

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豪華な客間へと案内され、荷物を置いた後は一度帝城を出た。

冒険者斡旋組合(ギルド) に、現在帝国に居るということを報告するためだ。

正直、面倒だがやらないわけにはいかない。

折角なので帝国見物ついでに、皆で出かける。

最初、帝国側から護衛として兵士をあてがわれそうになる。恐らく監視の意味もあるのだろう。

しかし、兵士を連れて観光もへったくれもない。

また下手に護衛を引き連れて街で顔を売るようなマネもしたくなかったので、丁寧に断りを入れた。

城下街は大変にぎわっていた。

ここまで賑わい、人が多い街に来たのは初めてだが、それ以外取り立てて珍しい感じはしない。

事前に聞いておいた 冒険者斡旋組合(ギルド) へと向かう。

建物が規則によって整然と建てられているため、迷うことなく 冒険者斡旋組合(ギルド) へと辿り着く。

建物内に入ると、いつもの 冒険者斡旋組合(ギルド) だ。

ざっと見た限り、例の受付嬢さんによく似た親戚や本人はいなさそうだ。

もしかしたら北大陸のように上役として、奥に居るだけなのかもしれないが。

オレはさっさと 冒険者斡旋組合(ギルド) へ報告を済ませて、建物を出る。

積極的に受付嬢さんの親戚と関わり合うつもりはない。

用事を済ませて『さぁ帝国観光だ』と意気込むと、背後から声をかけられる。

「すまないが、そこにいらっしゃるのは PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長殿か?」

男性の声。

聞き覚えはない。

振り返るとそこには下半身は馬、上半身は人のケンタウロス男性が立っていた。

下半身は分からないが、上半身の人間部分は鍛え抜かれているのが着ている金属鎧の下からでも分かる。今にも金属鎧がはじけそうなほど筋肉が太いのだ。

だからと言って筋肉ゴリラというわけではない。

顔立ちは整っており、のばした髪を首もとで縛っている。

髪は長いが丁寧に洗い清潔にしているため、不潔感は微塵もない。

しかし、そんな彼にまったく覚えがない。

ケンタウロス族の知り合いといえばカレンぐらいなのだが……

無視するわけにもいかず、向き直り答える。

「はい、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長のリュート・ガンスミスですが。申し訳ありませんが、どちら様でしょうか」

「すみません、紹介が遅れました。私はケンタウロス族、魔術師Bプラス級、アームス・ビショップと申します。そちらの 軍団(レギオン) で雇って頂いているカレン・ビショップの兄です」

丁寧な物腰でカレンの兄であるアームスが自己紹介する。

カレンに兄が居るとは知らなかった。

クリスに視線を向けると、『コクコク』と頷く。どうやら本当らしい。

「これは失礼しました。改めて PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長を勤める人種族、リュート・ガンスミスです。カレンさんにはいつもお世話になっております」

「うちの愚妹がリュート殿のお役に立てているのなら安心です」

話を聞くとカレン兄であるアームスは、実家の仕事で帝国へと来ていたらしい。

魔王が復活。帝国が狙われていることを知ったため、皇帝が武器&防具を各地に大量発注したのだ。

カレンの実家もその発注を受けた一つで、元々高品質の武器&防具を作るということで反対側の人種族帝国でもその名前を知られている。

アームスは飛行船に武器&防具を詰め込み、部下達と一緒に急いで帝国へと来たらしい。

ちなみに街中で金属鎧を着ているのも、実家の宣伝のためとか。

「クリス殿とは実家で何度か顔を合わせた程度ですが、覚えてもらえてて嬉しいです。また結婚祝いの挨拶が遅れて申し訳ない。何分忙しいもので」

『お気になさらず。結婚の祝いの言葉はカレンちゃんからいっぱい頂いていますから』

「そう言って頂けるとありがたい。どうか今後ともカレンとは仲良くしてやってください」

『はい! もちろんです!』

顔見知り程度だが、クリスとも面識があるため2人は軽く会話をする。

アームスがクリスからオレへと向き直った。

「リュート殿は美しく、可愛らしい妻殿達がいらっしゃって羨ましいですね」

アームスはクリスとの会話を終えるとベタな褒め言葉を贈ってくる。

スノーやクリス、リース、ココノ、メイヤが照れる。

いや、なんでメイヤが照れるんだよ。

気にしたら負けという類のものだろう。

オレもベタ褒め言葉に、ベタな返しをする。

「はい、自分にはもったいない妻達です。アームスさんはご結婚は?」

「いえ、私はまだ。実家は兄の子供が継ぐので、自分は理想とする女性を追い求めようとしているのですがなかなかいなくて。父はいい加減、結婚しろと見合い話を多々持ってくるのですが」

アームスが『その見合い話の中に理想の人はいない』と言いたげに溜息をつく。

これだけイケメンで、実家も金持ち、次兄でその気になれば女性はよりどりみどりのはずだ。

なのに理想とする人がいないとは。

つい、好奇心でアームスの理想とする女性像を尋ねてしまう。

「失礼ですが、アームスさんの理想とする女性とはどんな人なんですか?」

「一言で現すなら、『強い人』ですね」

ちょっと意外な答えに黙り込んでしまう。

女性に強さを求めるのが予想外だったからだ。

彼は気にせず話を続ける。

「自分の実家はご存じの通り、武器や防具を製造・販売しており、傭兵の派遣もおこなっています。本業は兄に任せて、私は戦いに出るのが好きなのです。なので妻には一緒に肩を並べて戦って欲しいのです」

なるほど、そういう考えなのか。

アームスはBプラス級の魔術師だ。

彼に並ぶ実力者の女性で、一緒に肩を並べて戦ってくれる女性となるとなかなかいなさそうである。

さらにアームスは続ける。

「欲を言えばさらに私より圧倒的に強く、背に乗って戦ってくれる女性が好ましいですね。私をまるで本物の角馬のごとく扱い、戦場を一緒に駆け抜ける姿を想像するだけでたまりません」

アームスはその光景を想像したのか、興奮して顔を赤く染め荒く息をつく。

あっ、これ一緒に戦ってくれる戦友としての嫁が欲しいのではなく、自分を支配して、従わせてくれる圧倒的強者が欲しいのだ。

そりゃいくらお見合いを進めても、結婚しないわけだ。

ある意味で理想が高すぎるだろう。別方向で。

彼の性癖を目の前にげんなりすると…… 冒険者斡旋組合(ギルド) 建物が目に入る。

あっ、居た。

アームスの理想にぴったりな相手が。

しかしあの人を紹介しても本当にいいのだろうか?

強さという意味ではある意味最強である。もしかしたら彼女より強い存在はこの世界にはいないかもしれない。

けれど、それは腹ぺこの虎の檻に生肉を放り込むようなものだ。物事には限度があり、色々無事ではすまなくなるかもしれない。

オレが紹介するかどうかで悩んでいると、アームスが『まだ仕事があるので』と挨拶を残し去っていく。

去り際、当分帝国での仕事が残っているため、何かあれば声をかけて欲しいといわれた。

まだ時間があるようだから、今度会った時にでも彼女を紹介してみよう。

オレはそんなことを考えながら、こちらかも挨拶をしてアームスと別れた。

いい加減、彼女にも幸せになって欲しいしな……。