軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第271話 再見! 北大陸

襲いかかってきた男達から一通り話を聞き終えると、縛り上げたまま一箇所に集め拘束。

男達は北大陸のしかるべき法的機関に引き渡すことになる。

小型飛行船や船は使えないように破壊する予定だ。

さすがに船を孤島に放置して、誰かに海賊行為を続けられても困るからだ。

『黒』下部組織の研究所施設も見て回ったが、特に隠れ潜んでいる人物はいなかった。

また 始原(01) に対抗するため『人工的に魔術師を増やせないか?』と彼らは研究を重ねていたようだ。

そのため魔物の死体や意味不明な薬品、器具、魔術道具などが多量にある。

流石にこれらの片付けをスノー達にやらせる訳にはいかない。そのため後日、必要な人員を手配して訪れた際、研究施設を閉鎖することになった。

オレ達は船底に男達を押し込むと、一路北大陸へと出発した。

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向かう先は北大陸のノルテ・ボーデンだ。

ノルテは北大陸の港で玄関口の1つであり、領主であるアムが現在統治する最大都市でもある。

新型飛行船ノアを街内側にある広場へと着地させる。

後程許可を取ってから、屋根のある飛行船専用の倉庫へと移動させるつもりだ。

倉庫使用に関する権限は、貸しが山ほどある北大陸支部 冒険者斡旋組合(ギルド) にあるためすぐに取れるだろう。

さらに船底に押し込んでいた孤島の男達をノルテ・ボーデン警備兵へと引き渡す。

元々、北大陸は輸出する品目が少なく、外貨を稼ぐために留置所を建設。

積極的に他国の犯罪者を引き受け、代わりに資金援助を受けている大陸なのだ。

引き受けた犯罪者達は、留置所に連行され地下資源を掘り出す人材として活用される。

他国は犯罪者を長期留置する場所や維持費などを削減でき、北大陸側は危険な地下資源を掘り起こす人材確保と資金援助、さらに掘り起こした資源をそのツテで輸出することが出来る。

そのためか『北大陸の出身です』と告げると田舎者扱いされて馬鹿にされる。

これが北大陸という土地だ。

アムに連れられ、城へと向かう。

数年ぶりにノルテ・ボーデンへと戻ってくる。

今回が初のココノ、ギギさん、旦那様は物珍しそうに城内部を見て回る。

オレ達は客間へと通された。

暫くするとアムと一緒にその妻である獣人種族白狼族のアイスが、子供を抱いて姿をあらわす。

アイスは長い銀髪の髪はストレートで、背中まで伸びている。獣耳にはピアスを付けていた。

身長は高く、胸が小さくスレンダーな体型は母になっても変わっていない。

「ようこそいらっしゃいました、皆様」

「アイスちゃん、久しぶりだよ!」

「スノーも元気そうでよかった」

スノーが、久しぶりに会う友人&同族のアイスに笑顔を話しかける。

前はアムが一方的にスノーへ懸想していた。

アムの幼なじみで昔から彼を慕っていたアイスは一時スノーを敵視していたが、今は子供を産んだせいか、昔に比べて圧倒的に穏和になった印象を受ける。

これが正妻となった女性の余裕か!?

アイスが初対面であるココノ、ギギさん、旦那様との挨拶を終えた後、皆の前に香茶が配られる。

そしてなぜかシアがノルテ城のメイド達を仕切って、お茶を配膳していた。

ああ、そういえばノルテを離れる時、城のメイド達に教祖のように慕われていたっけ。

シアが香茶を配膳している間、女性陣はアイスの周りに集まり彼女が抱く子供――シユにメロメロになっていた。

シユは女の子で、白銀の髪に獣耳、ふさふさの尻尾もちゃんと生えている。

アム&アイスは、2人とも整った顔立ちをしているため、シユも将来美少女になりそうだ。

だから――というわけではないが、女性陣はシユの可愛さに蕩けそうな顔をしている。

「可愛いよ、可愛いよ! 可愛すぎるよ!」とスノー。

『ほっぺたもプニプニしてます』とクリス。

「お手ても小さくて、本当に可愛らしいです」とリース。

「あ、あのアイスさん、シユちゃんを抱っこさせて頂いてもよろしいですか?」とココノ。

「もちろん、構わないわよ」

アイスはココノのお願いを笑顔で了承する。

ココノは愛おしそうにシユを抱き締めた。

シユも人見知りしないのか、不思議そうにココノを見上げている。

「われも! われも! 抱っこしたいのじゃ!」とアスーラ。

「アスーラ様、次は是非、ノーラにお願いします」とノーラ。

「うふふふふふ……いつかリュート様とわたくしのあいだにもシユちゃんのように可愛らしい赤ん坊が産まれるのですのね」

ココノのお願いにアスーラ、ノーラも続く。

1人だけ、シユを前に変な妄想をしている奴がいる。全くメイヤは……。

スノーはココノが抱くシユを覗きこみながら、アイスに話しかける。

「でも話を聞いて驚いちゃったよ。まさかアイスちゃんがすでに結婚して、子供まで産んでるなんて」

「スノー達が帰った後、色々あって――」

アイスがその『色々あった』部分を語り出す。

話の内容はアムから聞いた物と一緒だ。

今度はアイス視点で話し聞かされる形になる。

「アム様が 偶然(・・) 、強いお酒を飲んでしまって。側に居た私が たまたま(・・・・) アム様を私室へお連れしたんです。でも、私もお酒を飲んでいて、気付いたら一緒のベッドへ寝てて……」

女性陣はアイスの話を興味深そうに聞き入る。

某一番弟子は『その手があったか!?』という顔をしていた。

……おいこら、いったい何をするつもりだ一番弟子。

そんなわいわいと賑わう女性陣の邪魔をしないようオレ達男性陣は大人しくソファーに座り話をする。

「悪いなアム、うるさくてしちゃって」

「何、気にすることはない! 地上に舞い降りた天使であるシユを前にしたら騒ぎたくなるのも当然さ!」

アムは意味もなく前髪を弾く。

さらに意味もなく前歯を光らせた。

本当に意味ないな……。

「それでミスター・リュート達は暫くこちらに居るのだろう?」

「ああ、そのつもりだよ。スノーのご両親に色々話をしないといけないから。悪いんだが、白狼族がいる雪山奥まで案内できる人の手配を頼めるか?」

「お安いごようさ! それじゃ明日までに手配しておくよ!」

「いや、そんな急がなくても、近日中でいいから」

またオレ達が北大陸へ居る間は、この城の客間を好きに使っていいと許可を与えられた。

街に出て宿屋を探すのもありだが、わざわざ断る意味もない。

またスノー達がシユの近くに居られることを喜んだため、断る理由もなくなった。

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翌日、二重の巨大城壁を越えて、雪山へと入る。

最初、アイスが直々にオレ達を村へ案内しようとしたが、さすがに止めた。

まだ子供は小さいため、母親と離すのは問題があったからだ。

そしてオレとスノーの2人は、ちょうど買い出しに来ていた白狼族達と合流し雪山にある白狼族の村を目指す。

今回、スノーの両親に『黒』や 始原(01) 、女魔王などについて話をする予定だ。

込み入った話になるため、他嫁やアスーラ、ノーラは置いてオレとスノーの2人で会いに行くことになった。

これから向かう場所にいる白狼族――彼らは、北大陸の雪山に住む少数民族だ。

彼らは巨人族と呼ばれる動く石像の群れの間を縫うように移動し生活をおこなっている。

そうして年中移動しているため定住先を持たず、北大陸の奥地を転々としているのだ。

前回は村へ行くのに先遣隊がいる場所から3日ほどかかった。

しかし、今回は街の近くに白狼族が村を作ったお陰で、1日ほどで白狼族の村へ辿り着くことができた。

今回は見晴らしのいい雪原に村が作られていた。

白狼族は遊牧民のように移動するため、移った場所で雪と氷で イグルー(建物) を作る。

そのため村の印象は雪景色も混ざって、全体的に白い。

白狼族の子供達は雪で遊び、女性達は保存食を作っている。

男性達は仕留めた獲物の毛皮を剥いだり、肉の解体などをおこなっている。

そんな白狼族の人々が、村へ向かってくる人影に気が付く。

最初は予期せぬ来訪者に警戒を強めたが、距離が縮まりオレ、スノーの姿に気が付くと一斉に笑顔を浮かべる。

雪で遊んでいた子供達が真っ先に駆け出して来た。

「リュート兄ちゃんだ! えぇ、なんで!?」

「スノーお姉ちゃん!」

子供達がオレとスノーの周りに集まる。

女の子はスノーへ嬉しそうに抱きついたりした。

遅れて大人の女性、男性達もオレ達に駆け寄り輪を作り出す。

その輪の中に、スノーの母親であるアリルの顔もあった。

身長はメイヤぐらいで、胸も大きい。肩にギリギリ触れない程度に伸ばしたセミロングの髪から白い獣耳が出ている。

オレ達より年上だが、顔立ちは整った美人で、どこか儚げな印象を受ける。

そんなアリルさんが、白い頬を嬉しそうに赤く染めスノーを抱き締める。

「スノーちゃん、お帰りなさい。どうしたの急に」

「ただいま、お母さん。色々あって北大陸に来たからお母さん達に顔を見せるのと、お話がしたくてきたんだ。お父さんは?」

「お父さんは若い人達の狩り指導に行っているの。夕方には帰ってくると思うわ。リュートさんも遠いところ来てくれてありがとうございます」

「いえ、こちらこそ押しかけてしまって。これつまらない物ですが」

オレは元日本人らしく謙遜しながら、持ってきたお土産をアリルさんに渡す。

お菓子、砂糖、酒、香辛料など生活に使えそうな物と嗜好品を選んで持ってきた。

形に残る物だと逆に気を遣わせそうだったため、お土産は消費物にしておいた。

リースが居れば『無限収納』に入れてトン単位で持ち込めるのだが、今回は欠席してもらったため量は少ないが。

「ごめんなさい。変に気を遣わせちゃって。とりあえず立ち話も何だから部屋に行きましょう。温かいお茶を淹れるから」

アリルさんの好意に甘えて、オレとスノーは白狼族の村へと足を踏み入れた。

その日の夕方には、スノー父であるクーラさんが若い衆の狩り指導から戻ってきた。

オレとスノーの歓迎会ということで、村全体で豪華な夕飯と酒が出される。

白狼族の皆に歓迎され、おもてなしを受けた。

宴会後、スノー父のクーラさん&アリスさんのイグルーへと移動。

今夜ここがオレ達の寝場所になる。

寝る前に、今回オレ達が白狼族の村を訪れた理由――『黒』や 始原(01) 、女魔王などについて話をした。

シャナルディア・ノワール・ケスラン。

『黒』のトップが、オレの父、シラック王の弟の娘だったこと。

渡された『番の指輪』が、女魔王アスーラを目覚めさせる鍵だったこと。

始原(01) に女魔王の存在と世界の真実を知られたことを悟られ、戦いを挑まれたが無事撃退したこと――。

「 始原(01) と同じように世界の真実を隠し続けてきた大国メルティアは未だに沈黙を保ったままですが、オレ達に手を出す可能性は低いと思います」

いくら大国メルティアでも、魔術師S級がトップだった 始原(01) を下した PEACEMAKER(ピース・メーカー) においそれと手は出せないと思う。

もしこちらに軽い気持ちでちょっかいをかけてきたら、 8.8cm対空砲(8.8 Flak) と 燃料気化爆弾(FAEB) を城が崩れるまで撃ち込んでやるつもりだ。

一通り話を聞いたクーラさんが、口を開く。

「まさか女魔王――アスーラ様とケスラン王国にそんな関係があったとは……。しかもあのシャナルディア様が『黒』という組織を作って 生夢(せいむ) にかかってしまったとは……」

クーラさんが肩を落とし、片手で顔を覆う。

アリルさんも暗い表情をしていた。

やはり、2人はシャナルディアと面識があったのか。

機会があれば2人を魔物大陸で眠っている彼女の元へ連れて行くのもありだ。

もしかしたら、知り合いである2人に声をかけられ、目を覚ます可能性がある。

クーラさんが気持ちを切り替え、場の空気を明るくするように話を振ってくる。

「しかしまさかあの 始原(01) まで倒すとは……リュート君は本当に凄いな」

「いえ、これも妻であるスノー達が支えてくれるお陰です」

「えへへへ、そんなことないよ。リュートくんやみんなが頑張ったからだよ」

スノーは褒められたのが嬉しかったのか、座ったまま器用に尻尾をパタパタとさせる。

「なのでもうクーラさんやアリルさんを狙う人達はいません。だから、今のように隠れて生活しなくても大丈夫になったとお伝えしたかったのです」

「ありがとう、リュートさん。でも私達は今の生活に十分満足しているから大丈夫ですよ」

現在、スノー両親は追っ手に狙われないよう雪山で生活をしている。

しかし元々、白狼族は雪山を移動しながら生活をする一族だ。

アリルさんの言葉は気を遣った訳ではなく、本心からだろう。

それでもオレはスノー両親を狙う存在がもう居なくなったことを伝えたかった。

たとえ白狼族として生活をしていれば安全だと言っても、『自分達が狙われている』と怯え生活するより、『もう心配がいらない』と知った方が心理的ストレスとは無くなり楽になる。

だから、どうしても伝えたかったのだ。

「話は分かった。それでリュート君の母君であるサーリ様の行方は分かったのかい?」

「……いえ、現在も行方不明です」

ノーラ達から聞いた話では、『黒』もオレの実母であるサーリの行方は分からないらしい。

また 始原(01) 戦後、彼らの情報を洗い出したが実母に関する情報はどこにもなかった。

恐らくだが、生存は絶望的だろう。

「……そうか、リュート君にとって辛い話題を振ってしまい申し訳ない」

「いえ、覚悟はしていましたから」

薄情かも知れないが、前世の記憶を持つ自分はこの世界の実母に対する情は薄い。

孤児院で育ったのが拍車をかけている。

むしろクーラさんやアリルさんの方が、オレより思い入れが強いだろう。

オレは暗くなった空気を変えるため、話題を振る。

そして、スノーと一緒に義両親と深夜遅くまで会話をした。